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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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プロフィール
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天音花香
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性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
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こんにちは、はじめましての方が多いかと思います。

天音花香と申します。(以前は花木和呼というHNを使っておりました)ほそぼそと小説を書いては更新しております。




このサイトについて



分りにくくて申し訳ないのですが、

こちらの小説ブログに来られた方は、こちらのページが表示されるようにしてあります。


小説を読む際は、下記にあるタイトルをクリックしてお読み下さい。


最新記事に書いてあるものが新しい記事になります。



サイト整理のため、個人サイトのノベルページを封鎖しました。そちらに載せていた作品と、新作も書いております。順がばらばらで申し訳ございません。季節にあったものを載せるように心がけております。



お付き合いいただければ嬉しいです。



著作権は天音花香にあり、放棄しておりません。無断転載、無許可販売は禁止です。



*「すぴぱる」さんと『小説家になろう』さんにこちらにアップしている小説の一部を投稿しています。






<現在、完結している小説>


・高校生日記

…同じ高校に通う三人の主人公、男性恐怖症気味の梨呼、幼馴染との関係に悩む広大、進路と初恋に必死の治雪を主人公にしたオムニバス形式の青春恋愛小説。登場人物が微妙に関わっています。それぞれ単独でも読めます。視点から書いたオムニバス青春恋愛小説。中篇。アルファポリス「第4回青春小説大賞」(期間は2011年11月1日~2010年11月末日)にエントリーしています。


・空(そら)の時間

…自分が普通の女子とはどこか違うと悩む主人公が気になっている男子は、転校先で死んでしまった。悲しみにくれる主人公の前に現れたのはその男子の幽霊で……。少女と男子の二つの視点から書いた青春小説。中篇。アルファポリス「第4回青春小説大賞」(期間は2011年11月1日~2010年11月末日)にエントリーしています。


・月に恋した

…成績優秀な主人公のどうにもならないのは、心。受験が近づく中、不安の高まる中で生まれたのは先生に対する恋心だった。中篇。アルファポリス「第4回青春小説大賞」(期間は2010年2011年11月1日~2011年11月末日)にエントリーしています。


・初恋日和
…主人公の学校には変わった風習があって、卒業式のときは皆袴を着る。そして、風習ではないが、男子は意中の女子を誘って帰るというのが恒例になっていた。好きな人のいない主人公。誰と帰ることになるのやら。


 ・彼女
…僕が「彼女」に気がついたのは、いつだったか。 多分、無意識のうちに知っていたのだと思う。いつも、視界に入る彼女を。ホワイトデーにまつわる恋愛短編。


・白昼夢
…女ながらに仕官を望む気丈な主人公。人生はままらないものだ。


・イーリスの夢
…ある日昼寝から目が覚めると、人間の気配が消えていた……。魔族と神族の争いに巻き込まれた主人公の話。


・体育祭(こいまつり)

…体育祭にジンクスのある主人公の学校。失恋して心揺れる主人公をよそに恋愛イベント体育祭は訪れる。他愛のないジンクスに一生懸命になる彼らがいるのです。恋愛短編小説。アルファポリス「第4回青春小説大賞」(期間は2011年11月1日~2010年11月末日)にエントリーしています。

・遠い約束
…羽生結弦さんをモデルにした少年を書きたくて、書いていた恋愛小説。主人公の好きな人は年下の幼馴染。でも、彼は王子様と学校中の女子から呼ばれているような男性に成長していて……。



<童話>
…童話のカテゴリーには童話として書いた小説を載せています。

・吸血鬼
…ちょっと悲しい吸血鬼の童話です。

・わたしは「たま」
…猫のたまの悲しいお話。

・もの吐き娘
…旦那様がくれた贈り物を吐き続ける苦しさはどこから……。



<詩>
…詩のカテゴリーには、テーマに沿った詩集を載せております。

・卒業式シーズンの詩
・甲子園の詩
・「恋してる!」
・「やっぱり空が好き!」
・「僕がいる!」
・「時間は流れる……」
・「あーす -僕らの青い地球ー」
・ほっとする詩集
・「夢見草」


<完結短編&ショートショート>

…短編小説のカテゴリーにある、短編、ショートショートは全て完結しているものです。下記タイトルから気になる小説を読んでいただくことができます。一気に読みたい方はカテゴリーの「短編小説」からどうぞお読み下さい。

 ・人待ち
…人を待つことが多い主人公。友人を待っていたときに起こった優しい出来事。

 ・秘密
…高校生のときの失恋を引きずっている主人公は自分に劣等感が強かった。高校生のときのメンバーとの飲み会に主人公が起こしてしまった罪は……。

 ・なわとび
…ゆらゆらゆれているなわとびはよく知っている何かに似ている。

 ・虫(オンナ)
…蝶になれない平凡な自分の現状は……。

 ・髪
…主人公の初恋は髪の長い女性だった。

 ・煙草
…若い頃の現実ではなかった甘い夢を見た日に。

 ・学校
…四角い見かけの箱は学校?

 ・ブルータス
…心が不安になると見る夢。

 ・ギャルゲーっぽいもの
…選択肢のあるギャルゲーのようなもの。恥ずかしい出来。

 ・声
…自然や人間の心が聞こえる主人公は、聞こえるだけで何もできない自分にも、裏表のある人間にも嫌気がさしていた。そんなとき聞こえてきたのは、悲痛な声で。

 ・あそびの時間
…女なのに女子の中にいるのが苦手な主人公が、幼少のとき女子と遊んだのは数えられるぐらいだけ。そしてその一つ一つにはただ単に楽しいという記憶だけではないものがあって……。

