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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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天音花香
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女性
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主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





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こんにちは、天音です。


今回は高校生の時に書きかけになっていた小説を手直ししてアップしようと思います。
タイトルのようにすぐには主人公は登場人物にならないので、気長に読んでいただけると嬉しいです。

「恋人ごっこ」の方も更新しますのでよろしくお願いします。




コメントいただければ喜びます。
拍手もとても支えになります。その際にはぜひ、一言書いていただければ嬉しいです。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。



ココから小説



     読んでいる本の登場人物になっていました


           中田 雫の章

           真夜中



 真っ暗な部屋に小さな電気スタンドの明かりがほんのり灯っている。
 時刻は夜の12時半。少女以外の家族は寝てしまって、当たりは静まり返っていた。静かな静かなこの時間が少女は大好きだった。しかも今日はなんだか特別な日なのだ。
 少女が手にしているのは古本屋の奥で見つけた革の表紙の分厚い本。その本には題名がなかった。少女はその本を見つけた時、なんだかわくわくした。早速少女がレジに持っていくと、笑顔の優しいおばあちゃん店主が横に置いてあった眼鏡をかけてまじまじとその本を見た。
「こんな本、うちにあったかねえ」
 戸惑うように表紙と裏表紙を見る。題だけでなく値段も載っていない。うーんとうなった後、彼女はいつものように優しい笑顔で少女を見た。
「値段のつけようがないねえ。あなた、いつも買ってくれる子だろう?」
 そして、悪戯っ子のように目を細めて笑った。
「これはあなたが見つけた本。持っていきなさい。くれぐれも内緒にね?」
 少女は喜んで家にその本を持って帰ったのだった。


 少女の名は中田 雫(なかた しずく)と言った。どこにでもいる中学二年生の女子だ。人よりちょっぴり正義感が強くて、ちょっぴり成績がよくて、読書が何よりも好き。人と違うところはそのくらい、と言いたいところだが残念ながらそうではなかった。雫は学校でいじめにあっている。きっかけは些細なことだった。
「あの子、汚い」
 そう言われている女子がクラスにいた。机に落書きをされたり、無視をされたり。雫は見ているのが嫌だった。だから放課後、こっそり机の落書きを消すのを手伝ったことがあった。それを誰かに見られていたらしい。翌日いじめの対象は雫に移った。
 雫にとって学校は監獄のようなもの。毎日行って授業を受けて帰ってくる。一日誰とも話さずに。本当はとても寂しい。でも、雫は自分のしたことを後悔はしていない。ただただいじめがなくなればいい、そう思って毎日を過ごしている。そんな雫にとって本は逃げ場のようなものだった。読書をしているときは現実を忘れられる。

 雫は手にした題名のない本に語り掛けた。
「さあ、貴方にはどんな話が書いてあるの? 私を連れて行って!」
 胸を高鳴らせて表紙を開き、ページをめくった。静かな部屋に雫がページをめくる音だけが密やかにこだまする。雫の心はいつの間にか本の中へと飛んでいた。



