小説をおいております。
『いざ、出陣 恋戦』シリーズの二次創作、『神の盾レギオン 獅子の伝説』の二次創作、そして、高校生の時に書いた読まれることを前提にした日記と、オリジナル小説を二編のみおいております。
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明けましておめでとうございます。
遅い新年の挨拶で申し訳ございません。
センター、雪のところが多く、大変だったようですね。
皆様風邪などひかれないように……という私は風邪ひいております。
そして、高校生ころの私はというと……。
ということで、久しぶりに未来の誰かに贈る日記、お送りいたします。
センター試験の結果とか生々しく書いておりますが、
この後、かなり無謀な挑戦をする高校生の私を見守ってくださいませ。
今年は日記の更新ばかりでなく、小説を少しずつ書きたいと思っています。
短編をいくつかと、マーニの話の続きですね。
が、頑張ります。
ココから日記
最初から読んでみる
一九九六年 十二月九日
弟が修学旅行オーストラリアから帰って来ました。小さなオーストラリアの動物のぬいぐるみのセットとメモ帳がお土産。結構高かったようです。私が一番気に入ったのは、ハリモグラでした。ふかふかの針の部分が気持ちいです。
もうぬいぐるみは卒業してるけど、弟の気持ちとして、ありがたく受け取っておきます。ありがとう。
さてさて、昨日と一昨日は風邪ひいていたけど、センタープレテストだったので、無理したせいか、風邪が悪化。今日は学校を休んで病院にいきました。うー、のどは痛いし、鼻水だらだらだし、咳出るし……。き、きつい……。あの人は私が休んでるのにさえ気付いてもいないんだろうなあ。
明日は会えるといいな。でも声がだみ声になってて恥ずかしいので、声をかけるのはやめておこうっと。
一九九六年 十二月十一日
まだまだ声が治らない私。早く全快するといいのに。
今日は朝課外後、地学の一式をとりに部室に行くと、O君が部室から出てきたのー!きゃあ! こういう偶然は本当にいい!
今日は学校の模試の結果が帰ってきたの。総合順位はようやく半分より上がったけれど、国英社では丁度半分ぐらい。英語がねえ……。あの人は総合、国、数、英、で名前が載ってた。すごーい! やっぱり頭いいー。素敵! がんばってるんだろうなあ。私もまだまだこれじゃだめ。もっともっとがんばらなきゃ! 負けないぞ!
一九九六年 十二月十一日
今日は全く会えずじまいかと思いきや、K子を待つとき本屋に言って、何か買って読んでよいようと思い、(勉強しろよ)部室を出ると、あの人だ。しかも上機嫌。嬉しそうな笑顔。隣の友達と何話してたのかなあ。まあ、見れたからいいや、と思って本屋へトコトコ。そのとき、信号があったのよ。それで、待って、青になって歩きだすと後ろからあの人の自転車。え? 帰るんだ。見れてよかった。まあ、よっぽど嫌われていたら会いそうなときに帰るわけないし、避けられてはいないってことよね。
そういえば、今日はとても月が綺麗だった。薄い三日月。右下が光ってた。でも私は発見した。よーく見ると、ほんの少しだけど、ちゃんと丸く光ってるのよね。うーん、綺麗。それと、暗いのに、地平線のところだけほのかに橙になっていて、綺麗だった。空は真っ暗なのに。はじめ、火事かと思っちゃったけど。
咳で、字がよれよれになるー。
明日もいい日でありますように!