 ・Fate
…浪人してしまった主人公は虚しい日々を過ごしていた。そんなとき好きな人に偶然会って……。

 ・城
…学校の帰り道に主人公が見たのは外国人の男の子。日本にあるものを手にしにきたという。


・バレンタイン
…憧れの先輩と初めて迎えるバレンタイン。でもなんだか先輩の様子がおかしくて…。

・淡い夢
…まどろみの中で見る夢は…。

・嫉妬
…私の中の汚い心。

・香りの王国
…好きな香水に出会うと心は遥か彼方へ…。

・薔薇1 薔薇2
…薔薇にまつわる二つの話。

・田丸
…私の田丸への扱いは……

・隣人
友達関係に悩む主人公の支えになってくれたのは。

・かみの手
男性に髪を触られるのが嫌いな主人公。


<こいごころ(恋愛短編集)>

・ハチマキ
…体育祭で好きな人と同じブロックになった主人公は。

・落恋
…恋は突然に……。

・雪女
…雪の日にあったちょっと幸せな話。

・一目惚れ
…あった瞬間何かが変わった

・失恋
…主人公が好きになったのは好きになってはいけない人

・おそろい
…好きな人と日直の日。素敵な一日になあれ。

・イルミネーション
…好きな人を無理やり誘い出しだ主人公。どんな未来が待ってる?

・結婚指輪
…彼氏とはもうトキメキもなくなっていたけれど……。

・それでも恋をする
…可愛げのない私。わかってはいるけれど、一人前に恋だってしているんです。

                    2016年7月31日現在


・「神の盾レギオン 獅子の伝説の二次創作」というカテゴリーには、二次創作の短編、完結ものになります。

 ・女が泣いている

 ・素敵な聖夜




<連載中の小説>


・神の盾レギオン 獅子の伝説の二次創作 「緋い髪の女戦士」
…マーニを主人公にしたファンタジー小説。


・乙女ゲーム「いざ、出撃! 恋戦」の二次創作集。
…携帯アプリ、アイフォン、PSPで発売されている乙女ゲーム「いざ、出撃! 恋戦」の二次創作。四コマ感覚のギャク作品集「早苗が通る!」と、シリアス作品の両方あり。





<完結>
・未来の誰かに贈る日記
…高校2年から大学進学まで、自分の生きた証を残したいと思って書いていた、読まれることを前提とした日記



ゆっくりの更新かとは思いますが、どうぞこれからよろしくお願いいたします。







別名で出版しています。読んでいただければ嬉しいです。




天音花香








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天音花香です。こんばんは。

こちらは自作小説を載せるブログです。
最後まで読んでくだされば幸いです。

 
   「高校生日記」



登場人物紹介はこちら



「梨呼の場合」1







いつの頃からだろう。男子のことを怖いと思うようになったのは。小学生までは一緒に遊んでいたような気がするのに。藤木梨呼はなぜ自分がこうなってしまったのか判らないでいる。解るのは、自分が今、男性恐怖症であること。



急にではなかった。きっかけは中学生になってからだった。

黒い学ランに身を包んだ男子は威圧感があった。背はそんなに高くなかったはずなのに。

それから は、仕方なかったとしかいいようがない。

梨呼はいわゆる、おじさんたちに悪い意味で好かれるタイプであった。

百五十二センチの華奢な身体。黒く真っ直ぐなストレート のセミロングの髪。小動物のような大きな瞳。小さい口にふっくらとした赤い唇。

電車では痴漢にあい、道端では「変態」に狙われ……。

ここまでくると、 男性恐怖症になっても仕方がないないではないか。



そして、梨呼の周りの男子も段々とその姿を変えていった。背が高くなり、声も低く大きくなり。力も強い。 言葉使いも違う。高校生になった頃には、同じ人間という生物なのに、同じ人間とは思えなくなっていた。



梨呼は、男子が近くを通る度に、中学校のときからの親友前田朝希の後ろに隠れてしまうようになった。男子が悪いわけではないのだから申し訳ないと思う。そ れでも、条件反射のようにそうしてしまうのだ。

女子の中でも小柄な梨呼にとっては、百七十三センチある朝希でさえ十分大きく見えるのだ。でも、朝希に対し ては恐怖心を抱いたことがないということは、やはり男性恐怖症なのであろう。



そんな梨呼にとって、学校に行くのは戦いに行くようなものである。どうして女子高を選ばなかったのだろうと後悔することも多々なのだが、朝希と同じ高校に行きたかったのだ。



(きっと、避けられない運命と言うものがこの世にはあるんだわ)

そう思いながら、自転車をこぐスピードを上げる。その口から吐かれる息が白く染まる。

そう、いろいろ考えている暇は今はないのだ。今日は高校二年生二学期 期末試験最終日である。苦手な英語があるので、夜遅くまで勉強したのが災いした。ふうとため息をつく。学校に着いたときには予鈴まであと十分足らずになっ ていた。

(今日も学校に着いちゃったよ。しかも、駐輪場、いっぱいだ)

梨呼は自転車を持ちながらうろうろと徘徊して、隙間を見つけようとした。そして、少し空いているところに無理矢理自転車を押し込んだ。梨呼にとっては自転車でさえも重い。というのに。

「ああっ!」

やはり無理があった。自転車が次々と倒れていく。手を伸ばしてももちろん止まってくれるものではなかった。ドミノのようにガタガタと倒れていく自転車を 絶望的に見送るばかりの梨呼の前に、一人の男子が出席簿を片手に現れた。そして、倒れていく自転車を「よっ」と止めると、そこから梨呼の方に向かって自転 車を起こし始めた。



知らない人だった。その人は背の高い男子で。



梨呼も慌てて自分の近くの自転車を起こし始める。重いし、寒くて手がかじかむ。でも、その男子は手伝ってくれている。

ありがとうって言わなきゃ。心の中で何度も「ありがとう」を繰り返す。

だが、言葉にならない。やっぱり怖い。その男子が段々近くなる。怖い。



最後の自転車を起こし終えたとき、その男子との距離の近さに、梨呼は思わず後ずさりし、目をきゅっとつむった。でも。でも。でも。



その男子にとっては、自然な行動らしく、無言で置いていた出席簿を拾うと去ろうとしている。このままでは。



「あのっ」

梨呼が力いっぱい声を上げると、ちょっと驚いたようにその男子は振り向いた。震える手を強く握り締め、梨呼は大きな瞳で、その男子の目をちゃんと見る。

「あり、がとぅ」

最後のほうは消え入るような声でお礼を口にする。逃げ出したくなる気持ちを必死で抑えて、梨呼は拳を握り、立っていた。すると、その男子は少しだけ微笑んで、

「遅刻しちゃうよ?」

と言うと、駆けていった。梨呼は少しぼうっとしていたが、慌てて自分も駆け出した。考えてみたら、男性恐怖症が災いして、男子の笑顔を見たことはあまり なかった。

だが、その男子の笑顔は自然だった。「爽やかだ」とさえ感じた自分に首を傾げる。今までそのようなこと、思ったことなどあっただろうか? 

