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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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天音花香
HP:
性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
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こんにちは、天音です。

小説は久しぶりになります。
しっかし、私はありがちなべたな小説ばかりだなあと自分で思っちゃますね。
そういうべたな小説ですが、読んでいただけると嬉しいです。「おそろい」


         

ココから小説


         おそろい


 今日の私は昨日の私よりちょびっと可愛い(ハズ)。
 髪を結ぶ位置を少しだけ高くして、いつもは普通のリップだけれど、今日は薄いピンクの色付きリップを塗った。そして、左中指にキティちゃんの絆創膏。
 よし、大丈夫。
「おはようございます」
 言って教室に入って、黒板を見る。その隅に書いてあるのは私の名前と矢野君の名前。今日は好きな人と日直の日。
「お、おはよう! 矢野君。私、日誌とってくるね」
「あ、いいよ、俺が行くから」
「えっと……」
(それじゃあ、一緒に、なんて言えるわけないよね)
「じゃあ、お願いします」
「うん、行ってくる」
 爽やかな矢野君の笑顔に、胸がきゅんとして苦しい。やっぱりかっこいいな、矢野君。
(リップ、気づいてくれたかなあ……)

 授業の合間の黒板消し。
 私の届かない高いところを矢野君が消してくれた。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」
 矢野君との距離がとても近くて、私の心臓は早鐘を打った。頬も熱い。きっと赤くなってる。恥ずかしい。けど嬉しい。先生、もっと黒板に書いてくれてもよかったのに。
「森木さん、具合悪い? なんか赤いけど、座ってていいよ? 俺消しとくから」
「うううん、そんなことないよ? 大丈夫だよ? 私も日直だもん、矢野君だけにやってもらったら悪いよ」
「気にしなくていいのに」
「大丈夫!」
 せっかく矢野君の近くにいれるんだもん。
 矢野君がくすりと笑った。
「森木さん、いい人だね」
「そ、そんなことないよ?」
 ちょっと心が痛む。一緒にいたいという我儘からだから。
 そんな私の内心に気づくこともなく、惜しげなく笑顔を見せてくれる矢野君につい見入ってしまう。
 好きになってからどんどん矢野君がかっこよく見えるようになって、戸惑う時がある。これ以上かっこよくなったら、直視できないかも。

 授業が一限、二限と過ぎていく。まだ終わらないで。もっとゆっくり時が過ぎますように。
 そう思っていても一日はあっという間に過ぎていく。

 放課後。
「日誌書こうか」
「う、うん。あ、私書くから、矢野君は内容考えて?」
「内容かあ。そっちの方が難しい気がするけど?」
 矢野君が笑った。
 西日の差す教室で、机を挟んで矢野君と向き合う。机、結構小さいんだな。矢野君の前髪が私の前髪に時々あたってくすぐったい。全神経が髪に集まったみたい。矢野君の髪って、日に透けると茶色になるんだな。どきどきする。
「森木さんの字って丸っこいね」
「そ、そうかな?」
「女の子らしい字」
「ありがとう、でいいのかな」
 そんなこと言われたら、書きづらいよ。でも、でも、女の子らしいって嬉しい!
「あ」
 不意に矢野君が声を発した。
「どうしたの?」
「森木さん、左手の中指」
 どきりとした。気づいた。矢野君が気づいた。
「うん、昨日お母さんの料理の手伝いしていてちょっと怪我しちゃったの」
 嘘だった。
「そうなんだ? お手伝い、偉いね。それ、キティちゃん? 可愛い絆創膏があるんだね。俺も左手の中指、一昨日怪我して絆創膏」
 知ってる。だから怪我もしてないのに自分の指に絆創膏を貼ったのだ。
「お、おそろいだねっ!」
 そう言って顔を上げて矢野君を見ようとすると、ごつんと音がした。びっくりして目を上げると矢野君の顔しか見えなかった。近い。近いよ。さっきのは……。
「あ、あははっ」
 矢野君が笑い出した。
「ふ、ふふふっ」
 私もつられて笑ってしまった。
「でこ、痛くない?」
「うん、大丈夫」 
「こっちもおそろいだね」
 矢野君の言葉。
「う、うん……!」
 日誌を書き終わって、職員室に出しに行く。
 今日はあっという間の一日だった。矢野君とお揃いの絆創膏に触れる。一日を振り返って、思わず微笑んでしまう。いい一日だった。
 あれ?
「? 矢野君、まだ帰ってなかったの?」
「うん。森木さんって○○町の方だよね? 俺も方向一緒なんだ。遅くなったし、一緒に帰ろうかなと思って」
 サプライズだ。
「うん、一緒に帰ろう」
 私は満面の笑みで返事をした。矢野君も笑った。ちょっと恥ずかしそうな笑みだった。
 日が沈もうとしている。
 地平線が橙色に染まって、空気まで橙色になったみたい。
「綺麗だね、夕焼け」
「うん」
 私と矢野君はポツリポツリと話しながらあるいた。
「あのさ、森木さん、今日唇に何か塗ってるの?」
「!」
 矢野君が気付いた!
「う、うん。今日は色付きリップを塗ってるんだ」
「ふうん」
 矢野君はこっちを見ないでそう返事した。なんだか拍子抜けだ。
 がっかりして歩いていると、
「それ、可愛いかも」
 こっちを見ないまま矢野君がそう言った。夕日のせいなのか、矢野君の顔が紅く染まっているように見えた。
「え、えっと……ありがとう」
 しばらく無言で二人で歩く。
「あ、私、こっちだから……」
「あ、うん。じゃあね」
 このまま別れちゃうのかな。それはいやだな。どうしよう。どうしようかな。
「あのっ!!」
 矢野君が振り返る。
「今日、矢野君と日直、楽しかったよっ」
 胸が痛い。顔が熱い。でも言いたかった。
 矢野君がこっちに歩いてきた。
「うん。俺も楽しかったよ」
 にっこり矢野君が笑う。ああ、こんなにもこの笑顔が愛しい。私、やっぱり矢野君が好きだ。
「森木さん……」
 矢野君がちょっと言い辛そうに口を開く。
「……色付きリップは、いつもはつけない方がいいと思う、な……」
 つぶやくような声で矢野君が言う。 
「え?」
「キスしたくなるから」
 そっぽをむいた矢野君の口からもれた言葉。矢野君の耳が紅くなっていた。
「ええ!?」
「な、何でもないっ。じゃあね、森木さんっ」
「え、ええ?!」
 矢野君は走っていってしまった。
 えっと……。これはどういう意味なのかな。心臓がバクバクいって、思考が麻痺してしまう。
 えっと……。期待していいのかな。期待しない方がいいのかな。わからない。明日、どんな顔をして矢野君に会えばいいのかな。わからない。どうしよう。
 でも……。気持ちもおそろいだといいな。


