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小説をおいております。 『いざ、出陣 恋戦』シリーズの二次創作、『神の盾レギオン 獅子の伝説』の二次創作、そして、高校生の時に書いた読まれることを前提にした日記と、オリジナル小説を二編のみおいております。
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プロフィール
HN:
天音 花香
性別:
女性
職業:
主婦業メイン
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、結婚後落ち着いてから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。

クリックで救える命がある。
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こんにちは。天音です。

未来の誰かに贈る日記を今日はお送りいたします。



このブログ、小説ブログに載せている全ての作品の著作権は天音花香にあり、放棄しておりません。
無断転載、許可のない販売は禁止です。





ココから日記

最初から読んでみる




 一九九七年 六月七日


 母校の文化祭に行ってきました!部室によって思った。懐かしすぎる!でも寂しかった。私の使っていた棚が、違う人に使われている。当然のこと。それは分かるけれど。展示とかもそう。見るのは楽しい。でもね、感動がないんだよね。自分が関わってないから。「やりとげた!」というのがなくて、やはり寂しかった。
 久々の校舎。これが取り壊され、新設されるなんて・・・。
 先生たちにも会った。懐かしかった。質問しにこい、と言われた。多分そのうちお世話になります。やっぱり先生方好きだな! 友人たちにも会えた。そのとき、思ったこと。うわあ、みんな雰囲気変わったな。でもね、最初気づいてくれない人もいた。なんかね、変わった らしい。そうかな?自分ではよくわからない。私自身は全然変わらないし。でもね、言うの。「女になった」どーゆーこっちゃ。「先が怖い」はあ? 高校の時に一番身近にいたK子までいう。「きれいになった」だそうだ。そう連発されると照れるやんか。しかしなぜ?
 確かに落ち着いてきた。勉強もまあ、ぼちぼちしてるし。今はまっているピアノも練習するから上達するし。O君とも一応友達してるし。なんかすごく最初は不安だった。私のしらないO君が増えることに。でも、今は思う。それは当然のことなんだよね。ずーっと変わらない方がおかしいんだ。最近もよく夢見たりするし、「好き」ってことに変わりはないし、その度合いが薄れてきたとは思えない。でも思うの。O君にもし好きな人がで きてもそれは仕方ないことだって。そりゃ悲しいけれど、多分今の私なら応援できる。なぜかって、そりゃO君が好きだからじゃない? 
「女になった」って言った友達こそ、特定の男性とお付き合いするようになってすっごく美しくなっていった子だ。恋するってすごいね。私もそーだとしたら……いいんだけど、あはははは……。


実は明日テストなんだよね。大丈夫なの?



 一九九七年 六月十二日


 昨日O君に電話した。久々におばさんが出た。今さっき黒木書店に出ていったと言ってた。うちの近くまでくることあるんだと思った。ちなみにバイクでだそうだ。それが10時20分だった。もう一度電話して、まだだったら今度ま たかけますと言って11時に電話をした。話し中だった。おばさん? それともわざと受話器あげてたの?(被害妄想ひどすぎ)違う、よね?不安だけがつのって……。なんか疲れを感じた。O君、あなたは私には大きすぎる人なのかもしれない。いつまでたっても追いつけない。
 今日9時20分に電話した。またおばさん。「天音です」というと、「あら、こんばんは」「こんばんは」「またいないのよ。友達とバイクで走ってくるって」「そうですかー、男の子って夜でも平気ででていくんですね」「そうなのよ。止めてもきかないの」「心配じゃないですか?」「中学の時の友達でね。いい子たちばかりだからそれは全然。でも事故とかがね」「乗るとスピード出てしまうっていいますものね」「そう。い つのまにか出てるって言ってる」「お勉強の方は……O君のことですから、してますよね?」「どうかしらねー。予備校には行ってるけどねー」「でも本当にはまっているみたいですね」「そうねえ。浪人中なのにねえ」「いい息抜きになるんじゃないですか?」「それはそうみたいね」「ふう、でも残念だな」「ごめんなさいね」「いえ、こちらこそ電話よくかけるから煩くないですか?言ってくださいね。やめますから」「それは全然構わないのよ。またかけて下さいね」「は、はい」
 そうそう、昨日の話し中は弟さんだったらしい。久々の友達で一時間ぐらい話してたんだそう。それにしてもおばさんは話しやすい。ま、今日はおばさんに免じてまあいっかっということで。


 一九九七年 六月十三日
 

 先のことなんて分からない
 最善なんて分からない 
 僕は神じゃないんだから
 今だけで精いっぱい
 当事者だから盲目にもなるさ
 でもそれは仕方がない
 迷っていたら進めない
 行動は自分で決めろ
 そして責任を取ればいい!
 きっとそれは最善になる!