梨呼 はその男子の笑顔は怖いと思わなかったことに戸惑っていた。







終了のチャイムが鳴る。

「はい、やめー。後ろから回して、前の人持ってきて」

教室中から安堵なのか、諦めなのかわからないため息や声がもれる中、朝希が梨呼の机に寄って来た。

「珍しく遅かったね、今日」

「うん、それが……」

梨呼が理由を話そうとしたときだった。

「広大!」

あきれたような声で教室に入ってきた男子を見て、梨呼は硬直した。

「梨呼?」

朝希が怪訝そうな顔で梨呼の顔を覗き込んでくる。

梨呼はというと混乱していた。今朝のことが蘇る。心臓が口から飛び出しそうなぐらいばくばくしていた。

その男子は、間違いなく、今朝自転車を起こすのを手伝ってくれた男子だった。

「部長は誰だ、広大! 冬休みの練習表記入しとけって言っといたのに、なんでこの紙が俺の下駄箱に入っているんだろうな?」

高すぎもせず、低すぎもしないテナーの声。彼には竹田広大しか目に入っていないようだった。



「梨呼? 大丈夫? 顔、真っ赤なんだけど」

「えっ」

思わず朝希の背に張り付いた。その男子はこちらのことなど気にも留めていないのに。自意識過剰だ。恥ずかしい。

「梨呼~?」

何かいつもとの違いを悟ったのか、朝希は心配そうに梨呼を見ている。

そんな朝希に場違いなほど軽い広大の声が降ってきた。

「お~い、お前のとこ、どーなんよ? もうできてるわけ?」

広大の声につられて、その男子もこちらを向いた。

梨呼は逃げ出したくなった。でも目だけはその男子を見てしまう。

「もっちろん。どっかの部長はしっかりしてないから、副部長の羽柴は大変ね」

「おっしゃるとおりで」

と羽柴と呼ばれた今朝の男子がため息をつく。

ハシバ君。梨呼の脳裏にその名はしっかりと刻まれた。

「くーっ、かけるっ、早く作れ! 女バスに遅れはとれん」

「作るのは広大じゃないのか?」

と言いながらも、諦めたのか、持って来た紙を上着のポケットに入れると、

「どんなメニューにしても文句は許さないからな」

一言だけ告げて、広大の肩を小突くと教室を出て行った。

「期待してるよー」

広大はあくまで楽天的にひらひらと手を振っているだけだ。

「はあ、本当、羽柴可哀想だわ……」

とつぶやいてから、朝希が梨呼のほうを見ると、なにやらぶつぶつ言っている。

(予鈴十分前なのに自転車を起こすのを手伝ってくれた人。ハシバカケル君。ハシバ、カケル君)

「梨呼? 本当にどうしちゃったの?」

突然名を呼ばれて、 「はいっ」

と梨呼は姿勢を正した。そして、あたふたと言葉を口にする。

「あの、その……。今、男子、自転車を、起こしてくれたの」

「えーっと、意味不明だけど、なんとなく解った」

朝希は言って、ふうとため息をついた。

「羽柴ね。爽やかな好青年。バスケ部の副部長で二組の学級委員長。誰にでも優しいし、ファンも多いし、手強いわね」

朝希の言葉に梨呼は目をしばたたかせる。

「あ、朝希ちゃん?」

「あれ? 気になるんじゃないの? 羽柴のこと」

朝希は直球だ。梨呼は頬を少し紅く染めて、首をかしげる。自分でもよくわからないというのが本音であった。

「うーん。わかんないよ。ただ、お礼を言ったら、笑ってくれて……。その笑顔は怖くなかったの」

まるで新しい発見をしたかのように笑った梨呼を朝希はギュッと抱きしめた。

「可愛いやつう」





「広大、今から帰るんでしょ? 一緒帰ろ?」

部活後、朝希は幼馴染の広大に声をかけた。

「なんだよ、愛の告白なら断ったじゃねーか。まだ諦めらんないのか?」

そう簡単に諦められたら苦労はしないわよ、と朝希は思いつつ、ポカッと広大の頭を叩いて鞄を担いだ。

「とにかく行くよ。

私の話はどーでもいいのよ。ちょっと羽柴のことで聞きたいことがあってさ」

広大はちょっと目を見開いた。

「かける? 何だ、今度はかけるに乗り換えたのか?」

無神経な広大に少し傷つき、もう一発目をお見舞いする。

「ってーな! それが人にものを聞く態度かー?」

「あんたが無神経だからよ。

とにかく。羽柴ってさ、彼女とかいるの?」

「かけるなあ。いねーんじゃね? あいつから、女の名前聞いたこと無いわ。今はバスケしか見えてないだろ」

広大の言葉に、朝希は少しほっとしながら、

「そんな感じよね」

と頷く。するとニヤリと広大。

「何、何、恋話?」

「広大には関係ない話よ。第一、本人の気持ちもいまいちよく判らないし。ただ、ちょっとでも前進のきっかけになればなと思って」

朝希の独白じみた言葉に、広大が真顔になって足を止めた。

「……藤木か?」

朝希は同じく真顔になって広大を見た。

「珍しく勘がいいじゃない。

言っとくけど、梨呼を傷つけるようなことしたら殺すわよ」

「解ってるって。そうじゃなくて、難しいなと思って」

広大の言葉に、少し緊張を解いて、

「そうなのよね」

と朝希は頷いた。

「でも、余計なことかもしれないけど、力になりたいの」

梨呼は親友。頼られるのは構わない。でも、いつまでも自分の後ろに隠れたままでいいとは思えない。



――「私、朝希ちゃんがいるから彼氏なんかいらない! 朝希ちゃんは、でも困るよね……」



中学何年のときだったか、梨呼がそう言ったのを朝希ははっきりと覚えている。でも、梨呼はレズではない。朝希はその外見と性格から本物によく出くわすので解るのだ。だからこそ。