 
                         了


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                           天音花香

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こんにちは、天音です。


今日もべたな小説をお送りいたします。

おバカなキャラはあまり書いたことがなかったので楽しかったです。
生徒と先生は好きな組み合わせ。
お楽しみいただければ幸いです。


「視線」


         

ココから小説


                視線


 今日のみっちゃんは前髪が少しはねている。髭は今日はそってないみたい。相変わらず目が 大きいな。白衣の襟がちょっと曲がってる。直してあげたいな。
 あ、目があった。今日の授業では二回目。まだまだ時間があるし、5回以上は合わないと。あ、また目が合った。
「いいか、ここ重要だからな。しっかりノートに書き込んどけよ」
 みっちゃんの低い声、とても好き。なんだか安心する。
 黒板には興味ないの。わかんないことばかり書いてあるから。みっちゃんの教え方が悪いわけじゃないんだよ。友達はわかりやすいって言ってるもの。ただ私が理解できない頭の悪い子なわけ。 
 あ、また目が合った。これで三回目。あ、みっちゃん目をしかめた。もしかして、気づいた? もっとこっちを見て。
 見た! あ、ちょっと照れた風に目をそら したよ。
「村上」
 きゃ、名前呼ばれちゃった。
「村上!」
「はあい♡」
 私の声にみっちゃんは天を仰ぐしぐさをした。
「お前、さっきからシャーペンも出してないみたいだが、ちゃんとノートとっているのか?」
「とってません」
「さっきここは重要だといったよな」
「そうだったかもです」
「……」
 みっちゃんがふうとため息をつく。教室では笑いが起こる。化学がある日はいつもこんな感じ。
「……とにかく、ノートはとりなさい」
「……はあい」
 ノートなんてとってる暇なんかないのよね。みっちゃんの授業は毎日あるわけじゃないし、授業の50分なんて限られた時間なんだから、少し でもみっちゃんの新しいところを発見したいんだもん。ノートは友達にうつさせてもらえる。友達は私がみっちゃんらぶなこと知ってるから。っていうより、教室のみんな知ってる。みっちゃんも含めて。
 私はシャーペンをとりあえず握るだけ握ってみっちゃんの観察を続ける。
 目が合った。五回目だ! たぶんみっちゃんも意識してると思うのよね。これだけ目が合うんだから。もちろん私を生徒としかみていないのはわかってるんだけどね。でも好きになってしまったんだもの、諦められるわけなんかない。
 目が合った。あ、怒ってる。
「村上」
 みっちゃんが近づいてくる。そして、げんこつを私の頭に落とす。痛くないようにちゃんと加減はしてくれてるのよ。 私はみっちゃんの長い指が自分の頭に触れたということが嬉しくて仕方ない。私のシャンプーの香りがみっちゃんの指につけばいいのに。
 あ、チャイムが鳴っちゃった。もう終わりかあ……。もっとみっちゃんを見ていたいのになあ。
「村上。昼食の後、化学準備室に来なさい」
 え? 呼び出し? 嬉しいな。またみっちゃんに会えるんだ。
「はあい♡」
 目が合うと幸せ。
 名前を呼ばれるともっと幸せ。
 げんこつはさらに幸せ。
 呼び出しは最高に幸せ。