 ときどき思う。私は本当にO君が好きなの? 好きって何? いつからそうなったの? 確かに気になるの。考えるとドキドキしたり幸せになったりするの。他の女子と話していると不安になるの。でもそれは本当に「好き」なの? 改めて考えるとどこが好きなのかもよくわからな い。どうしてこんなに心を占めてるの? どうして毎日考えてしまうの? 分かんないことだらけ。人の気持ちって難しすぎる。自分の心さえよくわかんないよ。もちろんO君の心も分かんない。私はO君をほとんど知らない。なのに好きになるなんてことあるの??????



 一九九七年 六月十四日


 夢を見た
 とても綺麗な世界で
 「あなたは汚れているので入れません」
 と言われた

 夢を見た
 とても汚れた世界で
 「あなたは綺麗なので入れません」
 と言われた

 目が覚めて思った
 なるほど 
 世界はよくできている



  一九九七年 六月十九日


 バカヤローっ!  なーにやってんだ! 
 あなたは受験生なんだよ! しかも浪人! 息抜きは必要だと思う。でもね、最近遊びすぎてると思う。このままじゃ浪人したこと後悔することになっちゃうよ。ふう……。
 今日は捕まえようと早めに電話したのに……。(8時30分)また10時すぎにしてやるつもり。いい加減に帰ってきなさい~!・・・電話すると本人が出た。同窓会と文化祭の話をちょこっとだけした。んで母からロストワールドのチケットをもらったことを言って、「よかったら一緒に行かない?」と言ってみた。沈黙。「チケットただだよ?お得だと思わない?」「タダ……。別にいいけど」「ほんと?取り消しなしね!本当にいいの?」「……どうでもいい」……なぬ? 傷ついたぞ、それは。「じゃあ行こう!」「いつにするの?」で、日にちは7月16日になった。なんか……。うーん、嘘みたい。ちゃんと話せるかなあ?



 一九九七年 六月十九日


 例のY先生の授業を受けていて、また矛盾を感じて「もー、またや。変」といらついて、でも、「どーでもいいや、自分で勉強しよう」と思い、はっとした。どーでもいいって……。このときは私のY先生に対する感情。これに似たものをO君は私に持ってる? いい加減で本当にどうでもいい気持ち。うー。なんか落ち込む。
 今日朝バイクで二人乗りしている人がいた。一瞬O君が女の人を乗せているのを思い浮かべた。その瞬間。胸の中に闇が広がった。久々の嫉妬という感情。なんか自分が嫌になった。たぶん本当に見たら、その女の人に「死ね」って思ってしまうかも。怖い。自分が。



 有機物ができて
 アミノ酸を作って
 そして生命が生まれたと習った
 物に生命が……?

