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小説をおいております。 『いざ、出陣 恋戦』シリーズの二次創作、『神の盾レギオン 獅子の伝説』の二次創作、そして、高校生の時に書いた読まれることを前提にした日記と、オリジナル小説を二編のみおいております。
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プロフィール
HN:
天音 花香
性別:
女性
職業:
主婦業メイン
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、結婚後落ち着いてから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。

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こんばんは、天音です。

前回は登場人物だけで終わったので、今回は少しだけ進まそうかと思いまして……。

楽しんでいただければ幸いです。


登場人物紹介はこちらから


ココから小説


「ソリスさまー」
 はあはあ。
 マーニ・ルアザンは奥宮の中を走っていた。ここを探すのは何度目だろう。
 場内の他も全て探した。ソリスのよく使っている抜け穴なるものの中もくぐって……。
 おかげで体中、葉っぱまみれだ。
「ソリスさまー」
 ちょっと目を離したらこれだ。ソリスさまらしいといえば、らしいのだが、従者のわたしの胃は痛まない時がない。
 城内であれば、女性の多い奥宮が一番ソリスさまのいる可能性が高いはずだが、いったいどこへ行ったのだろう。城外に出ている可能性もあるな。娼館にでも行っているのかもしれない。
「ソリスさまー」
 外を探すか……。
 マーニが嘆息したときだった。
「うるさいやつだな。俺はさっきからここにいる」
 頭上から声。見上げると、木の上に一人の若者がいた。
 ターバンから出ているのは赤い髪。琥珀色をした瞳は退屈そうな光を宿している。エル・ソリス・ベレヌス・エル・カルー国の第二王子、その人だった。
「ソリスさま、あなたは……」
 わたしの苦労も知らずに…っ。
「どこかへ行くときには、一言わたしに断ってからにして下さい!」
 あなたが動くと、必ずやっかいなことが起こりますから。
「心配したのか?」
「え? え、ええ」
 違う心配ですけど……。
「そりゃ悪かったな」
 素直なソリスに、マーニは逆に不安になった。
「ソリスさま?」
「ただ、退屈なんだ」
 そう言ったソリスの目は少し寂しげだった。
 先日の事件で、ソリスは命を狙われた。
 その首謀者が第一王子エル・エハル・ベレヌスだったにも関わらず、エハルは厳罰を免れ、実行者だけが罪に問われただけで、逆に、でくのぼうと影で呼ばれていたエハルの株は上がったのだった。
 問題を起こすぐらいがちょうどいい。そこがエル・カルー国なのである。
 アリク王のお気に入りであるソリスが時期王としては有力候補だったのだが、分からなくなったと家臣たちは囁いている始末。
 能無し、レギオン(動かないという揶揄)と言われていたエハルだが、やさしい面差しをした、学者肌の、アリク王の王子としては常識人だとも思われていた。そんな実の兄が自分の命を狙う首謀者だと解ったとき、ソリスはどう思ったのだろう。
 マーニの茶色い瞳に宿った光に気づいたのか、ソリスは少し笑ってみせた。
「おれは別に王座なんて興味ないんだけどな。
でも、おれが兄上を追い詰めていたんだろうなあ」
 ソリスは独り言のように言って、遠くを見た。
 マーニはかける言葉がなかった。
「何、しけた面してんだよ。
そうだ、またどっか行くか! 次は、そうだな……マーニはどこがいい?」
「……国外はダメです。でも、そうですね、いい店を見つけたんですよ。そこに行きますか?」
「お? いいのか? まだ昼間だぞ?」
「娼館じゃありませんよ? 酒屋です」
「酒! いいのか?」
「特別です。今日だけですよ?」
 ソリスの瞳にやっと光が戻る。それを見て、マーニは笑うことができた。
「おしっ!」
 百九十センチ以上もある巨体が、身軽な身のこなしで枝から飛び降りた。


