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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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天音花香
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性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





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こんにちは、天音です。

前回の「恋人ごっこ」の続きになります。
まだまだ続きますので温かい目で見守ってやってください。よろしくお願いします。




       恋人ごっこ 4




ココから小説



        叶わぬ恋なら



「亜貴はチャリ通?」
「うううん。私は電車」
 校門前で聞いてきた刻に亜貴は答える。
「じゃあ、ちょうどいいな。俺も電車だから」
 そういうと刻は歩き出す。校内を歩いていた時はあまりわからなかったが、刻の一歩は亜貴の一歩より大きいため、亜貴が早足でついていかないと遅れてしまう。
「?」
やや息が上がってきた亜貴を振り返り、刻は不思議そうに見た。
「なんだ、体調でも悪いのか?」
「……っ。わかんないだろうけど、足の長さが違うからこっちは早足でついて行ってるのよ」
 刻は言われて初めて気付いたように足を止めた。
「なんだ、言えばいいのに」
「……っ」
 亜貴はしばし息を整えながら刻を睨んだ。
「悪い悪い。あんた背はどのくらいあんの?」
 身長を聞かれるのはあまり好きではなかった。女子にしては高いのが悩みだった。
「……169センチよ」
「ふーん。態度がでかいからもう少しあるのかと思った」
 悪びれもなく言う刻に、
「あんた、ほんっとにむかつくわね」
 と言い返して亜貴は刻の隣に並ぶ。なんだかんだ言いながらも刻は歩く速度を亜貴に合わせたようだ。差がつかなくなった。
「刻は何センチあるの?」
「あ、俺? 180」
 歩幅に差がつくわけだ、と亜貴は納得した。
「そうだ!」
 突然亜貴が発した言葉に刻がまた足を止める。
「なんだよ?」
「追いつくのに必死で大事なことを忘れてた」
「大事なこと?」
「うん」
 亜貴は刻を追い越して振り返り、刻の目をまっすぐ見た。
「ねえ、刻。あんた、樋口先輩の好きな人わからない?」
 刻の目つきが変わる。
「なんで?」
「心当たり、あるんだ?」
「だから、なんで?」
 刻の目に凄味が加わる。
「私の想いは叶わない」
「だから何だよ。ぶち壊すのか?」
 刻の言葉に亜貴は反射的に持っていた鞄で刻を思いっきり殴った。
「!? っい、痛ってえ!! 何しやがる!?」
「あんた、ほんっとむかつく!!! そんなことするわけないでしょ!」
 怒りで亜貴の目には涙が浮かんでいた。その亜貴を見て、刻はたじろぐ。
「なんで泣くんだよ」
「刻があまりに酷いこと言うからよ!」
「だって、じゃあ、兄貴の好きな人知ってどうすんだよ、お前」
「くっつけるのよ!!」
 右の拳を握って言い切った亜貴に、
「はあ~?」
 刻は素っ頓狂な声を上げた。
「本気で言ってんの?」
「うん。今日、刻を見てて決めた」
 刻の足をしたたかに打って落ちた鞄を拾いながら亜貴は答える。
「ちゃんとこっち向いて言えよ」
 刻の言葉に、亜貴は鞄をポンポンと払いながら刻を見た。その瞳からすうっと涙が落ちる。
「……」
 刻は言葉を失った。
「……樋口先輩、もうすぐ卒業でしょう? 私の恋は叶わなかったけど、先輩の恋は叶うかもしれない。それなら私は先輩の恋を応援したい」
「そしたらお前の気持ちはどうなるんだよ?!」
「もう私は振られたんだからどうしようもないじゃない」
「そ、それはそう、だけど、よ」
 刻は亜貴から目をそらしてそう言うと黙ってしまった。亜貴はそんな刻を置いていくように足を踏み出す。
「刻は協力してくれないの?」
「え? 俺?」
 亜貴の隣に来た刻は心底意外そうにつぶやいた。
「うん。
駅に着いたね。考えておいてくれない?」
「……ああ」
 駅は人が疎らだったが、車内は仕事帰りのサラリーマンや部活を終えた学生でごった返していた。二人は席に座れず、吊革につかまって立つことになった。窓には決意を秘めた目をした亜貴と物憂げな刻の姿が映っていた。三駅目で亜貴は、
「じゃあ、明日ね、刻」
 とだけ言うと電車を降りた。刻は亜貴に視線を送って黙って頷いた。そして心ここにあらずといった感じでぼんやり窓を見ていた。