 帰りに夕日を見た
 風が強くて
 上半分は雲が隠してしまっていた
 下は光の洪水だった

 私は思った
 神様は本当にいるかもしれない
 あの光のカーテンの裏に
 でなきゃ
 こんな地球(ほし)があるわけない



 一九九七年 六月二十五日



 予備 校に、親しい友達のいない男子がいる。その人は途中から入ってきたから。その子は予備校で、私の今最も仲いい友達に気があるらしく、話しかけてきて、私もなぜか話すようになっていた。ところが、お弁当を食べているときにその子が加わるようになって・・・。七人で食べているのだけれど、そのうちの二人がそれを嫌がるようになって、亀裂が入ってきた。私たちは板ばさみ。でも、やっぱり女の子たちが大切。それで、話しかけられないように、その娘を壁の端に座ってもらうようにして食べていた。ところが。ある日食べていると誰かが肩をトントン。彼だった。しまったと思った。端に座るんじゃなかったと。私は困って他の娘たちを見た。みんなは目を合わせてくれない。一人、私の前の子だけ「ど うしよう」という目をした。どうしよう。どうしよう。善悪の判断からすれば、無視は悪いことだ。これじゃ、苛めを見てみぬふりをする人たちと同じ。解っている。解っている。でも。仲間はずれが恐い。恐くて、私は無視をしてしまった。なんということをしちゃったんだろう。傷つけたのは確実だ。私は口で綺麗事を言って、可哀想って言いつつ、そうやって無視をしたんだ。なんて酷い。なんて冷たい人間なんだろう。自分が凄く嫌だった。どうしていいか解らない。これから、どうしたらいいんだろう。



 一九九七年 六月二十八日


 自然の力って凄い。そしてとても綺麗。
 一昨日、夕方自転車で家に帰っていると、きっと上空の風が強かったんだろう 、雲はいつもはもくもくと縦に成長するような感じなのに、その日は横に無造作に筆で描いた様な雲が何層にもなっていて、そこに夕日が当たると、影の灰色と、日のせいで淡い朱に光る部分がはっきりと分かれてとても綺麗だった。空も綺麗。夏の夕方って空も明るい。夕方になるとうすーい碧色になる。いつも思う。南国の浅い海の色みたい。空は本当に凄い。毎日違うのだもの。
 今日は台風が来ている。例年よりかなり早い。異常気象かな。私の家の前は田んぼがある。まだ小さな稲が青々としている。そこを風が通るたび、波が走るように稲が揺れる。見ていておもしろい。放射線状に広がったり、端と端で全く違う向きに走ったり。毎年綺麗だなと思って見ている。被害も凄いけれどね。
 最近人 をけなす言葉をよく使っている気がする。汚い。嫌だな。口に出すたび、自分が汚れているような気がする。やめなきゃ。私なんていいところないから、性格磨くぐらいしかないのに、こんなんじゃ、最悪な女性になってしまうよ。がんばらなきゃ。



 一九九七年 七月一日


 電話した。珍しく弟さんだ。やっぱり少し声が違う。ちょびっと高かった。でも話し方とかそっけなくてそっくり。でも少し気になる。5回で出たけど……。「バイト行ってます」って言ってたけど……。また私の杞憂だよね? でたくないからバイトって言っとけとか言ってないよね? 私って本当にマイナス思考。
 10時半にもう一度かける。「まだ帰ってません。12時すぎてもたぶんまだ帰ってきてないと思います」え? おかしいよ?じゃあどうしてさっきそういってくれなかったの? O君そこにいるんじゃない?ねえ、嫌がってるの?不安だ。


 香港が中国に返された。


 一九九七年 七月二日


 今日も電話した。「はい」あーおばさんだあ! よかったあ!おばさんの爽やかな声に私はかなり救われた。「天音です」「あら、こんばんは」「こんばんは」ううなんかやっぱおばさん好きだあ! 「今日もバイトなのよぉ」「あーそうですか。やっぱり夜遅いんですか?」「12時過ぎると思うわよ。明日はバイトないと思うから、また電話してみて」「はい、そうします」「どもども」 ……お、おばさん、あなた様は本当にO君のお母様でいらっしゃいますか?
  うー。まーいいや。本当にバイトだったみたいだし。明日だっ!(ストーカーじみてきてる?)



 一九九七年 七月三日


 O君のばかばかばか!9時半にかける。今日も弟君だ。「いないんですけど」「そう、ですか。はあ……」「はあ……」 な、なんかお茶目な人なのかな、弟君。10時半に再チャレンジ。「まだなんですけど」コノヤロー。「今日バイトじゃないんですよね?」「さあ~?」「バイトいつか分かりますか?」「いやー、分からないです」「……もしかしてさけてないですよね?」「ーーいや、それは違うと思います……」「そうですか、じゃあいいです」「どーも」

  ちっくしょーーーーーーーーーー

 七日はテスト(O君)だから、その日の夜にかけてやるっ!ちゃんと出てよね!



