忍者ブログ
天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
カレンダー
09 2017/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
リンク
フリーエリア
最新コメント
[10/10 ブランド激安市場N級品専門店]
[09/22 プラダバッグコピー]
[08/15 激安ブランド館N品激安専門店]
[06/26 カルティエ 結婚指輪 ラニエール]
[08/05 天音花香]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
天音花香
HP:
性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





ランキングに参加しております。よろしければ下のバナーをクリックしてください!


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

ブログランキングのブログん家


ネット小説情報局


オンライン小説検索・小説の匣


文芸Webサーチ


カテゴリ別オンライン小説ランキング

オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなびtitle="オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび"width="200"height="40"
border="0">



NEWVEL2


『小説家になろう』


『MEGURI-NET』


『NEWVEL』





別名で小説を出版しております。

クリックで救える命がある。
バーコード
ブログ内検索
P R
アクセス解析
フリーエリア
フリーエリア
[ 10 ] [ 11 ] [ 12 ] [ 13 ] [ 14 ] [ 15 ] [ 16 ] [ 17 ] [ 18 ] [ 19 ] [ 20 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

    「治雪の場合」5


「それ、癖?」
 突然後ろから声をかけられ、孝子は自分が腕を無意識にさすっていたことに気付き、首をかしげる。木々はすっかり葉を落とし、重い曇り空が多くなった十一月だが、まだ寒さに凍えるほどではない。
「んー? そうかしら?」
「よくさすってるよ? 痛いの?」
 声の主、佐々木は無邪気な笑顔を浮かべて聞いてくる。
「痛いわけじゃ」
 その笑顔に孝子は自然と治雪を思い出した。 
 あの出来事の翌日、いつもと変わらず笑顔で声をかけてきた治雪。自分で思っていたよりも、ずっと緊張していた孝子は、そんな治雪に心底ほっとしたのを覚えている。
 それ以後も、治雪は変わらず、いい友人でいてくれている。
 週に何回かは放課後の教室で一緒に勉強をしたり、お互いに愚痴をこぼしては励ましあったりする日々が続いていて、ともすれば告白されたことなど夢だったかのような気さえする。
 ただ一つ、変わったことがある。孝子は母親のことを治雪に話すようになった。少しずつ。
 長年一人で抱えてきた母への思い。母の面倒を見るのが苦痛と言うわけではない。
 ただ。
「安心したよ。堀内さんもお母さんの前では子供でいたかったんだね」
 孝子のとぎれとぎれの思いを聞いて、治雪はそう笑った。
 図星だった。
 もっと自分を見てかまって欲しいという願いは、叶うものではないと孝子は解ってはいた。ただ、心の底ではそれを悲しむ自分がいたのだ。
 治雪は、孝子が同情を嫌うのを知っていて、そう言って笑ったのだ。
「……いい人よね。名前の通りだわ」
 思わずくすりと笑った孝子に、佐々木は怪訝そうな顔をした。
「堀内さん?」
「あ、ごめんなさい。痛いわけじゃないから大丈夫。
それより……春日君は?」
 治雪からのいつもの明るい挨拶を今日は聞いていない。そう、あの挨拶を聞かなかったから、なんとなく寂しく思っていたのだ。自分でも変な感じだ。
「あー、あいつ、風邪ひいたみたいよ?」
「え? 風邪?」



 「ここだよ」
 佐々木はブラウン系に統一してある家の前で立ち止まった。表札には「春日」
と書いてある。
「佐々木君は寄らないの?」
「俺がいないほうが、あいつも喜ぶと思う」
 佐々木は悪戯っぽい光を目に宿して笑った。
「わざわざありがとう、佐々木君」
 佐々木は返事の代わりに手を振って歩き出した。
 孝子は男子の家を訪ねるのは初めてだ。自分でも何で来ようと思ったか分からない。でも、とにかく。
 孝子は制服の襟を正すとチャイムを押した。



