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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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天音花香
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性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





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     「治雪の場合」2


 十月も半ばに入った。
 朝は冷え込むようになってきた。晴れた空が随分高く見える。秋だ。
 が、空気までも張り詰めているように感じるのは寒さだけのせいではないだろう。受験を意識し始めたためか、三年生の表情には余裕がなくなってきていた。朝早くから教室で勉強する生徒の姿も見られる。
 ――あ。
 香りに誘われるように、治雪の手は横を通り過ぎた女子の肩をたたいていた。
「おはよう、堀内さん」
 無意識の行動だった。
 孝子は治雪の言葉に振り向き、微笑んだ。
「おはよう、春日君」
 いつもの笑顔。
 だが、その顔色は優れない。
「どこか具合が悪いんじゃない、堀内さん? なんだか顔色がよくないけど」
「そう? 疲れているのかな? でも大丈夫よ。
それより、春日君、頑張ってるみたいね。ミニテストの成績が上がってきた奴がいるって、先生が褒めてたわよ。春日君のこと」
 純粋に嬉しかった。評価されるのは嬉しい。
「ああ、堀内さんに言われてから頑張ってるんだ」
「そう。私も負けないように頑張らなくちゃ」
 孝子はにっこり笑った。
 孝子は誰に対しても優しい。だからそれを勝手に誤解しちゃいけない。
 解ってはいても、笑う孝子を見て、嬉しいと思う自分がいた。
「あ、佐々木だ」
 腕時計に目をやって、また前を向いた佐々木も二人に気付いて手をあげた。小走りになって治雪の所へやってくる。
「おはよう、堀内さん。
よお、治雪」
 先ににっこりと笑って孝子に挨拶をするところが佐々木らしい。
「おはよう、佐々木君」
 治雪はなんとなく面白くない。そんな治雪の顔を見て、
「何だよ、その顔は」
 と佐々木が言ってくる。
「別に。よお、佐々木」
 孝子はそんな二人を見てくすくす笑っている。
「堀内さん」
 教室から翔が孝子に声をかけてきた。
「今日のホームルームさ」
 孝子は二人に一度微笑んでから、教室へ入っていった。治雪はその孝子の後ろ姿を見送る。佐々木はその治雪の横顔を見た。
「おいおい、翔には彼女がいるし」
「いや、そうじゃなくて」
 佐々木の言葉を治雪は途中で遮る。
「やっぱり顔色が悪いと思って……」
「そーいえばそうだったな」
「ここのところずっとだな」
「心配してるだけじゃ、何もしてないのと同じだぜ? 力になってやらなきゃ」
 治雪は佐々木の顔をまじまじと見た。
「たまにはお前もいいこと言うな! そうだよな! 友達なんだから」
 佐々木はそんな治雪の頭を「たまにはは余計だ」とぽかりと叩いた。



 その日六限目のホームルームは、資格と特技、長所の調査だった。
「お前ら、何でもいいからいいこと書けよー。書き終えたら各自自習。静かにな。
羽柴、堀内。俺は職員室に戻るから、後は頼むな。時間になったら終わっていい。調査書は集めて持ってきてくれ」
 担任の川瀬満は相変わらずいい加減である。
(資格、か)
 書道一級。段に入る前にやめてしまった。水泳五級。選手コースになってきつくなってやめた。他にも珠算、剣道……いろいろやったが、中途半端なところで全てやめている。
(俺って……)
 長所となるとますます思い浮かばない。孝子に言われた言葉を思い出す。素直? うーん、書くにはなんだか恥ずかしい。男子に対する褒め言葉ではない気もした。
「書き終えたら前に回してください」
 孝子がよく通る声で言っている。なんだかどうでもよくなって、そのまま前に回した。どうせ先生が適当に書いてくれるだろうし、大学側だってろくに見るわけじゃないだろう。
「堀内さん、俺、持って行くよ」
 書類を手に教室を出ようとした孝子に、翔が声をかけている。
「いいの。教室のほう、お願いね」
 孝子はいつものようににっこり笑って言った。が、その顔は朝よりさらに青い。額には。
(汗? きついんだ!)
 治雪は立ち上がった。
「治雪?」
 後ろの席の佐々木が不審そうに声をかけてくる。
「トイレ」
 短く答えて、急いで孝子の後を追った。孝子は階段を下りようとしていた。その孝子に、
「手伝うよ」
 と治雪は声をかけた。驚いて孝子が振り返る。
「春日君? 優しいのね。でも大丈夫だから教室に戻っていいわよ?」
 言いながら孝子は階段を下りる。
(どうしてこの人はこんなに無理をするんだろう)
 少し苛立ちを覚えながら、治雪は無言で孝子の手から書類の束をとって歩き出した。
「ありが……」
「え?」
 途中で途切れた孝子の声に、不審に思って、治雪は後ろを振り返った。
「?! 堀内さん!」