一九九六年 十二月十四日
高校での漢文なんてたかがしれている。読みやすいものを一部取り出して授業で習うにすぎないからだ。しかし、私はそうであるのに感動せずにはいられない。文は簡潔明解。言いたいことを簡単な例などを出して、そのままポンと書いているものが多い。そして中国人独特のセンスが文には表れている。それはとても新鮮に感じられる。それから思想。現代の私たちが読んでも衝撃をうける。目の付け所がまず違う。そんな思想が様々あって、対立する思想を読んでいても、それぞれがもっともであると思うようなものばかりだ。面白い。
私は中国への興味がわいた。しかし、それは現代の中国にではない(申し訳ない)。私は少し悲しく思う。現代の日本には古典に描かれている匂いのする場所はほとんどない。まるで違う世界のような感じで私は古典を読んでいる。確かに日本は豊かになって、私たちは何の不自由もなく暮らせるようになった。しかし、風流を感じる「余裕」、時間が失われている。皆、仕事、勉強に励み、自分を見つめる暇さえもない。中国は現在著しく発展してきている。それは結構なことだが、素晴らしい思想は残しておいて欲しい。昔の趣きを失わずに発展して欲しい。中国文化は本当に優れたものであるのだから、日本のように急いで近代化せずに、独自の文化を尊重し、誇りに思いながら成長して欲しいのだ。
私はこんな理由で中国を学びたいと思い、大学に行きたいと思っている。そう、大学に行かなければ!そして、中国に行くんだ!
(この願いは、結論から言うと、叶うことになる。私は大学二年と三年の夏休み、合計二ヶ月、北京に留学をすることとなった。そして、建築物や庭園などはしっかり残っている中国に感嘆し、思想については一部の上流階級にのみ残るだけで民間人にはみられないことを知り、残念に思った)
一九九六年 十二月十六日
今日は体育終わって部室の外に出ていると、あの人はこれから体育なので部室に着替えに来てました。
帰りは掃除があって、遅くなっちゃうから、あの人はもう帰ってるかもー。お願い、もう少し学校にいてー! と思って、一生懸命自分の受け持った階段のところを掃いて、それで、走ってもどると、丁度あの人は帰るときだったみたい。部室の外に出てて、友達と楽しそうに雑談をしていた。隣にその友人がいなければ、「バイバイ」っていえたのになあ。もう一度部室から出たときにはあの人ははもう、帰ってました。私が来たから逃げたのかな? それとも一目私を見るためにいて、見られたから帰ったとか? とかあるわけないってね。言ってみただけ。まあ、このごろはよく顔を見るので嬉しい。明日も会えるといいな。それで、話が出来るといい。
一九九六年 十二月十七日
休日以外は雨が降らないといいのに。雨の日は、あの人が自転車で来ないから、学校に来ているかどうかが分からない。もう、あと何日かで授業が終わる。会いたいな。
今日は夢で会えたからまだいいかも。古典の世界では、夢に出てきてくれるのは、相手が想ってくれているからってことになっているけれど、実際は逆だよね。夢は自分の心が面白いほど反映されている。好きな人もだけど、恐いものとか、気になることとか・・・。でも、古典の世界の考え方のほうがロマンチックだよね。そうだったら、私は毎日あの人の夢に乱入しているんだ。なんだか楽しそう。でも、あの人は迷惑するか。
明日は三年生全員による学年集会がある。先生はノータッチのようだ。いろんな思い出話が聞けそう。あの人にも会えるといいな。
一九九六年 十二月十八日
今日は朝から凄い吐き気がして、胃が痛くて、牛乳をコップ半分だけで学校にいった。部室により、部室からでて、教室へ向かっているときに、あの人は学校に到着! 朝からラッキー! と思っていると、体育のときも、着替え終わって体育館に行こうとしてるとあの人が出てきて、教室に帰っていた。後姿だけしか見られなかったけれど、でも嬉しい。
