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小説をおいております。 『いざ、出陣 恋戦』シリーズの二次創作、『神の盾レギオン 獅子の伝説』の二次創作、そして、高校生の時に書いた読まれることを前提にした日記と、オリジナル小説を二編のみおいております。
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プロフィール
HN:
天音 花香
性別:
女性
職業:
主婦業メイン
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、結婚後落ち着いてから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。

クリックで救える命がある。
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こんな時間にこんばんは、天音です。

更新が滞っており、すみません。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)
登場人物は左のリンクにある「登場人物」を参照されてください。

えっと、お手数ですが、タイトルにある数字の順番に読んでください。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


コメントいただければ喜びます。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。

 
 ココから小説。




「左脇があいていますよ、ミレトスさま!」
 マーニの言葉にミレトスが、左脇を庇う動きをする。
「それでは他に隙が出来てしまいます。剣技は、頭脳も必要なんですよ?」
 マーニがミレトスの木刀を落とす音がカランと響いた。
「ふう……。マーニはやっぱり強いな……」
 汗を拭きながら言うミレトスにマーニは微笑む。
 筋は悪くないと思う。
 だが、まだまだだな。
 ソリスのように、背中を預けることはできない、とマーニは思って、ソリスと比べるのは酷か、と思い直す。
 本来は従者が王子を守るものだ。だからこれでいいのだ。
「ルアザン大将!」
 聞きなれたアルベルトの声が聞こえてきた。
「兄上、また行方不明なの?」
 哀れむように言ったミレトスをアルベルトは無視した。
 マーニが苦笑しながら口を開こうとすると、
「探しました」
とアルベルトが制した。
「そうですか……」
 ソリスさま。フランドル少将を相手に、少しぐらい手加減をしてさしあげたらいいのに。
 そう思って、マーニはすぐに無駄か、と嘆息した。ソリスは従者が誰になろうと、自分のしたいことをしたいようにする。それがソリスだからだ。
「……ミレトスさまも問題児でしたが、ソリスさまはそれ以上だ……」
 自信を失った声でアルベルトは悪態をつく。
「兄上はさすがだなあ」
「それは言葉が間違っていますよ」
 マーニとアルベルトの言葉が重なり、二人は顔を見合わせた。
「あはは」
 そんな二人を見て、ミレトスは無邪気に笑っている。
「苦労をおかけしますね」
 マーニが言うと、
「いえ……」
とアルベルトは答えるが、繕った表情の端に疲れが見えていた。
 そのときだ。
 殺気!
 咄嗟に剣を抜き、ミレトスを庇う姿勢をマーニとアルベルトはとった。
「随分な歓迎じゃないか」
 いつからそこにいたのか、すぐそばの木から飛び降りてきたソリスに、二人は剣を下ろす。
「ソリスさま……」
 困惑するアルベルト。
「……」
 マーニは咄嗟に言葉を発することができなかった。確かに殺気を感じた。間違いなくこの青年から。
 なぜ? 
 ミレトスを殺してもソリスには何の得もないはずだ。
「お? どうした、マーニ」
 マーニに声をかけるソリスからは先ほどの殺気は消えている。
「……いつから……そこにいらしたのですか?」
 訝しげに尋ねると、
「お前たちが剣の練習をし始める前からだが?」
「……気づかなかった……」
「邪魔しちゃ悪いと思ったからな」
「……そうですか」
「マーニ、どうしたの?」
幸いミレトスには殺気が分らなかったようで、無邪気にマーニに訊ねてくる。
「……いいえ、なんでもないです」
 ソリスの考えていることなど、分るはずもない。そういうお方なのだから。
「ねえ、兄上! 僕の剣の練習を見ていたんでしょ? どうだった? 僕も兄上みたいになれるかな~?」
 目を輝かせてミレトスがソリスに言うと、ソリスは笑みをもらした。
「ああ、そうだな。もっといっぱい練習すればな!」
「本当!?
そうだ! 兄上、僕、兄上に剣の稽古をつけてもらいたいな~!
ねえ、マーニ、いいでしょ?」
 ミレトスの言葉に、マーニはソリスを見る。
「いいぜ、俺は」
「……では、いい機会ですし、見ていただくのもいいかもしれません」
「わあい!」
 ミレトスの繰り出す木刀をひょいひょいとよけるソリスをマーニはぼんやり見つめていた。そうだ。ソリスさまは、大きな身体をしているのに、素早かったな、と。
「ほら、全然あたらないぞ?」
「兄上が早すぎるんだよー!」
「よく相手を見ろ! 隙がないか探す。でもそれだけじゃダメだ。頭だけで考えていると、自分に隙ができる。頭で考え、体で相手の動きを感じとるんだ」
 珍しくまともなことを言っているソリスを、マーニとアルベルトは驚きながら見ていた。こうして兄弟仲良くしている二人はなんだか微笑ましい。
「うー!」
 ミレトスが必死になって木刀を振るっている。そんなミレトスを見るソリスの目は優しい。
「よっと。
じゃあ、俺も攻撃に回ってみるかな」
 当然、ソリスは本気を出していないので、ミレトスは懸命にソリスの木刀を木刀で受け止めている。だが、その顔に余裕はない。木刀と木刀がぶつかる高い音がしばらく響く。
「ソリスさまはやはり剣技に長けていらっしゃいますね」
 二人を目で追いながら、アルベルトが言った。
「ええ。それぐらいしか特技はありませんからね」
 そう言ったマーニに、アルベルトは少し寂しげに笑った。
「ルアザン大将とソリスさまは、本当にお互いを信頼しあっているのでしょうね」
 今の言葉のどこからそういう結論になるのか分らず、マーニは首をかしげた。
「いえ、なんでもないです」
 アルベルトがそう呟いたとき、一際大きな音が響いた。ソリスがミレトスの木刀を叩き落した音だった。
「はあ! 兄上にはまだまだ敵わないや!」
「兄の……めん……えっと、なんだっけ?」
「面目です」
 咄嗟にマーニを見たソリスにマーニは答える。
「そうそう、面目、だ。面目丸つぶれじゃ困るからな。
ま、これからも練習をすれば、お前ももっと腕が上がるさ」
「ほんと? なら、頑張る」
「おしっ」
 ソリスは笑うと、大きく伸びをした。
「久しぶりに体動かしたな。俺も鈍らないように少しは鍛錬しなくちゃな」
 フランドル少将も剣技に優れていると聞く。
「失礼ながら、ソリスさまの剣技の相手をしたことは……」
 小さな声で、マーニがアルベルトに囁くと、
「……まだありません」
 とアルベルトは悲しげに答えた。
「そうですか……」
「ねえ、兄上! アルベルトもとっても強いんだよ! 兄上はアルベルトとどっちが強いのかな?」
 抜群のタイミングで、無邪気にミレトスがソリスに声をかけた。
「……」
 ソリスが値踏みするようにアルベルトを見た。
「……そうだな……、機会があれば、一度手合わせでもしてみるか」
 ソリスの言葉に、アルベルトの瞳に一瞬明るい光が灯る。が、それを隠すように、
「そうですね。お願いいたします」
と冷静に答えた。そんなアルベルトにふっとマーニは微笑んだ。
「そのときは、僕も見たいなあ~!」
「いいぜ、参考にするんだな」
「あ、ねえ、じゃあ、マーニとは?
マーニももの凄く強いんだよ! でも、僕相手だと本気をちっとも出してくれないんだ。兄上とマーニはどっちが強いの?」
 マーニとソリスは顔を見合わせた。
 どちらが強い……?
 剣技の練習相手には何度もなったが、ソリスと本気で剣を交えたことなどもちろんない。
 勝てる気はしない。でも……負ける気もない。
 そう思って、マーニはふと我に返った。ソリス相手に本気で剣を抜くことなどないだろう。
「そうだな~、どっちが強いか、か……」
 ソリスが口元に笑みを浮かべる。琥珀色の目が輝きを増していた。
 嫌な予感がする。
「ねえ、マーニ、兄上と手合わせしてよ!」
「はい~?」
「面白そうだな。俺はいいぜ、マーニ」
「私も見てみたいです」
 アルベルトまでがそう言い、マーニは覚悟を決めるしかなかった。
「わかりました。では、ソリス王子、手合わせを願います」
 木刀をミレトスから受け取る。すると、
「木刀じゃなくて、剣でやろうぜ、マーニ」
「剣!?」
 ソリスの言葉に、ソリス以外の三人が動揺する。
「ソリスさま、剣は危険すぎます」
「いいじゃないか。一度やってみたいと思っていたんだよな。マーニなら、俺に殺されることはないだろうし」
 挑発的な目を向けられ、マーニはむっとする。
 この馬鹿王子。
「……いいでしょう。相手の剣を落としたほうが勝ちということで」
 マーニが睨むと、ソリスは楽しげに目を細めた。
「そうこなくっちゃ。じゃあ、始めるか」
 マーニとソリスはお互い剣を抜いた。 
 