 突然倒れた孝子を保健室まで運ぶと、治雪は書類の束を満に渡して、孝子が倒れたことを報告した。
「で、どうなんだ? 様子は?」
 青ざめる満に、
「今は保健室のベッドで寝ています。疲労だろうと保健医の先生は言っていました」
 と早口に治雪は答えた。
「あの、俺、心配だからついててもいいでしょうか?」
 走り出したい気持ちを抑えて治雪がそう言うと、満は少し考えて、
「ああ、お願いする。
堀内は……まあ、いろいろあって大変なんだ。力になってやってくれ」
 と言った。
「はいっ」
 言うが早いか、治雪は職員室の戸を閉めて駆け出した。
 保健室の戸をガラリと勢いよく開けると、保健教員に睨まれた。治雪は「すみません」と頭を下げて、今度は静かに戸を閉めた。
「どう、ですか?」
「寝ているわ。相当疲れているみたいね。ゆっくり寝かせておいてあげなさい」
 治雪は、ちょっと躊躇った後、ベッドを仕切るカーテンを開けて中に入り、横に静かに座った。孝子は悪い夢を見ているのか、苦しげに寝返りをうっている。
 治雪は少し窓を開けた。そして、ポケットから皺くちゃのハンカチを引っ張り出して、孝子の額に浮かぶ汗を拭く。
 高い空にはうろこ雲が浮かんでいる。
 治雪はため息をついた。
 なんだろう、この気持ちは……。
 悔しいような、悲しいような気持ちをどうしていいかわからず、ただ、孝子の汗を拭くことだけを繰り返していると、孝子の唇が小さく震えた。
「……」
 目が覚めたのだろうか。いや、そうではないようだ。
「泣か……ない、で」
「え?」
「お母さ……」
 孝子の目は瞑られたままだ。しかし、その目から音もなく涙があふれ、頬を伝い、枕をぬらした。
「!」
 一瞬息が止まった。
 苦しさに胸を押さえながら、治雪はよろよろと立ち、仕切りのカーテンを閉めると先生の前の席まで何とか来て、どかりと腰をおろした。
「? 起きたの? 堀内さん」
「……いいえ」
 治雪は力なく答えた。なぜか目頭が熱くなって上を向いた。
(孝子は眠っているときさえ苦しんでいる。
解った。なぜ悔しかったか)
 孝子は悪意のない笑顔で境界を作っていたのだ。
 これ以上は入るな、と。ほうっておいて、と。
 孝子の心には、きっと誰もいない。もちろん治雪も例外ではない。
 いや、お母さん。うわ言でさえ呼んだ人。
 そして。
 治雪は進路指導室での孝子を思い出した。
 誰か、他に一人だけ……。
 自分はこんなにも力になりたいと思っているのに、孝子は必要としていない。一人で全部抱えて、苦しんでいることさえ見せようとしなかった。
(俺は……)
 治雪が拳を握ったときだった。
「う……ん」
 ベッドのほうから声がした。
 治雪が動けずにいると、先生は何も言わずに立って、治雪の頭を乱暴になでてから、ベッドを覗いた。
「気がついた? 堀内さん。あなた疲れて倒れたのよ」
「……すみません。迷惑をおかけして」
 まだぼんやりとした表情でベッドを片付け、孝子は先生に頭を下げた。そして、治雪の姿を認めて絶句した。
「……大丈夫?」
 治雪は無理矢理笑顔を作ってそう口にした。
「春日君が運んでくれたのよ。今も心配してここに残っていたの」
 先生の説明に、
「あ、ありがとう、春日君」
 と言って、孝子は複雑な笑みを浮かべた。
「俺、鞄とってくる。ここで待ってて」
 空気が薄くなっていくような、そんな感覚を覚え、治雪は逃げるように保健室を出た。
 廊下を歩く足取りは自然と重くなった。
 普通を装わなければならない。今まで通りに接すればいいのだ。別に悩むことではない。
 孝子の心の中に、自分の存在が無きに等しくても。力になりたいと思うのは変わらないし、現に孝子は苦しんでいるのだ。
(考えても仕方ない。堀内さんが待ってる。急ごう)
 治雪はもう暗くなった廊下を二つの鞄を持って走り出した。