  一九九七年 七月七日

 
 今日の朝はO君の夢から始まった。一度目が覚めてそのあとまた寝ると、また出てきた。何か言いたげ。でも何も言わない。何? やだな、なんか。
 そして起きると雨ザーザー。自然と口元が緩む。
「今日はバイクで走りにいけないっ」
 バスに乗る。サンダルで草履をはいている人の足を踏んでしまった。ごめんなさいっ。
 一学期最後の授業。週に英語を三時間教えている先生で、本業が牧師の先生がいる。その先生が「本業の方で研究とかがあり、忙しくなるので今期で終わります」といった。例文に浪人生のことを使ったりしてかなりひんしゅくを買っていた先生だけれど、悪気はないのは分かっていたので私はそれほど気にならなかった。教え方は中の下くらい(何様だよ)。お世辞にも上手いとは言えない。でも、できることを教えたいと思っているのは伝わってきたし、質問にも快く答えてくれた。ちょっとイギリスかぶれのところは嫌だったけどね。なんかすごく寂しそうで……。なんか悲しくなって。胸の中に後悔に似たものがうずめいて。私は講師室に足を運んでいた。「お世話になりました」一言ぼそっと言って、出ていこうとすると、呼び止められた。「何?」だから今度ははっきり言った。「短い間ですが、お世話になりました」すると本当にうれしそうな顔をした。「来年頑張ってください」とのことに「先生もお元気で、頑張ってください」と答えた。よかったと思った。別にお世話になったとはあまり思ってはいないけれど、(辛口)先生は多分いろいろ言われてきたからそれがプレッシャーになってたと思う。だから少しでも気分よく本業に打ち込めるようにできたらと思ったんだ。自分が先生の立場だったら、言ってもらえると嬉しいしね。
 今日は七夕だったんだ。目で会えなくて残念だね。代わりに私がO君と16日会ってくるからね。(図々しい)
  だから、今日は電話通じますように!
 ……なんかわけわからんね。
 短冊には、


 最善が尽くせますように。


と書いた。


 ちょっと思ったこと。七夕さ、雨だと会えないって変。きっと雲の上で二人だけで会ってるんだよ。その方がロマンチック。
 電話した。弟君出た。「天音です」「あ、いますけど……」「ああ……!」よかった~って感じで嬉しそうに言ってしまったので、きっと弟君は可笑しかったと思う。「兄ちゃん、天音って人から」やっぱり、兄ちゃんって言ってるんだ。予想通りだな。「もしもし」O君がでてきた。お、今日は普通~機嫌がよさそう。よかった!さっそくきりだす。待ち合わせ場所。その日は塾もテストもないとのことでよかったよかった! で、お昼ぐらい一緒に食べようというと、別いいよって。わーい、思わず「よかった♡」時間はまだ分からないから12日の夜に電話するからいてね、というと「はい」だそうだ。うんうん順調。でもね、久々の声にかなりキンチョーしてしまって、ほかのことが全然話せなかったの。でもね、久々に「してよかった」っていう電話だった。よーし、当日も頑張るぞ!
 その前に7月10、11日はテストだ。弟に負けないように頑張んなきゃ!

 織姫さん、彦星さんありがとう!



 一九九七年 七月八日


 なんかO君の家族って、こうやって電話をしているとわかってくるというか。きっと日曜の夕食とかみんなで話しながら食べてそう。おばさん爽やかだし、弟君素直だし、おじさんはいまいちなぞだけど、あ~ゆ~家族で育ったからO君はO君になったわけで……。やっぱ私の目に間違いはなかったという感じ。弟君とよく話してそうだし、7月3日の「さけてませんよね?」って私がきいたこともきっとO君に伝わってんだろうなあ。だから昨日優しかったとか? あー今日も勉強が……やんなきゃ。



 一九九七年 七月九日



 テスト前なのに16日のことを考えると落ち着かない。O君のせいで勉強ができないなんてことは死んでも嫌なのに! でも、でもっ!
 まず、隣を歩くというのが私には一大事で……。で、隣でO君が映画を見てて……。うー。もー。おかしくなりそう。おトイレ行くときとかは恥ずかしいし……。ご飯も向かい側の席で食べてたら私はキンチョーして上手く食べられないかもしれない。大丈夫かな。大丈夫だよね?いい日になるといいなあ。