休み時間。気持ち悪いけれど、何もお腹の中にいれないのもよくないよ、と友人に言われ、私は友人と売店に行った。
あ、あの背の高い人は……。そこに、あの人はいて、並んでた。しかも、私がO君が好きと知らない友人が、あの人の前を通り抜けたもんだから、きゃー恥ずかしいよー、わざとじゃないのよーと思いながら、ちょっと俯きながら通った。あの人は気付いたか分からないけど、恥ずかしかった。それで、買ったココアを飲んで、地学教室へ向かったが、なんと先生はお休みで閉まっていた。(昨日も休んでいたの。退職している先生で、かなりのお年なので、心配。早く治りますように!!) 地学教室は遠いので、胃がいたいのに、ちょっと苦しいと思いつつ、教室に戻っていると、前を歩いているあの人。隣にはあの人の友達。なんて楽しそうなんだろう! 男子相手なら、こんなにしゃべれるんじゃないー! 私とも話してよー! と思ってしまった。
この後、私は結局保健室で休んでいました。それで、学年合同のHRの時間。あれ、あの人ちゃんと来てるじゃん。私は後ろのほうに座って、ずっとあの人を見ていた。眠そうだ。ずっとうつらうつら。ふふ、可愛いなあ。しかーし、その隣の友人が私の視線に気付いて意味ありげににたあと笑った。な、なんなの! ほっといてよ! その後、部室に戻るとき前方に発見。これで今日は六回目だ! 一日に何度も見ると、なんとなく距離が縮んだような気がして(そんなわけないのに)、声をかけてみた。
「こんにちわ」
あの人は。ああ、またかという感じで、こっち向いてくれさえもしない。それどころか、久々の、表情硬直だ。ただ、まっすぐ進行方向を見て、足をもくもくと動かす。しかも、足が長いので速い。うう……。何か話を……。今思えば、まず模試のことを誉めればよかったな、と思うけれど、後の祭り。
「冬の補習とってる?」私はそう聞いた。
「はい」
「ふーん」
会える確立が上がる! と内心喜ぶ。でも……。会話が続かん……。私は部室に入ろうとするあの人を呼びとめついに言ってしまった。
「あのさ、夏休み、私が友達になってっていったとき、「うん」って頷いたよね?」
おい、どうしてそこで止まるのさ。なんで返事してくれないの? 私一人勘違いしてたの?
馬鹿みたいじゃん! でも私は、そこでとまっちゃだめだと、話を続けた。
「あのね、友達だからもっと話したいっていったら怒る?」
ピキ。あ。マジで凍った。ど、どうしよう。言わなきゃよかった。しかも、こんな部室の入り口のところじゃ、いくらドアは閉まっているとはいえ、筒抜けじゃん! あー、またもや失敗!!! 私はあの人が反応するのを待つしかなかった。
あの人はかすかに口元に笑みを浮かべて、片手を軽く挙げて……。部室の中に逃げてしまった!!
?! おーい、もどってこーい!! なんなのー今のはー!
笑みは、困った笑みか、テレの笑みか(ありえん)。しかも、どういう意味? あの手は。
「そーゆーの困るからバイバイ」か「またにして」か「好きにして」どれ? ぜんっぜん意味不明! でも、よければ「別に」って言いそう。言わなかったってことは、困るってこと? まあ、いきなりだったから、戸惑ったんだよね。きっと。ごめんなさい。部室の中の人に聞こえるのを気にしてたとか? でもどっちにしろ、私は、あの人を困らせてしまったんだ。いいのに。迷惑っていってくれたほうが切り替えだってつくのに。わかんないよ。それじゃ。どうしたらいいの?
あああ、私は「友達」ってのも夢幻だということを自分で暴いちゃったわけだ。なんか、どうしようかな。とりあえず、ふつーに挨拶しよう。でも、目とか合わせられないかも。
夜はなんとかご飯食べれた。やっぱ物が食べれるって幸せなことだな。
明日はテスト。あの人のことはまず、置いといて、勉強しなきゃ。
HRで印象に残った言葉。
「梯子が出来たから二階に上がるのではなくて、二階に上がりたいから梯子ができた」
成せば成るってやつ?
