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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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HN:
天音花香
HP:
性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





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こんばんは、天音です。


短編ばかりが浮かぶ最近の天音。

今回は自分の趣味に思いっきり走っております。
香水が大好きなもので、それネタのを書きたいなと思っていたので、書いてみました。
小説ブログではなくて、香水ブログも実は持っておりまして……。
最近は香水だけでなくなんだかいろいろごちゃごちゃしていますが。

興味のある方は、
香水大好き女が行く!
の方へどうぞ。

ではなくて、短編でしたね。

こちらの小説に出てくる香水は実在しません。
そして、実際の香水を香ったときに、こんなに明確に映像が見えることはありません。
ただ、ぼんやりと情景が浮かぶような香水はやはりあります。
そういう香水に出会ったときはとても嬉しいです。
でも、映像が浮かばなくても大好きな香水もあります。
感覚的に好きだ! と思えるものがあるというのはありがたいことだなあと感じます。
こんな体験ができればいいなあと思いながら書きました。

でも、この小説を思いついたのは、こういう感覚の夢を見たからであったりします。
矛盾するようですが、小説そっくりの夢ではなく、ヒントになるような夢です。
映像は全然違いますし、。妖精さんは子供だったし、香りの博物館みたいな感じでした。それはそれで味があってよかったんです。
「香りに敏感な人間とそうでない人間に人は分かれる。
しかし、どんな香りも人間の五感に作用し、精神に安定をもたらすこともあるともに、香りによっては人を凶暴性に駆り立てたりなど、犯罪に関与することも多々ある」
なんて最初の立て札に書いてあって。
なんか変わった夢でしたが面白かったです。

すみません、また脱線いたしました。

それでは、

ココから小説

「香りの王国」



 ふわっと香りが鼻をかすめた。
 一瞬の暗転。
 パラパラとページがめくれるような、奇妙な感覚。
 ――!
 あ、また来れた。香りの王国。
 ? これは砂の、香り……?
 羽をきらきらと輝やかせて、妖精が私に囁く。
「灼熱の太陽にさらされた砂は夜には驚くほど――」
 あ、冷たい……!
 !?
 虹色の果実が落ちてくる。くるくると回るその果実は紫に見えたり、橙に見えたり、なんとも不思議だ。
「渇きを潤すのは甘くて冷たい果実酒」
 求めていた味を舌に感じると、なんだか酸っぱいような、キュンと口が窄まる感じがする。実際には酸味は弱くて、とても甘くてとろりとしているのに。疲れが和らぐような甘さ。まったりと甘いのにしつこくない。なんとも丁度いい甘さだ。この甘さにぴったりな芳しい甘い香りが口から鼻にぬけていく。ああ、甘い香りにこんなに酔えるのは久しぶり。
 !?
 甘さが変わった。
 何? これは、何の色なの? 大きな花びらの大きな花。極彩色? いや、違う。香りが強いから鮮やかな色かと思ったけれど、これは眩いばかりの白色の花。肉厚な花びらの中心からまったりとした甘さと少し重みのある渋さが香ってくる。甘さだけでは物足りない。この渋さが甘さをより強調して、滑らかさも出している。一度嗅いだら忘れられないような独特な香りの花。砂の香りにマッチする不思議な花。
「少しの水でも育つ生命力があるのよ。ここで迎えてくれる花なの」
 風にあおられて香ってくる花に混じって樹の香りがしてきた。乾いた少し鼻につんとするような香り。それでいて樹らしい重さはちゃんとある。ほの甘さもある。安心する香り。葉の香りもする。乾いた樹に対して、瑞々しさを感じる爽やかな香りが、ほんの少しだけ。
「この樹も水が少なくても育つの。樹が細いのは養分が足りないから仕方ないわね。葉に少しでも水を蓄えようとするのよ。若い芽のときは、食べることもできるの」
 あ、少し苦味のある、でもスーッとするような爽やかさが口に広がる。そうか。これが感じた爽やかさ。
「さあ、肌にのせてみて!」
 そうだよね。のせてみなきゃ、これは。
 ――!!
 先ほどと同じように底のない井戸に落ちるような感覚。意識を失いそうになる。
 どくんと心臓がはねた。
 ――丸い月。冷たい白銀が空を遠くまで照らす。ラクダがゆっくりと冷めた砂の上を歩く。ラクダにくくりつけた果実酒の香りが砂の香に混じって漂ってくる。月の光に濡れた青い砂丘はなんとも妖艶で、誘うようで、それでいて優しくはない。
 香りが漂ってくる。すぐ近くにオアシスがあるのだ。白い花が月下で幻のように輝いている。ひょろりと背の高い木々が風にゆっくり揺れている。
 そうか、そういうことだったのか。

「ほのか? ほのか? ちょっと、大丈夫? またトリップしてるよ、この子。戻っておいで!」
「……」
「ほのか!」
 がくがくと揺らされて、私ははっと我に返る。
 香水のボトルが目の前には並んでいて、隣には友人たちがいた。どちらが現実か分からない妙な錯覚を覚えるのはまだ香りが試しにつけた手首から香っているから。
「お気に入り、また見つけたんだ?」
「うん」
 ぼんやりする意識のまま返事をする。
「どんな世界だった?」
 慣れっこになった友人が訊いてくる。
「うん。夜の砂漠。満月に、オアシス」
 私の言葉に友人が怪訝そうな顔をする。
「……砂漠? 香水だよね、それ」
「うん。うっとりするほど、幻想的で官能的だよ?」
 私はその友人の手首にもシュッとテイスター用の香水をかけた。
「……。うーん、そういわれればそんな感じかなあ……」
 何度か香りをかぐ仕草をして、友人がうなっている。
「でも、うん。素敵な香りだね。
よかったね。またお気に入りが増えて」
 友人が笑った。
「うん!」
 私も満面の笑みで答える。