 案内された二階の治雪の部屋へ入ると、治雪は寝ていた。大分落ち着いたらしく安らかな寝息をたてている。
 しかし。なんと散らかった部屋なのだろう。
 孝子は窓を開けると、散乱していた教科書やその他もろもろを片付け始めた。男子の部屋って、みんなこうなんだろうか。片付けながら、孝子は新鮮な気分を味わっていた。



 寒い。それに妙な音がする。

「母さん、寒いよ。窓、勝手に開けんなよ」
 寝返りを打ち、毛布を上に引っ張り上げながら、治雪は面倒くさげに口を動かす。
 窓を閉める音とくすくすと言う声がした。
(誰? 堀内さんの声に似ている)
「起こしてしまったみたいね。ごめんなさい。でも換気をしようと思って……」
 聞きなれた落ち着いた声。
 !? 間違いない。
 治雪はガバリと身を起こした。
「堀内さん、どうして?!」
「風邪だって聞いて。林檎を買ってきたの。食べない?」
「あ、う、うん」
 辺りを見回すと、随分片付いている。自分の汚い部屋を、そして寝顔を見られたかと思うと恥ずかしくて、自然と顔が赤くなる。
「どうしたの? 大丈夫? 顔が赤いわ。私のことは気にしないで、ちゃんと毛布をかぶって」
「う、うん。ありがとう」
 しゃりしゃりと孝子が林檎の皮をむく、耳に心地よい音とともに、甘酸っぱい香りが部屋中に漂う。孝子は慣れた手つきで皮をむくと、治雪に差し出した。
「ありがとう」
 治雪はおずおずと手を出し、受け取った。なんとも不思議な感じだ。孝子が自分の家でわざわざ林檎までむいてくれるなんて。
 今後一生食べられないかもしれないと思うと、この一切れが貴重なものに思えてくる。
 なかなか食べようとしない治雪を見て、孝子は林檎をむく手を止めた。
「どうかしたの? 林檎が嫌いだとは聞かなかったけれど?」
「ち、違うんだ」
 治雪はますます赤くなって否定する。
「ただ、もったいなくて……」
 孝子は一瞬不思議そうな顔をして、次に笑い出した。治雪はうつむいて遠慮がちに林檎をかじっている。
 孝子は不思議な感動を覚えていた。
 自分の行動がこんなにも相手に影響を与えるなんて! この男子は、本当に自分のことが好きなのだ。
 なんだかくすぐったかった。
 孝子がいつまでも笑っているので、治雪はふてくされて、林檎一切れを食べ終えると毛布を頭までかぶってしまった。風邪のせいか、自宅のせいか、治雪はいつもにも増して子供っぽい。
「まだ、むいてるのに」
 孝子が言うと治雪は顔を出して、手を差し出した。むいた林檎をのせてやると、やはり大切そうに食べている。なんとも可愛い。
「まだ、食べれる?」
 孝子が聞くと、治雪はコクコクと頷いた。
 孝子が剥く林檎は味まで違う感じがする。食べられるときに食べておかなければ。
 林檎を一つ剥き終えると孝子は鞄からルーズリーフとプリントを取り出した。
「これ、今日の授業の分、はい」
「わざわざ持ってきてくれたの? ありがとう」
 見ると、孝子らしい癖のない、丁寧な字が並んでいる。孝子の優しさが嬉しかった。
「長居して、身体にさわると悪いし、そろそろ帰るわね」
 孝子がそう言って立ちあがると、ふわりとあのシャンプーの香りがした。
「っ」
「……何? どうしたの?」
 突然治雪に手を掴まれて、孝子は怪訝そうな顔をする。熱がまた上がってきたのか、治雪の手はひどく熱い。
 治雪は言われて、はっとしたように、とっさに掴んだ手を離す。
「あ、いや。わざわざ来てくれてありがとう。部屋まで片付けてくれて……。
気をつけて帰って。それから、帰ったらうがいをしなよ? うつるといけないから」
 孝子はその言葉ににっこり微笑んだ。そして、治雪の額に手を当てる。
「自分を心配しなさいよ。ほら、ちゃんと寝てないから、熱が上がってきたみたいよ」
 そう言って治雪をベッドに寝かして、毛布をかける。
「受験生なんだから早く治さないとね。
じゃあ、お大事に」
 孝子はドアを閉めるときにそう言って部屋を出て行った。孝子が階段を下りる音と、母親が何かを言う声が小さく聞こえてくる。治雪は自分の額に手を当てた。
 冷たくて気持ちよかった孝子の手。
 たまには風邪もいいかもな、なんて思いながら、治雪は目を閉じた。
 林檎の優しい香りと、孝子の髪の爽やかな香りに包まれ、治雪はほどなく眠りへ落ちていった。