 明美ちゃんと静香ちゃんと昼食。
「花ちゃん、また呼び出しだよ~?」
「なんて顔してるの? 呼び出しくらってそんな顔するの花だけだ よ。
みっちゃんそんなにいいかな? 私にはわかんない」
「呼び出し、がんがん来いっ! 
みっちゃんの良さをみんながわかったら逆に困るよ。私、みっちゃんが好きなことは誰にも負けないと思うけど、それ以外はごくふつーな女子高生だから、ライバルは少ない方がいい」
 私の言葉にいつも通りあきれた顔をする二人。
「私はね、花ちゃんにもっと充実した高校生活を送って欲しいのよ」
「明美ちゃん、私、十分充実してるよ? 毎日」
「そうじゃなくてね、高校生同士なら付き合ったりできるでしょ? 先生は、無理だよ?」
 私はおかずを箸でとっては戻しをしながら明美ちゃんの言葉をきく。
「そんなのわかってるもん」
「まあまあ、花が充実してるって言うんだからいいんじゃない?」
 静香ちゃんがフォローをしてくれた。
「そうそう、私はみっちゃんと付き合えなくても楽しいよ? でもみっちゃんに彼女とかいたら、泣いちゃう」
「たぶんいないよ」
「たぶんいないと思う」
 二人の声が重なった。
「なんで? みっちゃんかなりいい男だよ?」
「花にはそう見えるだけで、よれよれの白衣きたおっさんだよ」
「そんなことないよ? まだみっちゃん27歳だもん!」
 私は声をあげる。
「花ちゃん。27歳っていったら、私たちより10歳も年上なんだよ? おじさんでしょ」
「そんなことない。みっちゃんは誰よりかっこいい」
 私は残りのご飯をパクパクと口に運ぶ。
「私、化学準備室に行ってくる」
 弁当を食べ終わりすくっと立ち上がった私に、
「花、歯磨き」
「そうだった」
 私は歯磨きをすぐに終わらせて、
「行ってくる!」
 と二人に言って走りだす。
「村上さん、廊下は走らない!」
 なんか先生が言ってる気がするけど、一分も惜しいんだもの。
「村上です」
 ガラっと大きな音を立てて、化学準備室のドアを開けた。
「おう」
 みっちゃんの低い声がした。
 みっちゃんはまだ弁当を食べていた。すかさずその弁当をチェックする。それはコンビニ弁当だった。よかったと胸をなでおろす。
「なんだ 、来てそうそう落ち着きのないやつだな」
「みっちゃん、コンビニ弁当なんか食べて、彼女いないんだね」
「……お前は~。
みっちゃんはやめなさいっていってるだろう。彼女は、彼女はな……今はいないだけだよ」
 あ、ちょっと凹んだみたい。
「私(の母)が作ってこようか?」
「村上じゃなくて、村上のお母さんが作るんだろ?」
「すごいね、みっちゃんエスパー?」
「村上に料理ができるとは思えない」
「みっちゃん結構ひどいことをあっさり言うね」
「だからみっちゃんはやめなさい」
 お弁当を手に言うみっちゃんがなんだかかわいらしくて、私は笑ってしまった。
「笑うところじゃないぞ?」
「 みっちゃん可愛い!」
「……先生に向かって可愛いはないだろう。まったくお前は……」
 みっちゃんは困ったように笑った。
「そうだ、呼び出ししたのに村上のペースにはまってしまった。
村上」
「はい?」
「授業中はちゃんとノートをとりなさい」
「ノートは友達に見せてもらうから大丈夫です」
「おい、大丈夫か大丈夫じゃないかじゃなくてだな……」
「はい?」
「授業中は授業に集中しなさいってことだ」
「集中してますよ~、みっちゃんに」
 みっちゃんの目が半眼になった。
「そこ、間違ってるぞ。俺にじゃなくて、授業に集中するように言ってるんだ」
「なんで?」
「なんで、だ って? いいか、学校は授業を受ける場所だ。学生は勉強が仕事なの」
「みっちゃんだって好きな人が前にいたら見たくなるでしょ?」
 みっちゃんの頬が少し赤くなったのを私は見逃さない。みっちゃんうぶだから。可愛いの。
「そういうことじゃなくてだな」
「私の言ってること間違ってる?」
「それは、間違ってはいないかもしれないが、授業は授業だ。
いいか、例えばだ、村上の友達に好きな人がいたとする。その友達は授業中好きな人ばかりを眺めていると思うか?」
「思います!」
 ガッツポーズで答える。
「いや、授業中は授業をちゃんと受けているだろう」
「そんなはずないじゃないですか。好きな人が教室にいたら 、ずっと見ていると思います」
 私は胸を張って言った。
「ああ……俺の例えが間違っていた」
 みっちゃんはふうと息をはいて、椅子の背もたれに背中をもたれた。
「いいか、先生も人間だ。四六時中見られると恥ずかしいと思うものだ」
 みっちゃんは私の顔を見ないでそう言った。
「みっちゃん、何度か目が合うと照れるもんね。そのあと怒るけど」
 みっちゃんが私の方を向いた。
「気が散って授業が思うようにできないと俺も困る」
 みっちゃんの言葉に、私はみっちゃんを見つめる。
「みっちゃん、困ってるの?」
「あ? ああ」
「本当に?」
「ま、まあ」
 私は考え込む。
「私は みっちゃんを好きだから、ずーっと見ていたいけど、大好きなみっちゃんが困るのも嫌」
「そ、そうか」
「じゃあ、授業の半分だけみっちゃんを見ることにする」
「は?」
「それならいい?」
 私は真剣に言った。
 真剣な私にみっちゃんは破顔した。
「なんで笑うの?」
「内緒」
「もう! 結局、授業の半分だけでいいの?」
 私はやきもきしながら言う。
「いや、もういいよ。村上の気持ちはわかったから。じゃあ、こうしよう。
化学で赤点をとらなかったら頭を一回なでてやる。だから化学も勉強してくれ」
「ほんと? なでてくれるの?」
「ああ」
 私はみっちゃんの手が私の頭をなで るのを妄想して、幸せな気持ちになった。
「それなら頑張る! でもみっちゃんのことも見つめる」
「ああ、頑張ってくれ。
じゃあ、戻っていいぞ」
「まだいてもいい?」
「それはダメ。はいはい、もうすぐお昼休みも終わる。次の授業の準備しておけ」
「はあーい」
 私がいやそうに返事をすると、みっちゃんは笑っていた。
「失礼しました~」
 またガラリとドアを閉めて化学準備室を出た私にはみっちゃんの呟きは聞こえなかった。
「いつまで俺のことを好きでいてくれるんだか」

 私は化学の勉強もするようになった。みっちゃんからなでてもらえるために。
 でも、相変わらずみっちゃんのことは見つめている。
 最近目が合うのが多くなった気がするんだ。今日はもう、五回目。みっちゃんの照れて視線をそらすところが可愛くて仕方ない。もうそろそろげんこつかな~。思わず微笑んだ私に、
「む~ら~か~み~」
 とみっちゃんの私をしかる声が聞こえてきた。
「はあい♡」


                                   
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お久しぶりです、天音です。


メンタルの調子が上がったり下がったりで、動ける日と全く動けない日があるのですが、最近は動けない日が多く、寝たきりのときもあります。
夢を見るというのが唯一の楽しみだったりします。ちょっと寂しいですね。
今回の小説はベッドで寝たまま携帯のメモ機能を使って書いたものです。
シチュエーション短編なので短いです。
楽しんでいただけると幸いです。


ココから小説


   
        イルミネーション



「あの、あのね。イルミネーションが綺麗らしいの。田川君と一緒に見たいんだ。今日、18時半。西公園の入口で待ってるね」
 手足が長くて、歩くのが早い田川君の学ランの裾をやっとのことで捕まえて言った私に、田川君は振り返って大きく目を見開いた。
「え?」
 驚くのは当然だ。私たちは付き合っているわけでもないし、私は告白すらしてない。高校一年生からずっと片想いの私。
「お願い。受験前に思い出が欲しいんだ。待ってるね!」
「ちょっと、花田さん!」
 田川君の返事を待たずに私は走り出した。
 来ないと思う。来たらラッキー。それ以上なんて望んでない。それでも、心臓がうるさい。顔がにやける。結果もわからないのに、なぜか満足。誘えた。ただそれだけで自分の中では大きな一歩のような気がして。
 今日来ても来なくても、明日はいつも通りに。来なかったら今日一日だけ泣こう。
 自転車に乗って冷たい風を切りながらそんなことを考えていたらあっという間に家についた。