 べんきょーしよ。





今日はココまで。

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 浪人中は時間が人とはずれているというせいか、ものすごく多感だった気がします。いろいろ考え、感じてましたね。そして今とかわらず、マイナス思考でした。これを読んでいるとエネルギーが減っただけで、あまり成長してないなあと感じてしまいます。
頑張れ、今の私! (こればかりだ)

 
 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 拍手、ときどきいただいております。嬉しいです。一言あるともっと喜びます。

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 それではまた!               天音花香

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こんにちは。天音です。

未来の誰かに贈る日記を今日はお送りいたします。

まだまだ寒いですね。
受験生の皆さん、風邪ひかないように頑張ってください。
1997年の天音も受験勉強頑張っています。



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ココから日記

最初から読んでみる




一九九七年 七月十日



 告白したら楽になるかもなんて思ってたところもあったけど、結局はO君の気持ち分かんないままだし、不安は消えないんだよね。
ふう。
この頃思う。心も容姿もきれいになりたいな。自分に自信が持てるようになりたいよ。



  一九九七年 七月十二日



 電話した。「Oです」おばさんだ。「天音です」「こんばんわぁ」「こんばんは」「ちょっと待ってね」『天音さんから電話よ』『え?あ、ああ~』電話するって言ったこと完璧忘れてるな。『入ってんの?』「もしもし」「こんばんは」時間は11時35分のを見ることになった。11時じゃ早いかな?と聞くと、「35分やろ? 15分くらいでよくない?」と言われたのでそうしようと頷いた。バイクの話を少しした。ドラッグスターの銀色。400ccでデカいらしい。改造して渋い大きな音が出るようになってるんだって。「ノーマルじゃ乗れん」だそうだ。弟にきくと私の嫌いなハーレー型だそうだ。う、まあ、O 君背が 高いし ……。でも、なんか不良っぽいかも? 怖い人になっていませんように。でね、しかも新車で70万! 嘘! どういう金遣いしてんの!? なんか両親も甘いというか……。しっかし、電話切りたそうな感じを受けたのがちょっと悲しかった。O君は自分から切ろうとはしないから、「じゃあね」というと待ってましたって感じで、「ばいばい」だもんな。うるうる。
 でも、電話も慣れると面白い。
 素直な弟君に、さっぱりして優しいお母さん。
 お父さんはどんな人かわからないけど、いいなあ、こういう家族。
 O君も井出反抗しているように見えないし、お母さんとも結構しゃべってそうだし。
 ひそかに想像している。きっとO君のお母さんは髪は長くてゆるいウェ ーブがかかってて、後ろで一つに束ねてて、普通は化粧してなくて、よくパンツ(白いジーンズとか)ルックでいるのでは?なんて。
 想像するのは楽しい。



一九九七年 七月十五日

 ううっ。生理がこんなときに限ってやってくるなんて。明日は二日目。一番ひどいときじゃん。なんてついてないのー!!! ちゃんと薬飲んで、トイレにこまめにいかなきゃ。はずかしいよー。明日は軽いように!!
 今日は死にそう。薬が全然効かないのはなぜ?