          たぶん先輩の好きな人



「おはよう、刻」
 どこかぼんやりとして駅から学校への道を歩いている刻を見つけ、亜貴はポンと肩を叩いた。
「亜貴」
 声に覇気がない。
「どうしたの? 具合でも悪い?」
「いや……」
「昨日言ったことだけど」
 亜貴の言葉に、
「あのさ」
 と刻が口をはさんだ。
「何?」
「お前、本当にそれでいいのか? 兄貴のこと好きなんだろ?」
「意外にしつこいわね? 好きだから、よ」
 亜貴の両目に射抜かれて、刻はふいと目をそらした。
「……わかんねえ」
「そうね、刻にはわからないかも」
「……」
 憮然として刻は黙る。そんな刻に亜貴は何もなかったように、
「お昼、作戦会議ね」
 と言って刻を置いて歩いて行った。
「やっぱり、わかんねえ」
 刻は一人つ呟いた。


***



 刻が校庭脇のいつもの場所に行くと既に亜貴がベンチに一人腰かけていた。亜貴は刻に気づいて軽く手をあげる。
「おう」
 刻もそれに答えた。亜貴の隣に刻も腰かけた。桜は固い蕾をつけて春を待っているようだった。グラウンドの方では男子がサッカーをしていた。いつも通りの昼休み。
 とりあえず二人は弁当箱を開けた。
「それで、刻は樋口先輩の好きな人、知ってるの?」
 卵焼きを口にしてから箸をとめて亜貴は刻の方を見た。
「ああ。たぶん兄貴の好きな人だと思う人がいる」
「それってさ、円上先輩じゃない?」
 刻がちょっとだけ目を見張った。
「……たぶん。
ってなんで?」
「そっかあ……。なんとなく、ね。書道部でも二人はとても親しそうだったし」
 亜貴は淡く微笑んだ。どこかで分かっていたことだった。だけどやっぱり胸がずきんと痛んだ。
(やっぱりそうかあ……。お似合いよね)
「そっかあ……」
 亜貴の口からもう一度同じ言葉が出た。刻はちらちらと亜貴を見て、なんと反応していいかわからない様子だった。亜貴は今度はほうれん草のおひたしを箸でとって口に含んだ。咀嚼する。無言の時間が流れた。
「……まあ、それなら、樋口先輩が告白したら上手くいきそうよね」
 おひたしを飲み込んで、わざと明るめの声で亜貴は言った。そんな亜貴を見て、刻は複雑な顔をした。
「何? なんか問題があるの?」
「いや……。それが、そう簡単じゃねー気がするんだ」
「?」
 刻は今日はなんだか歯切れが悪い。食も進んでいなかった。
「兄貴とさゆり姉は幼馴染で、確かに仲はいい」
「さゆり姉? あ、円上先輩のことね? そっか、幼馴染だったんだ、あの二人。刻も親しくしてるのね」
 なるほど、と思いながら刻の続きを待つ。
「ああ、俺も可愛がってもらってる。ただ、幼馴染なのは兄貴とさゆり姉だけじゃないんだ。もう一人、渓ちゃんがいる」
「渓ちゃん?」