           ルイダーナの章
        

           若者


 その世界はルイダーナと言った。鮮やかな花が咲き乱れ、淡い紫の空には鳥が舞い、子供たちの笑い声が絶えず響いている楽園と呼ばれた世界。すべての人が幸せそうに笑っていた。雫は思い浮かんだその光景に目を細めた。なんて美しい世界だろう。
 ルイダーナの子供たちは永遠にこの状態が続くのを願った。これ以上の幸せはないだろうということが分かっていたのだ。ところが大人たちはそうは思わなかった。もっと、もっと素晴らしくできるだろう。豊かになるだろう。便利になるだろう。そう考え、そうなることを望んだ。現在の幸せを壊していくのに気づかずに、来るかわからない幸せを追い求めた。いつしか花が咲かなくなっていたのに誰が気付いただろう。子供の笑い声が消えていったのに誰が気付いただろう。大人たちにはそれが見えなかった。おかしい。段々生活が苦しくなっていく。安心して暮らせなくなっている。そう気が付いた時には既に遅かった。
 美しかった空はどす暗い雲に覆われ、大気は汚れ、生物は死に絶え、草木は枯れて、海は黒く濁り。しかし人の欲は尽きることなくルイダーナを覆う。その醜い心は魔物を生んでしまった。
 ルイダーナは楽園とは程遠い世界となっていた。人々は自分たちの呼んだ魔物に怯え、聖地リドナに集まるようになった。そこで人々はびくびくしながら生きていた。しかし、そのリドナにも魔物は現れるようになったのだった。
 雫はその光景に目を見張った。人々の怯えた顔、顔、顔。忌々しい闇色の魔物。雫は心を痛めながらページをめくった。
 ルイダーナの人々はリドナの神殿に立てこもるようになっていた。そこから一歩も出ることは禁じられていた。「出たら命の保証はない」と神官たちに言われていた。しかし神殿にいつまでも立てこもっているだけでは何も変わらない。このままではいけないと誰もが思っていた。だが自分たちに力はない。そう思った人々は、祈りの間に集まり、占い師のレンダに尋ねた。
「いつまでこの暮らしが続くんだい? どうにかできんのか?」
 レンダ。年はおそらく100を超えているだろう。顔には深いしわがたくさん刻まれ、手足は枯れ木のように細く、髪は真っ白だが琥珀色の目の輝きは若者のようだった。彼女は手をゆっくりとあげ、
「誰か水を。美しい澄んだ水を水瓶に入れて持ってきてくれんか」
 としゃがれた声で言った。
「美しい水? そんなもの、ここにはありゃあしない。飲み水だって、魔道によって呼んだ水だ。かめいっぱいに入るものか」
「いいえ、私が入れましょう」
 大魔導士スイレンが進み出てそう言った。年は30代後半。柔らかいブロンドの髪と澄んだ瑠璃色の瞳を持った優しい面持ちの青年。しかし明らかにただの人ではない雰囲気を持つスイレンは、ゆっくりと印を結びよく通る声で言った。
「水よ。清き水よ。我が前へ現れよ」
 それは見事なものだった。空っぽだった水瓶に澄んだ水が湧き出るように溜まったのだ。
「これでいいでしょうか?」
 スイレンの問いにレンダは満足そうに頷いた。
「十分じゃ。
では始めるとしようかの。よおく見ておいで」
 雫は息を飲んでページをめくった。
 レンダは右手で何やら文字を綴り、すいっと天にかざした。するとぽうっと青白い光の玉が現れ、手の上で輝いた。光が現れたのを確認すると、レンダは次に左手で文字を綴った。そして同じように天にかざした。シュウッと奇妙な音をたてて現れたのは深い闇の渦巻く玉。レンダは今度も闇が現れたことを確認すると、二つの玉をゆっくりと胸の前で合わせた。
 パァァッ!
 白銀の光が弾けた。
 レンダの手の中には、色のない小さな玉があった。それは、そこだけ空間を切り取ったような違和感があった。
「レンダ、これは何だい?」
 人々は尋ねた。
「これは無じゃ。まあ、見ておれ」
 レンダは「無」の玉をそうっと水瓶の上に持っていくと、押し込むようにして水の中に入れた。
 キーーーン
 頭に直接響く音。水面が瞬きをするように二、三度虹色の光を発した。そして輪を描くように波打った。
 レンダはその水面に手をかざした。
「まず言っておこう。このようなことになることは、遥か昔この地に降り立った神によって予言されていたのだ。私はそれを伝え聞いていたが、とても私一人の力では止められなかった。運命に逆らうことは出来ぬのじゃ。しかし、神はこうも言ったと言われている。救う者が現れるやもしれぬと。
全てが汚れた世界となるルイダーナに、もし汚れなき清き心を持つ若者がいれば、その者たちが救ってくれるだろうと……。しかし、そのような心を持つ若者がいなければ、この世界、ルイダーナはその時が最後になるとも言うたそうな」
 その言葉に人々は息を飲んだ。雫もベッドの上でピクリと肩を震わせた。
「考えてみなされ。そなたたちの中に汚れなき心を持った者がおるか? いないじゃろうな……。欲深き大人たちにこの世界は救えぬ。若者たちにもいるか分からんのう……」
 その言葉にスイレンの足が震えた。レンダがちらりとスイレンを見る。
「こんな時代に生まれたことを悲しみもせず、精一杯に生きる者。心の清き者じゃ。スイレン、心当たりがあるようじゃのう?」
 スイレンの足はなおも震え続けている。
「いえ……別に……」
 その顔は青かった。