一九九六年 十二月二十三日
「欲がなければ志は保てない」
そういう内容を諸葛孔明は最後の出陣の際、一人息子に言ったという。昨日は「知ってるつもり」というTV番組で、三国志スペシャルだったのでつい見てしまった。「欲」・・・エネルギー源だものね。私の場合「何々したい」というのは、ぼんやりとはあるけれど、そこまで強くない。地球が病に伏しているのに、政治は滅茶苦茶なのに、景気悪いのに、私は何の不自由もなく暮らしている。どうにかしたいじゃなくて、どうにかなればいいのにしか思っていない。孔明の生きていた世よりも随分と豊かだからだ。しかし、私は孔明の状況にあったとしても、孔明のように「自分がどうにかしなければ」とは思わなかっただろう。そこが孔明の凄いところだと思う。さらに、孔明は最後まで主君にはならなかった。欲・・・「民が安心して暮らせる世にしたい」これはあっただろう。でも「自分が天下を治めたい」という欲もあったのではないか。それを表に出さずに、二番に徹し、お世辞にも、劉備のように優れた人ではなかった劉禅を支えた。本当に改めて孔明と言う人は優れた人だったのだなと感嘆した。私ももっと頑張らなければ。
一九九六年 十二月二十三日
なんで今更親や弟に進路のことを言われなければならないのだろう。受からないから別のところを受けろ、だって? なんで行きたいところに行かしてくれないの?! 知りもしないくせにって、大学に行ったことないんだから、全てわかるわけないのは当然だ! 今更行きたくない所に行って、結局面白くなくて、途中でやめるよりもいいじゃない! ほんの影響からだって、別にそれもいいじゃない! 人生を変える本だってあるんだ! それに、中学のときから、漢文は面白いと思ってたし、高校に入って、ますます中国の思想は面白いと思ったんだ! そんなの先生方に私の国語の授業態度を訊けばわかることだ! それにのほほんとしてって言うけれど、気持ちはすごくあせっているんだよ! 体に異常がでるほどに! それなのに、追い討ちをかけることないじゃん! 親ならそれくらいわかってよ! もう、家にいるの嫌だよ! むかつくよ! うるさいよ! 経済苦しいのなんてわかってるよ! でも、それならなんで生んだんだよ! 畜生! 畜生!
一九九六年 十二月二十四日
今日はあの人は帰りに見られただけ。一応、クリスマスイブだけれど、悲しいかな、受験生であり、独り身でもある私には何の意味もないものでありました。そういえば、K子を待っているときに雲ができるところを見ました! 真っ青な空にうすーい一欠けらの雲ができたかと思うと、その真ん中からもわもわと雲がでてきて、外側に広がっていくの。なんか、とても不思議だった。何もないところから、何かが生まれる瞬間。目に見えないだけで、水蒸気はもっと前にあったのかもしれない。でも雲になっていく様は神秘的だった。
そういうことで、今日は終わり!
うーむ、今日は寝てばっかりで、勉強が……。
それと、最近前髪が鬱陶しくなってきた。
一九九六年 十二月二十六日
最近、あの人はやたら機嫌がいい。異常に。腹が立つほど。始終笑顔!(O君がO君の友人といるときに限られる)。 何かあったの? 何なの!? なんだか、なぜか恨めしい。(意味不明) そして、悔しい! 私にも笑ってよー(無理難題)話しかけてよ! あなたの生活の片隅でいいからいれてよ、もう!!
話は変わって、最近、図書館に行って勉強している。なかなか捗ります。がんばるぞ!
一九九六年 十二月二十七日
今日はあの人は課外を休んでいた。風邪? うーん。最近ではすぐそう思えなくなっちゃってる。塾に行ってるのかな? たまたま今日は重なったとか? それとも家のほうが捗るのかな? いや、やっぱり風邪……? 大丈夫かなあ。
無理しないでゆっくり休んで、はやく元気な顔を見せてほしいな。
一九九六年 十二月二十八日
今日もあの人は休み。なんだか、自転車がないのは寂しい。本当にどうしたんだろう。明日は課外の前半最後の日。来てほしいな。
一九九六年 十二月二十九日
今日は半年ぶりに行きつけのお寿司屋さんに行った(家族でだよ)。
上にぎり。とろが本当にとろけるような口当たり。さらに、うにが甘くて最高! えびは食べ終わった後も尻尾がぴくぴくしていた。どきどき。えびといえば、えびだけすっごくわさびがきいていて、お茶を飲んだけれど、すっごく、すっごくつーんときて、鼻を押さえて、涙をにじませていると、「わさび、ききすぎていたかな?」と、握ってくれたお兄さんがいって、よく来ているからというのもあるのか、「泣かせたから」と、卵を特別に握ってくれたの。のりで仕切りが作ってあって、芸術的! すっごく可愛いの! 食べるの勿体無いほど! ありがとー、おにーさん!