 なんか緊張してきた。どうか会話が弾みますように。


一九九七年 七月十六日

 今日は大安だったはずなのに。
 時間ぎりぎりだ ったから走って行ったが、O君はいない。待った。かなり待った。でも一向に来ない。映画始まっちゃったよ。でも来ない。私は時計を気にしながらしぶとく待ったがすっぽかされた!と悲しくなって、家に電話した。母がいない。どうしよう。私はいつのまにか暗記していたO君の電話番号を押した。
「----はい」
 弟君?
「あの、天音ですけれど、弟君? お兄ちゃんいつ家出たかわかる?」(考えてみれば弟君学校のはずだが、頭がぱにくっている私は気づかなかった)
「いや、あの……」「……もしかして出てない?」「いや……」「言っていいよ?どっち?」「……本人です」「……」
 信じたくなかった。どうして家にいるの? 私はしばらく言葉が出せなかっ た。
「ヤバい……」小さく言う声が聞こえた。
「ごめん」 
謝罪なんかが欲しいわけじゃなかった。
「映画、1時過ぎからまたあるの。出てこれない?」「いや……あの……」「私ね、ここまできちゃったの。帰るの虚しいの。どっちなの?」「1時に……」「え? 1時にここでいいのね?」「でも……悪い、待たせるの……」
 そう思うのならなぜ来てくれなかったのだろう。
「初めから来る気がないなら断ってくれればよかったのに」
涙声になった。
「やば……。ごめん……」
「1時に、待ってるからね」
 私は放心状態で本屋に行って、母と下見した喫茶店で一人で昼食をとった。
 あのとき電話をしなければ私はずっ とあそこで待っていたんだと思うと悲しくて泣きそうになった。O君にとって私はその程度なんだ。
12時半すぎにもう一度家に電話して、母に状況を報告した。
 そして12時45分から待ち始めた。5分前ぐらいに来てくれなきゃ、誠意がない。私はそう思って時計とにらめっこを繰り返していた。バイクで来るとは思わなかったが、大きなバイクが通る度目で追った。銀色のに乗る背が高い人が近くを通ったが髪が長かった。そのバイクはしばらくしてまた引き返してきて、どこかへ行った。
 時計は1時を回った。私は泣きたくなった。このまま来なかったらどうしよう。と、そのとき、ジーンズに白のTシャツ姿の男性がこちらに近づいてきた。ふと見て髪型が違うから違うやと思っ た。が。
「もう1時過ぎてる?」
あ、O君だ。
「バイク止めるところが見つからなくて何回もここ通ったんだけど」「バイクで来たの?」「うん」「ずいぶん髪伸びたね」「ああ。……どっち?」「こっち」
映画館に入って席をどこにしようかというと、O君はコーラを2本買ってきた。「いくら?」というと、手をいらんというふうにふって、「1600円かー」と映画のチケットを見て言った。
「気にしないで。もらいもんだから」
それを気にするなら、私を待たせたことを気にしてほしかった。
そうそう、O君が待ち合わせ場所に来た時、来なかった理由を聞いたのだが、彼はこういった。「バイトの飲み会みたいなのあって、2時過ぎに帰ったから寝てな くて」私は仕方ないというふうに息をはいて、「寝てたの?」「11時半ごろまで」ということだ。 
 映画が始まるまで暇だった。会話もないし。
 身長をきくと、184センチとのことで終わってしまった。だからCMが始まったとき、私は少しほっとした。
 映画はジュラシックパークの方が面白かったと思う。でも恐竜がいっぱいでてきて、私は口元を抑えて悲鳴をこらえるので大変だった。冷房が効きすぎて寒かったし。私は鼻ずるずるするは怖いわで大変だった。しかもトイレにいきたくなって、でもO君が端に座っていたので行けず……。O君煩かっただろうなあ。O君は長い足を組み直したり、コーラを飲んだりして、あとは身じろぎもしなかった。
 映画が終わってさすが に耐え切れなくなった私は、恥ずかしいけれど「トイレ行っていい?」と聞くと、「俺、4時からバイトが……」「ちょっと待ってよ」私はこれまた恥ずかしいのだけれど、残りのコーラをO君に持たせて、トイレに行って戻ってきた。O君からもらったコーラだと思うと捨てられなかったのだ。O君はちっとも歩く速度を落としてくれない。「どこのケンタッキー?」と聞いても何も言わない。これは拒絶だ。来てほしくないんだ。ほとんど会話のないまま、「じゃ、このままいくから」「気をつけてね」でおしまいだった。服選んで、時間かけてファンデ塗ってみて、髪といて、私何やってたんだろう。なんか悲しくなってきた。もうやめた方がいいのかな……。 
会わない方がよかったのかな。
私の 三年と少しの想いを絶たなきゃいけなくなるなんて。覚悟はしてたけど。
 私はバスの中で泣きながら帰った。
 今も夢現で……。頭がガンガンする。なんでこんな風になっちゃったんだろう。
 それでもO君を見ると怒りがしぼんでしまったことに私は腹が立つ。映画館で内側の席に入れえくれたことも嬉しかったし、隣に座っていることだけでドキドキした。それが自分ですごく悔しかった。恋は盲目。こんなやつサイテーってどうして思えないんだろう。
 でも、さすがに懲りた。もう電話はしないでおこう。