 「おや、マーニじゃないか。いらっしゃい」
 体格のいい、人懐っこい顔をした女性、歳は四十を過ぎたぐらいだろうか――酒屋の女将がマーニを認めて相好を崩す。
「こんにちは」
「おや、隣にいるのは、ソリス殿下ではないのかい?」
「ええ」
「こんにちは、おばさん」
 ソリスの言葉に、
「レディーにおばさん、はないんじゃないかい?」
と怒った顔をしてみせる。
「えっと……」
「ニールと呼んどくれ」
「じゃあ、ニール、ええっと……」
 ソリスが珍しくマーニの顔色を窺うように見る。
「いいですよ、王子。何でも飲んで」
「王子が財布を気にしてちゃしょうがないね。今日はあたしのおごりだよ。何でも飲んどくれ」
 ニールが笑って言った。
「おばさん、話わかるな! っと、ニールだった」
「その代わり、これからもうちで飲んどくれよ」
「おう! じゃ、ウイスキーくれ!」
 ソリスは上機嫌で酒を飲みだした。
 そんなソリスにマーニも破顔した。そして、そっとニールに耳打ちする。
「ニール、リライザはいる?」
「いるよ。呼ぶかい?」
「お願いします」
「リライザー」
「はーい。
あら、マーニさん」
 にっこり笑って表れたのは、色白で華奢な美しい娘だった。緩く波打つ髪は金色で、澄んだ瞳は海のような青色をしていた。ニールの義娘リライザは今はなき、イスファタル人だった。
「マ、マーニ! 誰だ、その娘は!」
 リライザを見たソリスが声をあげる。
「彼女はリライザ。ニールの義娘です」
 マーニの言葉に、リライザは、
「初めまして、ソリス殿下」
とソリスに微笑んだ。辺りが明るくなるような笑顔にソリスは首をかしげる。なぜか知っているような……。
「あ!」
 そうか、リアファーナ王女に似ているのだ。
 思わずマーニを振り返る。
「飲みましょう」
「ああ」
 主人思いの従者に少し感謝して、ソリスはグラスをあおった。
 
 それから、数時間。
 マーニの頬はほんのり赤くなっていた。ほどよく良いが回っている。
 ソリスさまは楽しそうだし、何事も起こらないし、毎日がこうであればいい。
 そう思いながら、カクテルをまた一口。
 そのときだった。
「ルアザン大将! お探ししましたぞ! こんなところに昼間から……。ソ、ソリス殿下まで……」
 その声にマーニはギクリとする。
 ああ、やはり平和は続かない。今度は何だろう。
「何かあったのか?」
「は。ルアザン大将。アリク王がお呼びです」
「……っ」
 な、何かしただろうか。心当たりはない。ソリスさまだって、最近は何も事を起こされていない、はず……。
 胃のあたりがしくしく痛み出す。
「ソリス殿下もか?」
「いえ、ルアザン大将だけであります」
「そ、そうか……。今行く。
ニール、ソリスさまを頼みます」
「はいよ」
「まあ、頑張れや」
 従者の心配をよそに、上機嫌なソリスは笑いながらマーニの背を叩いた。
 何が頑張れだ……。きっとソリスさま繋がりのことに違いないのに……。
「おう、そうだ。兵士、一人残れ」
 ソリスが二人いた兵士の一人を呼び止める。
「ソリスさま?」
「王子一人じゃ危ないだろう。マーニ、お前の代わりだ」
「……はあ……」
 なんとなくソリスさまの目が光ったのは気のせいだろうか?
 まあ、確かに、王子一人にするわけにもいかない。
「いいですか、くれぐれも、事を起こさないで下さいよ」
「うん、分かった」
 あなたの分かったは当てにならないんです。
「殿下を頼んだぞ」
 兵士に命じて、ソリスに一礼すると、マーニは足取りも重く城へと戻った。

                   2に続く……



アルファポリス「第2回青春小説大賞」にエントリーしています。
「高校生日記」「空の時間」「体育祭(こいまつり)」
それぞれ作品ごとにエントリーしていますので、
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11月からの一ヶ月間です。よろしくお願いします。 (2009年11月1日~2009年11月末日)

拍手[0回]

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こんばんは、天音です。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)
登場人物は左のリンクにある「登場人物」を参照されてください。