 自分好みの香りに出会うと、香りの王国の扉が開く。
 どの香水でもではない。これは貴重な出会い。
 次はどんな香水がどんな世界に連れて行ってくれるのだろう?
 それも楽しみだけれど、まずは。
「それ、どうするの?」
「うん、買う! 久しぶりのヒットだもの」  
 今日はこの香水で夜の砂漠を散歩することにしよう。


                            了

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こんにちは、天音です。


今年も薔薇の季節がやってきましたね。
主人の母は花を育てるのがとても上手で様々な種類の薔薇を育てていらっしゃいます。
もう蕾がたくさんついていました。
咲くのが楽しみです。


このブログ、小説ブログに載せている全ての作品の著作権は天音花香にあり、放棄しておりません。
無断転載、許可のない販売は禁止です。
某サイトにて著作権侵害、違法販売されていた私の作品の販売が停止されました。
FC2さまと応援してくださった皆様方のおかげです。本当にありがとうございました。



ココから小説





             薔薇1





 六年ほど前のことだ。

当時高校生だった私は、薔薇のよい香に誘われて、坂の上の白い西洋風の家の前で自転車を止めた。庭中にそれは見事な薔薇が咲き誇っていた。拳ほどあるそれらの花は、赤系に統一されていて、秩序のある落ち着いた華やかさがそこにはあった。

 私はしばらく薔薇に魅入っていたのだが、ふとあることに気が付いた。その家には、一つだけ閉まった窓があったのだ。目を凝らすと、レースのカーテンの隙間から、ベッドと、その上に寝ている人影が見えた。病気だろうか? 気の毒だとは思ったが、それ以上の関心はなかったので、その日はそのまま帰った。むせるような薔薇の香だけがその場を離れても漂っていた。

それからも、帰り際にその家の前を通る日が続いたのだが、窓は開くことはなかった。相変わらず薔薇は美しい。だが、その庭に人影を見ることはなかった。それは悲しいことのように思えた。

そんなある日のことだ。いつものように自転車を止め、花に魅入っていると、庭に珍しく人がいて、私のほうにやってきた。美しい女性であったが、その顔は青白くやつれていて、どこか悲しげであった。その女性は言った。
「いつも来てくださってるんですって? 窓から見えると息子が言っていたわ。薔薇がよほどお好きなのね」

  寝ていたのは、この女性の息子さんだったのか。
「息子さん……、ご病気なんですか?」
  私の問いに、その女性は悲しく微笑んだ。
「ええ……。ちょうどあなたぐらいの年なのよ。でも学校にも行けなくて……。あなたを羨ましがっているわ。これ、あの子からなの。受け取ってくださる?」
 それは一輪の薔薇だった。薄すぎもせず、濃すぎもしない、ピンク色をした、可愛らしい薔薇。一緒に渡されたメッセージカードには「あげる」とだけ書いてあった。私は思わず、窓を見上げた。そこには透けるように白い肌と華奢な身体をした、少女のような少年がいて、私と目が合うとふわりと微笑んだ。優しげなその微笑みは、儚くて、胸をつかれた。彼の世界は、窓から見えるところだけ。私はたまたまそこへ訪れた異邦人。彼はそんな旅人を毎日どんな思いで待っていたのだろう。
 なんだか急に切なくなって涙が溢れた。少年が手を振ってベッドの方に消えた後も私は立ち尽くしていた。どうしようもないやるせなさだけが胸に残った。

それから二日後のことだ。家中、黒いカーテンが閉められていて、奇妙に思っていた私に、少年の母親は告げた。少年の死を。その数日後、少年の薔薇も枯れた。

月日が経つごとに薄れていく記憶の中で、少年の微笑みは薔薇が咲くたびに蘇る。
そして今年もまた薔薇の季節がやってくる。



                   了




薔薇2





桜が散った。
今年暖かい日が急に訪れて、桜は満開になった。だが、花冷えというのだろうか。 冷たい雨にさらされ、ほんの数日で散ってしまった。それは幻だったかのように。
それから少し経った時だった。
買い物帰りに、ふとミニ薔薇が咲いているのを見つけた。

正直驚いた。冬にも咲く薔薇はこの時期だけ咲いているのを見ない。
(ミニ薔薇は咲くのか……)
 その姿は可憐ではあったが、一見では他の花と見間違うようであった。
 ミニ薔薇は、やはり薔薇には正直劣る気がした。でもそれはそれで、ただ、私はその花を美しいと思えることに安堵した。

そう、薔薇が咲き誇る季節、薔薇はうっと惜しいばかりに、その美しさを私たちに、否、私に押し付けれる。
薔薇は時期を選んで咲いていると思うのは私だけだろうか。 五月、春の花が静まったあと、新緑の季節に、太陽の光を全身で浴びて、華やかさを惜しみなくアピールする。その姿、色香は完璧。薔薇が嫌いというわけではない。むしろ、最も好きな花である。だが。
この香、花を見ていると狂おしいほどの想いが蘇る。

  「貴方は元気でしょうか?」

 私の心に変わらぬ姿で浮かぶ貴方の姿。そのせいで、この、幸せになれるはずの香は、幸せではなく、切なさを運んでくる。もう、忘れたはずなのに。愛していない、恋していない。はず。 なのに。叶わぬとわかっていた片思いだったからだろうか。 この香に想いが呼び起こされる。