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 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 まだまだ続くと思われます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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 それではまた!               天音花香

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こんばんは、メリークリスマス。

今日はクリスマスイブということで、
番外編をお送りいたします。

ラブラブなソリスとマーニを書きたくて……。

それでは、最後まで読んでいただければ幸いです。

(この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……))

ココから小説。



 もう、ソリスさまはいったいどこにいったのだろう。
 結婚して、二週間。
 一週間は結婚式とは別に、結婚祝祭と称して、舞踏会を毎日のように開かれた。慣れない長衣(ドレス)を着せられ、長時間過ごすことはマーニにとって苦痛でしかなかった。まあ、遠国はるばる来てくれた友人たちに会えたことは嬉しかったが、ろくに話もできず、踊る、食べるか、作り笑いを浮かべて会釈するだけの日々。
 げっそりと疲れたマーニにソリスは新婚旅行と称して、世界を回る旅にマーニを連れ出した。
 着慣れた短衣、ターバン。マーニは少しほっとした。
 小さなナラーバ砂漠を越えてたどり着いたのは隣国のアル・タバリ。エル・カルーと雰囲気が似た国だ。エル・カルーと同じように大陸の南にあるからだろう。ただ、この国は石油が出ない。だから、隊商と呼ばれる商人たちが、アル・タバリの特産の美しい絨毯だとか、綺麗な細工の施してある装飾品だとかを運び、様々な国に売ることによって、国が成り立っていた。
 そのアル・タバリについて、もう5日になる。賑やかな市場を見て回るのは興味深かったが、それも流石に3日もすれば飽きてしまう。そろそろ次の国に行こうかという話も出ていたところだった。