 スイレンの脳裏には一人の若者が浮かんでいた。彼の二番弟子のサーリーンだ。スイレンはこのサーリーンを気に入っていた。おっとりしてやさしい少年のサーリーン。しかし自分には厳しく、しっかりとした面も持ち合わせていた。彼はいつも前向きに生きようとしていた。こんな時代だからこそと懸命に魔導を学んでいた。内に秘めている力は、もしかしたらスイレンをも超えるかもしれない。しかし、彼は謙遜して、そんな自分の力に気がついていないようだった。だから二番弟子、なのだ。そんなサーリーンのことをスイレンは心の内では一番弟子としていた。そんな彼だから。サーリーンはこの世界を救う者に相応しい。しかし酷すぎる。まだサーリーンは16だ。もし世界を救うことに失敗したら、サーリーンは帰らぬ人となる。それは避けたかった。彼には生きて長く自分を支えて欲しいのだ。
「本当に何でもありません。続けて下さい」
「うむ……。
ーー私にはそのような若者たちがいるかどうかも分からぬ」
「え?!」
 人々がレンダに詰め寄る。
「待てい。今は分からぬと言うておるのじゃ。そのために占いをするのじゃ」
 その言葉に人々はホッと安堵する。雫も胸を撫で下ろした。
「ではその者が誰か占ってみようぞ」
 レンダは水面にかざしたままになっていた両手をすっと上げ、印を結ぶ。そして。
「はあっ!」
 気合いのこもった声がレンダの細い身体から発せられた。すると波打っていた水が静まり返り、人影を映し出した。
 人々は水瓶をこぞって覗き込んだ。雫はドキドキしながらページをめくる。
 たくさんの人が見守る中、その人影は10代後半の少年をかたどった。
「ラモン!」
「ラモンだ!」
「おお! ラモンじゃ!」
 ラモン。琥珀色の髪。明るい水色の大きな瞳はまだあどけなさを残しているが、強く激しい光を宿している。筋肉ががっしりとついた長身の彼に剣技で勝る者はいないだろう。8年前に魔物に殺された両親の敵をとろうと剣の腕を磨いてきたのだ。人々は知っている。毎日懸命に剣の稽古をする彼を。よく働き、決して弱音を吐かぬ彼を。そして、普段の気さくで陽気な彼を。
 次に映ったのは10代半ばの少年。
「サーリーンじゃ!」
「スイレン、あんたの弟子のサーリーンじゃろ?!」
 スイレンは暗い面持ちで頷いた。重い息が口から漏れた。
 サーリーン。背まである栗色の柔らかい髪と深い翡翠の瞳を持った少年。細い身体をしているが軟弱なわけではなく、よく鍛えられていて剣術もなかなかの腕と聞く。彼は10歳になる前からリドナ神殿にてスイレンにつき、魔導を学んでいた。6歳の時父親を病気で亡くしてから、ずっと魔導士になろうと思っていたのだ。その頃は魔導士が少なかった。それ故サーリーンの父親は魔導士になかなか診てもらえず命を落とした。ルイダーナに医者はいない。病気を治療出来るのは魔導士しかいない。サーリーンは父親のようにして死んでいく人をなくしたいと思ったのだ。現在、澄んだ心と瞳を持ったこの少年は、病人を救う優しい魔導士として知られている。
 水面には今度は10代半ばの少女が映し出された。
「ヴィリアじゃないか!」
「確かにヴィリアじゃ」
 ヴィリア。白銀の波打つ髪と海のような青い瞳を持った少女。人に指図されるのが何よりも嫌いなこの少女は自由気ままに生きてきた。「生きてるのはあたしだよ。だからあたしはあたしの好きなように生きる。死ぬ前に楽しまなきゃ損だもんね!」それが彼女の口癖だ。意思が強く、正義感ある彼女は人々から可愛がられていた。現在盗賊になるために修業中である。
 最後に映ったのは10代後半の美しい少女。
「シルフィーユ!!」
「シルフィーユもか!」
 シルフィーユ。蜜色の柔らかく長い髪。鮮やかなライトグリーンの瞳。透けるように白い肌。頬と唇は薔薇色。美しい容姿を持ったこの少女は、生まれつきの超能力者。その細い身体からは想像もつかぬような力を放つ。能力はルイダーナ1と言われている。これまでその不思議な力を人々のために使ってきた。おっとりとした雰囲気を持つ彼女だが、芯の強いさっぱりとした性格をしており、気取らないので人々から慕われている。
 シルフィーユが映し出されると、水面は二、三度白い光を放った。人々が何事かと退く。レンダが印を解いた。もう水瓶の水はただの水となっていた。
「ふう」
 レンダは酷く疲れていた。白い前髪が汗でべったりと額に張り付いている。
「さあ、若者たちを連れておいで」
 レンダはゆっくりと人々を見回して言った。その声はかすれていた。

 そこまで読んだころには、時計の針は夜中の1時を回っていた。しかし雫は本を読むのをやめようとしない。それどころかどんどん読むのに集中し、雫の意識は本の中へと入っていた。そして、雫自身も本の世界、ルイダーナへと行きつつあるのに彼女は気づかない。雫は何かに憑かれたかのように本を読み続ける。