「君の一番好きな花を贈るよ」
といって、薔薇を贈ってくれなかった貴方。重い鉢植えの、値段だけがやけに高い花は、花が咲かなくなっている。そう、貴方は、私の思いを枯らすために、わざと育てにくい花を選んだのね。ひどい人。

こんなはずではなかった。
長年抱えていた行き場のない想い。それは叶わないと知っているからこそ、引きずっていたと思っていた。
 やっと好きな人ができて、貴方が他の女性と話すのを見ても、心に波風が立たなくなって、正直ほっとした。やっと開放されたと思った。

でも。
なぜあのときあんなことを思い立ったかはいまだに分からない。
「私、貴方のことが好きだったんですよ」
過去形の告白。いったい何がしたかったのだろう。
貴方は少しだけ驚いた顔をして、そして、微笑んだ。
「それは光栄ですね」
その顔を忘れない。そう言って、数年ぶりに見た貴方の笑顔は、儚いものだった。

私は思った。これで貴方はきっと私を忘れないだろう。
そう思うと、意地悪な気持ちと、嬉しい気持ちが私の中で溶けあった。ある意味、快感でさえあった。 そして、私はその気持ちを抱えたまま、嬉々としながら、当時好きだった人へ「好き」という気持ちだけを注いだ。
「好き」という感情に飲まれて、私のあの奇妙な感覚は消えていった。それでいいと思ったし、そうでなければならなかった。
貴方に片思いをしていたときほど、苦しく、でも幸せなときはなかったので、それに縛られるのは嫌だったのだ。過去のこととして、綺麗な思い出になればいいと思っていた。なのに。

貴方を忘れた当時、好きだった人は。好きという勘違い。憧れに近かったのだと思う。距離があった。外から眺めるだけの、一方的な恋。なのに、彼を知っている、と思い込んで、虚像に恋をしていた私。近づけば近づくほど、そのギャップに私の心は混乱した。それと同時に、貴方への想いはじわじわと蘇ることとなった。正直誰が好きなのかわからなくなっていたし、でも、二人に対するそれぞれの想いは、似て非なるものだと思った。だが、結局心の中に残ったのは、貴方への想いだった。

薔薇は私の最も好きな花。 でも、最も憎い花。
その香で思い出させないで。薔薇が綺麗に咲く時期は貴方の誕生日の季節。嫌でも貴方を思い出す。

くだらない。なぜ幾年もたった今なのに、なぜその日を忘れられないのか。私には関係のない日なのだ。なのに。こんなにも胸が疼く。薔薇の香が、頭を支配し、まるでそれに酔ったように、心に貴方を好きだった頃の想いを蘇らせる。違う。こんなのを望んだのではなかった。逆なはずだった。でも、きっと貴方は私を忘れ、私だけが、こんな狂おしい想いに駆られているに違いない。薔薇。大好きなのに。大好きなだけだったのに。

そして今年も薔薇の季節がやってきた。 変わらず薔薇は美しい。

私は、そばの薔薇を手折って、鼻を押し付けた。濃厚で高貴な香が私のすべてを支配する。 本当に美しく、憎い花。私は貴方への想いを断ち切るように、その薔薇の花を掴み、花を散らした。

                                                                                                                              了


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こんにちは、天音です。
暑い日が続いていますね。
でも、まだ梅雨も明けてないし、暑さはまだまだこれからが本番と思うとうんざりします。
皆様も熱射病には気をつけてくださいね。

今日は短編をお送りいたします。

田丸というのは苗字です。

相変わらずなんとも言えない小説ですみませんが読んでいただけると嬉しいです。

         

ココから小説

         田丸



 人は本当に人を好きになったときそれまでの自分の心無い行いに気づくものかもしれない。
 
 私は変わり者だった。小学生になって初めてつれてきた友達が男子だったことに母は驚いたらしい。
 その男子、田丸は背が低くて痩せた見るからに小さな男子だった。
 私の何が気に入ったのか結局分からないままだが、田丸は何処に行くにも私の後をついて来た。私は私でそれをなんとも思っていなかった。いや、子分ができたとでも思っていたかもしれない。他のクラスメイトは田丸と私を冷やかしたが、私はまったく気にも留めなかった。なぜなら田丸は恋愛対象とはかけ離れていたからだ。
 ただ、母は違っていた。何かと田丸の名前を持ち出した。そして、バレンタインの時には頼みもしていないのに田丸にチョコレートを買ってきた。私は半ば無理やりチョコレートを渡す羽目になった。もちろん「義理だから」と言って渡したが。田丸がそれをどう取ったのかはわからない。ただはにかんだ笑顔を見せられたとき、私は正直どうしていいか困った。それだけだった。ホワイトデーが近づき、田丸は私に好きなお菓子を訊いてきた。私は正直に「グミキャンディー」と答えた。すると当日、田丸は3袋のグミキャンディーを私にくれた。渡されたとき、私は他の男子たちと遊んでいた。そして、そのグミキャンディーをその男子たちと皆で食べた。田丸は顔を歪ませて泣いているような笑っているような表情をしていた。私はそれがなぜか分からなかった。分からなかったけれど脳裏に焼きついた。

 田丸は小学生の低学年の間私について回ったが、進学塾に入り、私より成績がよくなったのをきっかけに私から離れていった。そのときの私は「田丸のくせに生意気だ」とぐらいしか思わなかった。私は男子友達は多かったが結局好きな人というものを知らずに小学生を終えた。

 そして、高校生の私には好きな人ができた。毎日挨拶をしようとしても声がでないような……。自分にそんな存在ができるなんて思いもしなかった。中学生のとき田丸のことはすっかり忘れていたが、今は田丸のことを思い出す。今の私は過ぎし日の田丸と同じ。自分の好きな人から何かをもらったらどんなに嬉しいだろう。田丸の浮かべたはにかんだ笑顔はそれをありありと思わせる。そして、今になってやっと田丸の歪んだ顔が私の心を締め付けた。私はなんてことをしたのだろう。好きな人にあんなことをされたら……。言葉にならないほど哀しい。申し訳なかった。今、痛烈に思う。そして、自分は田丸になりたくないとも思う私は我侭な女だ。


                         了


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 今日はこのくらいで……。



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 それではまた近いうちに!              