 知らない名前に亜貴は首をかしげる。
「亜貴は知らねえ? 尾崎 渓ってサッカー部にいた先輩なんだけど」
「わからない。顔を見ればもしかしたらわかるかもしれないけど。
それで、幼馴染は二人じゃなくてその三人なのね。それで、もしかして、樋口先輩と尾崎先輩は円上先輩を好きなの?」
「いや、そこまではよくわかんね。ただ、三人ほんとに仲良いいんだけど、恋愛感情? とかはあるのかないのかわからない感じなんだ。まあ、兄貴はたぶんさゆり姉が好きだろうなあと俺は思ってるんだけど」
「そう……」
 亜貴はため息をついて、黙った。
(二人だけを見てるといい感じに見えるのにな)
 刻はようやく箸を動かしだした。また無言の時間が流れる。
「亜貴、さあ」
「うん?」
「簡単にくっつける!とか言ったけど、具体的に何するんだよ?」
「確かに、そう、なのよね。何をしたらいいか考えてるところ」
「おい、お前、また人の恋愛に首突っ込むだけじゃないだろうな?」
 それを言われると何も言えなくなってしまう亜貴だったが、でも、やっぱり樋口先輩のために何かしたいという思いは消えなかった。
「……わりぃ、言い過ぎたか?」
 黙った亜貴に刻が気まずそうに言った。
「うううん、確かにほんと、私、人の恋路に乱入してるのかも。でも、でもね、樋口先輩の力になりたいんだ。それは心から思うの」
「なんでそこまで兄貴のこと思えるんだよ?
って、そうか。また『好きだから』って言うんだろ?」
 理解できないっといった風に頭を振って刻は言った。
「なんだ、わかってるじゃない」
 と亜貴は笑う。刻は複雑そうな顔になった。
「ねえ、明日土曜日よね? 樋口先輩は何か用事あるの?」
「? たぶん、兄貴は予備校じゅあねぇかな。さゆり姉も渓ちゃんも一緒のとこ行ってると思うけど……」
「そう。ねえ、三人でいるところ、見てみたい」
 思いついたように言った亜貴に刻は嫌な顔をする。
「はあ? 見てどうするんだよ?」
「それは見て考える!」
「ほんと変な奴だな、お前。
土曜は予備校終わるの夕方だな。18時ごろだと思う」
 刻は諦めたように息をついてそう言った。
「刻はその日は何か予定ある?」
「俺は午前中は部活に行く」
「なら、刻が部活が終わるころに私も学校に来るわ」
「来てどうするんだよ? 予備校が終わるまで時間が余るぜ?」
 そうねえ、と亜貴はしばし考え、
「じゃあ、デートとやらをしてみればいいじゃない」
「は、はあ?!」
「だって私たち付き合ってるんでしょ?」
「……し、仕方ねえな、してやるよ」
 刻はそう言って弁当の残りを口にかきこんだ。その頬が少し赤かった。そんな刻を見るとなんだか亜貴も恥ずかしくなって、それを誤魔化すように最後の一個のサツマイモのてんぷらを口に押し込んだ。