 「送るよ。また、倒れちゃったりしたら、俺が怒られちゃう」
 それは、嫌だから、と言って孝子の鞄を手に取る。
「……じゃあ、お願いしようかな」
 孝子はにっこり笑った。治雪は複雑な気分になる。本当は嫌なんじゃと。
(馬鹿馬鹿しい。堀内さんに失礼だ)
 自己嫌悪に陥りながら歩く。足取りは重い。
「春日君? どうかしたの?」
 表情に出ていたのだろう、孝子が心配そうに声をかけてくる。
(病人に心配させて、何やってんだよ、俺)
「なんでもない」
 しばらく二人は無言で夜道を歩いた。
 十月に中旬になると夜は冷える。空には少し欠けた月が冷たい光を放っていた。
「あのさ、堀内さん」
 沈黙に耐えかねて、治雪は声をかけた。
「疲れているのに無理することないと思うんだ。余計なお世話かもしれないけど、堀内さんの周りには俺も含めていっぱい人がいるんだから、何か悩みがあるなら、そういう人たちに頼っていいと思うんだ」
「私、そんなに疲れてなんか……。誰にだって悩みはあるものだし」
 治雪の言葉に、孝子にしては珍しく逃げるような答えが返ってきた。治雪は足を止めた。
「倒れたのに?」
 治雪の真剣な目に、孝子はちょっと動揺をした。
「そんなに、真剣にならなくても」
 と言って、孝子は何か思い当たったように口をつぐんだ。
「……私、さっき夢を見ていたわ」
 独り言のように呟いて、その後、じっと治雪の目を見た。
「うなされていたような気がする。
……私何か言っていた?」
 今度は治雪が動揺する番だった。
 まずい。どう答えればいいのだろう。正直に答えていいのだろうか。
「言ったのね?」
 そんな治雪の心を見抜くような孝子の視線。それに促されるように。
「『泣かないで、お母さん』」
 治雪が答えると一瞬孝子の瞳が大きく揺れた。
「そう……」
 呟いて、孝子は治雪を置いて歩き出した。
 慌てて、治雪は孝子の隣に歩み寄る。心まで引き離されそうで怖かったのだ。 孝子はしばらく無言だった。しかし、やがて覚悟を決めたかのように大きなため息をついた。
「私の父は浮気をしているの」
 その言葉にどう反応していいかわからず、治雪は孝子の次の言葉を待った。
「私が中学に入った頃からよ。いいえ、もっと前からだったのかも。
でも、その頃は今よりはましだった。父は家に帰って来てたから。
今は……帰っても来ない」
 孝子は他人事のように淡々と話した。治雪は余計に胸が痛んだ。
「母は……。
ノイローゼ気味なの。毎日泣きながら父を待ってる。
父は毎月お金を振り込んでくれるから、生活に不自由はないの。母が欲しいのはそんなものじゃないのにね」
 ふふ、と孝子は寂しげに笑った。何もかも諦めたような笑いだった。
 それを治雪は悲しく思った。『諦めるの?』と言って、やる気を出させてくれた孝子。
 こんなのは、こんなのは。
「お母さんも気の毒だとは思うよ。でも、泣いているのは堀内さんも同じだよ!」
 思わず治雪は叫んでいた。孝子はそんな治雪をきっと睨んだ。その目は潤んでいた。
「同情はやめて!」
「同情? そうかもしれない。でも、ほっとけって言うの? 学校でも家でも頑張って、堀内さんはいつ休むんだよ? こんなに細い肩で全てを支えられるわけない!」
「他人に迷惑はかけられないわ!」
「迷惑なんかじゃないよ! 
……違うだろ? 堀内さん。堀内さんは完璧になろうとしているように見える。そんな人間なんてどこにもいないのに」
 孝子の足が止まる。
「違ったらごめん。でも……。
本当は怖いんじゃないの? 人に弱みを見せるのが。
それは……、それは、人を信用していないってことだよ!」
 治雪の言葉に孝子は言葉を詰まらせ黙った。
 治雪はぐしゃぐしゃと頭をかいた。
「ごめん、違うんだ。堀内さんを苦しめたいわけじゃなくて……。
ただ、悔しいんだ! こんなに力になりたいと思っているのにそれがうまく伝えられない!」
 孝子は気がそられたように治雪を見た。
「俺、堀内さんには感謝してるんだ。堀内さんのおかげで頑張ろうって気になれたんだ。なのに、俺は。
俺は、もっと堀内さんに頼って欲しいんだ!」
 涙声になっていた。
 恥ずかしい。これじゃ駄々をこねる子供だ。
「ごめん。俺ちょっと今日はもう一緒に帰れない」
 孝子に鞄を押し付けるように返すと、治雪は駆け出した。
 空には下弦の月。呆然として治雪を見送る孝子を照らしていた。