これから、大学、就職とあるわけだし、少しは男子にも慣れてもらわないと。

「朝希」

呼ばれて顔を上げると、広大がにかっと笑っていた。

「今回は、協力するわ、俺も。邪魔にならない程度に」

「少し助かるかも」

広大の笑顔につられるように朝希も笑顔になった。

「ま、かけるは俺とはかなりタイプが違うし、お前から離すには丁度いいんじゃん?」

「そうね。広大じゃなくてよかったわ」

「なんだよ、それ」

ちょっと不機嫌に広大。

気がつくと家の前だった。

「じゃあね、広大」

「おう、また明日」

二人は隣同士の家へ入っていった。                       「梨呼の場合」2に続く



アルファポリス「第3回青春小説大賞」(開催期間は2010年11月1日~2010年11月末日)にエントリーしています。

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   「梨呼の場合」2


「おはよ、梨呼」
聞きなれた朝希の声に、笑顔になって返事をしようとした梨呼はさっそく硬直した。朝希は広大の席の前で、カケルと一緒に練習メニューをチェックしているようだった。
「お、おはよう、朝希ちゃん」
言うが早いか、自分の席につこうとした梨呼は、朝希に強引に腕を掴まれ、動けなくなった。仕方ないので、朝希の背中に隠れる。
「っはよー、藤木さん」
そんな梨呼に慣れている広大は普通に声をかけて、「あ」と思い出したようにカケルを前に出す。
「こいつ、バスケ部の副部長。ちょくちょく教室来てるっしょ? 羽柴かけるって言うんだわ。ま、よろしくしてやって」
そんな広大に、「お前が来ないから来てるんだ」と文句を言って、カケルは梨呼の方を向いた。だが、朝希がいるだけで、挨拶をする相手が見えない。カケルは困惑しながらも、
「羽柴カケルです。よろしくね」
と挨拶をした。それでも隠れて出てこない梨呼に、朝希が「ほら、梨呼」と声をかける。
梨呼は恐る恐る顔を出し、カケルを見た。するとカケルが、
「あ、自転車の娘かあ」
とにっこり笑った。その笑顔はやっぱり怖くなくて、梨呼は後押しされるように、
「藤木、梨呼、です」
とか細く声にして、ぺこりと頭を下げた。そして、
「あ、あの。このあいだは、自転車起こしてもらって、えっと、とっても助かりました。あ、ありがとうございました」
と泣きそうなくらい必死に言葉を紡いだ。そんな梨呼にカケルは。
「そ、そんな大したことしてないから……。たまたま職員室から見えただけで」
と、動揺しながら言葉を返す。そんな二人に苦笑しながら、朝希は、
「この娘、恥ずかしがり屋なの」
とフォローを入れる。すると、
「ま、よーするに男性恐怖症なわけよ」
と広大がストレートに言った。もちろんその後朝希に叩かれたが。
「そっか、誰にでも苦手ってあるよね。藤木さん、小柄だし、男子のこと背が高い……うーん、恐竜みたいに見えたりするのかな?でも、とって食べたりしないから安心してね?」
爽やかに笑って梨呼に言うカケルを見て、朝希と広大は机の下で親指を立てていた。
梨呼はというと、穴があく程にカケルを見つめて、
「何で解るんですか?」
と言った。男子が自分の立場になって考えてくれるなんて、思ってもいなかったのだ。
この梨呼の一言にはカケルも困って、
「え? なんとなくそうかな、と……」
と言うだけで、朝希と広大はそんな二人を見て爆笑していた。