 お洒落はしていかない。ひかれたら困るから、なるべく普段着で。まちぼうけをくらうかもしれないから暖かくしていかなきゃ。

 バスに乗って、町の中心地まででる。クリスマスシーズンだから人が多い。人混みは苦手だけど、今日は我慢。
 車が混んでいてなかなかバスが進まない。自分で誘って遅刻じゃ洒落にならないな。携帯で時間を何度も確認しては、バスから外を眺めた。
 田川君、来るかな。
 田川君にとっては、一、二年のときにクラスメイトだった女子の一人に過ぎない。そんな女子からの突然の誘い。迷惑だろうな。お互いの携帯番号さえ知らないから連絡もつかない。まるで脅迫みたい。そう思うと少し笑えた。だから来なくても恨んだりしないよ。
 でも。
 名前は覚えていてくれた。それだけでも鼻の奥がつんとする。
 バス停についた。待ち合わせ時間まであと、10分。
 西公園まで走っていくと、入口付近に見慣れた背の高い男子がいた。
(え?)
 私が駆け寄ると、彼は下を向いていた視線を私に向けた。
 田川君の私服、初めて見る。長い足にジーンズが似合っていた。
「田川君!は、早いね!」
「ん」
 短い返事。田川君らしい。
「どのくらい待たせた?」
「別にそんなに待ってない」
「そっか、ごめんね。寒いのに来てくれてありがとう!」
 私の言葉に田川君はちょっと視線をそらした。
 大丈夫。これもいつものこと。何より来てくれたことが嬉しいから、他は全然気にならない!
「この公園、毎年イルミネーションが凄いんだって!実は私、初めてなんだけど、田川君は見たことある?」
「ない」
「そっか。じゃあ同じだね!」
「今年は木にテーマをつけて飾ってるらしいよ!」
「テーマ?」
「うん。見てみよう!」
 私は田川君のコートの裾をちょっとだけひっぱった。田川君は仕方なくといった風に足を踏み出した。

「これは、エネルギーの木だって。不思議なテーマだね~」
「ふーん」
「なんか確かに勢いある感じ!眩しいね!」
 私は一人ハイテンションに田川君を振り返る。田川君は黙って頷いて、目を細めた。
「こっちは、実りの木。見て!ちゃんと果物みたいな細工がたくさんだよ!」
「うん」
「可愛いなあ!」
 私はずっとハイテンションのままに公園の木々を回った。
 暗がりに灯った電球は幻想的に輝いて、私の心をも明るく照らした。
 私は今日を一生忘れないだろう。そう思うとなぜか急に涙がこぼれた。
「な、なんで泣くの?」
「なんでかな。わからない。嬉しいからかな」
「嬉しいから?」
「うん。私、今凄く幸せで」
 そう言ったら涙が次々に溢れてきた。
 なんだろう。本当に嬉しくて。今この時間がかけがえのないものだとわかってるから。来年からは田川君とは学校も違う。会えなくなる。そんなことわかっていたのに。
 私はごしごしと涙をぬぐった。
「ごめんね。変だね、私。
イルミネーション、綺麗だね」
「……。ん」
 丁度公園を一周して、私は顔を上げた。
「ありがとう。時間とってくれて。帰るね、私」
 私はバイバイと手をふって田川君に背を向けた。これ以上いたら、涙がとまらなくなっちゃう。
 その私の腕を田川君がつかんだ。
「待った」
「え?」
「花田さんていつもマイペースだよね」
 あきれ顔の田川君がいた。
「ご、ごめん」
「別に悪い訳じゃないけど。
もう一周しよう」
「え?」
「じっくり見れなかった」
 しばらく私たちは無言で公園を歩いた。
「今日俺が来なかったらどうしてたの?」
「え?えっと、しばらく待って、一人でイルミネーション見るつもりだった」
「ふーん。
来ないことも考えてた訳だ」
「……うん、だって急だし、田川君の事情も何もわからないし」
「そうだよ、ほんと。突然すぎて意味わからなかったよ」
「ごめん」
「しかも泣き出すし」
「ご、ごめん」
「俺もアホだよ。こんな呼び出しに来たんだから」
「す、すみません」
 田川君はゆっくり歩いて、イルミネーションを見あげながら話した。
「思い出になったの?」
「うん、もちろん! 来てくれてそれだけで私、満足! 幸せな時間だったよ!」
「ふーん」
 田川君は複雑そうな顔をしてそう言った。
「それだけ? 他になんかなかったの?」
「え?」
 田川君は少し不機嫌そうな顔をした。
「自己完結だよね、花田さん。
俺はどうすればいいの?」
「え?」
 ふうと田川君はため息をついた。
「俺は人混みは嫌いだし、こんなたくさんの人の中、イルミネーションを見て回るなんて考えられない」
「そっか、悪いことしちゃったね」
「別に。来たのは俺だから」
 私はなんて返していいかわからず黙った。でも、田川君が怒ってるのかなと不安になった。
「あのさ」
「はい」
「俺もなんで行こうと思ったのか自分でもわからないよ。でも、楽しそうな花田さんを見たら、これで良かったと思った。ただ、泣かれたらどうしていいかわからない」
「そ、そうだよね」
 じわりとまた涙がたまってきて私はうつむいた。
「ああ~」
 困ったような田川君の声が聞こえた。
「ごめん、なさい」
 すれ違う人がこちらを見ては去っていく。
「俺はどうすればいい?どうすれば泣き止むの?」
「そ、そんな、これは勝手に涙が出るだけで」
「……花田さんさ、俺のこと好きなの?」
 いきなり直球が来て、私はびっくりして顔をあげた。イルミネーションの逆光になって田川君の表情はわからなかった。
 私。言うつもりはなかった。思い出だけもらって、楽しくさよならが一番いい気がして。だけど。
「はい。田川君が好きなんです」
「……」
 田川君は私の手をそっととって、手を繋いだ。
「?!」
 ますます驚いて、そしてドキドキして私は困ってしまう。
「俺さ、そう言うのよくわからなかったけど、花田さんのことは覚えてたよ」
「う、うん、名前、覚えていてくれたよね。嬉しい」
「それに、自分がこんなとこに来るとは思わなかったけど、行かなきゃと思ったんだ」
 今日の田川君はたくさんしゃべるなとぼんやり私は思った。自分の頬が何だか熱くてぼうっとする。
「花田さん?」
「あ、う、うん」
「花田さんが泣くのは嫌だと思ったんだ」
「え?」
「答えになってる?」
 私は訳がわからなくなって、もう一度田川君の言葉を反芻した。でもやっぱりわからなかった。
「帰るなら一緒に帰ろう。
もう一周くらいする?」
「え、えっと。うん」
 手袋ごしに田川君の手の温かさが伝わってくるような気がして、なんだかまた涙が溢れた。
「泣くな」
 困ったように田川君が言う。
「う、うん」
「大学どこ受けんの?」
「地元のK大」
「ふーん。俺もその予定」
 なんだろう。イルミネーションが眩しくて夢の中にいるみたい。
「まずは携帯番号交換しようか」
「う、うん」
 ぼんやりとしたままの私の頭を田川君の大きな手が乱暴に撫でた。
 私は驚いて田川君を見る。そして、何も言えなくなった。田川君の顔は赤く染まっていたから。
「花田さんさ、わかってないでしょ?」
「え? 何が?」
 田川君はああ、と困ったような照れたような顔をして、
「付き合おう」
 と言った。
「え?」
 私は持っていたバックを思わず落として、
「ふ、あはは。花田さんてやっぱり面白い」
と滅多に見られない田川君の爆笑するのを見た。
                             おしまい