 十二月に入り、寒さも身にしみるようになってきた。
 受験ムードも佳境に入りつつあるわけだが、そんなときに風邪をひいていた治雪は、孝子のお見舞いが効いたのか、二日後元気になって教室に戻ってきた。
「馬鹿でも風邪はひくんだな」
 佐々木に軽口を叩かれ、
「うるせーな」
と拳で応えつつも、治雪の表情は明るかった。
「佐々木、お前は馬鹿だから風邪ひかねーんだろ。お前もたまには風邪をひくんだな。いい思いができるかもしれないぞ?」
「ほー、そうか。いい思いができたんだな」
 にやにやと笑う佐々木に、何も後ろめたいことなどないのに、真っ赤になりながら、
「ばっ、馬鹿いうなよ! 何にもねーよ!」
 と怒鳴っていると、
「ふふ、元気そうな声。全快? 春日君」
 後ろから、最も聞きたい声が聞こえてきた。
「おかげさまで。堀内さんの林檎が効いたのかな?」
 笑顔で治雪が答えると、
「本当にそうなら嬉しいわ」
 と言って孝子はにっこり笑った。そして、こほんと咳き込んだ。
「堀内さん?」
 治雪はそれを見逃さなかった。心配して声をかける。
「大丈夫、ちょっと喉の調子がよくないだけだから」
 また、にっこり笑って席に戻っていく彼女を止めることはできなかった。
 しかし、その二日後、孝子は学校に来なかった。
(俺の、風邪だよな、多分)
 そう考えて、申し訳ない気持ちになっていると、
「誰かさんは、堀内さんの受験勉強を邪魔しちゃったみたいだな」
 と佐々木が追い討ちをかけてきた。
「だよなー、大事な時期なのに」
 佐々木の言葉にしょんぼりしながら、頷く治雪。
「ま、インフルエンザじゃないだけましさ。いーじゃんよ、これで、お見舞い返しができるぜ。いってらっしゃい」
「そうか! その手があったか! さんきゅ、佐々木」
 授業の終わりを告げるチャイムと同時に、治雪は職員室の満のところに向かい、孝子の家の住所を聞きだした。
「お前が見舞いに行ってくれるのは有難いな。実は、先日堀内の母親は入院してな。堀内もさすがに病気のときに一人はつらいだろう。
ただ……、分っているな? 俺はお前を信用している。変なことは考えるなよ?」
 満の言葉に、
「当たり前じゃないですか!!」
と、返し、治雪は必要になる可能性のものを全部薬局で調達すると、孝子の家へ走るようにして向かった。


                「治雪の場合」6に続く

            感想やコメントを頂けると喜びます。

アルファポリス「第3回青春小説大賞」(開催期間は2010年11月1日~2010年11月末日)にエントリーしています。

よろしければ、
のバナーをクリックしてくださると嬉しいです。(このバナーは「高校生日記」ようです)

拍手[0回]

PR
Comment
Name
Title
Font Color
Mail
URL
Comment
Password
Trackback
Trackback URL:

Copyright © 天音花香の小説ブログ All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog 
忍者ブログ [PR]