そういえば、あの人、今日も来てなかった。もー、次に顔見られるのは来年の四日だよー。それまで会えないなんて寂しいな。よいお年を!
一九九七年 一月一日
新年、明けましておめでとうございます。
今年は丑年だそうで、少し牛のように落ち着かなきゃね。
さてさて、冬休みが十二月三十日からはじまったわけですが、無理な計画を立ててしまって、ただ今、やり残しがたまっております(それでも紅白見たあたり、私って、中学のときから成長してない……)
おじいちゃんのところに帰らなかったので、電話したの。「合格する! って気で勉強しなさい」とおじいちゃん。「今の時期、健康が大事だから楽観的に構えてがんばれ」と優しい従兄弟君。「健康に気ぃつけてがんばれ」とめずらしく、優しい弟。よおーし、悔いが残らないようにがんばらなきゃ! きっと、あの人もがんばっているはず!
では、今年も皆様にとって良い年でありますように!!
ペルーのリマで人質にとられている方々、かわいそう。早く開放されるといいな。
一九九七年 一月三日
基礎教育は確かに必要だと思う。これくらいは知っていなくてはということはある。でもそれは最低限でいいと思う。自分の勉強したいことを自主的にできるような時間がもっと必要だと思う。(今更、本当に今更だけど)
一九九七年 一月四日
八日ぶりにあの人を見た。やっぱ、背高いな。ほんのちょっとだけしか見られなかったんだけど。ああ、うう、なんていっていいのやら。私は本当にこの人に会いたかったんだなあと感じた。
帰りも部室の外でK子を待っていたら、来るのが見えた。横には友人。また楽しそうな笑顔。べ、べつにいいけどね……。で、でもやっぱりくやしいかも! あの人が来ると、見てるって気づかれるのが嫌だから、明後日の方向を見る私。すると、一瞥する気配?(たぶんね)はあ~。なんだかなあ。
今、前髪が鬱陶しいのでピンで留めてるの。友達にかわいーと言われた。お世辞でも嬉しいよ! えへへ。
友達を
あの人見るため
外で待つ
かじかむ指に
息かけて
まだかな まだかな
時計を見る
人影見えるとドキッとして
違うとガッカリ肩落とす
そのうちあの人やってきて
私はうつむき笑みもらす
一九九七年 一月七日
今日は、朝、あの人が部室から出てくるのに出くわした。とってもはっぴーな一日になりそうだった。そう、だった、のに。
昼、学館(課外をやっている校舎)のトイレはこむので、本校舎のほうに行くことにした。そのとき横を通り過ぎる部室にはあの人がお昼を食べているはずだし、もしかしたら会えるかもしれない、と……。
寒さにコートの前をしめて、肩をすくめて歩いていると前から先生が来られたので「こんにちはー」と挨拶をする。丁度そこはあの人の部室の前らへんだった。そこで、いるかなあ、とチラリと部室のほうを見たときだった。
バンッ! と音。冷たい音だ。たぶん、否、絶対窓が閉まった音だったと思う。わざと……? 嫌、なの? 顔もみたくない、の……? でもさ、やり方、ひどくない? ひどいよ。十分酷い。あんまりだよ。
私は悲しくて、靴をバン! と鳴らして、「むかつくー」と小声で言いながら、歩いた。
でも、本当はむかつくより、心が痛くて痛くてどうしようもなかった。私はそれを紛らわすためにも、「むかつくー」を連発した。なんか、涙がでそうだ。どうしたらいいんだろう。嫌われてなきゃそれでいいと思ってた。でもこんなに疎まれていたなんて。
でも、好きなんだもん。それはどうしようもないんだもん。