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こんにちは、天音です。


今日はとても短い短編をもう一つ。


結婚指輪は様々なお値段のものや形のものが売っていますが、大事なのは二人でいるという気持ちをなのだろうと思います。私は婚約指輪はダイヤではなく、自分の好きなムーンストーンの指輪にしてもらいました。今は結婚資金をためるために結婚指輪はなしにする方もいらっしゃるみたいですね。ちなみに結婚指輪はこの小説と同じように銀でできた思い入れのあるリングです。
(結婚指輪や婚約指輪を否定しているわけではありません。様々な形があっていいかなと思っているだけです)



ココから小説


              結婚指輪



 彼とは付き合い始めて四年が経つ。恋人になったばかりの時のようなトキメキや情熱は薄れ、空気のような存在にお互いなりつつあった。
 
 そんなある日。二人でテレビを見ていた時だ。ある芸能人が大きなダイヤがついた指輪を見せていた。それを見て彼が言った。
「お前もあんな宝石が欲しいのか?」
 私は言った。
「私はこの指輪で十分だよ」
 左の中指にはまっている指輪を見せる。小さな誕生石が入ったその指輪は、初任給で自分で買ったものだった。すると彼は言った。
「違うだろ?」
 そして自分の右の薬指にある指輪をさした。
 ーーあ。
 同じ指輪が私の右の薬指にもはまっていた。それは二人が遠距離恋愛になる前に、露店で彼が買ってくれた銀のペアリングだった。シンプルな装飾が施されてある細めのリング。
 私は恥ずかしくなった。彼はその指輪に勝るものはないと言ってるのだ。トキメキも情熱も薄れたのは私だけだったのかもしれない。
 この日私はこの人と結婚したいなと思った。
 
 その二年後。私の名字は彼と一緒になり、左の薬指には露店で買ったあの銀の指輪がある。私と彼との思い出を刻んだ、世界に一つだけの結婚指輪だ。





                             おしまい




  ここまで読んでくださりありがとうございました。
 




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こんにちは、天音です。

今日も少し前に書いていた小説をアップします。
最近こういうありそうな恋愛ものしかかけていませんが、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。


       それでも恋をする


ココから小説

 私は可愛くない。
 ちょっと違うかな。
 容姿は平均的、だと思う。たぶん。
 そうでなくて。私は可愛げがないのだ。

「先生、二列目の○○の字、間違っています」
「おお? そうか? あ、本当だ。いつもすまないな、谷川」
 私の言葉に高田先生は恥ずかしそうに笑って黒板の字を訂正した。長身で、ちょっとぼーっとした感じのクラス担任、高田先生は女子にとても人気がある。
(童顔で笑顔が可愛いいんだ)
 そう思っているのは私だけではないということだ。


「谷川、さっきはありがとうな」
 人懐っこい笑顔を向けられ、私はそっぽを向いた。
「……別に、気が付いただけですから」
「はは、そっか。でもいつもありがとう」
「だったらもっとしっかりしてください」
「そうだな」
「谷川さん、厳しい~」
 私と高田先生のやりとりを聞いていた女子が笑いながらそういう。
「大丈夫だよ、先生~。それが先生のキャラだからさ!」
 女子たちが高田に群がり、フォローをしている。それをみて心がもやもやするのを感じた。自分でも嫌になる。本当はあんなきつい言葉言いたくないのに。でも、先生の前に出るといつもにまして可愛げがなくなってしまうのだ。
「……」
 私はなんだかいたたまれなくなって目をそらした。
 私にはできない。あんなに素直に好意を示すことなんて。
「……あ、谷川、HRのプリント後でとりに来てくれな」
 高田先生は教室をでるとき、一度私の方を振り返ってそう言った。
「せんせー、私取りに行ってもいいよ~?」
 一人の女子が上目づかいに高田先生を見て言った。佐々木さん。彼女もきっと私と同じく先生が好きな女子の一人だ。私は高田先生に返事をしようかどうか迷って高田先生を見た。
「ん~、そうだなあ、やっぱりこういうのは学級委員に頼むものかな~」
 邪気のない高田先生の笑顔を向けられた佐々木さんは、ちょっと残念そうに、
「そうですか~」
と返す。
「というわけだから、谷川、頼むな」
 再び私に笑いかける高田先生に、私は無言で頷いた。