 ソリスさまはいったいどこに行ったのだろう。
 いつも自分より遅く起きるソリスが今朝、マーニが起きたときには、宿にいなかった。こんなことは初めてだ。
 結婚してからというもの、珍しくソリスはマーニのそばを離れなかった。意外なことだった。だが、それは嬉しい誤算で、マーニはというと、妃にして、従者というなんとも不思議な肩書きなので、ソリスがいつものように単独行動で暴走することがない日々に幸せを感じていた。
 しかし。
 やはり、ソリスはソリスだったのだ。
 それにしても突然だ。ソリスらしいと言えばソリスらしいのだが……。
 まあ、アル・タバリは治安は比較的よいようなので、そこまで心配ではないが、何か事を起こしているのではという、別の心配がマーニの胃を痛ませる。
 それに、昨夜だって、いつもと変わらず……。
 マーニは思い出して赤面する。夜のソリスは夜の顔がある。マーニはソリスとしか関係を持ったことがないので、よくわからないが……。耳元で甘く囁くソリスの声を思い出して、ますますマーニは赤面した。
 そして、同時にはっとする。
 もしかして、ソリスさまはわたしでは満足できないのでは……。それで娼館にでも行っているのでは……。
 結婚する前は気にもならなかったが、結婚すると、ソリスが娼館に行くというのはなんだか面白くなかった。いや、面白くないどころか、悲しいような、苛立ちのようなものがマーニの心を占めだした。
 ぶんとマーニは頭を振る。
 やめよう。こんな自分は、自分らしくない。
 探しに行こうかとも思ったのだが、入れ違いになるのも困るし、なんだかこの二週間で疲れてしまっていたので、マーニはベッドで寝てすごすことにした。従者としては失格な行為だが、今の自分は普段より冷静さを欠いている気がしたので、出歩いてもどうせいい結果はえられないだろう。
 うとうととまどろんでいると、今までのことが夢となってでてきた。
 リュカーンでのヒースクリフの戴冠式。思えばあの日から多くのことが起こりすぎた。大陸の国々は、それぞれの思惑はあれど、戦争をしないようにやってきた。それが一瞬で水泡と化した。そして、イスファタルが滅びた。
 ローエングリン公爵……。
 マーニの想い人、ラミレスは戦死。同じくソリスの想い人のリアファーナ王女も帰らぬ人となった。
 国の均衡は崩れ、今も水面下でなにやら不穏な動きがある。
 そして、エル・カルーでは、エハル殿下による、ソリス暗殺計画。アリク王の命による、従者交換。
 最近のメインイベントといえば、ソリスとの結婚。
「マーニ、俺、アルヴィースを側室にするから~! じゃ、今夜は行ってくるな~」
 え……!?
「ソリスさま!!」
 勢いよく上半身を起こして、マーニは額の汗をぬぐった。
 夢……? いや、もしかしたら……。近い将来かも……。
 そう思って、悲しみと怒りを覚えたマーニだったが。
「お! ちょうどよく起きたところか、マーニ」
 ソリスの声に、マーニが扉の方を見ると、なんだか赤い服装に、白いひげをつけた奇妙ないでたちのソリスの姿があった。
「……。ソリスさま、今度は何をされているんですか?
今朝早くから姿が見えないので、心配したんですよ!」
 マーニはふいと目をそらして言った。
「そうか、寂しかったのか?」
 上機嫌なソリスの声。
「べ、別にそんなことはありません」
 言い返すマーニの声に覇気はない。ソリスがそのマーニの頭をぽんとなでた。
「な……」
「ほれ」
 ソリスが大きな白い袋をマーニに渡す。
「? なんですか?」
「いいから見てみろよ」
 マーニはその白い袋に手を入れる。どうやら何かがたくさん入っているようだ。とり出すのも大変だしと、袋を逆さにする。
「おい! 壊れないようにしろよ?」
 マーニは目を見張った。アル・タバリの城下町の店で、マーニが素敵だと思ったもの全てが入っていたのである。
 品がよく、細かい刺繍の入った短衣。軽くてしなやかで、かつ、おしゃれな皮のブーツ。ターバンを止めるのに素敵だなと思った琥珀色の宝石のついた留め金。ソリスとの朝食のときに、使いたいと思った、美しい細工の施してあるティーカップ。自分には似合わないだろうと思いながらも惹かれずにいられなかった、シンプルな銀に青い宝石がいくつかあしらわれた指輪……。あげるときりがないほどの品々。
「ソ、ソリスさま……これは……」
「おう、お前への贈り物だ」
「でも……」
 心配なのでソリスには大金を持たせていなかったはずだ。
「ああ、今日、夕方まで店で雇ってもらってな。いろいろやったぜ。葡萄酒の葡萄つぶしだとか、皮なめしだとか、食堂の皿洗い、店員……。世の中にはいろんな職があるもんだな」
 日ごろから王子の自覚はないとは言え、ソリスが……。そう思うと胸が熱くなった。でも、なぜ突然……。
「なんかアル・タバリでは12月24日に、えーっとなんとか神……忘れちった」
「アルス神です」
「そう、その神様の誕生日が25日だったとかで、その前夜は恋人と特別な時間を過ごすんだってきいたからさ」
「ソリスさま……」
 思わずマーニはソリスに抱きついてしまった。嬉しくて、目頭が熱い。
「喜んでくれたようでよかった。一日一人にして悪かったな。
そうそう、マーニ腹減ってるだろ? いい雰囲気の店を予約しといたんだ、行こうぜ!」
「はい」
「悪いけど、今日は長衣がいいな。それも買っといたから。着替えてこいよ」
「はい」
 マーニはソリスの選んだ長衣に着替える。しなやかで、さらりと肌に心地いい素材のシンプルなドレス。ただ、体のラインが結構見えるので、マーニはソリスの前に出るのを躊躇った。こんな女性らしい長衣、自分に似合っているのか不安だったからだ。
「マーニ?」
「ソ、ソリスさま……。この長衣じゃなきゃだめですか?」
「せっかくだろ~、今日はそれ着てくれよ」
「……」
 マーニは自信なさげにソリスの前に姿を現した。
「……」
 ソリスは一瞬言葉を失った。少しクリーム色がかったドレスに、マーニの燃えるような赤い髪が映えて美しい。
「……。マーニ、お前、普段からそういう格好してたら、誰も男だと間違えないぜ?」
 マーニはソリスの言葉に複雑な気分になる。
「ど、どういう意味でしょう……」
「似合っているぜ! どこから見ても絶世の美女!」
「からかわないで下さい」
 マーニは頬を赤く染めて、下を向く。
「からかってなんかいねーよ! 本当に綺麗だぜ! もっと自信持てよ!」
 マーニの腰に手を回し、ソリスはすかさず口づけた。
「ソ、ソリスさま!」
「このままベッドに行きたいところだが、まずは食事だったな。行こう!」
「は、はい……」
 二人は上等な葡萄酒と食事を堪能して、多くのアル・タバリの恋人たちがするような、素敵な夜を過ごしたのだった。
「マーニ、長衣は俺に脱がさせろよな」
 長衣を着ると、女性らしい顔を見せるマーニがソリスは愛おしくてたまらない。
「じ、自分で脱ぎますからいいです」
 この一言さえなければ、と思いながら、それでも頬を朱にそめて、うつむきながら、マーニは最後の葡萄酒を口にした。