デートってこんなんでしたか? 1



「学校行ってきます。昼は食べてくる。ちょっと遅くなるけど夕飯は食べるから」
 亜貴は母親にそう言うと家を出た。デートと言っても学校に行くのでいつもの制服姿だ。亜貴の心はどちらかというと樋口先輩の方に向いていた。樋口先輩が本当に円上先輩が好きなのか、見て確かめてから行動を起こしたい。そう思っていた。
 電車に揺られている間、亜貴はぼんやりと考える。もし本当に樋口先輩が円上先輩を好きなようだとわかったらどうしようかと。二人きりで会わせたら、樋口先輩は告白するだろうか。
(今まで二人になる時間はいくらでもあったはずよね。でも告白しなかった。二人にしただけじゃダメなのかな。何かきっかけがあればいいのかもしれない)
 気が付いたら校門の前だった。刻はまだ来ていないようだ。亜貴は弓道場の方に行こうか迷ったが、行き違いになってもいけないので待つことにした。弓道場の方を向いて待っていると、部活を終えた部員が出てきた。刻はすぐに見つかった。男子部員の中でずば抜けて背が高いせいもある。
(それだけじゃないかもね。光ってるってこういうことを言うのかしら)
 刻は明らかに目立っていた。一人の男子部員に向かって軽口を叩き、やんちゃな笑顔を見せる刻に亜貴の目は自然と惹きつけられた。樋口先輩に似た端整な顔が笑うと急に幼くなる。
(樋口先輩の笑顔は逆だったな。大人っぽい、微笑むって感じだった)
 でも刻の笑顔は笑顔で悪くない。ふとこちらを向いた刻と目が合った。その瞬間、刻はなんだか気まずそうに目をそらした。
(何よ、そんな露骨に嫌な顔しなくてもいいじゃない)
 亜貴はそう思いながらも刻を観察する。つるんでいた友達に何か言うと、刻は軽く走って亜貴に向かってきた。その一つ一つの動作がなんだか様になっていて、亜貴はちょっと憎らしく思った。亜貴が刻に向かって手を上げようとすると、刻はその腕を掴んで、亜貴を校門の外に連れだした。
「お前っ、そんなことするとまた冷やかされるだろ?!」
 ちょっと怒ったように刻は言ってずんずんと亜貴をひっぱる。その力の強さに、亜貴は引きずられる形になって、
「ちょ、ちょっと! 痛い!」
 と悲鳴に近い声を上げた。
「!」
 刻は初めて気づいたように亜貴から手を放した。
「わ、わりぃ」
 困ったように言って、心配そうに亜貴を見る。
「ほんと、乱暴!」
 亜貴は掴まれたところをさすりながら、歩く。それに合わせて刻も歩き出す。
「い、痛い、か?」
 先程怒っていた顔が嘘のように、しょげた顔で刻が聞いてくる。
「痛かったわよ」
 ちょっと怒った風に亜貴が言うと、
「ほんと、ごめんな……」
 神妙な顔で謝ってくる。なんだか可哀想になって、亜貴はふうと息を吐いた。
「もう、いいわよ。
……あんた、恥ずかしかったんでしょ?」
 亜貴の言葉に、
「ま、まあな」
 と刻は頷く。
「でも亜貴の腕がこんなに細いとは思わなくて……」
 刻は歩きながら鞄を手にしていない方の手を握ったり開いたりを繰り返した。
「ちょ、や、やめてよ、その手!」
 言われて気づいたのか、刻は慌てて手を動かすのをやめた。
「……」
 気まずい空気が流れる。無言で二人で歩いていると駅が見えてきた。
「……それ、で。どこ向かってるんだ?」
 言いにくそうに刻が聞いてくる。
「そうね、どこというわけではないのよね。とりあえず、刻の反応から学校は離れた方がいいかなと思っただけで」
「なんだ、それ」
「うーん、まずはご飯、だったわよね。どこで食べようか」
「亜貴は何が食べたいんだよ?」
(何が食べたい、というよりは)
「ねえ、樋口先輩と円上先輩、それとまあ、尾崎先輩、だっけ? 三人がよく利用する喫茶店とかファミレスとかないの?」
「あるにはあるけど」
「じゃあ。そこに行ってみたい」