このごろは、あの人の反応があってもなくても、腹が立って、笑顔を見ても腹が立って、背中だけが静かに見ていられるものになってしまった。あの人の表情は分からない。でも、あの人からも私は見えない。そっと見るのが好きなんだ。なんだかストーカーみたいだけど、寒そうな後姿を見ていると、何か力になりたいなあ、何かしてあげたいなって思うんだ。
必要とされてもいないのだろうことは分かってる。でも、何か……。
ああ、私はどうなるんだろう。
課外は今日まで。明日は新学期。
一九九七年 一月七日
私は結局何も分かっちゃいなかった。迷惑だけはかけないようになんて。
私があの人を見る。あの人は私に見られる。視線。これはどんなにあの人を不快にするか……。大切なときだからこそ、他の事に気を散らせてはいけないのに。それなのに、私はあの人の気を散らすような行動ばかりをしているんだ。なんて馬鹿なんだろう。思いやりが足りない。なんでそっと見守ることができないんだろう。もう、私は露骨に視線を送るのやめよう。私も授業の方をがんばらなきゃ。ごめんね、今まで。
荒木真樹彦さんの曲で好きな曲
TIME TRIP DANCE
どんなに小さな夢も
確かにあるなら
誰よりも君は
素敵になる
true love 君を守るよ
true love 信じていてほしい
round and round
です。
ああ、守られたい……。
一九九七年 一月九日
なんか、心の中に闇が巣くうのを感じた気がした。怒り。何に対する? 憎しみ。誰に対する? そして。もらいたくないほどの気持ち。憎愛。誰にって決まってる。
帰り、部室に行った。目はあわせたくないから、後姿だけ見られればいいと思った。そして、いつもの細い道。私はその道に入るとき、あの人があわてて、仕切りの外側を通るのが見えた。きっと私と一緒にならないように、だね? 外側を通り、そして、部室へと急ぐあの人。私は前を行くあの人を見て、声をかけることができたらどんなにいいだろうと思った。でも、嫌われていると分かっている今、わざわざ後を追ってまで、声をかける気にはなれなかった。
あの人は今のうち、というように部室付近までいくと、たったと走って部室に入った。私はずっと歩みを遅くして下を向いて歩いていた。
黒い気持ちがわきあがる。嫌いだ。なんて無神経なんだろう。悔しかった。なんで、私はこの人が好きなの?
最近、女の子らしくなったって言われて、嬉しく思っている私、本当に馬鹿みたい。鬱陶しい髪なんか、じょきじょきに切って、あの人の自転車蹴り倒したいぐらいだよ! もう嫌だ。入試も追ってくる。全部一緒になって私を追い詰める。大嫌い。
何も悩まないで、生きることだけ考えていられる鳥になりたいな。でも、そしたら本も読めないんだ。でもでも、もとから読めないのなら、読みたいと思わないだろう。
あー、もう、わけが分からない。
一九九七年 一月九日
音楽というのは、脳のどこか深い深いところに記憶されるのだろうと思う。宮崎駿の(アニメだが)の映画を見たことがあるだろうか。内容も凄く言いのだが、久石譲の曲がまた素晴らしい。テープを久々に聴くと、場面が一緒にぶあーっと蘇ってきて、凄く切なくなった。胸がぎゅっとして、軽い眩暈に似たものが襲ってくる。どうしようもなく感情が溢れそうになって、それを抑えるのがきつい。見たときの感動に、また新たな感動が曲と一緒に体中を駆け巡るのだ。自分の感覚にうったえる曲に出会ったときも、それに似た感覚が体を貫き、鳥肌がたち、胸が苦しくなる。音って、曲って、凄い!