「失礼します」
 一礼して職員室に入る。私に気づいて高田先生が視線をあげた。そしてにこっと笑う。先生は確か27歳だと聞いたことがある。27歳の男性がこんな顔をして笑うものだろうか。
「……先生」
「ん?」
「私が取りに来る必要はあるのでしょうか?」
 ああ、なんて可愛くないんだろう。本当は先生と話す機会が増えて嬉しいのに。
「……」
 高田先生はちょっと困った顔をした。
「谷川はやっぱり取りに来るの、嫌、なのか?」
「やっぱりって……」
「重いなら半分先生が持つぞ?」
「そういう問題では……」
「学級委員の谷川にばかり頼って悪いとは思っているんだ」
 高田先生はすまなそうな顔をして私を見た。
「でも、やっぱり谷川は頼りになるもんだから……」
 そんなこと言われれば断れるわけない。うううん、たぶんそう先生の口から言ってほしかっただけなんだと思う。
「いいです。持っていきます。ください」 
 たぶん赤くなっているだろう顔を見られないようにそっぽを向いて手を出す。
「重くないか?」
「大丈夫です」
「ありがとう」
 直視できないけれど、先生がきっと無邪気に笑っているのがわかる。本当に罪作りな人だ。
「おや、また谷川ですか?」
 世界史の山下先生が牛乳パックを手に高田先生の隣の席へ戻ってきた。
「高田先生は谷川に頼りすぎですよ~」
「そうですかね~やっぱり」
「まあ、気持ちはわかりますけれどね」
 二人が会話をしだしたので、私は退場することにした。
「失礼しました」
「あ、谷川。ありがとうな」
 先生が私に声をかけた。
「……」
 私は黙って職員室を出る。
 出てから私はふうとため息をついた。
 本当はすごくうれしい。でも、こんな乙女な自分を見せるわけにはいけない。
 勘違いしちゃいけない。先生が必要なのは、頼りになる学級委員で、私ではないのだ。
 でも。
 きっと嫌われてはいない、よね。
 それで十分。

 正直、学級委員なんて高三の三学期にやりたいものではないだろう。受験の忙しい時なのに。
 ただ、私は要領が悪かったし、頼まれても断るだけの勇気もない人間なのだ。というのは建前で、先生に少しでも近づけるならと引き受けてしまった。結果的にそれは功を奏して、先生はなんでも私に頼んでくる。
(前の学級委員にもこうだったのかな?
ーー考えても仕方ないことだ)
 私はプリントをしっかりと携えて教室へ向かった。



「ねえ、高田先生さあ、なんでも谷川に頼りすぎじゃない?」
階段の上から聞こえてきた言葉に私は思わず足を止めて身をひそめてしまった。
これはたぶん佐々木さんの声。
「学級委員だからじゃない?」
 こっちは佐々木さんの仲の良い友達の井上さんの声だ。
「それだけかな?」
「それ以上に何かあるわけないじゃん」
「そうだよね。先生と生徒だし。それに、谷川だもんね」
 最後の言葉にひどく傷つく自分がいた。
「だね~。私が男だったら谷川はないなあ」
「まじめだけが取り柄で可愛くないもんね」
「そう」
『可愛げがない』
 二人の声が重なった。二人の笑う声が遠くなっていく。
 私はしばらく動けなかった。
 自分で常々思うこと。でも。
(やっぱり他人から見てもそう思われているんだなあ)
 不覚にも涙がにじんでしまった。
「……」
「?谷川?」
 後ろからの声に私は振り返れなかった。先生の声だったからだ。
「どうかしたのか?」
「いいえ、ちょっとめまいがしただけです。大丈夫です」
「体調が悪かったのか? プリント持たせて悪かったな」
 そう言って高田は私の持っていたプリントを持とうとした。
「いいです! 大丈夫ですから!」
(だって、これを運ぶのは私の役目なのに! 役目のない私なんか、先生はいらないはず!)
 私はプリントを渡すまいとした。
「……」
 高田は驚いたように私の顔を見た。
「谷川、泣いているのか?!」
「泣いていません」
 一番見られたくなかったのに。 
「……」
 俯いた私に、先生はただ黙って私の頭をポンとたたいた。
「?」
 驚いて先生を見るとにじんでいた涙がこぼれた。先生はちょっと困ったように笑った。
「まあ、いろいろあるよな」
 そう言った先生をやっぱり好きだなと思った。