(今日も来ている)
カケルの姿を見るとなんだか落ち着かない自分に梨呼は戸惑っていた。
カケルは他の男子と比べると少し大人びていた。幼くみえる広大とは対照的な感じだ。でも、笑うと少し幼くなる。その笑顔は、心が温かくなるような、ほっとした気分にさせるのだ。
(こんなの初めて。男子を見てほっとするなんて。今まで恐怖しかなかったのに)
「梨~呼!」
後ろからぎゅっと抱きしめられ、梨呼は目を白黒させながら、
「朝希ちゃん」
と声だけをやっと出す。サラサラのベリーショートの髪。切れ長の目。長い四肢に、細身で長身の朝希。美人だと思う。でも、一見だけでは「格好いい」という表現が最も似合ってしまう女子。
梨呼はじいっと朝希を見つめた。
「どした? 梨呼?」
「朝希ちゃんは綺麗で、格好いいなと思って」
男子もみんな朝希のようだったら怖くないのに。いや、むしろ、朝希が男子だったらよかったのかもと何度も考えてしまう梨呼である。
「それは、褒め言葉ととるべきか……」
うーん、とうなりながら朝希は腕を組んで考えている。それが妙に様になっていて、さながら憂いを帯びた目で物思いにふける美少年という感じである。
(綺麗だなあ。
朝希ちゃんは私の自慢の親友)
こんなに綺麗なのに、朝希の片想いの相手、広大は、朝希を全く女として見ていない。幼馴染だから、意識するような対象でなかったのかもしれない。
でも、と梨呼は思う。
(もったいない。竹田君なんて、声も背も大きくて、口を大きく開けて笑いながら嫌味ばかり言ってるような男子なのに。どうして朝希ちゃんは竹田君が好きなんだろう?)
広大は「男」というオーラを全身で放っているような、梨呼の最も恐怖の対象の男子である。でも、かなりもてる。
(朝希ちゃんはとーっても綺麗なんだから、他の男子にとられても知らないもんっ)
「梨呼?」
一人、百面相をしている梨呼に、怪訝そうな顔をして朝希が声をかけた。
「朝希ちゃんはどうして竹田君が好きなの?」
大きな瞳に真剣な光を宿し、小さな口を尖らせて梨呼は朝希に尋ねる。
「はい~?」
梨呼の思考回路が全く読めていなかった朝希は、動揺を隠せず頬を朱に染めた。
「な、なんで、ここで広大が出てくるかなー?」
目を泳がせながら、朝希は頬に手をあてて言った。そんな朝希は本当に女の子と言う感じがする。綺麗で、格好よくて、可愛い朝希。そんな朝希に広大はつりあわない、なんて勝手に思っている梨呼である。
「そ、そおねー、好きになるのに理由なんてあるのかな?ただ、よく視界に入って、見るといろんな感情が湧いて。うー。難しいな。まあ、広大は軽いし、駄目男だけど、いいところもあるのよ。少しは、多分……」
随分と頼りない回答だ。
「悪いところもあるのに好きなの?」
「そりゃあ、だって考えてみて? 悪いところない人間なんていないでしょ? 友達だってそうじゃない? いいところも、悪いところもひっくるめて友達、でしょ?」
そっかあ、と納得する梨呼。でもまた疑問が湧いてきた。
「じゃあ、友達、と好きな人って、どう違うの?」
「う、それは」
朝希は困り果てて、
「広大ー」
と広大のところへ突然走っていった。
「え? 朝希、ちゃん?」
「ねえ、友達と好きな人って、どう違うと思う? っていうか、どうして、私は広大なんかが好きなの?!」
(ええー?! 朝希ちゃん?)
梨呼はあんぐりと口を開けた。
「あん?」
顔を真っ赤にして、ぜいぜい肩で息をする朝希に、広大は目線をちらりとやって、
「んなこと知ったことか。俺がいい男だからだろ?」
と一言。その広大の言葉に、
「なんでこんなのが好きなのー? 私が聞きたい!」
と頭を抱えこんでうなる朝希。
(……。朝希ちゃん、どうして竹田君のことになるとここまでおかしくなっちゃうんだろう)
でも、そんな朝希を少し羨ましくも思って見つめていると、広大の隣にいたカケルと目が合った。
(っ!)
自分でもなぜか頬が赤くなっていくのがわかる。そんな梨呼にカケルはにこっと笑った。
また、あの笑顔だ。
瞳には優しい光。上品に開けられた口。男子だけれど綺麗だなと思った。外見というより、物腰がである。梨呼は思わずお辞儀をしてしまった。何でだろう。自分でもわからない行動。恐怖からではない心臓のどきどき。何だろう?
そのとき、
「藤木さん、これ課題のノート」
上から突然降ってきた低い声。動揺しているときだったから気がつかなかった。間違えなくそれは男子の声で。
視線を上げて、椅子から滑り落ち、ノートを受け取り損ねて。
「ひ、ひゃ!」
頭でノートを受け取る形になり、呆然とする梨呼。もちろん相手の男子も驚いたが、慌てて、 「大丈夫? 藤木さん」
と手を差し伸べる。好意からだとは解っている。解っているけれど。
その大きな手が、
その存在が、
こ・わ・い!
「ご、ごめんなさ……」
半泣きで後ずさる。
「梨呼!」
慌てて朝希が走り寄って来た。
「大丈夫? 梨呼」
朝希は、まず、梨呼に声をかけてから、その男子に向き直り、
「ごめんね。この娘ちょっと男子が苦手で」
悪気はないのよ、とその男子の肩を叩く。
はっと我に返った男子は、
「あ、そうだったよねー。ごめんね、藤木さん」
思い出したように謝ってくる。梨呼はふるふると頭を横に振り、
「こ、こちらこそ、ごめんなさい」
と涙声で謝った。
男子が悪いわけではない。自分がおかしいのだ。謝ってくれる必要など無いのに。どうしてこうなんだろう。やっぱり女子高に行けばよかった、と自己嫌悪でいっぱいになる。
そんな梨呼の頭をあやすように叩きながら、朝希は、ふぅとため息をついた。


「女子とは普通に話すんだね。えっと、りこちゃんだっけ?」
名前のほうが特徴あるからそっちを覚えちゃったよ、とカケルが言う。広大はちらりと、朝希と梨呼が話している方へ目線をやって、
「特に朝希とはな。中学のときから一緒だから」
と興味なさげに言った。そして、
「ふん、朝希と一緒にいられるなら、男子も平気なはずなのに」
と不機嫌そうに言う。
「それは、前田に失礼じゃないか? それに、誰にだって悩みの一つや二つはあるだろう。お前も含めて」
そう返してきたカケルに、
「なんだよそれ?」
と広大が聞こうとしたときだった。ばたばたと朝希が向かってきた。そして。
「ねえ、友達と好きな人って、どう違うと思う? っていうか、どうして、私は広大なんかが好きなの?!」
朝希はかなり動揺している。
(前田も少し変わってるよな、広大ももう少し優しく対応したらいいのに)
と思いつつ、カケルが梨呼のほうを見てみると目が合った。とりあえず笑ってみると、慌てたように梨呼はお辞儀を返してきた。今まで会わなかったタイプの人 だよな、とカケルが思って見ていた矢先、その梨呼に男子がノートを渡そうとしているのが見えた。
そして。その出来事は起こった。
「梨呼!」
慌てて朝希が梨呼のほうへ戻っていく。
「……ここまでとは……。りこちゃんが男嫌いっていうの。」
「そーそー、あんなのしょっちゅうだよ」
と慣れたように広大。クラスメイトたちも、慣れているのか、ざわつきもしていない。
「でも、あの娘にとっては、当たり前じゃないんだよな。いっつも、いっつも、怖いと思いながら学校に来てるんだろうな」
呟いたカケルの横顔を見て、広大はふっと笑った。
カケルは優しい。ただ、この言葉が梨呼にだから出されたものかどうかが重要だな、と考えていた。