***

 二人は駅の裏の方にある、ブルームーンという喫茶店に入った。おしゃれなテーブルセットの並ぶ、やや暗めの照明の雰囲気のいい店だった。
「兄貴はここのアールグレイが好きなんだ。ケーキもうまいみたいだぜ?」
「食事は?」
「ホットサンドとか美味しいと思うけど? 普通にカレーやハンバーグとかも食べれるよ」
「そう」
 刻が近くの席に座ろうとすると、亜貴は、
「ちょっと待って!」
 と制した。
「な、なんだよ?」
 亜貴は店の中を見渡して、こっち、と刻の手を引っ張った。
「な!」
 手を繋がれて、刻は動揺した。が、亜貴はお構いなしに刻を連れて行く。観葉植物が隣との席を仕切っている一番奥の席だった。
「うん、ここなら入口から見えないわね」
「誰か会いたくない奴でもいるのか?」
 刻が訝しげに亜貴を見る。
「いないわよ? でも、二人の先輩連れてくるなら、気付かれない所がいいかなと思って」
 刻は一瞬理解ができなかった。
「亜貴、それって、兄貴とさゆり姉を呼び出すつもりなのか?」
「うん」
 当然とでもいうように亜貴は頷く。
「え?いつ?」
「いつがいいかな。受験もあるし、そこが難しいところよね」
「いや、その前に、そのとき俺らここで隠れてみてるってことだよな?」
「え、だめかな?」
「っお前、相当性格悪いな。ま、まさか、俺の時も偶然じゃないとか?!」
 かなり引いた顔で言った刻に、
「あれは偶然だってば!」
 と亜貴は言い返して、ちょっと考え込む。
「やっぱり良くない、か」
「せめて外で見守ろうぜ? 馬に蹴られて死んじまう」
「そ、そうね。私、何様なの?って感じよね」
 刻に指摘され、亜貴は自分を恥じた。しょげる亜貴に刻は、
「ま、とりあえず腹減ったから何か食おうぜ!」
 と言ってメニューを手に取った。

 刻はカレーライス、亜貴はホットサンドをそして食後にアールグレイを頼んだ。店員が去り、亜貴がふと視線をあげると刻の視線とぶつかった。学校のベンチでは隣に座っていたので、真向かいに座るとなんだか気恥ずかしい。お互い気まずそうに視線を逸らす。
 改めて店内を見渡して、亜貴はこの店で紅茶を飲む樋口先輩の姿を想像した。小さくジャズが流れている。オレンジ色に灯る照明が柔らかく店内を照らしている。樋口先輩には似合う喫茶店だが、自分一人では入れなかっただろうなと思って刻を見ると、刻とまた目が合った。
「……私がしようとしてること、無謀だと思ってるんでしょ?」
「まあな。俺一人ならしねぇな」
 バッサリ切られた。
「でも、まあ、いいんじゃねぇ? 亜貴は兄貴のために何かしたいと思ったんだろ? ただ、なんだっけ、ほら今流行りの。アドラーかなんかの心理学? 水を飲ませようとしても本人が飲もうとしなけりゃ飲ますことは無理。俺らに出来るのは限られてるってやつだな」
「……。案外大人なのね、刻」
 亜貴が心から感心して言うと、刻は「案外は余計!」と言って、店員が持って来たカレーライスに視線を落とした。
「うまそ」
 表情が一瞬で変化した刻を見て、亜貴はくすりと笑ってしまった。
「こっちも美味しそう」
「亜貴、それだけで足りんのか? ホットサンドは俺はおやつ感覚で食っちまうけど」
「十分よ」
「頂きます」
 ホットサンドは外はサクッとして、中はチーズがとろりとして美味しかった。サラダが付いてくるのも学生にはありがたい。刻のカレーもいい香りがしていた。きっと美味しいのだろう。食後に店員がアールグレイを運んでくるとふわりといい香りが漂った。なんだかほっとする。樋口先輩もきっとこんな時間をここで過ごしていたんだろうな。
「そんな顔もできるんじゃねーか」
 刻の声に顔を上げると、刻がニヤリと笑っていた。
「失礼ね。誰かさんが軽口を叩かなければ、普段は穏やかなの」
「穏やかなの、って、亜貴が? ふは!」
「……その口どうにかならないの? 」
 雰囲気をぶち壊されて怒気を含んだ声で亜貴が言うと、さらに楽しげに刻は笑った。





                                  続く


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 今日はこのくらいで……。



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 それではまた近いうちに!              


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