                            おしまい


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 それではまた!               天音花香                   

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こんばんは、天音です。

更新が滞っており、すみません。
「緋い髪の女戦士」6をお送りいたします。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)
登場人物は左のリンクにある「登場人物」を参照されてください。

えっと、お手数ですが、タイトルにある数字の順番に読んでください。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


コメントいただければ喜びます。
拍手もとても支えになります。その際にはぜひ、一言書いていただければ嬉しいです。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。


ココから小説。


「では、行きますよ、ソリスさま」
「おうよ」
 ギン! と重い金属音が、剣がぶつかる度に響く。
 やはり、力では分が悪いなとマーニは内心舌打ちする。スピードで応戦するしかない。とにかく、こちらが攻撃を仕掛ける形にもっていかなければ。
「凄い、凄いね、二人とも……」
「ええ……」
 ミレトスが呟いた言葉に、アルベルトも頷く。目は二人に釘付けのままだ。
「……っ」
 攻撃が読まれている。
 繰り出す剣を尽く受け止められ、マーニは少し焦りを覚える。
 スピードでも敵わないのだろうか。
 ソリスは長身であるにも関わらず、動きが速かった。自然とマーニの目が据わってくる。
 夢中で右手を繰り出す。が、避けられることはなくても、剣で受け止められてしまう。
 長引いたら体力的に不利だな、とマーニが思ったそのとき。
「あっ」
 一瞬だった。
 マーニの燃えるように緋い髪が流れ落ちる。ソリスがターバンのみを切ったのだ。
「うわあ、マーニの髪、綺麗だね~!」
 ミレトスの声。
「ほう、これは美しい」
 と言ったラミレスの声が蘇る。
「……なんの真似です、ソリスさま」
 さらに目をすぼめて、マーニはソリスに問うた。
「マーニが手を抜いているからさ。左手はなんのためにあるんだ? 使えよ。俺相手に右手で勝てると思ったのか?」
 明らかに挑発するように言って、ソリスは笑った。
「……そうですね。できれば使いたくなかったのですが、ソリスさまの腕を甘く見ていました。怪我をしても知りませんよ?」
「いいぜ、望むところだ」
 マーニは剣を左手に持ち替えた。
 ミレトスとアルベルトが息をのむのが伝わってくる。
「では、今度こそ本気でいかせていただきます」
 低くマーニは言うと、身体を躍らせた。
「……」
 右手のときと圧倒的に違うマーニの動きにアルベルトはしばらく息をするのも忘れて魅入っていた。剣が速すぎて、目で追うのも難しいくらいだ。まるで舞を舞っているかのようなのに、その剣先は確実に急所を狙っている。
「っく、やっぱり左手のマーニは違うな」
 ソリスは呟いた。マーニに押されている。
「俺も本気出すかな」
 琥珀色の目が嬉々として輝いていた。こんなに心躍る戦いはそうはないだろう。
「左利きの魔女(スカエウオラ)……。流石だ、ルアザン大将……」
 だが、押されていたかに見えたソリスの剣がまた勢いを増していた。両者互角といったところだろうか。
 マーニはもう、頭では考えていなかった。身体の動くままに、剣を繰り出す。避ける。返す。相手がソリスだということもどうでもよくなっていた。勝ちたい。それだけだった。
 誰もが無言だった。高い金属音だけが絶えず響く。マーニの柄を握る手はじっとりと汗でぬれていた。剣を落とさないようにしなくてはと思いながら、とにかく剣を繰り出す。緊張で張り詰めた空気が心地よかった。ラミレスとの決闘が自然と思い出された。ラミレスも強かったが、ソリスもやはり強い。
 だが、終わりは唐突に訪れた。
 マーニが高々と撥ね上げたソリスの剣が、カランと音をたてて転がった。
「っ」
 これは……。
「凄いや、マーニ! 兄上よりマーニは強いんだね!!」
 ミレトスが無邪気に声をあげる。
 マーニは複雑な目で転がったソリスの剣を見つめていた。アルベルトも無言だった。
「やっぱりマーニは強いなっと」
 ソリスが軽い口調で言った。その目は笑っている。
 こんな……。ソリスさまはいったいなんで……。
「失礼します」
 マーニは剣を収め、その場を後にした。
 まったく同じ負け方。リュカーンでのラミレスとの決闘。
 跳躍して、マーニの左手に剣を振り下ろしたラミレス。それをマーニの剣は撥ね上げた。一瞬の隙を逃すまいと。でも。息が上がっている自分に対して、ラミレスは汗すらかいてはいなかったのだ。完全なる敗北。今まで出会った中で、最も強かった人。
 ああ、ローエングリン公爵……!
 いろんなことが起こりすぎて、やっと薄れつつあったその人の面影が鮮明に蘇ってしまった。苦しさに胸を押さえた。
 でも。沸き起こる疑問。
 なぜ? なぜソリスさまはこんなことを……?