異例の早さの更新ですが、
今回から先はまだ頭の中をぐるぐるしている状態なので、


更新が遅くなります。
次回はたぶん、サイトの小説をこちらに移す作業になるかと……。

コメントいただければ喜びます。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。


ココから小説



「ただいま参りました」
 王の間へ通されたマーニが、一礼して、部屋に入ると、先客がいた。
 マーニより少し年下であろうか? 若者が跪いていた。マーニもその若者に習い、跪く。
 いったい何の用であろう・・・・・・。ハシム殿下の一件は解決したし……。
 胃が、痛む。
「よい、ルアザン大将、フランドル少将、面をあげよ」
「は」
 マーニとフランドル少将と呼ばれた若者の声が重なった。
 アリク王は笑顔だが、この狸おやじは何を考えているかわからない。
 マーニは黙って王の言葉を待つ。
「……今日、二人を呼んだのは、だな。
実は、ソリスの従者についてなのだが……」
 アリク王の言葉にマーニがぴくりと肩を震わす。
 やはり覚えがない。自分には。
 ということは、王子が何かしたとしか思えないのだが……。最近は大人しくしていた、はず……。
 アリク王の顔を注意深く見て探ってみるが、アリク王は柔和な笑みを浮かべているだけである。
「……」
「ルアザン大将、そう緊張せずともよい。ソリスは何もしておらぬし、そなたに落ち度もない」
 アリクの言葉に、ほっとマーニは胸を撫で下ろした。と同時に、疑問が湧き上がる。では、なぜ自分は呼ばれたのだろう?
「ただ……、まあ、ソリスも今年で19になる。そろそろ妃候補が出てきてもいい頃だと思ってな。そうは思わぬか?」
「はあ・・・・・・まあ・・・・・・そうですね」
 アリク王の意図を量りかねてマーニは歯切れの悪い返事を返した。
「ルアザン大将は大変優秀である。だが、いささかソリスと仲が良すぎる気がしてな。父親としては少し心配をしているのだよ」
(な!?)
「恐れながら、ソリス殿下は私を女性だと思っていない様子。そのようなご心配は無用にございます!
女だからという理由で、ソリス殿下の従者を辞めさせられるというのでしたら、私は納得がいきません!」
 エル・カルーの女は、女であることで侮辱されることを極度に嫌う。無論、マーニも例外でない。
 怒りに肩を震わせ、思わずマーニは口にしていた。
「ふうむ。
……しかし、まあ、ソリスの性格からすると、そのようなことにならないとも限らないと思わぬか?
何、これは降格ではない。従者を交換しようと思ってな」
「交換?」
「そうだ。フランドル少将はミレトスの従者でな」
「ミレトス様の?」
 ミレトス殿下。ソリスの弟で、確か12歳になったばかりのはずだ。
「そうだ。このフランドル少将は、大変優秀な若者でな。
フランドル少将、ルアザン大将に挨拶を」
「アルベルト・フランドルと申します、マーニ・ルアザン大将。大将の噂は私の耳にも聞き及んでおります。どうか今後ともよろしくお願いいたします」
 黒く涼しい眼が、まっすぐにマーニの目を捕らえた。ターバンから出ている髪も闇のように黒かった。
 黒?
「フランドル少将は、リュカーンの母親を持つゆえ、髪も、目も黒い。しかし、そんなことはどうでもよいことだ。重要なことは、優秀であるかどうか。そうであろう? ルアザン大将」
 マーニの反応に気づいたのか、アリク王は言った。
「は、もちろんにございます」
「アルベルト・フランドル少将。ご丁寧な挨拶痛みいります。
私はマーニ・ルアザン。こちらこそよろしくお願いいたします」
 アルベルトに挨拶を返したところで、マーニは何か重要なことを忘れているような気がして、はて、と思う。その時だ。
「父上~」
 元気な声が響き、一人の少年がアリク王に抱きついた。赤い髪に琥珀色の瞳。背はマーニより少し低いぐらいだろうか。悪戯っぽい光を宿した瞳はソリスに少し似ていた。
「おおお、ミレトス。よく来た」
 アリク王が目を細める。
「ミレトス様。王にまずご挨拶です」
アルベルトがミレトスにあわてて声をかけた。
「はいはい、アルベルトはいちいち煩いんだから」
 口でいいながら、ミレトスは王に一度跪いた。
「よいよい」
 アリク王は笑っている。
 マーニは隣にいる少年に同情をした。ミレトス殿下も手のかかる王子のようだ。
「ちょうどよかった。ルアザン大将だ」
「マーニだね? わーい! これからよろしくね!」
 無邪気に笑ったミレトスに、はっとマーニは我に返った。
 そ、そうだった。わたしは何をのん気に挨拶などをしているのだろう。
 王は、「従者を交換する」と確かに言った。
「いえ、わ、私は……」
 慌てて三人を見回す。同情の光を宿した黒い瞳、期待に満ちた琥珀色の瞳。そして、笑顔だが、目は笑っていないアリク王がいた。
 ハシム殿下の件で、マーニはソリスに一生仕えようと心に決めた。その直後だというのに……。
「・・・・・・。
よ、よろしくお願いいたします」