 突然の呼び出しに四人の若者は戸惑っていた。大勢の人々に囲まれ、その中にレンダやスイレンがいるとなると、何か重大なことに違いない。しかし呼び出される理由など四人は思い当たらないのだ。
 そして。
「あんた、魔導士のサーリーンでしょ?!」
「君はヴィリアだね?」
「えーっと、貴女はシルフィーユ、だよなあ?」
「貴方はラモンですね?」
 噂をよく聞く有名な若者たちばかりである。なぜそんな中に自分が……? と互いに思っていた。
 そんな彼らの前にレンダが進み出た。
「そなたたちはルイダーナを救う若者たちだと占いにより明らかにされた。神の言葉にピタッリ当てはまるそなたたちじゃ。占いは間違ってはおらぬじゃろう。
……どうかこの世界を救ってくだされ」
「……?!」
 突然呼び出された上にそのようなことを言われた若者たちは。
(自分が救世主?! まさか!)
 信じろという方が間違いである。
「あの……でも、同じ魔導士ならスイレン様の方が……」
「ふむ。スイレンがもう少し若かったら彼だったかもしれぬ。しかし神は若者と言うた。10代の若者とな」
「はあ……でも……」
 困った顔でサーリーンはスイレンを見た。スイレンはすいと視線をそらした。
「信じられぬのは分かる。しかしやってもらわねばならぬ」
「どうやって救うってんだい?!」
 レンダの言葉にヴィリアが怒鳴った。青い瞳には苛立ちの炎が燃えている。
「それは分からぬ」
「ええ?!」
 四人の若者は同時に声を上げる。雫も心で声を上げた。
「神はそこまで言わなかった」
「でもそれじゃあ……?!」
 ラモンの戸惑う声。
「必要なものはこちらでそろえよう。そなたたちは旅支度が整い次第ここを発ちなされ」
 めちゃくちゃである。
「ふん」
 ヴィリアが目を細めた。
「あたしらに死ねといっているようなもんじゃないか。もとはあんたたちが駄目にした世だってーのにねえ。無責任な奴らだよ。もしあたしらがルイダーナを救えず、死んだらどうなるんだい?」
「そのときはルイダーナは終わりじゃ」
「それでは、俺たちが行かないと言ったら……?」
 ラモンが真っすぐにレンダの目を見つめて問う。
「……そのときもルイダーナは終わりじゃ。いずれこの神殿にも魔物が入ってくるであろう」
「ふ、あははははは」
 ヴィリアの場違いな笑い声がこだました。
「なーんだ。みんな道連れなんだ。
どうせ死ぬなら、この神殿で詩を待つよりも、もう一度ルイダーナ全土を見て死ぬ方が面白そうね。いいわ。気が変わった。行ってやるよ。
た・だ・し、これはあんたたちのために行くんじゃない。あたしはあたしのために行くんだ。間違えないでよ?」
「おお、ヴィリア!!」
 人々が目を潤ませて喜ぶ。ヴィリアは鼻をこすってそっぽを向いた。
「あんたたちのためじゃないって言ってんのに」
 そんなヴィリアを見て、サーリーンは笑みを漏らした。そして、
「僕もご一緒させていただけますか?」
 ヴィリアに微笑みかける。優しい無垢な笑顔だ。周りの空気までがすがすがしくなったよう。ヴィリアはしばしサーリーンに見とれてしまった。
「も、もちろん! 仲間は多いほうがいいもんね!」
 慌てて答える。そんなヴィリアにサーリーンはもう一度にっこりと笑った。
「おお! サーリーン!!」
 人々がまた声を上げる。そして今度はラモンとシルフィーユに視線を向ける。その視線と期待に応えるようにラモンは笑った。
「もちろん行くぜ! 父さんと母さんを殺した魔物に会えるかもしれねーもんな」
 シルフィーユも頷く。
「私も行きます」
「おおおおお!!!」
 沸き起こる歓声。レンダはほっと息をついた。スイレンは諦めたように俯いていた。
「ではこの水で清めなされ」
 レンダは占いをした水をガラスのグラスに注がせて四人の若者に渡した。
「さあ」
 四人は言われるままに口へ運ぶ。冷たい水が喉を潤す。
「皆も飲むがよい」
 人々はレンダの言葉にわっと声を上げ、我先にと水を汲んで飲み干した。
「さて、いつここを出るのじゃ?」
 レンダの問いに、
「早いほうがいいですね」
 とサーリーン。
「明日の昼なんてどうだ?」
 とラモン。
「そうしましょう」 
 シルフィーユが穏やかに了承する。
「それまでに別れを済まして……」
 どこに集まろうか、とヴィリアは考える。
「旅に出る前に祈りをささげねばならぬ。神殿の玉の間に来なされ。
今日はゆっくりと休むのじゃぞ」
「はい」
 四人は緊張した面持ちで頷いた。雫も四人と同じように緊張していた。


***


 「ルイダーナはどうなるかのう……。今度ばかりは私の力も役に立たぬ。酷だが彼らには頑張ってもらわねば……。あとは天に任せるしかないわ」
 誰もいなくなった祈りの間でレンダはつぶやいた。その姿はただの老婆に等しかった。


                                  続く



 ここまで読んでくださりありがとうございました。次はこの続きになるかわかりませんが(短編になるかもです)、この小説はまだまだ続くと思われます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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 それではまた!               天音花香

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