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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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天音花香
HP:
性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





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     「治雪の場合」4


 頬杖をつき、治雪は指でシャーペンをくるくると回していた。
 今は放課後。孝子に数学を教えてもらっているときだ。
(――また、だ)
 孝子の顔から笑みが消え、目が現実を離れるとき、治雪は意識的に孝子から目をそむけるようにしている。
 一見無表情にも見える、その顔。
 だが、治雪は思う。これが大人びた仮面が剥がれた、恐らく本来の孝子の顔なのだ。瞳だけが何かに憑かれたように切ない熱を帯びる孝子は本当に美しい。
 しかし。

 苦しい。

 孝子は翔を見つめるとき、同時に叶わぬ自分の恋を再認識してしまうのだろう。その孝子の心を思うと、治雪は胸が痛む。
 苦しい恋ならやめてしまいなよ、と思わず言ってしまいそうになるから、治雪は目をそらす。
 見てられない。
 本当に?
 それだけじゃない。
 見ていたくないのだ。
 孝子の心が翔にあるのを再認識して苦しいのは自分。
 孝子の力になれればそれでいいと思っていたはずなのに。
 ひどく喉が渇く。
 今も数学の説明は止まったままだ。 
 口がゆっくりと開いて、かすれた音が出る。
 孝子は気付かない。
 人のいない赤い教室。かすかに開いた戸から見える、談笑する翔と梨呼。もう限界だ。
「やめちゃいなよ」
 先ほどとは違って、言葉が声になった。
「え?」
 孝子が、今気がついたように治雪を見る。その瞳が揺れた。
「春日、君……?」
 目が求めている。きっと自分は今、先ほどの孝子と同じ目をしているのだろう。
 駄目だ。孝子の負担が増えるだけ。解っている。
 でも。
「苦しいよ。そんな顔している堀内さん、見たくないんだ……」
 また、声がかすれた。
 孝子の目が大きく開かれる。声を出したいのに、口が開かないと言う感じだ。逆に治雪の口は止まらない。
「俺じゃ、駄目、なの?」
「え?」
「好きなんだ、堀内さんが」
「……」
 孝子は声が出せない。
 治雪にとっては長い長い一瞬。
「……私、だった、の?」
 信じられない、といった顔で孝子はそう一言言った。
 沈黙は肯定。
 珍しく困惑した顔をして、孝子は髪を耳にかけた。落ちて頬にかかった髪をさらにかける。
 視線が自然と下がり、孝子の心のようにその黒目が揺れていた。
「……じゃあ、春日君にも、つらい思いを、させていたのね……」
 つらそうに孝子はそう言った。
 そして、ちょっとの間、考え込んでいた。
「そうね」
 その孝子の口から独り言のように言葉が漏れた。
「春日君となら、うまくやっていけるかもしれないわね」
「え?」
 治雪は眩暈を覚えた。
 これはどうなっているのだろう。
「つきあいましょうか、私たち」
 今度は決意を秘めたようにしっかりと治雪の目を見て孝子は言った。
 治雪はその意味をやっと完全に理解して――。

 心が悲鳴をあげた。
 違う!
 こんなことを望んだわけではない。孝子はまた自分だけ我慢しようとしている。負担にだけはなりたくないと思っていたのに。
 では、なぜ言ったのか。結果は判っていたことではないのか?
 本当は解っている。
 自分の存在に気付いて欲しかった。少しでも心に置いて欲しかった。
 なんて幼稚な自分。なんて勝手な希望。
「違うんだ……」
 吐き出すように治雪は言った。
 孝子からは、その治雪の表情は影となって見えなかった。
「春日、君?」
 治雪は乾いた笑いを浮かべた。
「俺まで、苦しめちゃ、しょうがねーよ、なあ」
 そして一瞬だけ真顔になり、それをかき消すように孝子に微笑んでみせた。
 孝子は訳が解らない。
「堀内さん、自分の気持ちを偽るのは、よくないと思うんだ。
だから、俺も言ってしまったのかもしれないけど……。それ以上に、堀内さんに嘘をついてもらいたくないんだ」
「春日君……」
 孝子がまた、困ったような泣きそうな顔になった。
「俺は大丈夫だから。今のままでも十分幸せだから」
 半分は本当だった。
 好きな人と同じクラスで、友達にもなって、二人で勉強もできる。退屈だった学校がこんなにも楽しいものになるなんて、想像もできなかったことだ。
 ――こんなに苦しい思いをするなんてことも。
「本当に、大丈夫。だから、自分だけ我慢しなくていいから」
「でも、そしたら春日君が!」
 泣き出す前の子供のような孝子の顔。
 ガタンと椅子が倒れる音が静かな教室に響き渡った。
「春日、君?」
 治雪は何も言わずに孝子を抱く力を強めた。
「……ごめんね、堀内さん。堀内さんを苦しめようと思ったんじゃないんだ。俺は堀内さんのそばにいれればいいんだ。
――だから、これからもこれまでと同じように接してくれるかな?」
「え? ええ、もちろん」
 治雪は、孝子の返事に勢いよく孝子を自分から離すと、呆然とする孝子の前で勉強道具を急ぎ片付け、教室を出ようとした。
 そして、戸の前で一度立ち止まって、孝子を振り返った。
 治雪は、
「本当にごめん。また、明日ね、堀内さん」
 とだけいうと走って教室を後にした。
「春日君……」
 残された孝子は。
 戸の前での治雪の泣き笑いが、孝子の脳裏に焼きついている。孝子にとって、治雪は同学年でもどこか幼くて、正直で、可愛い弟のような存在で。そして何でも話せる友人で。
 まだ少し痛みの残る腕。
 自分と同じ、叶わぬ恋の痛みを思うと苦しい。
 でも。
「私、馬鹿なことを」
 孝子は腕をさすりながら、嘘で応えようとした自分を恥じた。
 一人の男性として気持ちをぶつけてきた治雪。
 それなのに。
「ごめんなさい」
 今はもう見えなくなった治雪に孝子は呟いた。


             「治雪の場合」5に続く

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アルファポリス「第3回青春小説大賞」(開催期間は2010年11月1日~2010年11月末日)にエントリーしています。

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