 楽しみにしてたのにな。


一九九七年 七月十七日


 O君の世界に自分がいないことを実感 してもちろんそれはそれで悲しいけれど。自分の想いを消さなければいけないのが、もっと悲しい。ずっと三年と少しO君のことを考えている自分がいた。でもそれを消さなければいけないのは自分の存在を消さねばならないようで……。O君は変わっていない部分はやっぱりあった。いつもの不機嫌そうな顔とかしゃべり方とか……。でもやっぱり微妙に変わってたと思う。雰囲気が。投げやりっぽいというか……。ちょびっと不真面目な感じ。やっぱ変わるものだね。でも嫌悪感とかはなかった。私ってやっぱり未練たらたら。やになっちゃう。もーやめ!


 覚めるような青い空の下
 僕は見る ひと時の夢
 この大空に 羽広げ
 飛んでいきたい 世界の果て まで


 いつも見るあなたの広い背は
 遠ざかるばかりで何も言わない
 想いは募り消せないけど
 さよならあなた 涙が溢れた


自分で作ったメロディーに詩をつけてみた。二つとも同じメロディー。


一九九七年 七月二十日


O君へ


いくつか言いたいことがあります。O君はもっと自分の気持ちを相手に伝えるべきだ。これからもO君を好きになる人は出てくると思うし、O君にも好きな人ができると思うし(今もいるかもしんないけれど)両想いになってお付き合いをすることになることも来ると思う。そんなとき、自分の気持ちを素直に言わな きゃ。好きなら好き、嫌いなら嫌い。相手の女の子は不安でいっぱいだよ。きっと。特にO君に片思いしている子はO君の態度に一喜一憂してるんだから、少しは考えてあげてほしい。まあ、勝手に好きになった方が悪いとかって思うかもしれないけれどね。おせっかいかもしれないけど言いたい。
 それから、バイク楽しそうだし、息抜きになってるからそれはそれでいいけど、大事な時期だし事故ったりしないように気を付けてね。それとO君が目指してるとこはとえtも難しいところなんだから勉強ちゃんとしてね。お互い頑張ろう。
 今まで迷惑かけてごめんね。今O君を好きなことは確かだけど、でも人の気持ちは永遠じゃないから、この先はどうか分からない。でも、これだけは言える。この 先何があっても私はO君の味方だからね。後悔しないように頑張って! じゃあさよなら。


 この手紙、本当に届けられたらいいのにな。


一九九七年 七月二十一日


O君と会った日から、泣き暮らしていた私。
ガーン! 今日から予備校だったらしい。友達が心配して電話してきてくれた。チューターにもかわるんだものびっくり。明日からちゃんと行きます。
 やっぱ、私ぼーっとしてる。うじうじして嫌になっちゃう。上の手紙。本当は出したいけれど、出せそうにないし。
 でも、私も結構期待しすぎてた面はあるんだよね。おばさんに名前覚えてもらって、弟君とも前よりかは話せるようになっ て……。でもバカだよね。いくら家族の人と話せるようになったって、O君本人との距離が縮まったわけじゃないのに。勘違いもいいとこ。
 でも、ちゃんと口に出して言ってくれたらよかったのになあ。「迷惑」って。いつもごまかしてばかりで。気づかないとでも思ってたのかな。それは優しさじゃないよ。「お前には本当のことを言う価値もない」って言っているように聞こえる。私って、弟がいうように暗い……かも。いくら日記に愚痴ったところでどうにかなるってわけでもないのにね。
 この頃だらけてるから勉強しなきゃ。