「ソリスさま……」
 マーニが去った後。アルベルトが遠慮がちに口を開いた。
「ん?」
「今の……。いえ、なんでもありません」
「なんだ? 言っていいぜ? いや、そうだな。訊いてみようか。今の試合を見てどう思った?」
「どっちも凄かったよ! でも、勝ったのはマーニだよね?」
 ミレトスが興奮ぎみに言うのを無視して、ソリスはアルベルトを見た。
「……恐れながら……」
「おう」
「そうですね……負けて勝つということもあるのだと……」
 アルベルトの言葉にソリスはにやりと笑む。
「え? 何? アルベルト、何言ってるの?」
「アルベルトの言ったとおりさ。
面白い。仮だが、お前を従者と認めてやる」
「え?」
 困惑するミレトスと、複雑な顔をするアルベルト。
「さて、俺はマーニのところにでも行くかな」
「今行くのは……」
「何か文句があるか? 大丈夫だ。お前たちはここにいろ」
「は」
 ソリスは口笛を吹きながらマーニを追って去った。
 ミレトスは腑に落ちない顔をしていた。  
「結局どっちが勝ったの?」
「……ソリスさま、だと思います」
「……」
 ミレトスが何か考えるように黙る。
「……もしかして、兄上が一瞬剣を引いたから?」
「!」 
 ミレトスの言葉にアルベルトははっとした。
「見えたのですか?」
「うーん、ちょっと不自然だったかなって……」
「上出来です」
「ほんと?」
 アルベルトが珍しく賛辞を送り、ミレトスは嬉しげに微笑んだ。
「でも、なんで兄上はあんなことをしたんだろう?」
「それはわたしにも分りません」
「兄上って、よくわからないよね」
 ミレトスの言葉に、
「そう、ですね」
とアルベルトは苦笑した。本当に自分にはよくわからない人だ、と。
「ねえ、話は変わるけど、アルベルト」
「何ですか?」
 きらきらと輝くミレトスの瞳を見て、ちょっといやな予感を覚えながら、アルベルトは返事をする。
「マーニって、とても綺麗だよね? 男みたいな格好しているから分らない人が多いけれど、でも、僕、よくマーニの横顔を盗み見るんだけど、とても整っているし、それに、とても綺麗な赤い髪をしていたね」
 琥珀色の瞳宿る光はやや大人っぽさを帯びていた。
「……ええ、確かに綺麗なお方だと思います」
「だよね~。僕が兄上だったらほっとかないのにな」
 そう言ってちらりと唇を舐めたミレトスをアルベルトは凝視する。
 やっぱり、ミレトスさまもソリスさまと同じ血を……いや、アリク王と同じ血をひいているのだと思ったアルベルトであった。



 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 まだまだ続くと思われます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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 それではまた!               天音花香

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 こんばんは。天音です。

 お久しぶりになるのかな。
 

 最近書く短編は意味がわからないのが多いなあと自分でも思います。
 小説を書くとき、登場人物に名前をつけるのが結構好きなのに、最近のは名前すらでてこない……。自分でも何で書いているのかよくわからないのですが、あえて言うなら思いつくままに書いています。
 今回のタイトルは「煙草」ですが、私は吸いませんので、リアリティがなかったらすみません。
 

 拍手ときどき頂いています。ありがとうございます。
 一言あったら、もっと喜びます。
 よろしくお願いいたします。


 では小説いきます。


 ココから小説
 
 

 煙草


 ピピピピ……
「う……」
 私はベッドの脇に置いてある目覚ましを止めた。
 七時。
「……」
 目覚ましの横を手で探って、あ、と思い直す。そういえば、禁煙をしていたんだっけ。しばらく切っていない髪をわしゃわしゃとかいて、ベッドから出た。
「……」
 だめだ。我慢できない。煙草、煙草……。
 メイクをするより、少しでも長く寝たいから、七時に合わせてある目覚まし。
 まずいな。遅れるかもしれない。でも、煙草が欲しい。確か引き出しの奥にまだ数本あったはず……。
 キャミソールにショーツという、ほとんど裸に近い姿で、あたり構わず引き出しを開ける。
 あった!
「ふー」
 自分の口から出る煙をぼんやり見つめる。肺にニコチンが入ってくる。頭がすっきりしてきた。久しぶりの煙草は想像以上に美味しい。
「……」
 なんで夢に出てきたのかな。もう忘れていたのに。
 学生のときの片思いは、淡くて儚くて、なんだろう、何かに似ている。確か甘いもの……。
 甘かったかなあ……。
 見た夢を回想する。確かに夢は甘かった。アノ人が私に微笑みかけるなんて。手をとって電車に乗り込むなんて。
「ふ、ふふ」
 現実じゃありえなかった。目を合わす事さえ恥ずかしくて、でもそれがくすぐったくて、大切で……。
 今だって違う人に片思いをしているのに、今の私は、甘い何かより、煙草の方がずっと美味しい。嘘もつくし、恋の駆け引きを楽しんでいる。でも、胸が苦しいと思うのは同じかもしれない。
 私から煙が出る。
「……。あちっ」
 いつの間にか短くなっていた煙草を慌ててテーブルに押し付けた。
 まったく、汚いな、何もかも。
「やばい、遅刻する」
 おきっぱなしのスーツから一着選んで、着ながら、栄養ドリンク剤を飲む。髪を手ですいて、眉をかいて、口紅をひく。
 履いても履いてもなれないピンヒールの靴に足を入れて、鍵を閉めた。
 ああ、もう一本ぐらい吸いたかった、なんて思いながら、私はいつもの駅までの道を走った。
 