「アルベルト殿。えっと、ですね。ソリスさまは、まあ、いろいろ問題のあるといったら失礼ですが・・・・・・、たぶん、ミレトスさまよりももっと手のかかるお方だと思いますので……苦労をされるとは思いますが、頑張ってください。何かございましたら、なんでも私に訊いてくださって構いませんので……」
 王の間を後にしてすぐに、マーニはアルベルトに声をかけた。
 優秀だとは言え、自分より4つも年下のこの少年に、あの馬鹿王子の世話ができるのかと、かなり不安を覚えながらも、マーニはそう言うことしかできなかった。
 ソリスさまの従者のお役目御免。かつてだったら、喜ばしいことだったのかもしれない。だが、マーニの心は自分で思う以上に沈んでいた。
 ソリスさま……。
「ミレトスさまも、……元気すぎる王子でいらっしゃいますので、マーニ殿、くれぐれもよろしくお願いいたします」
(元気すぎる……なるほど……上手い表現をされる)
「では、私はソリス殿下にご挨拶を……」
 そういって、足早に去ろうとするアルベルトの腕をマーニは掴んだ。
「待ってください。ソリスさまには私から……。最後にいろいろ言うこともありますし……」
 有無を言わせず、アルベルトを止めることが出来たものの、マーニは途方にくれた。
 ソリスさまになんと説明したらいいのやら……。
 やはり、マーニの胃痛は治まらない。

                    3へ続く……


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こんばんは、天音です。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)
登場人物は左のリンクにある「登場人物」を参照されてください。

えっと、順がよくわからないことになってまして、
1を読んだ後、バックをしたら2に行くようになっているようです。
読みにくくてすみません。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


コメントいただければ喜びます。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。


ココから小説




「よお、遅かったな」
 聞きなれた声にマーニは顔を上げる。
「ソリス、さま……」
 かなり自分が動揺していたことにマーニは気づく。ソリスの気配に気づかないなんて。否、ソリスが気配を消していたのだろうか? どちらもだろうと思う。
「今、ニールの店に迎えに行こうと……」
 ソリスの目をまともに見ることができず、視線をうろうろさせながらマーニは言った。いつの間にか城門まで来ていたことに気づき、再度驚く。
「城門……」
「? なんだ、大丈夫か? 」
「……ソリスさま、なんでこんなところに?」
「は?」
「いえ、今頃リライザを口説いているかと……」
 ぼんやりと本音を言ってしまい、しまった……とマーニは口を噤む。
「……。ほお」
「いえ、あの……」
「……リライザは可愛かったな、確かに。ただ……リアファーナ王女に似ているからという理由で口説くのはどうかと思ってな……」
 マーニはソリスをちょっと見直した。
「そう、ですか……」
「意外そうだな」
「え? ええ、まあ。
それにしてもどうしてここへ?」
「はあ? 王子が城に戻ってどこが悪りぃんだ?」
「いえ、てっきり娼館へ泊まってこられるかと……」
 しまった。また失言を……。
「ほお……。……まあ、そう思われても仕方ないのは仕方ない、が」
 ソリスはじっとマーニを見る。
「お前、大丈夫か? ぼんやりしてるぞ?」
 マーニは黙ってしまった。
 正直、大丈夫ではなかった。
「……で。
本当なのか?」
 ソリスの声が急に真剣さを帯びる。
「え?」
「従者の件だよ」
「!?」
 マーニは目を見開いてソリスを見た。
「なぜ……」
「兵士から無理やり訊いた」
 だから一人残したのか……。
「……どこまで、聞かれたのですか?」
「あ? おれが聞いたのは、ミレトスの従者が既に呼ばれていて、噂ではミレトスの従者とおれの従者を交換するって」
 ソリスはまっすぐにマーニを見て言った。
「それで、どうだったんだ、実際は? ……いや、なんて答えたんだ、マーニは」
「……」
 マーニは耐え切れずに目をそらした。そんなマーニの顎をソリスは掴む。
「おい、なんで目をそらすんだ? 答えろよ」
「……ソリスさまの言った通りです。従者を交換すると、言われ……わ、わたしは……断ることができませんでした」
 ソリスはマーニから手を離した。
「……そうか」
「……はい……」
「……ま、お前には世話になったな。迷惑ばかりかけちまった気がする。悪かったな。マーニもほっとしただろ? よかったな。
ミレトスを頼む」
 ソリスは手を頭の後ろで組み、そっぽを向いてそう言った。
「……っ」
 ずきりと胸が痛んだ。
 そうか、ソリスさまは、従者が変わっても、何とも……思わないんだ……。
 不覚にも涙がたまってきた。
 なんてわたしは不運なんだろう。ソリスさまに一生仕えようと思った。そう思えたときに、こんな……。
「?!」
 マーニはいきなりソリスに胸ぐらをつかまれ、驚いてソリスを見た。たまっていた涙がこぼれる。
「く、……苦し……」
 ソリスはマーニを壁に打ち付けた。ソリスのまっすぐな視線がマーニを捕らえていた。
「痛っ! ソリス……さま……!?」
「おれがそう言うと思ったか? マーニ、お前はおれの従者だよな? おれを裏切るのか?! おれは認めねえからな!」
 嬉しい。嬉しい言葉。だが……。
「っ……エル・カルーにいる限りはアリク王の命令は絶対です!」
「親父がそんなに怖いかよ!? くそっ! もうお前なんかしらん! ミレトスのところでもどこでも行っちまえ!」
 ソリスは城とは反対の方へ走っていってしまった。
「ははっ」
 以前は早く従者を辞めたいとばかり思っていた。
 ソリスさまに振り回され、後始末ばかりしなければいけなかった毎日。でも、本当に従者を辞める日が来るなんて……。
 ローエングリン伯爵のときと同じ。大切なものは失ってから気づく。
「わたしは馬鹿だ……」
 ソリスに恋愛感情があるわけではない。ただ、ソリスが主で、誇らしいと思えた。仕えている自分は幸せだと思えた。思えたところだったのに……。