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                           天音花香

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こんにちは。こちらではお久しぶりの天音です。


小説をアップさせていただきます。
書きたいことはあるのですが、まとまらなかった小説なので、上げるのはどうしようかと迷ったのですが、こういう時もあるかなと思うことにしました。
なので、かなりの不出来ですが、読んでいただければ幸いです。


ココから小説


              「隣人」



 今日、私は引っ越した。といっても近くの新築のマンションの一室を両親が買ったので、そこに移っただけなのだけれど。それでも新しいやっぱり部屋はわくわくする。開梱作業も自然と進んだ。
「夏海(なつみ)! 今日は外に食べに行くわよ」
「はあ~い」
 私は田辺夏海。今年高校を卒業して、来月から大学一年生になる。大学は自転車で通える距離なので一人暮らしはできないけれど、新居に移れたから満足。これからの未来に胸ときめかせていた。ただ、居心地よかった学び舎や、分かり合える友達と離れるのはやっぱり寂しくもあった。そして何より。
 古賀君。
 私の好きだった人。もう、こっそり後姿を眺めることもないなんて。でも当分忘れることはできない。なんせ、隣に引っ越してきた方の苗字が古賀だったのだ。さっぱりした感じのいい女性が挨拶に来られた。私はその表札を見るたびに古賀君を思い出すんだろう。
「夏海、聞いてるの?」
「はい、今行きます~」
 外で蕎麦を食べて帰ってきて、作業も一段落したところで、私はベランダに出た。植木に水をやりながら、
「新しい場所は気に入った? きっと日当たりもいいよ」
と話しかける。
 すると隣のベランダからくすりと笑う声がした。
「!」
 思わず自分の口を押さえる。でも黙ってるのも変だし、挨拶したほうがいいのかな。そう思っていると、
「それ、癖なの? 植物に話しかけるの」
 と声がした。私は心臓が跳ねるのを感じた。この声には聞き覚えがあった。何度かしか聞いたことはなかったけれど、忘れるはずがない。この声は、古賀君の声だ。
「聞いてる?」
 再び声がした。煙草の臭いが鼻をかすめる。煙草?
「煙草吸ってるの?! 古賀君!?」
「声が大きいよ」
「ごめんなさい」
 私が謝るとベランダ越しの古賀君はまた笑った。
「俺の苗字知ってるんだ? ……君、もしかして隣の部室だった人?」
「そう、です、けど……?」
 なんで古賀君は私のことが分かったのだろう?
「さっき車から降りてくるのを見た。なんか見たことがある人だなと思ったら、植物に話しかけてるから……」
 私は顔が赤くなるのを感じた。ベランダ越しだから見えなくてよかった。
「何回か見たことある。部室前でも植物に話しかけてるの。それで思い出した」
「そ、そう、ですか……」 
 恥ずかしくて消えてしまいたい。
「ま、隣になったのも何かの縁。よろしく、えっと何さん?」
「田辺です」
「じゃあ、よろしく、田辺さん」



「夏海! 授業始まるよ!」
 大学に入って知り合った友人が自分を呼んだ。食べるのが遅くてやっと食べ終わった私は、
「あ、うん」
 と慌てて返事をする。すると視界に一人の男子が入ってきた。
「?」
 なんだろう、よく知っているのに、知らないような……?
「夏海?」
「あ、ごめん、うん、今行く」
 その男子とすれ違うようにして食堂の席を立つ。
「!?」
 え? この人。
「古賀君?!」
「おう」
 よく知っている人……古賀君は髪を赤色に染めていて、雰囲気ががらりと変わっていた。
「夏海!」
「は~い」
 驚いた。知らない人みたいだった。それに、一緒の大学だったんだ! なんだか頭が整理できないでいると、
「今の人知り合い?」
 隣を歩く田口裕美が聞いてきた。
「う、うん。高校が同じだったんだ」
「ふーん。なんだか怖い感じの人だね」
「うーん、そうだね」
 確かに今の古賀君は不良っぽさを感じるような容姿になっていた。
 煙草といい、なんだか自分の知らない古賀君が急激に増えていって私は混乱していた。
「裕美、夏海、遅いよ!」
「ごめん」
「ごめん」
 大学に入ってから同じクラスの9人と行動するようになった。高校の時は4人だったから、その倍以上の人数。それぞれ授業が異なるときもあるが、昼食は一緒に食堂でとっている。裕美は大学に入って初めて友達になった女子だった。ぼんやりしがちな私の世話をよく焼いてくれる、姉さん肌の友人だ。
(だけど、裕美は私より仲がいい友達がいる)
 9人一緒の授業のときが正直私は苦手だった。長椅子の時はいい。でも、2人でかけるタイプの椅子のとき、自分の隣がいつも空いていることに私は気づいていた。自分で裕美の隣に座ってしまえばいいのかもしれない。でも、いつもそれができずに遠慮し ていると最後に残されてしまうのだ。
(本当にそれだけなのかな? 私に問題があるのかな)
 不安になる。
 高校生の時はなかった不安。
 授業も皆同じ。服も同じ制服。好きな話題が一緒で、話し出すと時間がいくらあっても足りなかった。いつも3人が身近にいてくれるという安心感。ある意味それが特別だったのだろうと思う。いや、特別というより、人生においては異質な時間なのだろう。枠にはめられた中での個性だけを求められる時間。
 大学の生徒は出身地も様々だし、授業は選択を自分でしなければならないし、バイトなどで社会につながる機会も増える。中学、高校と違う、けれど社会人には満たない自由と責任が大学に入ると得られた。けれど、私は それになかなかついていけていなかった。バイトもしていなかったし。自分が何をしたいのか、誰といたいのか、それすらもぼんやりと輪郭を持たず、流されているだけのような気がした。
 そもそもなんでその9人に属するようになったんだっけ? 思い出せない。友達ってそういうものかもしれないし、でもそれでいいのかわからない。
 今日も私の隣は空いたままだ。
 私はどうして選ばれないのだろう……?
「夏海、次の授業だよ?」
「あ、うん」
 無意識に笑って返事をしている自分を見ないふりをした。
 風も緑に染まるような五月晴れ。でも、その後には梅雨が来ることを知っている。