一九九七年 一月十日
会えなくて寂しい。その気持ちがあるうちはきっと、その人のことをとても大切に想っている証拠だと思う。どうしても、今最もよく会う人(言うなれば、現実)に心は向くものだと思うから。人は毎日いろんなものを記憶していく。新しい記憶は、古い記憶の上にどんどん乗ってゆくような気がするのだ。必然的に前の記憶というものは、印象が薄れていく。そんな中、まだその人の印象が強く残っているというのは、どこかに「留めたい」と言う意思があるからではないだろうか。
今日、私はあの人を見ることはなかった。でも、どちらかというとほっとしている自分がいる。私は恋に疲れてきているのかもしれない。あの人をみて、心を痛めて、苦しむのに嫌気がさしてきているのかもしれない。
なんだかそっちのほうが寂しかった。二年以上も心に占めていた人が、こうも簡単に出て行こうとしているなんて。否、まだまだひきずっている? 分からない。分からない。でも、もう、以前のような、澄んだドキドキした気持ちにはなれないと思う。こんなに、こんなにも私の気持ちが浅いなんて、少し哀しい。それは今だけかもしれないけれど、私はこの状態が受験まで続けばいいと思っている。そうすれば、勉強に専念できるからだ。私は冷めているのだろうか。
enyaを知っているだろうか?
エコーのかかった独特の声とメロディー。強弱が波のようについた、心に優しい彼女の音楽は素晴らしい。
一九九七年 一月十一日
私は自分に嘘をついている。「うそじゃないもん」と叫び続ける私もいるけれど、それは、あまりに惨めで、悔しいから。私だって嫌いだもんって言ってやりたいから。そっちのほうが馬鹿みたいなのに。
でもね、会いたくないってのは事実。O君を見るたび、「O君は私が嫌い」というのが、どーんと頭上から降ってきて、私を押しつぶそうとする。すごく重くて、心に重くて、どうしようもなく哀しくて、それを認めたくなくて、でも事実だって分かるから余計に……。
でも、それでも会いたいと思っている自分がいるのも確かなんだ。
O君。私はあなたの口から直接ききたい。嫌いならそういってくれればよかったんだよ。私が話しかけたときはあやふやな態度をとってごまかすくせに。卑怯だよ、そんなやり方。O君は一度も私に本心を言おうとしない。私はそれがますます悔しいんだよ。それが、「嫌だ」でもよかったのに。あなたの言葉ならば。こんな形で大学生になって会えなくなるのなんて、絶対嫌だよ。
一九九七年 一月十三日
昨日も今日もあの人の気配がない。自転車もなかった。休んでる? 風邪……じゃないだろうな。きっと家で勉強してるんだろうな。ま、ね。目指しているとこが目指しているとこだし、仕方ないの、かな。風邪うつされたりしたら困るし、それに……、いろいろ気が散るからでしょう? 私みたいなのがいると。がんばってほしいと思うから、何もいえないけど、やっぱり寂しいな。嫌われているの、分かってるけど、やっぱり気になるかな。自分でも良くわかんない。とりあえず、私、勉強がんばらなきゃ。
一九九七年 一月十四日
なんか、自分で自分が分からない。混乱。会いたくなくて、会いたいという気持ちだったけど。でも。
今日は小雨がぱらついてた。でも、あの人は何を血迷ったか、自転車で来ていた。
なんかね、自転車見ただけでね、ああ、来てるんだと思うと、ほわあって心が暖かくなって、嬉しくて、自分でも、あれ? って感じ。こんなにも会いたがってるんだってやっと気がついた。
顔が微笑んでしまった。しかも、それが少し嬉しかった。ああ、私、まだこういう純粋な気持ちがあるって。真っ黒じゃないんだって。
地学教室に行くとき、O君とその友人がスカイロードの下(地学教室のある塔と本館を結ぶ道で、以前、避けられた細い道)を本館側に向かって歩いているのが見えた。休み時間も、もう終わりだし、このまま上がってきて教室に帰るのだろう。だったら、階段を降りている私とすれ違うはず! うわあ、嬉しい! そう思いながら降りる。が、一向に上がってくる気配がない。でも、とっくに上っているはずなのに。そうしてるまに、二階に至ってしまった。スカイロードを通って地学教室に行くので、一階までは下りないのだ。