         「梨呼の場合」3に続く

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     「梨呼の場合」3


「バスケットの試合?」
昼休み、屋上で梨呼と朝希は弁当を食べていた。ここには男子も含めて誰もいないからである。
「そう、来週の日曜、西高と親善試合があるのよ。毎年恒例でね」
口をもぐもぐと動かしながら、朝希が答える。
十二月の寒空の下だ。コートの襟元をしっかりと抑えて、梨呼は日曜の予定を思い出す。確か何も無かったはず。
「そうだね。最近朝希ちゃんのバスケする姿見てないし、見に行こうかな。また、いっぱい女の子のファンが応援に来るんだろうなー」
梨呼はくすくすと笑った。
「女に好かれてもねえ。広大が私を応援してくれるなら別だけど」
「朝希ちゃん格好いいから仕方ないよ。竹田君は……きっと近くにいすぎて朝希ちゃんの綺麗さがわからないんだよ」
「私は綺麗とは程遠いよ」
寂しげにため息をつく朝希。広大はこんな朝希の姿を見るべきだ、と梨呼は思う。こんなに色っぽいのに。
「広大はさ、来るもの拒まず、去るもの追わずなんだよね。連れている女がころころ変わる。なのに、どうして私は受け入れてもらえないんだろう」
(あれ?)
梨呼は違和感を覚えた。
「それって、朝希ちゃんは、竹田君にとって何かあるからじゃないのかな。意識してるからとか」
梨呼の言葉に朝希の顔が曇った。
「それは違うよ。広大は私を女扱いしたことないもの。どうせ、羽柴と一緒のレベルなのよ」
「朝希ちゃん……」
梨呼は何も言えなくなった。ただ、大好きな朝希にこんな顔をさせる広大は許せないと思った。
「もっと、いい人いるんじゃないかな?朝希ちゃん。朝希ちゃんに竹田君はつりあわないよ」
朝希は、まるで自分のことのように怒りながら言う梨呼を愛しく思いながら、でも悲しげに笑った。
「梨呼。好きって気持ちはそう簡単には変えられないんだよ。何て言っていいかわからないけど、気がつくと心を占めていて、広大のことしか考えられない。広大以外を好きになることなんてとても想像出来ないの」
梨呼は衝撃を受けた。人を好きになるということは、なんて強い想いなのだろう。
「ごめんね、朝希ちゃん。私、男子苦手だから朝希ちゃんの気持ち解らない。でも、これだけは解った。私は苦手だけど、朝希ちゃんは竹田君じゃなきゃ駄目なんだね。これからはちゃんと応援する」
朝希は全開の笑顔になった。
「ありがと、梨呼!」
「寒いのに、毎日屋上でお弁当でごめんね。そろそろもどろうか」
「気にしてないよ、梨呼」
そう言って先にドアを開けて中に入る朝希。そして、梨呼が入るまで、ドアを押さえる。
(私にも好きな人ができる日が来るんだろうか)
梨呼は風で閉まるのを拒もうとするドアを無理矢理閉めて、朝希の背中を追った。