「夏海?」
 不意に 声をかけられ、振り返り、私は 懐かしい姿に破顔した。
「祐司!」
 中学生の時に学校も塾も同じクラスだった男子橋本祐司だった。
「うわー、久しぶりだね!! 大学同じだったんだね」
「ほんと久しぶりだよな」
「うん……」
 なんだか祐司と会えてほっとしている自分がいた。
「なんだ、疲れてるのか?」
「うーん、そんなところかな」
「ふーん?」
学部は?」
「文学部。祐司は?」
「俺は工学部」
「サークルは?」
「うーん、まだ決めてないんだ」
「そうなんだ? 中学の時、書道してなかった?」
「うん、高校の時もしてたよ」 
「なんでそれじゃ、入んないの? 俺はテニス入ったよ」
「ふーん」
 祐司は大学が合っているようでとてもいきいきとしていた。そんな祐司が羨ましかった。
「バイトは?」
「それもまだ」
「なんだ、ただ授業だけ受けてるのか? 勿体ない!」
「……そうだね」
 確かに自由も得ているはずなのにそれをちっとも活用できていない自分がいる。勿体ないと思う。でも、たくさんの選択肢を一 気に出 されたら戸惑ってしまうのだ。
「お、俺そろそろサークルいくわ」
「うん」
「またな!」
「うん」
(祐司は楽しそうだな。でも私は……)
 自分に納得ができないまま、この日も私は自転車で家へ帰った。
 
 


「そうなんだ~。うん、またね」
 携帯を切って、私はため息をつく。高校の時からの親友の一人、新田希と近況を話したところだった。希は県外の大学の薬学部に行った。忙しいが充実した毎日を過ごしているようだった。県外だし、不安もあるだろうに、楽しくやっている希に安心し、それと同時に置いてけぼりをくらったような気持ちになった。
 ベランダの戸を開ける。
「皆楽しそう。私は何をしてるのかな」
 花に水をやりながら話しかける。
「田辺さんは何をしてるんだって?」
 隣から声が聞こえてきた。
(やだ。また聞かれてたんだ、古賀君に。恥ずかしい……)
 頬がかあっと熱くなる。
「田辺さん大学楽しくないの?」
「 ……わかりません」
 答える声が涙声になった。
 あ、また煙草の臭いだ。……大好きな古賀君さえ私の知らない人になっていってる。それが悲しかった。うううん、知らない古賀君ではなくて、知らなかった古賀君というのが正しいかもしれない。……。
「自分のことなのにわかんないの?」
 あっけらかんと古賀君は言ってくる。
「っ。なんで古賀君にそんなこと言われないといけないんですか?」
 思わず言い返してしまった。
「だな」
 しばらく無言が続いた。なんだか気まずかった。なのに古賀君は部屋に入ろうとしなかった。古賀君が吐く煙が上に上にと上がっていく。
「自分が楽しいことをしたらいいよ」
 古賀君が言 った。
「……それがよくわからないんです……」
 私の言葉に古賀君はしばらく黙った。そして、ふーっと煙をはいた。
「……そしたら、嫌なことはしなければいい。
ごめんね、泣かせて。じゃあね」
 古賀君はそういうと部屋に入っていった。



 ーー嫌なことはしなければいいーー
古賀君の言葉が蘇る。
(それができたら苦労しない。
……それに具体的に嫌なことってあげられないよ)
 情けないなあと自分で思いながら空を見上げる。今日もまだ五月晴れ。
(嫌なこと……)
 私は授業中ぼんやりと考え続けた。
(取り残されること、かな、さしずめ)
 取り残 されたくないなら何をしたらいいだろう。まずは。
 私は中、高とやっていた書道を大学でもやることにした。部活かサークルか迷ったが、部活にした。サークルより縛りは厳しいが、サークルの自由な雰囲気より自分には合っている気がした。
 筆を握ると落ち着いた。入ってよかったと思えた。言葉を交わす知り合いもできた。
(うん、一歩前進かな)
 それから塾講師のバイトを始めた。子供に理解してもらえること の難しさを痛感する時間だが、これも悪く ない気がした。こちらが学ばされる。自由になるお金が入ることもやはり魅力的だった。
「……」
 でもやっぱり隣の席が空いている。一番気になることなのに、どう解決すればいいかわからない。
 それだけではなかった。
 日頃ドラマや雑誌などを見ない私は皆の会話についていくことができなくなっていた。
「えっと、それ何?」
 私の言葉に裕美は最初軽く説明をしてくれていた。しかし、段々と面倒くさそうな顔をするようになり、私は分からなくても訊けなくなっていった。ドラマを見たり雑誌を読んだりして会話についていけるようにするべきなのだろうか。そうは思ってもなかなかできないでいると、次第に会話に入れなくなっていき、9人の中でま すます孤立していった。まさに取り残された形だ。
(それは嫌なのに )
 一緒にいる意味はあるのだろうかと思いはする。でも、一人ぼっちになりたくない。そういう思いからすがるように8人の後をついて行くしかなかった。
 食堂からでて、皆についていこうと走り出した時、軽く肩が男子に触れた。
「ごめんなさい!」
 その男子の目も見ないで謝罪をして、とにかくついていこうとする私に振ってきたのは、
「よぉ。田辺さん、前見て走ってる?」
 という声だった。
「……古賀君っ」
「危ないよ?」
「う、うん。ごめんなさい。でも私急いでるから」
 走り出す。せっかく古賀君が話しかけてくれたのに、皆について行かなきゃという焦りの方が勝っていた。
「……なんだかなあ」
 古賀君が呟いた言葉も耳に入っていなかった。