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 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 暗くてすみませんです。

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 それではまた必ず!               天音花香

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こんばんは。こんな時間に天音です。
書いていたら遅くなってしまった……。


体調、少しずつ回復しています。

今日は新しい試み。
選択場面は2つですが、ギャルゲーもどきを書いてみました。
一度、こういう選択肢のあるもの書いてみたかったんですよね。
本当は乙女ゲーを書いてみたいのですが、妄想暴走女になりそうなので、
とりあえず、ギャルゲーにしてみました。
くすぐったいような恋愛ものは書いていて楽しいですね。
ですが。
私は決して変態ではありません!
抵抗のある方はご遠慮下さい。
年齢制限はありません。
選択肢の結果は少し離して書いてはいますが、
それぞれ以外、見ないようにして読んでくださいね。

タイトルは思いつかなかったので、なしです。


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よろしくお願いいたします。


では小説(?)いきます。


ココから小説


  

 小学生のとき、好きな女子にいたずらばかりしていた。
 同じマンションに住んでいる相川 舞(あいかわ まい)。
 特に容姿がよかったとか、明るくて目立っていたとか、そんなのはなかった。恥ずかしがりやで、口数は少なくて、でも、人の話を優しく笑いながら聞いている……。そんな女子だった。でも、俺にはそんな舞が魅力的に見えた。
 自分の方を向かせたいと思った。
 だから舞の、後ろでくくられていた髪をひっぱった。
「きゃ」
 髪を抑えて後ろを向いた舞。怯えた目だったけれど、それでも、初めて舞の目が俺だけを捕らえて……。そして、その愛らしい声に、俺はすっかり魅せられてしまい、その後も何度も何度も髪をひっぱった記憶がある。


 
「ち、雨……」
 体育の水泳が今日は最後の授業で、タオルでせっかく拭いた髪が、雨に打たれてまた額に張り付いた。そればかりか、雨の勢いが強く、制服まで体にべったりとまとわりつき、気持ちが悪い。ついてない。
 でも、そういえば朝のニュースで雨だって言ってたから、おふくろが折りたたみ傘を渡してくれたんだっけ。
「……」
 ああ、でも、住んでいるマンションはもう見えている。傘を出すまでもないか。俺は、先ほど使ったばかりのバスタオルを被るようにして、走ることにした。早く帰ってシャワーを浴びよう。
 走っていると、前に一人の女子高生の姿が見えた。
「……!」
 高校二年生になった今でも、舞の後姿は覚えている。それは、いまだに俺が舞を忘れられないからだった。
 今、前を歩いているのは間違いなく舞だと俺には分かった。
 背は昔より若干高くなっている。でも、癖のないストレートの髪。小さな頭。そんな女子は5万といるだろう。でも、この後ろ姿は舞だと俺の勘が告げるのだ。
 どうしようか……。

1、声をかける               →①へ
2、髪をひっぱる              →②へ
3、何もしない               →③へ















「相川!」
 俺は舞の隣に並び、声をかけてみた。
「え、保坂君? 久しぶりだね」
 俺は違和感を覚えた。声が、違う?
「ごめんね、相川さんじゃなくて」
「あ、いや……。俺こそごめん、間違っちゃって……。
えっと、小島さんだったっけ?」
「そうそう、よく覚えてたね。
保坂君、よく舞にちょっかいかけてたよね~。舞、私と一緒の高校なんだよ」
「そうなんだ」
「変わってないよ。あ、でも少し綺麗になったかも……。好きな人でもいるのかな」
「……そ、そっか……。
……あ、俺、折りたたみ傘持ってるんだ。俺んちはあのマンションだし、これ、使いなよ」
「いいの? ありがとう。じゃあ、舞に返すように言うね」
「! あ、う、うん。……それじゃ!」
 俺はまた走り出した。
 別の女子と舞を間違えるなんて……。俺の目ももうろくしたものだな……。
 あーあ。              
                  END 0点 