                       4に続く……


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こんばんは、天音です。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)
登場人物は左のリンクにある「登場人物」を参照されてください。

えっと、お手数ですが、タイトルにある数字の順番に読んでください。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


コメントいただければ喜びます。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。


ココから小説


「ねえ、マーニ。どうして勉強なんかしなきゃいけないの? 兄上もしてたの?」
 無理やり机につかされ、勉強をしながら、ミレトスがマーニに問う。むくれた顔が幼さを際立たせる。
「ソリスさまのようにならないためにも勉強は必要なのですよ」
 ソリスが居れば怒られそうなことをマーニはさらりと言って、中断された各国の地理の授業を再開させる。
「むぅ~、僕は兄上のようになりたい~!」
 ソリスはどうやらミレトスにとって憧れのようだった。
「……」
 ただでさえ、ソリスとその姉、レイミアは破天荒な性格でマーニをはらはらさせている。その上、ミレトスまで加わったら……と思うと、マーニは頭痛がした。
「いいですか、ソリスさまを目標にしてはいけません。ソリスさまよりさらに優れた王子になれるように努力するんです」
 もっともらしいことを言って見せるが、ミレトスはふくれ面のままであった。
「ねえ、剣技の授業は?」
「この問題が解ければやりましょう」
「ほんと?」
 目を輝かせるミレトスに、マーニはにっこり笑い、
「ほんとです。さあ、続きを……」
と言って、授業のおさらいのミニ試験をミレトスに渡す。そして、時計を見る。
 もうそろそろか……。
 マーニの予想通り、ミレトスの部屋をノックする音がした。
「ルアザン大将、ソリスさまが見当たらないのですが……」
 息をきらしてアルベルトが入ってくる。
「アルベルト、また兄上いなくなっちゃったの?」
 呆れ顔でミレトスが言うと、アルベルトはむっとした顔をして、ミレトスを睨んだ。
「奥宮は……」
「探しました」
 間髪入れずアルベルトが答える。
「例の抜け穴もですか?」
「はい」
「ねえ、抜け穴って何? 僕にも教えてよ!」
 ミレトスがマーニの短衣の裾を引っ張るが、マーニはそれを無視する。
「では……。城下町の娼館を当たってみてください」
「全てですか?」
 げんなりした顔で、アルベルトが訊く。
「ええ……。どこにいるかわからないときはそうするしか……」
 マーニは気の毒そうに答えた。そんな二人に、
「ねえ、娼館ってなあに?」
とミレトスが言った。
 マーニとアルベルトは顔を見合わせる。
「ええっと……。ミレトスさまは知らなくていいところです」
 マーニが視線を泳がせると、
「なんで?」
とミレトスは突っ込む。
「大人になったら教えてあげます」
「大人っていつ?」
「……」
 ため息をつき、マーニとアルベルトはまた顔を見合わせる。
 ソリスさま……。あなたの弟君がこんな質問をするのはあなたのせいですよ……。
「今でないことは確かです」
 マーニがきっぱりと言い切ると、アルベルトも隣で頷いた。
「なんで~?」
「なんででもです」
 相手にしないマーニに、ミレトスは頬を膨らませるが、マーニはとりあわなかった。
「……それにしても……。マーニ殿のときも、ソリス殿下は……その……こんな感じだったのでしょうか……?」