「悪い悪い、待たせたか?」
 バタバタと走る音が近づいてきたかと思うと勢いよく教室の扉を開けて高田が入ってきた。
「はあ、大丈夫ですけれど。先生が大丈夫じゃないみたいですね」
「いや、うん、大丈夫」
 肩で息をきらしながら高田は言った。
(全然大丈夫そうじゃない)
「……それで、何の用事ですか?」
「ああ、そうそう。明日、受験対策のプリントを配ろうと思って。それで、量が多くなったからホチキスどめを手伝ってもらおうと……」
「……はあ。あの、それ、私がする必要あるのでしょうか?」
 あ、また可愛くない言葉が口から出てしまった。
「いや、言いにくいんだが、谷川は志望校A判定だし、予備校にも行っていないみたいだから時間を少し拝借したいなと……」
 言い訳を一生懸命する少年の顔になって高田が言う。
(そういう理由ね)
「……学級委員ですしね」
「そう、そうそう!」
 私の言葉に先生は嬉しそうに笑顔を浮かべた。
 私はこの笑顔に弱い。時間があるわけではないのだけれど。
「……別にいいですけれど、まず先生、プリントはどうしたんですか?」
「え? あ、ああ!?」
 高田は自分の両手を見て、今気づいたように声を上げた。
「急いで来たらプリントもってくるの忘れた!」
「……」
 私は。
「ふっ! あはは!」
 こらえきれずに笑ってしまった。
「え?」
 先生がきょとんとした顔になる。それで私ははっとした。
「す、すみません!」
「ふ。はは! いや、ほんと、おかしいよな!
あはは!」
 高田は自分も笑い、そしてツボに入ったのかしばらく笑っていた。
「せ、先生?」
「あ、はは! ごめんごめん。いや、その、なんだかおかしくて! ほんと俺ってドジだよな~」
 でも、それだけ急いで来てくれたということだ。
「それはわかってます」
 嬉しく思いながらもこんな言葉しかでてこない自分がやっぱり可愛くないと思う。
「悪いな、一緒にプリントもとりにいってくれるか?」
「……仕方ないですね」
 社会科準備室にプリントを取りに行くと、かなりの量だった。
「先生、これって教室でする必要あります? 運ぶの大変ですよ?」
「あ。そうだな。ここですればいいか!」
 社会科準備室にはほかに先生がいなくて、私はちょっと緊張しながらホチキスをとめていた。先生は鼻歌交じりに作業をしている。
「悪いな、こんなことまで手伝わせて」
「……別に。時間がないときは断りますから」
 また可愛くないことを言って作業を続ける私に、先生は微笑んだ。
「そうか。
あはは。谷川はある意味素直だよな」
「……ある意味ってなんですか?」
 ちょっとむっとして先生を見る。そんな私に先生はまた笑った。
「いや、言葉通りだよ?」
「……」
(ある意味……。どういう意味だろう。
私、先生の前ではちっとも素直じゃないのに)
 黙って作業を続ける私に先生は優しく笑む。
「潔いと思うけどな、俺は。
それに、言葉はきついけど、結局は付き合っているところが谷川らしいよ」
「きつい……」
 思わず呟いて、手をとめた私に、
「あ、やっぱりそこに反応するんだ」
と先生が楽しそうに言った。
(好きできつい言葉を言ってるわけじゃないもん)
 作業を再開してみるものの、ちょっとしょげてしまった。
「先生だって結構酷いこと言ってるじゃないですか。しかも楽しげに」
 皮肉っぽくなってしまった。
「酷いこと、かなあ? 俺、谷川のこと褒めてるんだけれどな」
 先生は気にする様子もなく相変わらず楽しげだ。
「褒めてません」
「褒めてるんだって」
「意味わかりません」
 なんだか自分でも本当に意味が分からなくなってきた。先生に対してとる態度じゃないな、と思いながらも口が言うことを聞いてくれない。
「ははは! 谷川はおもしろいな」
「ちっともおもしろくありません!」
 先生はますます楽しげに笑った。
「あはは。楽しいな」
 語尾に音符がつきそうな先生の言葉。
「……」
 楽しくない、とは言えなくて、私は思わず口を閉ざす。先生は優しい目をした。
「谷川に手伝ってもらって本当によかったよ」
 それからも先生は時々私を手伝いのために社会科準備室へ呼ぶようになった。
 私はしぶしぶ手伝っているような素振りしか見せられなかったけれど、本当はそんな時間を楽しみにするようになった。





「失礼します。
先生、回収したプリント、持ってきましたけど」
 普段通り社会科準備室に入った私を迎えたのは、先生の寝顔だった。
「……先生?」
(本当に寝てるんだよね?)
 私は辺りを見回した。先生の他に誰もいなかった。私は少し先生に近づいた。
 こうしてみるとやっぱり27歳には見えない。
 天使みたい。
 そんな柄にもないことを思って、私は恥ずかしくなった。でもちょっと得した気分。
 私はそっとプリントを机に置くと、
「おやすみなさい、先生」
と小さく声をかけて、その場を後にしようとした。
 そのとき。
「うーん…お…やすみ、たにが……わ」
 足が止まる。
(え?)
 振り返ると相変わらず先生は眠っていた。
「……」
 かあっと頬が熱くなる。寝言で私の名前が出た……!たぶん私の声に反応して出ただけ。でも。
 どうしよう。こんなにも嬉しい……!
 知らず知らず頬に両手をあてている自分に気がついて、恥ずかしくなって私は足早に準備室を出た。
(大丈夫。誰もいなかったし)
 教室へ急いで戻ると不意に出てきた女子にぶつかった。
「ごめんなさい」
 前を向いていなかった私は謝ってその女子を見た。その女子は佐々木さんだった。
「気をつけてよね」
「うん…ごめん」
「まあ、いいけど。ところで、高田先生見なかった?」
 どきりとした。
「え?高田先生?」
「そう。谷川さんは知ってるんじゃない?」
「え?」
「学級委員だし」
「……さっき社会科準備室にプリント届けに行ったときはいなかったよ」
 とっさに嘘をついてしまった。
「そう。じゃあ、職員室かな」
「かもね」
「じゃあね」
 教室へ戻ろうとする私に、
「あ、待って」
と佐々木さんが声をかけた。
「?」
 振り返ると佐々木さんの真っ直ぐな瞳とぶつかった。
「ねえ、高田先生って、何の部活の顧問だったっけ?」
「?えっと……バスケじゃない?」
 確か背が高いからと言うだけの理由で副顧問になったと聞いた。
「……」
 佐々木さんは黙って私を見つめた。
「当たり。よく知ってるね、谷川さん」
「え?」
「谷川さん、高田先生のこと好きでしょ?」
「……!」
 心臓が飛び出るかと思った。
「図星でしょ?」
 私は答えられなかった。
「私も先生のこと好きだから分かるの。
でも先生は先生だよ。生徒は生徒でしかないの。谷川さんは頭が良くて学級委員だから先生のお気に入りなだけ」
「……」
 まさにその通りだと思った。さっきまで浮かれていた心が急に萎む。
「私、告白するから」
「え?!」
 思わず声が出た。
「何?」
「……」
 私はまじまじと佐々木さんを見た。なんて勇気のある子なんだろう。
 そして佐々木さんの艶のある長い髪や、小悪魔的な可愛い顔、短いスカートから伸びる細い脚に目がいってしまった。
「……何も」
「そう。ちょっとがっかり」
「え?」
「私、谷川さんを評価し過ぎてたみたい」
「……」
 佐々木さんは口だけ笑みを浮かべた。
「じゃあね」
「……」
 このままでいいのだろうか。今から佐々木さんは告白するのだろうか。ダメだ。私は告白する勇気なんてない。素直になることさえできないのに……! でも、でも、でも!
「ま、待って!」
 私の悲鳴のような声に佐々木さんは振り返り、足を止めた。
「先生は、ダメよ! 先生は、ダメなの!」
 私の声にふぅと佐々木さんはため息をついた。
「そんな顔できるんだ、谷川さん。ちょっと意外。でも私が従うとでも?」
 佐々木さんは言って歩き出した。
「佐々木さんっ!」
 私の声にも、もう振り返らなかった。私はいつの間にか流れ落ちていた涙を拭った。自分が情けなくて悔しかった。先生はどうするんだろう。怖い。私、どうしたらいいんだろう。