「きゃ!」
 舞の声! 俺は嬉しさに胸が震えた。
「ほ、保坂君……」
 舞が戸惑いながらも俺を振り返った。
「……よお、久しぶり」
「……久しぶり……」
 舞は恥ずかしそうに下を向きながら答えた。変わってない。やっぱり舞だ。
「元気にしてる?」
「う、うん……。保坂君も元気そうだね」
「ああ。
相川は、高校……」
 ふと舞を見て、俺は続きを言えなくなった。
「え? 何?」
 被っていたバスタオルを舞の肩に乗せる。
「す、透けてる、から……」
 そっぽ向いて俺は言った。やばい、顔が熱い。
「あ、ありがと……」
 舞は、バスタオルで体を包むようにして、前で合わせた。
 舞の顔も赤い。
「……」
 ダメだ。何を言おうとしていたんだっけ。あ、そうだ。
「相川は高校はどこ行ってんの?」
「……東中央高校。保坂君は……その制服、西北高校だよね」
「そうそう。よく知ってるね」
「うん……。ここら辺で、男子がブレザーの高校ってそこだけだから……」
 無言で歩く。マンションが近づく。
「あ、俺、傘持ってたんだ」
 とにかく時間を稼ぎたいと思った。折り畳み傘を鞄から出す。
「あ、ありがとう……」
「い、いや、別に……」
 これって、相合傘ってやつじゃないのか? そんなことをふと思って、俺はまた赤面した。
「……」
「……」
 何か話さなければと思うのだが、言葉が出てこない。雨が傘を叩く音だけが響く。
 ふと舞が俺を見上げた。
「保坂君、変わったね。私も背、伸びたと思うんだけど、でも、保坂君の方がずっと高いや」
 そう言って、ふんわりと笑った。笑った!
「そ、そーだな。なんか、高校入って急に伸びて、今175センチある」
「そっかあ……。高いはずだね」
「あ、ああ」
「……それに、なんだか雰囲気が変わった気がする」
 舞は俯いて小さくそう言った。
「え? そーかな?」
 どんな風にだろう。
「……なんか柔らかくなった感じ……」
「そお?」
「うん……。髪をひっぱられたときはびっくりしたけど……」
「あ~、ああ。えっと、ごめん。痛かったよな」
「そ、そうだね。でも、だからすぐ保坂君って分かった」
「……まじ?」
「……う、うん」
「小学校の頃、何度もひっぱったもんな。えっと、今更だけど……ごめん」
 舞はちょっと驚いた顔をして俺を見た。
「な、何?」
「わ、私……、保坂君に嫌われているのかなって……思ってて……」
「き、嫌ってたわけじゃ、ねえ、よ……?」
「そ、そうなんだ……」
 ああ、もう、マンションの敷地内に入ってしまった。どうしたらもっと長く一緒にいれる? 何か、何か……。
「そ、そう言えば!」
「う、うん?」
「えーっと……」
 口にしたけれど、続かない。何か、何か……!
「そ、そーいや、俺、今日、家の鍵、忘れた!」
 咄嗟に嘘をついた。それを言って何を期待しているんだ俺は!
「そうなの……?」
 舞の心配そうな声。
「あ、ああ。でも、まあ、たぶんもう少ししたらおふくろも帰ってくると思うし……」
 何やっているんだか、俺……。
「……」
 舞はちょっと考え込んでいるようだった。
「風邪ひいたら、大変だよね……」
「ああ、大丈夫、大丈夫! 俺、強いし!」
「……」
 マンションの階段にさしかかる。俺は傘をたたんで、ばさばさと水を払った。
「……保坂君」
 舞が遠慮勝ちに声をかけてきた。
「……何?」
「……お母さん帰って来るまで、うちに来る?」
「え?」
 心配そうな舞の目。嘘なのにな……と罪悪感を覚える。第一、いいのか、家になんか上がって……!?
「せめて乾いたバスタオルで拭くだけでも……」
 舞は何も心配なんかしてない。というか俺を意識もしていないのだろう。だとしたら、ここで断るのも余計におかしいかもしれない。
「……えっと、じゃあ、バスタオルを借りようかな」
「うん……そうして? 私もバスタオル、借りちゃったし……」
「あ、別にそれはいつでもいいから、返すの。すぐ近くだしな、家。えっと、何号室だっけ?」
「407号室」
「あー、そうだったっけ。うちは、302だから。ま、いつでも」
「うん。わかった」
 って、本当にこのまま舞の家に行くのか?! 俺!?
 3階から4階への階段を2人で上る。
「鍵、開けるから、ちょっと待ってね?」
「あ、ああ」
 舞が鍵を開けている。まずい、かなり緊張してきた。心臓が、早鐘を打っている。
 舞もなのだろうか。なかなか鍵を開けられないでいる。
「ちょ、ちょっと待ってね」
「あ、ああ。あせらないでいいぜ」
「う、うん……」
 カチャリ。
「ど、どうぞ?」
 舞が一度振り向いて言った。俺はどきどきしながら一歩踏み出す。
 が。
 !?
「きゃ!」
 舞が何かに(たぶん靴だろう)つまずいた。
 咄嗟に庇った俺は舞と一緒に倒れこんだ。
「っ痛!」
 玄関の段差のところにちょうど頭をぶつけて俺は思わずうめいた。
 でも、よかった。舞は無事のようだ。
 とほっとしたのもつかの間。
 無意識に舞を抱きかかえるようになってしまったので、俺の左手が……、左手が、舞の背中に……。でもっ! これは不可抗力だ!!
 恐る恐る舞を見て、ますます俺は焦った。ち、近すぎる!! 
「あ……」
 やばい。意識すると、思った以上に軽い舞の体重を感じてしまい……。
 それだけでなく……密着した膨らみが……。
 これはまずい!! 
 あ、舞の心臓の音が伝わってくる……ってことは俺のも伝わっているってことか?
「ご、ごめんなさい!」
「あ、ああ」
 舞が起き上がろうとしているが、なかなか上手くいかない。
 あ、ダメだ、もう、俺。

1、舞を起こすのを手伝う          →④へ
2、舞の胸に触れる             →⑤へ
3、舞を抱きしめる             →⑥へ
 
 







 たぶん、舞だ。だけど……。
 今更声をかけることなんてできない。俺は脚を止めることなく走った。
 すれ違う瞬間、横目で見て……。
「あ……」
 舞の小さな声が聞こえた気がした。でも、俺は聞こえないふりをして走った。
 ああ、なんて小心者な俺……。