あー、会えなかった、と悲しく思いながら、スカイロードを通っていると、あれ!? なんで!? だって、スカイロード通るには、下の道を引き返して上がってこなきゃいけないんだよ? あれ、さっきの見間違いだったのかな? でも、私がO君を見間違えるなんてことはないはず。……。よく分からないけど、その姿を見つけるだけで、私は顔が上げれなかった。だって、顔がにやける。恥ずかしい。でも、とても幸せだった。私は、すれ違った後、やっと顔を上げて、O君の後姿を拝んだ。駄目だ。私。まだこんなに好きだ! でも、嫌われてるって気づいたほうが謙虚になれるからよかったのかもしれない。
私は卒業するまで、勉強も恋もがんばろうと改めて思った。
一九九七年 一月十六日
朝、学校について、部室の前の道を自転車で通ると、O君が丁度部室から出てきた。私は挨拶したいな、と思ったけど、思いとどまった。自転車を止める。O君は肩をそばめて、ちょっと寒そうに歩いていた。私の視線に気づいていたのだろうか。なんとなくギクシャクして。私はその背中に無言で言う。「もう少しだね、受験。がんばろうね。風邪ひかないでね」
センター説明会。よーし、がんばらなきゃ、と思った。チラリとO君を見ると、見慣れた後頭部と時々横顔が見えた。いつもと変わらない顔。あんまり緊張はしてない、かな? でも、実は私も中学受験のときより落ち着いてる。そこまで成績がよくないので、背負うものがないからだ。勉強不足であることは分かっている。それはもう仕方がないのだ。だから今やれるだけのことをとりあえずする。そして、自分以上の力をだそうったって無理なんだから、自分の持てる力を全て出し切るようにしたい。終わってから、「もう少しとれたのに……」じゃなくて、「よくがんばれた」って、言えるようにしたい。
今日は帰りにもO君が見れた。自転車の鍵をはずしてる。
「バイバイ」背中に心の中で声をかける。O君は気づいてない。自転車を後ろにひいたとき、丁度私がいたから、そのときは気づいたかも?
私はO君がコートを着ていることにまず安心している自分に気づき、よかったと思った。いつも寒そうと思っていたからだ。やっぱり私はこの人が好きなんだな、とにべにもなく感動した。明日はセンター試験の場所の下見だ。どんなところかな。
目標点数
英語 150以上
数学ⅠA 70以上
数学ⅡB 65以上
地理 80以上
国語175以上
地学 80以上
一九九七年 一月二十二日
私はセンター試験で、数学で見事に失敗しました。今年は簡単だったそうですが。そう、言い訳でしかないけれど、家で解きなおすと解けたのに、という問題がいくつもあって、余計に悔しい。平均は150くらいは軽くありそうですが、私は105しかとれませんでした。でも、自己採点の前日、自己採点する夢(予知夢)で、点数が分かっていた分、そのときは、やっぱり、という感じだったけど。
でも、うちの学校の平均が652と聞いてかなりショックをうけました。全体の平均でも550ぐらいはあるだろうという話。私は590しかありませんでした。K大はほど遠い。まあ、文学部は、センターと二次の割合が225:500なので、それは不幸中の幸いですが……。
気持ちの切り替えをして、二次でがんばろう。友人にも励まされ、そう思ったのですが、体は正直で、胃にきてしまい、昨日は何を食べてももどしてしまう。そのことで病院に行ったのだけれど、そのとき強い悪寒と体中が痛いという症状もあったので、熱を測ると三十七度九分。歩いて病院に行った私はベッドに寝かされ、点滴を受けることに。検査で、インフルエンザと判明。なので、昨日は夜九時に寝て、今日の朝九時半まで眠り続けた。私には休養が必要だったのかもしれない。でも早く治して、勉強しなきゃ。私はただでさえ、センターでみんなより遅れてるし、病気で休んだ分もプラスして遅れることになるのだから……。
結果
英語 156
数学ⅠA 55
数学ⅡB 50
地理 77
国語 173
地学 79
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今日はココまで。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
センター試験の会場でインフルエンザもらった方、いるかなあ?
試験に向けて、身体の調子、整えてくださいね。
拍手、ときどきいただいております。嬉しいです。一言あるともっと喜びます。
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それではまた! 天音花香
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