 いささか自信をなくしたらしく、うなだれながらアルベルトが言った。
 昔の自分を見ているようで、なんだか哀れに思い、
「ええ、わたしのときもそうでしたよ。ソリスさまは神出鬼没。そして都合のいいことは聞きますが、都合の悪いことは聞こえない耳をお持ちです。人の言うことを簡単に聴くタイプではありません。だから、アルベルト殿が悪いのではありませんよ。わたしも手を焼いていました」
と答えた。
「そうですか……」
 アルベルトは大きなため息をついた。
「……では、わたしはこれで……」
 一礼をして、出て行こうとするアルベルトに、
「頑張ってね、アルベルト」
 と、他人事のようにミレトスが声をかける。
 一瞬、すうっとそばまった目がミレトスに向けられたのは、見間違いではないだろう。
「さあ、ミレトスさまは勉強を頑張りましょう」
 マーニがぴしゃりと言うと、ミレトスはまた頬を膨らませた。
 それにしても……。
 ミレトスはわがままだが、ソリスを相手するよりも何倍も楽だとマーニは思う。望んでいた平穏な暮らし。
 これでよかったのだろうか。
 アリク王に命じられた日から、ソリスには会っていない。
「……」
 あの日のソリスの目が忘れられない。
「マーニ?」
 ソリスと同じ琥珀色の目がマーニを見上げていた。
「マーニ、時々、とても悲しそう」
「え?」
 そんなことないですよ、と答えようとしたが、声が出なかった。
「……」
「マーニは、僕の従者になったの嫌なの?」
 ミレトスが不安そうな目をして訊いてきた。
「そんなことはありませんよ」
 違うんです。ミレトスさまの従者になったのが嫌なわけではなく、ソリスさまの従者でいたかったんです。
 そう言ってもこの少年は理解できないに違いない。
「マーニ。アルベルトは。アルベルトはどうなのかな。アルベルトも兄上の従者の方が、いいのか、な……」
「それは間違いなく違うと思います」
 間髪おかずにマーニが答えると、
「そ、そっか……。父上が言ったからだよね」
 ミレトスはちょっと安心したように微笑んだ。
「その通りです」
「あ、別に、アルベルトの方がいいって訳じゃないんだよ? マーニは兄上の従者で、僕、凄く尊敬していて、そんな人が従者になってくれて、凄く嬉しいんだ。でも、でもね、アルベルトも僕、好きなんだ」
 必死に言葉を紡ぐミレトスに、
「ええ、分りますよ」
とマーニは笑ってミレトスを見つめる。
「でもね、アルベルトは、僕が何かすると、いつも怒ってばかりで……。アルベルトは僕のことが嫌いなのかなって……」
「それは違います。ミレトスさまが心配だからですよ、きっと」
 マーニはミレトスの頭をなでて、優しく言った。
「心配だと怒るの?」
「ええ。怒るというのはエネルギーがいるんです。どうでもいい人には怒る気もしませんよ」
「ならいいんだけど……」
「さ、勉強の続きです」
「はあい」
 顔をしかめながらも、鉛筆を動かしだしたミレトスをマーニは目を細めて見た。
 ソリスさまよりも何倍も素直だ。
 だが。
 どこかこの状況は歪に思えた。
 いつも行方知れずになるソリスを追いかけていたのは自分で、この幼いミレトスのそばにいたのはアルベルトだった。それが、今は、自分でさえ手を焼いていたソリスをアルベルトが追い、ミレトスのお守りを自分がしている。不自然な人事だとしか思えなかった。

                      5に続く……


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11月からの一ヶ月間です。よろしくお願いします。 (2009年11月1日~2009年11月末日)