「その後どうよ?」
 書道部の部室に行こうとしている私に声をかけてきたのは祐司だった。祐司はたま会うとこうやって気 さくに声をかけてきてくれていた。
「うん……。今から部活に行くところ」
「部活入ったんだ?」
「うん。
塾講のバイトも始めたよ」
「そーなんだ? でもなんだかあんまり楽しそうじゃなさそうだけど?」
「うん……」
 私はちょっと躊躇う。
「部活やバイトは楽しいよ」
「それで?」
「……」
 黙ってしまった私の頭を祐司が軽く叩いた。
「なんだよ、中学の夏海の方が元気だったぞ?」
「そうかも」
 思わず苦笑する。
「そう、笑え笑え。どんよりしていると運気も逃げてくぞ」
「確かに……そうだね。ありがとう」
 今度は苦笑じゃない笑顔が出た。
「そうだ、 もしかして悩みってあいつのことじゃないよな?」
「え?」
「今日、昼ご飯の後、食堂前で古賀からいちゃもんつけられてただろ?」
「ええ?! いちゃもん?」
 突然の言葉に唖然とする。
「そんなんじゃないよ?」
「あいつには気を付けた方がいい。つるんでる奴らもなんだか怖そうな奴らばかりで悪目立ちしてるんだ」
 古賀君がそんなことになっているなんて。確かに雰囲気は変わったけれど……。悪目立ち……。確かにあの容姿だと目立つかもしれないけれど、でも中身まで変わっちゃったのかな。
(違うと思う)
「大丈夫だよ。古賀君は高校が一緒だったんだ」
「そうなのか? でも、気をつけるにこしたことはないと思 う」
「う……あ!」
 頷こうとして、私は驚きのあまり言葉を発した。噂をすれば影。タイミングが悪いことにちょうど祐司の後ろを古賀君が通ったのだ!そして。
「誰に気をつけろって?」
 驚いた祐司があわてて後ろを振り返る。
「げ」
「げ?」
 古賀君は面白そうに祐司を見ていた。
「古賀……」
「田辺さん今帰り?」
 唐突に古賀君が私に声をかけた。それは親しい人に対するような口調で私はどきりとした。
「……いえ、部活にいくところです」
「そ。まあ、頑張って」
 手をひらひらさせて自転車置き場の方へ向いた古賀君。
「おい、なんなんだよ」
 祐司が声を荒げた。
「何 が?」
「お前、昼も夏海に声をかけてたじゃねーか」
「? 夏海?」
「田辺夏海」
「ああ。田辺さん。昼ね。田辺さんが前見てなかったから」
 そうだったんだ。なんだか嬉しくなった。それなのに、私はグループの女子についていくのに必死で古賀君の気遣いに気づきもしなかった。
 そうだ、古賀君は優しい人なのだ。
 初めて古賀君を意識した時のことを覚えている。掃除時間に女子が花瓶を割ってしまったとき、黙々と花瓶のかけらを片付け出したのが古賀君だった。危ないからと女子には触らせなかったのも。ぶっきら棒でどこか近寄りがたい雰囲気を持っていた古賀君。でも本当は優しい人なんだと気が付いたときからこの想いは始まったのだ。&l t;/ div>
「なんでそんなに夏海に構うんだよ?」
 なんだか変な展開になってきたような気がする。
「祐司、やめてよ」
 古賀君にまで面倒くさい女だと思われたくなかった。
 古賀君は先ほど同様、面白そうな顔で祐司を見ていた。
「別に特に構ってるつもりはないけど?」
 古賀君の言葉に急に私の心は萎む。当たり前のことだけれど悲しい。
「でも、まあ、隣人だから?」
 古賀君が付け加えた。
「隣人?」
 祐司がますます怪訝そうな顔になる。
「そ。ね? 田辺さん」
「う、うん」
「じゃあ」
 それだけ言って古賀君は今度こそ自転車置き場の方に歩いて行った。
「どういうこと?」
「 そのままだよ。新しいマンショ ンに引っ越したんだけど、隣が古賀君なの」
「マジで!? ますます気をつけろよ!」
「だから、悪い人じゃないんだってば」
「いや、やっぱり怖かったもん、さっき」
「うーん、飄々としているからかな。
私部活行かなきゃ」
「そうか、じゃあな! 本当に気をつけろよ!」
(……)
 隣人。特別な言葉ではないけれど、どこか優しい響きがした気がして、私はちょっと微笑んだ。