「先生、これ…」
 前期入試も終わり、卒業式まであと二日という日。私はまたも先生の作業を手伝っていた。
 でもこれはどう考えても。
「あの、これ、私も貰うものですよね?それなのにリボン結び、手伝うんですか?」
 どうやら先生は卒業する私たちにメッセージを一人一人に渡そうとしているようだった。そのメッセージカードのリボン結びを手伝うことになるとは。
「うん。だから中身は見ちゃダメだぞ? 昨夜遅くまで書いて流石に疲れたよ。
リボン結ぶようなことは、女子の谷川の方が上手かなと思って」
「だとしても、私だってサプライズで貰いたかったです」
 呆れながら言うと、先生はごめんごめんと笑った。
「最後の手伝いだよ。よろしくお願いします」
 私はもくもくと作業をしながら、一つのことを考えていた。
 私はこのままでいいのだろうか。ずっと可愛くないまま、先生に本音も伝えられずに卒業するのだろうか。そんなの悲しい。絶対後悔する。今日だけでも素直になりたい。
 リボンの数が減っていく。先生との時間も同じようにあと少し。考えると心臓が段々早鐘を打ち出した。このままでいいわけない。素直に。素直にならなきゃ。素直に、なりたい!
「せん……」
 顔を上げて高田を見ると、先生は眠ってしまっていた。なんとなく安堵のため息が出た。先生の寝顔はやっぱり可愛かった。ずっとずっと見ていられたらいいのに。
 私は結び終えたリボンを置くと、しばらく、先生の寝顔を見ていることにした。いつまでもこの時間が続けばいいのに。私は机に頬杖をついて、先生の寝顔を飽きもせずに見続けた。
 窓から見える空が橙に染まっていく。先生が風邪をひいてはいけない。私は仕方なく先生を起こすことにした。
「先生、起きてください。もう終わりましたよ」
 私はそっと先生の肩をゆすった。私の言葉に高田はまだ眠たそうに目をこすりながら顔を上げた。そして子供のように安心しきった笑顔を私に向けた。
 どきりとした。
「やっぱり谷川がいると助かるな」
 そんな顔で言うなんて反則だと思う。私はふいと目をそらして、
「はいはい」
と照れをかくすためにぶっきら棒に答えた。
「谷川がお嫁さんだといいな」
「は?」
「え?」
 思わず先生を見る。先生も自分で何を言ったのか、驚いているようだった。
「えっと……」
「な、何馬鹿なこと言ってるんですか?!」
 一瞬、驚きとともに嬉しさを感じてしまった自分に腹が立つ。どうせ冗談に決まってるのに。そしてそんな風に思う自分はやっぱり可愛げがないと思う。
「ふっ」
 高田が笑った。
「な、なんですか?」
「谷川、可愛いな。耳まで真っ赤だよ」
「……!」
 言われて慌てて耳を手で隠した。
「隠さなくていいのに。ははは」
「……」
 逃げ出したいくらいに恥ずかしい。先生はくすくす笑うのをふとやめた。
「もうすぐ卒業だな、谷川」
「そう、ですね」
「さみしくなるな」
「……私もです」
 珍しく素直に言葉がでた。先生は驚いたように私を見た。
「谷川……」
「はい?」
「やっぱりお嫁さんにならない?」
 私は先生の目をじっと見た。邪気のない目で先生はわたしを見つめ返してくる。
(どうとったらいいのかな。どう返事したらいいんだろう)
「谷川?」
(でも、でも、これはチャンスかもしれない。今、素直にならなくてどうするんだろう。私、本当は、いつも思っていた。先生の前では可愛い女子でいたい)
「な、なってもいい、ですけどっ」
「なんでそこでそっぽむいちゃうかな?」
「は、恥ずかしいからです!」
 先生が私の頬に手を添えて自分の方へと向かせた。
「!?」
「ほんとだ、谷川の頬、熱い。
ほら、そこで目をそらさない」
 先生はコツンと私の額に自分の額をくっつけた。
「なっ!」
「うーん、可愛いからキスしたいけど、谷川が卒業するまで待つか」
 私は何か言葉を返そうとしたがパクパクと口が動くだけで言葉にならなかった。
 先生は満面の笑みをたたえて私を見ている。子供扱いされているようでちょっと悔しい。
「……どうして私なんですか?
……さ、佐々木さんは?」
 先生は目を見張った。
「あ……佐々木な、知ってたのか。受験前に告白に来たよ。勇気ある娘だな」
「……私より佐々木さんのほうが可愛いと思いますけど」
 可愛くないな、私、と思うのはこんなとき。またそっぽを向いてしまう。
「谷川? ほら、そっぽ向くな、こら。
まあ、佐々木は可愛い生徒だな、確かに」
 先生の言葉にしゅんとなる自分がいる。ますます可愛くない顔してるだろうな、私。
 そんな私の頬を先生はグニっとつまんだ。
「面白い顔してるぞ、谷川」
「……」
「でも俺には谷川がピッタリなんだ。って言ってもわかりづらいかな。俺の欠けている所を補ってくれるのが谷川だと思っているよ。
また目を逸らす……。嬉しくて恥ずかしいからってのはわかってるぞ?」
「っ!」
「意地っ張りなのも可愛いと思ってるよ」
「……!」
 先生は全てを見通すように笑って私の頭にぽんと手を置いた。
「……」
 私はちょっと考えて、
「ピッタリ、じゃ、嫌、です」
と言った。
「ん?」
「ちゃんと言われたい言葉があります」
「ふむ、プロポーズじゃ足りないと?」
 先生は可笑しそうに私を見た。
「そうか、じゃあ、それを当てに行ってみようかな、谷川先生」
「はい、当ててみてください」
 先生はふっと笑って、そして。
「好きだよ、谷川」
「好きです、先生」
 被せて言った私に、今度は先生が驚いた。
「本当は素直になってずっと言いたかった。可愛くない私ですが、末永くよろしくお願いします」
 私の言葉に先生は本当に嬉しそうに笑って、もう一度私の頭をくしゃりと撫でた。
「よくできました」



                                  了


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