ダムダムと体育館に響くドリブルの音と、選手が動く度に鳴るキュキュッというバスケットシューズと床のすれる音。小学生の時までバスケットをしていた梨呼には、懐かしく、心地よい音だ。
でも。
(シュートするときの朝希ちゃんしか見えない)
一生懸命背伸びをして見ようとするのだが、前の女子たちに阻まれてよく見えない。彼女たちは、朝希がシュートをきめる度、歓声を上げている。自分も朝希の勇姿をもっと見たい、と悶々としていると。
「はい、ちょっとごめんねー。場所空けてくれるー? 男バスでーす。女バスの試合見せてねー。あ、この後俺らの試合あるから、そのときも応援よろしく!」
と背後から、広大を先頭に男子バスケット部の部員たちが入ってきた。
(きゃ、男子だらけ!)
逃げ場もなく、へたり込もうとしている梨呼の腕を誰かが優しくとった。
カケルだった。
「……」
梨呼はびくびくしながらカケルを見る。掴まれている腕が震えていた。
「大丈夫? 見えにくいでしょ? 俺の前に、はい」
カケルは笑顔でそう言って、前に梨呼を押すと、自分は少し後ろに離れた。
視界が開け、朝希がドリブルをしながらディフェンスをかわし、的確なパスを送る のが見えるようになった。
カケルのその行動はとても自然だった。
男子嫌いの梨呼に対しては、かなり引いてしまう男子が多い。でも、カケルはそんなことを気 にしていないようだった。
それでいて不快な思いをさせないように適度に距離をとってくれている。
梨呼は。
カケルという男子に不思議な感情が芽生えるのを感 じた。
(この人は優しい)
背中が熱くなるのを感じた。
この人は、他の男子と違う気が、特別な気が……。
「ナイッシュー!!」
広大の大きな声に我に返ると、朝希がシュートをきめていた。朝希の動きは無駄がなく、本当に綺麗だった。相手の動きをよく見てパスカットをしたり、逆にパスを送ったり、そして、相手のゴールからの戻りがなんといっても速かった。
「前田、相変わらずいい動きしてんな」
カケルが感心したように言うと、当然、と広大。
「朝希と一緒に小四からミニバス始めて、朝希からボール奪えるようになるのに、中学に入るまでかかったんだぜ? センスがいいんだよ。相手の動きをよく読んでる」
朝希の話なので自然と耳が傾いてしまった。広大の声は自分のことのように嬉しげだった。
「シュートもよく入るな」
「毎朝、個人的にシュート練してるみたいよん。俺らも見習わなきゃね、かけるくん(ハート)」
「とかいいながら一番する気ないくせに。
でもよく知ってるな、さすがだんな」
「バーカ。あいつが家を出るときの音がうるさいから、目覚まし代わりになってんだよ。ま、おかげで遅刻しないから助かってるけどな」
「ふーん」
梨呼は、先ほどとは違ったドキドキを覚えた。
広大は朝希をちゃんと見ている。恋愛感情かは判らないけれど、高く評価している。
それは自分のことのように嬉しくて、思わず声を出していた。
「朝希ちゃん、がんばってっ!」
朝希はちらっと梨呼のほうを見て、すぐ視線を戻すと、フックシュートをきめた。そのとき、試合終了を告げるホイッスルが鳴った。四十二対十七のダントツ勝利であった。
「ま、予想通りの結果だわな」
と広大。
「きゃー、朝希さーん!」
「素敵でしたー!」
ファンの女子をうまくかわしながら、朝希は梨呼のもとへやって来た。
「来てくれたんだ! ありがと!」
「格好よかったよ、朝希ちゃん。一番輝いて見えた」
興奮気味の梨呼。朝希はその梨呼の後ろを見て意外そうな顔をした。
「男バスももう来てたの? 試合見た?」
「おうよ、今日もいい動きだったな、朝希」
広大に言われた朝希は、本当に嬉しそうな顔になった。
「ありがと」
「もち、俺らのも見てくんだろ?」
「いい? 梨呼」
「うん」
「じゃあ、見させていただきます、竹田部長。試合のときぐらいは部長らしいとこ見せてよね」
と言った朝希に、
「お前より歓声とってやるさ」
誰にものを言ってるんだとばかりに広大。
「じゃ、そろそろ準備があるから。また後で、前田、りこちゃん」
カケルがそう言い、広大たちは去っていった。
「りこちゃん?」
「え?」
「羽柴そう呼んでたよね?」
「あ! う、うん」
「めっずらしー! 何か進展とかあったりして」
「そんなのないよ」
本当に何もないのに、なぜか赤くなりながら否定する梨呼。
「あ、でも、ハシバ君がコートがよく見える場所に押し出してくれたの。それまで全然見えなかったんだけど」
「へーえ」
ま、羽柴は優しいからな、と朝希は納得する。
「そしたらね、なんか、ハシバ君は他の男子と違う気がした」
えっ? と梨呼を見る朝希。
「ハシバ君が後ろにいると背中が熱くなって……。でもね、怖いわけじゃなくて、なんだか恥ずかしいような、暖かくなるようなそんな感じがしたの」
(それに名前で呼ばれるのがなんだかくすぐったかった。変なの)
頬を薔薇色に染めて言う、親友に、
「! 
そっかあ!」
朝希は優しく笑って、梨呼の頭をポンポンと叩いた。


「広大! 広大! 広大!」
もの凄いコールである。西高の女子も混じっていた。
「凄い。竹田君て人気あるんだね」
「んー、だからライバル多くて困るのよね」
朝希は苦笑している。
確かに、広大のプレーには人を魅了する何かがあった。速いドリブル。絶妙なフェイント。空中でディフェンスをかわすフックシュートに、豪快なダンク。
「ちょっとだけ竹田君、見直した。バスケほんとに上手なんだね」
梨呼の言葉に、朝希は自分が褒められたかのように嬉しそうに笑った。
「試合中の広大はいいでしょ? まあ、練習してるってのもあるけど、センスがあるのよね」
その朝希の言葉に、思わず梨呼はくすくすと笑った。
「同じこと朝希ちゃんに対して竹田君言ってたよ」
「え、本当?」
朝希は頬を赤く染めて、嬉しそうに、
「そっか」
と言った。そして、
「羽柴もいい選手よ。見て」
と梨呼に言った。
判っていた。
梨呼は広大を見る以上にカケルを見ていた。
彼は地味ではあるけれど、いいサポートをしていたし、相手から離れないディフェンス、それから、 フリーになったときのスリーポイントシュートがすばらしかった。それはまるで、始めからシュートがきまることが決まっているかのように綺麗な弧を描き、網 をくぐった。時が止まったかのような静かで美しいシュートフォームに、梨呼は魅入っていた。
普段静かな瞳に、試合中宿る強い光にもドキドキさせられた。
「うん。
……格好いいね、ハシバ君……」
梨呼の口から自然と出された言葉に、朝希はそっと梨呼を見た。
カケルの姿を目が追っている。その目はまさに恋をしている目だった。
朝希は強く願った。梨呼の恋はうまくいきますように。自分のような苦しい想いはしてほしくない、と。


ボフッとベッドに倒れこんで梨呼は天井を見つめた。
カケルのシュートフォームが甦る。本当に綺麗だった。目をつむる。心臓がドキドキしてなかなか眠れない。
試合の後、朝希は広大と反省会をするからといって、二人で消えてしまった。結果的に梨呼はカケルと一緒に帰ることになった。
カケルは梨呼との距離を保っ て歩いてくれ、
「退屈じゃなかった? バスケの試合」
と、会話ができないでいる梨呼に気を使って声をかけてくれた。
梨呼は珍しく自然に言葉を返すことがで きた。
「あのね、小学生のとき、私もバスケをしてたんです。背がないから中学からは諦めちゃったけど……。
でも今でもバスケが好きなんで、見てて面白かっ たです」
カケルは意外そうな顔をして、「そうだったんだー」と言った。
「そうだ、前田、凄かったでしょ? 前田なら男バスでもやっていけそうなくらいだよ」
「は い。朝希ちゃん、いつもとっても格好いいです。
えっと、羽柴君、竹田君も素敵でしたよ」
本人を前に言うのはさすがに恥ずかしく、顔を赤らめて梨呼は言った。
いつも だったらできないことだ。だが、そのときは思ったことを伝えたいと言う気持ちが勝っていた。
「え? 広大はわかるけど、俺も?」
大きな背をしてうろたえる カケルを可愛いいなあと梨呼は思った。
「はい。シュートフォームがとても綺麗ですね」
「うわー、嬉しいなあ。ありがとう!」
カケルは本当に嬉しそうに笑っ た。
カケルは、近くだからとわざわざ梨呼の家の前まで送ってくれた。
「また明日ね」と言って去っていったカケルの後ろ姿を梨呼はぼうっとしながら見送った のだった。