 
「おう」
 ベランダに出て、いつものように水やりをしている私に古賀君が声をかけてきた。
「こんばんは」 
「祐司サンは元気?」
「え?
あ、祐司? 元気そうですけれど」
「そ」
 誤解されているのだろうか。
「別に、祐司とは友達なだけですよ?」
「だろうね」
 予想を反した答えに私はなんだか拍子抜けする。
「……」
「田辺さん、自然な顔してたよ。祐司サンといるとき」
「自然な顔?」
「そう」
 私は戸惑った。意味を測り兼ねていた。
「田辺さんさ、女子の集団といるとき、顔が緊張してるよ。なんか蝋人形みたいな? って言い過ぎか」
 どきりとした。
「そ、そうかな……」
「自覚ないの?」
「……」
 心臓がバクバク言い出した。自覚がないわけない。
「あんな顔してまで一緒にいる必要あるわけ?」
 古賀君の言葉が胸に突き刺さる。それは最近いつも自分に問うていたことで。
「そ、それは……」
「田辺さん、楽しくないっていうより苦痛な顔してるよ」
「……!」
 心が悲鳴をあげた。
 古賀君に指摘されるということは、8人にも気づかれているということなんだろうか。一緒にいるのが苦痛だと。
「一緒にいて苦痛なんて友達って言えるかな」
 古賀君は容赦なく続けてくる。
 いつかは選ばれるのではないかと期待してしまう自分がいた。どんどん孤立していっているのに、いつかは隣に誰かが座ってくれるんじゃないかと。
 いつしか涙が頬を伝っていた。
「っ」
「……また泣かせちゃった? ごめん」
 私は頭を振った。
「違っ。古賀君の言うことは正しいと思います」
 私は 問題を 先延ばしにして解決をしないように自分でしていたんだ。答えは見えていたのに。
 私は。私はどうしよう。分かっているけれど、でも、でもどうしよう。
「ま、隣人としては田辺さんが幸せなことを望むかな」
「……っありがとうっ!」
「じゃあね」
 あれ? 今日は煙草のにおいがしない。何で出てきてくれたのかな? 私にそれを言うために? 
(まさか)
 偶然でもよかった。私は少し勇気づけられた気がした。
 私、明日からどうする? どうするの? 決まってるよね。こんなんじゃ、皆にも失礼だよ。


 翌日から私は食堂に行かなくなった。



「こんばんは」
 私は隣のベランダのドアが開くのをきいて、タイミングを合わせてベランダに出た。
「おう」
 でもどう切り出していいかわからず黙ってしまった。
「用があるんじゃないの?」
「は、はい……。
私ね、今、昼食一人で食べてるんです」
「みたいだな。食堂にいないし」
「はい……」
「それで、どうなの?」
 古賀君にそう訊かれて私は……。
「うん……。パンがね、苦いんです。ちっとも美味しくないんです」
 古賀君は黙って私の言葉を聞いていた。私の目からは大粒の涙がとめどなく流れ出した。
「一人ぼっちの自分が悲しくて、傍からどんな風に見えるんだろうと恥ずかしくて……。心細くて……」
「自分を自分で哀れんでるんだろ?」
 古賀君が言った。
「!」
 心臓を貫かれたような気がした。そう、そうなのだ。私は自分が可哀想で仕方がなかった。こんなみじめな私。可哀想。
「それで泣き言をいいに来たの?」
 図星だった。
「それで、俺にどう言って欲しいわけ? 可哀想だねって言われたいの?」
「ち、違っ!」
 私は頭を振った。
「じゃあ、何?」
「……」
 ふうと古賀君がため息をついた。
「そんなに嫌ならまたオトモダチたちと一緒にご飯食べれば?」
 そうじゃない。それを望んでいるのではない。
「いえ、それはしません」
「ふうん? なん で?」
 古賀君が面白そうに言う。
「元に戻っても一人は同じですから。それに……友達にも失礼ですから」
「だから?」
「……頑張ります」
「よくできました」
 なんだか誘導された気がする。変な感じだ。でもなんだか自分の思いを再確認できた気がする。
「……」
 あれ? 今日も煙草の臭いがしない。
「古賀君、煙草やめたんですか?」
「ん? ああ。ほかに退屈しのぎができるようになったから、かな」
「そうですか。身体にはその方がいいですよ」
「そうかもね。じゃあまたね、田辺さん」
「あの、ありがとう」
「何にもしてないけど?」
「聞いてくれてありがとう」
「ん」
「じゃあ……」
 私と古賀君は互いに自分の部屋に戻った。



 一か月が経った。
 一人になって、私は友人たちにかなり依存していたことを悟った。すべて一人でしなければならないということに戸惑いも感じたが、慣れると何でもない。
 もぐもぐと買ってきたパンを口に頬張る。今日は雨。
 一人の昼食にも慣れた。
 授業中、隣に座る友達がいないのも気にならなくなってきた。たまに誰かが座るときもあったりする。
 前の友達とは挨拶や当たり障りのない言葉は普通にかわしている。
 部活の時間も集中できるようになった。部員と話すことも増えた。
 お気に入りの道をみつけて帰るなど、一人でできる楽しみを持つこともできるようになった。
 一つ一つのことを自分でゆっくり吟味してできる。
 私は自分がかなり無理をしていたことがわかった。ゆっくりしたペースの私はこれくらいでちょうどいいのかもしれない。