              END -1点









「だ、大丈夫?」
 俺は舞の肩をそっと掴んで、上に押し上げたので、二人で玄関に座り込むような形になった。
「あ、ありがとう……」
 お互い、恥ずかしくて、顔を見ることが出来きない。顔が熱い。こういうときどうしたらいいのだろう。
「あ、あの……。頭、大丈夫? さっき、痛いって……」
「あ、ああ。ちょっと痛かったけど、大丈夫。それより、相川は大丈夫?」
「う、うん……。保坂君のおかげで……」
「そ、そっか、よかった……」
「……」
「……」
 このままでもまずい気がする。バスタオルをかけたとは言え、目のやり場に困る……。
「相川さ、風邪ひくとよくないから、シャワーか何かかかったら?」
「あ! う、うん。じゃあ、保坂君にバスタオル持ってくるね!」 
「うん、そうしてくれるとありがたい」
 舞はゆっくり立ち上がると、洗面所の方へ歩いていった。
「はあ~」
 俺は安堵か何かわからない息を吐いた。これでいいんだ。うん。
 すると舞がバスタオルを手に戻ってきた。
「はい。これ……バスタオル」
「あ、さんきゅ。俺、じゃあ、これでふかせてもらうから」
「うん……。じゃあ、私、シャワーかかってくるから……」
 そ、それもまずい気がする……。
 せっかく取り戻せた理性が崩壊しそうで……。
「あ、あのさ。 バスタオル、もう一枚だけ貸してもらえる? 俺、バスタオルがあれば大丈夫だから、おふくろ帰って来るの下で待ってるわ」
「……? 大丈夫? 寒くない?」
「ああ、大丈夫、大丈夫。夏だし」
 俺はもう一枚バスタオルをもらって家に戻った。
 まあ、バスタオルを返すということで、また会う口実もできたことだし、これでよかったことにしよう。
 しかし……。鍵を持っているのに、家の前で待つふりをするってのも、なんだか馬鹿げた話だが。
 でも。
 舞の重みを思い出して、まあ、いいか、なんて思う俺。これを機に舞との仲が発展できればいいな。

             END +1点









 密着した体から舞の体温が伝わってくる。
 もう、限界だ。
 俺は舞の柔らかな膨らみに触れてしまった。
「!」
 舞がびくっと振るえた。次の瞬間、俺の頬に痛みが走った。
 呆然として舞を見ると、舞は真っ赤になって、涙を流していた。そうか、俺、舞に平手打ちを食らったのか……。
「……ほ、保坂君、最低……!」
 舞は自分で起き上がると、俺を避けるように離れた。俺はとんでもないことをしてしまったことを悟った。
「……ごめん。俺……」
「……もう、帰って」
「うん……、ほんと、ごめん」
 俺はうなだれて、舞の家を出た。もう、舞は俺に会ってはくれないだろう。
 せっかく会えたのに。ああ、俺はなんて最低なんだ……。
 
             END -2点











 舞の体温が温かい。
 不思議な感じだ。好きな女の子とこんなに密着することなんてなかなかないだろう。だめだ。愛おしさが……。
 俺は、思わず舞を抱きしめてしまった。大切なものを触るようにそっと……。
「ほ、保坂君……?」
 驚いたような舞の声。
「……怪我しなかった?」
「う、うん……」
「よかった……」
「……あ、ありがとう……」
 舞の鼓動が伝わってくる。少し早い。きっと俺のも早いはず。
「あ、あの……」
 舞の戸惑うような声に、俺ははっとした。俺は何をやっているんだ?
「ご、ごめ!」
「う、うん……」
 ゆっくり舞を抱き起こす。
「……」
 しばらく俺たちは無言だった。でも、その無言は優しいものだった。
「え、えっと、私、バスタオル持って来るね」
「あ、ああ」
 舞は一度洗面所の方へ行って、タオルを手に戻ってきた。そして。
「え?」
 舞は俺のぬれた髪をタオルで優しく拭きだした。
「相川……?」
「あ、あの……。助けてくれたお礼……」
 舞が近い。舞が優しい。なんだか俺はそれだけで、感動していた。俺、なんて幸せなんだろう。小学生のとき、あんなにいたずらばかりして、困らせていたのに……。
「相川……、ありがとう……。でも、俺……」
「うん?」
「こんなに近いと、なんだか、どきどきして……」
 俺は正直に気持ちを言ってしまった。
「……うん……」
「俺……」
 俺の言葉に、舞は手を止めて、俺の顔を覗き込むようにした。
「あ、相川!」
 舞のアップに思わず俺は声をあげてしまった。
「保坂君……あのね」
「あ、ああ」
「私ね、保坂君が髪をひっぱるから、悲しかったの……」
 舞の言葉に、ちくっと心が痛んだ。
「それは……違うんだっ!」
「……」
 舞は俺をまっすぐ見つめている。
「それは、俺、相川に俺を見てほしくて……! 相川の声を聞きたくて……」
 俺の言葉に、舞はふわりと微笑んだ。
「……友達がね、保坂君が私の髪をひっぱるのは、保坂君が私を好きだからだよって言ったの……。でも、私、そうは思えなくて……。でも、それを聞いてから、保坂君をちゃんと見るようになったの。そしたら、確かに保坂君、私の髪しかひっぱってなくて、私、ちょっと期待するようになっちゃったの」
「え?」
「保坂君は私のことが好きなのかなって……。でもね。嫌いだからするんだって思うほうが大きくて……。だから、期待しちゃだめって自分に言い聞かせてた……」
「相川……。俺、相川が好きなんだ……」
 舞は、俺の言葉に恥ずかしそうに頷いた。
「……嬉しい……。私も本当は保坂君が好きだったから……」
「ま、マジで!?」
 舞は、小さく頷いた。
 やばい、嬉しい! 
「相川……!」
 俺は今度はぎゅうっと舞を抱きしめた。
「ほ、保坂君!?」
「好きだ!」
「……うん……」
 俺たちはしばらくお互いの体温を感じていた。
「あ、あのさ。舞って呼んでいい?」
「うん……」
「あ、あのさ……キスしていい?」
「……まだダメ」
 舞はちょっと怒ったように顔を赤らめた。
「俺と付き合ってくれる?」
「……うん」
 今度は舞はしっかり頷いた。

                 END+2

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 選択肢を二つに絞ったので、展開が早くなってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。
 シチュエーションは単なる思い付きです。なんか恥ずかしいですが。



 ここまで読んでくださりありがとうございました。

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 それではまたできれば近いうちに……。            天音花香

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