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こんな時間にこんばんは、天音です。

更新が滞っており、すみません。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)
登場人物は左のリンクにある「登場人物」を参照されてください。

えっと、お手数ですが、タイトルにある数字の順番に読んでください。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


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それでは、お楽しみいただければ幸いです。

 
 ココから小説。




「左脇があいていますよ、ミレトスさま!」
 マーニの言葉にミレトスが、左脇を庇う動きをする。
「それでは他に隙が出来てしまいます。剣技は、頭脳も必要なんですよ?」
 マーニがミレトスの木刀を落とす音がカランと響いた。
「ふう……。マーニはやっぱり強いな……」
 汗を拭きながら言うミレトスにマーニは微笑む。
 筋は悪くないと思う。
 だが、まだまだだな。
 ソリスのように、背中を預けることはできない、とマーニは思って、ソリスと比べるのは酷か、と思い直す。
 本来は従者が王子を守るものだ。だからこれでいいのだ。
「ルアザン大将!」
 聞きなれたアルベルトの声が聞こえてきた。
「兄上、また行方不明なの?」
 哀れむように言ったミレトスをアルベルトは無視した。
 マーニが苦笑しながら口を開こうとすると、
「探しました」
とアルベルトが制した。
「そうですか……」
 ソリスさま。フランドル少将を相手に、少しぐらい手加減をしてさしあげたらいいのに。
 そう思って、マーニはすぐに無駄か、と嘆息した。ソリスは従者が誰になろうと、自分のしたいことをしたいようにする。それがソリスだからだ。
「……ミレトスさまも問題児でしたが、ソリスさまはそれ以上だ……」
 自信を失った声でアルベルトは悪態をつく。
「兄上はさすがだなあ」
「それは言葉が間違っていますよ」
 マーニとアルベルトの言葉が重なり、二人は顔を見合わせた。
「あはは」
 そんな二人を見て、ミレトスは無邪気に笑っている。
「苦労をおかけしますね」
 マーニが言うと、
「いえ……」
とアルベルトは答えるが、繕った表情の端に疲れが見えていた。
 そのときだ。
 殺気!
 咄嗟に剣を抜き、ミレトスを庇う姿勢をマーニとアルベルトはとった。
「随分な歓迎じゃないか」
 いつからそこにいたのか、すぐそばの木から飛び降りてきたソリスに、二人は剣を下ろす。
「ソリスさま……」
 困惑するアルベルト。
「……」
 マーニは咄嗟に言葉を発することができなかった。確かに殺気を感じた。間違いなくこの青年から。
 なぜ? 
 ミレトスを殺してもソリスには何の得もないはずだ。
「お? どうした、マーニ」
 マーニに声をかけるソリスからは先ほどの殺気は消えている。
「……いつから……そこにいらしたのですか?」
 訝しげに尋ねると、
「お前たちが剣の練習をし始める前からだが?」
「……気づかなかった……」
「邪魔しちゃ悪いと思ったからな」
「……そうですか」
「マーニ、どうしたの?」
幸いミレトスには殺気が分らなかったようで、無邪気にマーニに訊ねてくる。
「……いいえ、なんでもないです」
 ソリスの考えていることなど、分るはずもない。そういうお方なのだから。
「ねえ、兄上! 僕の剣の練習を見ていたんでしょ? どうだった? 僕も兄上みたいになれるかな~?」
 目を輝かせてミレトスがソリスに言うと、ソリスは笑みをもらした。
「ああ、そうだな。もっといっぱい練習すればな!」
「本当!?
そうだ! 兄上、僕、兄上に剣の稽古をつけてもらいたいな~!
ねえ、マーニ、いいでしょ?」
 ミレトスの言葉に、マーニはソリスを見る。
「いいぜ、俺は」
「……では、いい機会ですし、見ていただくのもいいかもしれません」
「わあい!」
 ミレトスの繰り出す木刀をひょいひょいとよけるソリスをマーニはぼんやり見つめていた。そうだ。ソリスさまは、大きな身体をしているのに、素早かったな、と。
「ほら、全然あたらないぞ?」
「兄上が早すぎるんだよー!」