 次の日、治雪は朝早くから教室へきて勉強をしていた。昨夜は手につかなかったのだ。
 また、手が止まっているのに気付いて無理矢理問題集に目を移す。どこまでやったかわからなくなり、もう一度始めからやり直す。
(あれ?おかしいな。違う公式なのか?)
 同じところを何度も繰り返し解いているうちに、治雪はいつのまにか眠ってしまっていた。
「春日君」
 孝子の声だ。とうとう幻聴が聞こえるまでになったらしい。重症だ。堀内さん病。
「あー、堀内さんごめんねー。こいつ寝てるみたい。まったく何のために早くから来たんだか」
 うるせーな。佐々木はいらねーってーの。
「おい」
 頭に軽い痛みが走った。
 一気に目が覚めて、後ろの席の佐々木を振り返る。教室の人が随分増えていた。かなり寝ていたらしい。
 佐々木はあきれた顔で治雪を見て、前を指差した。
「はあ?」
 治雪は不機嫌に前に向き直ったが次の瞬間、自然と視線が下がった。
「堀、内さん……」
「おはよう、春日君。目は覚めてる?」
 孝子はくすりと笑って言った。いつもの孝子だ。
「覚めた、今。
おはようございます」
 孝子があまり気にしていないことにほっとする反面、自分はそれだけの存在なのだと言うことを再認識してがっかりしながら治雪は言った。
「なーに不機嫌な声出してんだよ」
「うるせーな、寝てたのにてめーが起こしたからだろ!」
 八つ当たりだとしか思えないが、不機嫌の矛先を佐々木に向けて言うと、なぜか、孝子が「ごめんなさい」と謝った。
「え?」
「昨日、あれから考えたの。春日君の言うこと、当たっているかもって。私、とても失礼なことをみんなにしていたんじゃないかって。
だから、一言春日君に言いたくて」
 治雪は驚く。
「ありがとう。それが言いたかっただけなの。ごめんね、起こしちゃって」
 孝子はそう言って、自分の席に戻っていった。
 満面の笑顔になった治雪に、
「単純」
 と佐々木が呟き、今度は治雪が佐々木の頭を叩いた。


         「治雪の場合」3に続く

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