 秋風を感じるようになった。空が高く青く、雲が鱗模様を描いている。
 一人で昼食をとるようになって、四か月が経っていた。
 来年になれば学科の選択がある。そこで本当の友達を作りたいなと思っていた。隣に座ってほしいではなくて、隣に座りたい友達を。
「田辺さん見っけ」
「古賀君」
「俺もここで食べようかな」
「どうぞ。何のもてなしもできませんが」
 古賀君は神出鬼没で私の前に突然現れては言葉をかけてくれた。私はそんな古賀君にとても救われた。祐司も声をかけてくれたけれど、やっぱり好きな人からの言葉の方が嬉しい。当然のことだ。
 私は古賀君と大学内の亀のいる池の前で隣同士に座ってパンをかじった。
「最近楽しそうな顔してるよ」
 古賀君がそう言った。
「うーん、楽しいかは分からないけれど、一人になってよかったと最近は思えるよ。楽になったっていうのかな?」
「いいんじゃない?」
「うん。
でもね、満足はしていないの。やっぱり本当の友達は欲しいなって思うんだ」
「祐司サンの他にも?」
「そう、祐司の他にもね。
私、隣の席が空いているのが気になって仕方なかったの。でも、そうじゃないんだよね。本当に嫌なら誰かの隣に座ればよかったんだよね。でもできればその誰かは友達がいいな、と思って」
 私がゆっくりと考えを言うと、古賀君はふーんと楽しげに返事をした。
「成長したんじゃない?」
「そうかもです。古賀君のアドバイス 、結構きつかったけど、効きました」
「それはよかった」
 古賀君は長い足を延ばして伸びをするようにして返事をした。なんだか機嫌のいい猫のようで、可愛く見えた。だから私も笑顔になった。
「やっぱり笑顔がいいよ、田辺さんは。
じゃあ、隣が空いてるなら俺が座ろうかな」
「え?」
「隣人だし? 座ったらその中途半端な敬語やめてくれる?」
「はあ」
 私は意味が分からず返事をする。
「友達じゃない隣ね」
 んん?? ますます意味が分からなくなった。
「わかんない? じゃあ、言葉変えよう。恋人ってのに」
「えええ!?」
 私は思いっきり声をあげてしまった。心臓がはねた。一気に動悸が激しくなる。
「しー」
「いったい私なんかのどこが……」
 慌てて言うと古賀君がいたずらっ子のように笑った。
「……花に話しかけるところが、かな」
 私は恥ずかしさに頬が熱を持つのを感じた。
「もう! からかってるんでしょう!?」
 古賀君は楽しそうに笑ってる。
「そう思う? そんなことないよ?」
 私はなんだか力が抜けて、ぷいと横を向いた。
「そういう冗談は好きじゃありません」
「ほら、また敬語」
「そ、それは無効です。か、彼女じゃないんだし」
 自分で言ってちょっと悲しかったけれど仕方ない。
「それじゃ、彼にはしてもらえないってこと? ほんと? 残念だな。常に隣にいたいのに」
 古賀君はちょっと悲しそうに言った。
(ほ、本気なのかな!?)
 私はちょっと混乱して 、小さく頭をふった。そして、勇気を絞ることにした。
「え、いえ、その……ほ、本気ですか?」
 私の言葉に古賀君は屈託なく笑った。
「ああ、本気だけど?」
 私は目をうろうろさせる。いいのかな。本当にいいのかな。いいんだよね?
「そ、それなら、よろしくお願いします」
そういって、ぺこりと頭を下げた。
「ああ、よろしく」
 この日から古賀君は私の特別な隣人になった。
 


                              了

 

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 今日はこのくらいで……。



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                           天音花香


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こんにちは、天音です。

大変ご無沙汰しています。
小説書きかけのはいくつかあるのですが、途中で止まっている感じで、出来上がっておりません。
いつになったらあげられるかな……。

今日は、本当に短いし、内容もないのですが、一つ短い短い短編を。

読んでふーんって感じですけれど、懲りずにまた来てやってください。

近いうちに書きかけの小説をアップできればと思います。




ココから小説

 


       かみの手




 困ったことになった。

 パーマ液を流すために案内された。
 その時は女性の美容師さんだったのに。
 途中で、
「変わります」
という声がした。
 男性の声だった。
 私は男性に髪を触られるのが嫌いだ。だから女性を指名している。

 久しぶりのパーマ。ちょっと気分が上がっていたのに一気に沈んだ。

 のだが。

 なんだろう。この感覚は。
 なんて優しい感触。
 穏やかな風に髪を優しくなでられているような。
 襟足を流す時に首を支える力加減がなんとも心地よい。
 そして。
 ざわざわと鳥肌が立ちそうになった。
 後ろ髪を流されるときのこの感じ。
 思わずうとうとしそうになるほど気持ち良いのだ。

 ありえない。こんなに心地よいシャンプーは初めてだ。
 終わってしまうのが惜しいほどに。

「起こしますね」

 夢心地のまま起きて、髪を拭かれるままに任せる。
 ぼんやりと余韻を楽しんでいると、さきほどの女性が前に来ていて、席へ案内された。

 結局振り返ることができずに、どんな人がシャンプーをしてくれたのかわからずじまいだった。

 私は男性に髪を触られるのが嫌いだ。
 それは変わらない。
 でも。

 私は彼の声とシャンプーの手つきを頼りに彼を見つけるまでそこに通い続けることにした。
 いつか必ず見つけてみせる。
 私の恋した神の手の人。

                         
                           おしまい


 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 
 こんな恋の始まりもあるかな、なんて思いながら書きました。


 追記;この小説の続きをエブリスタにて書きました。まだ修正する箇所は出てくるとは思いますが、無料で読めますのでよろしかったら来てください。
かみの手
                        2017年4月19日

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 それではまた!               天音花香

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