「よく相手を見ろ! 隙がないか探す。でもそれだけじゃダメだ。頭だけで考えていると、自分に隙ができる。頭で考え、体で相手の動きを感じとるんだ」
 珍しくまともなことを言っているソリスを、マーニとアルベルトは驚きながら見ていた。こうして兄弟仲良くしている二人はなんだか微笑ましい。
「うー!」
 ミレトスが必死になって木刀を振るっている。そんなミレトスを見るソリスの目は優しい。
「よっと。
じゃあ、俺も攻撃に回ってみるかな」
 当然、ソリスは本気を出していないので、ミレトスは懸命にソリスの木刀を木刀で受け止めている。だが、その顔に余裕はない。木刀と木刀がぶつかる高い音がしばらく響く。
「ソリスさまはやはり剣技に長けていらっしゃいますね」
 二人を目で追いながら、アルベルトが言った。
「ええ。それぐらいしか特技はありませんからね」
 そう言ったマーニに、アルベルトは少し寂しげに笑った。
「ルアザン大将とソリスさまは、本当にお互いを信頼しあっているのでしょうね」
 今の言葉のどこからそういう結論になるのか分らず、マーニは首をかしげた。
「いえ、なんでもないです」
 アルベルトがそう呟いたとき、一際大きな音が響いた。ソリスがミレトスの木刀を叩き落した音だった。
「はあ! 兄上にはまだまだ敵わないや!」
「兄の……めん……えっと、なんだっけ?」
「面目です」
 咄嗟にマーニを見たソリスにマーニは答える。
「そうそう、面目、だ。面目丸つぶれじゃ困るからな。
ま、これからも練習をすれば、お前ももっと腕が上がるさ」
「ほんと? なら、頑張る」
「おしっ」
 ソリスは笑うと、大きく伸びをした。
「久しぶりに体動かしたな。俺も鈍らないように少しは鍛錬しなくちゃな」
 フランドル少将も剣技に優れていると聞く。
「失礼ながら、ソリスさまの剣技の相手をしたことは……」
 小さな声で、マーニがアルベルトに囁くと、
「……まだありません」
 とアルベルトは悲しげに答えた。
「そうですか……」
「ねえ、兄上! アルベルトもとっても強いんだよ! 兄上はアルベルトとどっちが強いのかな?」
 抜群のタイミングで、無邪気にミレトスがソリスに声をかけた。
「……」
 ソリスが値踏みするようにアルベルトを見た。
「……そうだな……、機会があれば、一度手合わせでもしてみるか」
 ソリスの言葉に、アルベルトの瞳に一瞬明るい光が灯る。が、それを隠すように、
「そうですね。お願いいたします」
と冷静に答えた。そんなアルベルトにふっとマーニは微笑んだ。
「そのときは、僕も見たいなあ~!」
「いいぜ、参考にするんだな」
「あ、ねえ、じゃあ、マーニとは?
マーニももの凄く強いんだよ! でも、僕相手だと本気をちっとも出してくれないんだ。兄上とマーニはどっちが強いの?」
 マーニとソリスは顔を見合わせた。
 どちらが強い……?
 剣技の練習相手には何度もなったが、ソリスと本気で剣を交えたことなどもちろんない。
 勝てる気はしない。でも……負ける気もない。
 そう思って、マーニはふと我に返った。ソリス相手に本気で剣を抜くことなどないだろう。
「そうだな~、どっちが強いか、か……」
 ソリスが口元に笑みを浮かべる。琥珀色の目が輝きを増していた。
 嫌な予感がする。
「ねえ、マーニ、兄上と手合わせしてよ!」
「はい~?」
「面白そうだな。俺はいいぜ、マーニ」
「私も見てみたいです」
 アルベルトまでがそう言い、マーニは覚悟を決めるしかなかった。
「わかりました。では、ソリス王子、手合わせを願います」
 木刀をミレトスから受け取る。すると、
「木刀じゃなくて、剣でやろうぜ、マーニ」
「剣!?」
 ソリスの言葉に、ソリス以外の三人が動揺する。
「ソリスさま、剣は危険すぎます」
「いいじゃないか。一度やってみたいと思っていたんだよな。マーニなら、俺に殺されることはないだろうし」
 挑発的な目を向けられ、マーニはむっとする。
 この馬鹿王子。
「……いいでしょう。相手の剣を落としたほうが勝ちということで」
 マーニが睨むと、ソリスは楽しげに目を細めた。
「そうこなくっちゃ。じゃあ、始めるか」
 マーニとソリスはお互い剣を抜いた。 
 
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 ここまで読んでくださりありがとうございました。
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