「また明日ね、かあ……」
ベッドの上でカケルの言葉を呟いて、梨呼は幸せな気持ちになった。
「また明日ね」
もういないカケルに言うように梨呼は言って、もう一度目を閉じた。自然と口元に笑みが浮かぶ。
(今日はいい夢が見れそう)
ほどなく梨呼は眠りについた。

     「梨呼の場合」4(梨呼の場合ラスト)続く                 
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      「梨呼の場合」4


(何もこんなに大量をもたせなくてもいいのに……)
昼休み、弁当を食べ終えた後、トイレの前で偶然会った五限目の先生に手招きをされ、ついていくと、待っていたのはプリントの山だった。
「これ、配っといてね」
と悪魔の笑顔で言われ、今の状況に至る。

窓からは男子の声が聞こえてきていた。サッカーでもしているのだろう。
(これだけ遠ければ大丈夫なのにな)
そう思い、梨呼は考える。
(本当にきっかけはなんだったんだろう)
中学校の入学式のとき、学ランを着た男子に圧倒されて……、そこまではよく覚えている。
詰襟、学生帽、軍隊のようなイメージを受けたんだった。
そう、それか ら、男子と言えば、近くにいたのは広大だった。朝希と一緒にいると、自然と広大と会うことが多かったからだ。
中学校に入りたての広大は憮然としていて、気 性が荒くて、怖かった。近づくだけで怒鳴られそうな。触れれば刺されそうな。
そう、梨呼にとって、広大のイメージはとても強く脳裏に焼きついたのだ。
(あれ?)
そこで梨呼は男子と言えば広大をイメージしていた自分に気がついた。

「朝希ちゃんの幼馴染の、とっても恐い竹田君」

(竹田君には失礼だけど)
梨呼の男性恐怖症の原因は広大にもあるようだ。
(なんだ、私も意外と単純だ)
男子も同じ人間。全員が広大ではないし、今の広大はあの頃の広大より大分穏やかになっている。
(すぐにとは行かないけど……)
ゆっくり、ゆっくり慣れていければいいなと梨呼は心から思った。
そのとき、窓から突然強い風が入ってきた。
「あっ」
梨呼の手から勢いよくプリントが舞う。視界がプリントだらけになった。
(もう! どうしてこんなときに!)
自然とカケルと出会ったときが思い出された。
(困っているときに突然現れた人……。
恐くないと思えた人……)
でも今はいない。
泣きそうになりながら、プリントを拾う。拾ったプリントがまた落ちないように床に置きつつ。あと少し。
(あれ? 最初に持ってた分より足りない!)
床にしゃがみこんだままプリントが落ちていないか探していると、
「探し物はこれ? 拾ったよ」
(!)
カケルの声だ。
梨呼は勢いよく顔を上げた。予想通り笑顔のカケルがプリントを持って立っていた。
「プリントが豪快に舞ってたからさ。
ちょっとりこちゃんには重いよねー。手伝うよ」
カケルは自分で拾った分と、梨呼が拾った分の半分をひょいと抱えて歩き出す。
(スーパーマンみたいだ。なんでこの人はこんなに優しいんだろう。
……でもきっと誰にでも優しいんだ)
そう思ったとき胸が痛んだ。
初めての経験だった。
この痛みはなんだろう。
梨呼は朝希が広大のことを考えるときにする切なげな表情を思い出した。朝希も胸を痛めていたのだろうか。
「りこちゃん?」
立ち尽くす梨呼にカケルが振り返って声をかける。
梨呼は慌ててカケルの後ろに駆け寄った。そして、
「あ、あの……!」
「ん?」
「ありがとうございます」
「ははっ、こないだからそればっかりだね。じゃ、今度俺が困ったときに助けてもらおうかな」
「はいっ!」
梨呼は力いっぱい返事をしてしまった。そんな梨呼にくすくすとカケルは笑っている。
でも、この後どうしていいかわからない。駄目だ。このままでは会話が途切れちゃう。
何か。
「あのっ」
「何? そんなに緊張しなくていいよ。と言っても難しいか。ごめんね。
えっと、どうしたの?」
「あのっ、『カケル』ってどんな字書くんですか?」
とっさに出た言葉はこれだった。
「え? ああ、俺の名前? 飛翔の翔で、かけると呼びます。ちょっと珍しいかもね」
「飛翔の翔……」
なんだか小さな自分なんかに気付かず、翔が飛んで行ってしまうような想像をして、梨呼は悲しくなった。
飛んで行っちゃ嫌だ。
置いて行っちゃ嫌だ。ずっとそばにいて欲しい。

この気持ちは何だろう。
この気持ちは。

今なら朝希の気持ちが解るような気がする。
こういうことなんだ。
「りこちゃんは」
そう言って翔が後ろを振り返ると、大きな目にいっぱい涙をためた梨呼がいた。
「?! 
り、りこちゃん?」
「あの、わ、私、私……」
「う、うん?」
自分でも信じられない。告白する日がこんなに突然やってくるなんて。
でも、置いていかれたくない。
一緒にいたい。
ずっと自分と一緒にいて欲しい!
「羽柴君のこと好きになったみたいです!」
耳まで真っ赤なり、肩を震わせながら、梨呼は口にしていた。
次の瞬間、バサバサと翔の手からプリントが落ちた。
「あ、まずい。えっと。あの」
そう言う翔も耳まで真っ赤になっていた。

「梨呼の場合」おしまい



続き「広大の場合」を読む方はこちら

個人的には、「梨呼の場合」より「広大の場合」が気に入っています。最後の「治雪の場合」が一番自分が好きな話。
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

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