一九九七年 七月二十五日


 ここはどこ? 学校? 予備校? 私勉強してる。隣には……O君???あ 、下敷きに字を書いてきてた。「ベルを買った。番号は×××……」でもO君入れたって電話してきてくれないじゃん。バイト中は忙しいだろうしさ。でもどうして一緒に勉強してるんだろう。雰囲気は変わってはいないけど、こんな風に話す人だった?私は不安。隣にいて不安。「どうして?なんか変。嘘つかなくていいんだよ?電話迷惑だって言っても」O君は私の言葉を目でにらんで遮った。「こんなところで話すことじゃない」確かに、周りで勉強している人がいる。私はその通りだと思ってやめた。下敷きに書く。「何時まで勉強するの?」「11時」思わず笑ってしまった。あと15分しかないじゃん。そして私たちは11時過ぎると教室を出て、廊下でマックで買ったハンバーガーを食べた。普通に話して る。あ、他の女の子が話しかけてきた。笑って答えているO君。きっと予備校やバイト先でもこんな風に女の子たちと話してるんだろうな。嫌な気持ちが広がった。でも今日は優しいからいっか。夢みたいだな。夢? 嫌な予感。なんだかぼやけてきた。うー、いやだいやだ!
「花香、いつまで寝てるの?!」 
 やっぱり……。一気に脱力。そーだよね。本当のO君はあんな風に優しく話してくれないもん。でも……。もう少し眠っておきたかったなあ。夢の中だけでいいから一緒にいたかったなあ。……現実だったらよかったのに。そう思うと切なくなった。

 予備校が始まって毎日忙しくて、少しは気が紛れてると思ってたけど、やっぱ心の奥底にいつもいるんだなということ がこの夢で判明してしまった。やっぱり心の中では諦めたくないとか電話したいとか思ってんだろうな。バイクの音が気になるし……。



一九九七年 七月二十八日


 もうすぐで映画から二週間。O君電話がないことに気づいてくれるだろうか。こんなにも私は考えてしまうのに。虚しいな。勉強に打ち込まなきゃ。



一九九七年 七月三十日


 予備校に行くとき、O君に似た人をみかけた。あのバイクで髪も同じぐらいで、背が高くて脚が長い。予備校に行くとき、追い抜かされてとても驚いた。その後は午前中いっぱいO君のことを考えてしまった。私って悲しいやつ……。



一九九七年 八月三日


R子さんちに泊まりに行ったの~!まずカラオケいって、R子さんの家にいって、料亭のような夕食とって、いろいろ話してずっとナポレオンしてた。んで、お風呂入った後はお酒をちょっと飲んだ。いろんな果実酒をちょびっとずつ交換した。酔ったかどうかは分からないけど、意識ははっきりしていた。んで、3時頃寝た。翌日は7時半ごろ起きて、また寝て、8時半に起きて、S子が起きるのを待って、10時頃ご飯を食べた。それからまたずっとナポレオン。私はしゃべるとぼろがでるので、口を閉じなきゃいけなくて大変だった。途中でから揚げやおにぎりを食べつつ、17時頃電車で帰った。天国のような二日間で し た。しかし、勉強が……! 今日はしっかりしなきゃね。


一九九七年 八月六日


あの人と同じバイクが予備校の駐輪場にあった。色も銀でまったく同じ。ここにも乗ってる人いるんだなと思った。しばらく忙しくて忘れていたのに。同じバイク見ただけでしばらく動けなかった。まだ、だめ、かな……。今日で3週間目。O君私のこと覚えてるかな。電話ないの気づいているかな。元気かな……。


一九九七年 八月七日


バイクを見たせいかあの人の夢を見た。あの人が謝っている夢。「どうして謝るの?」というと「理由は分からない」ブチっ!私は切れて無視していた。
しかし……。や っぱ謝って欲しいという願望があるのかなあ。まだまだ……。



一九九七年 八月十六日


 祖父のうちではいっぱい働いて、従兄と電話したりした。大学院に残るためにめちゃめちゃ頑張ってるみたい。私も頑張るぞ~!
 帰りに祖母の家にもよって、もらった野菜のおすそ分けをしてきた。それが10日。
 最近もよくあの人の夢を見る。髪が短いときのあの人が出てくる。普通の友達のように話している。私の願望がもろに反映されているなあ。もう四週間以上たっちゃった。まだまだ好きでたまらない。声聞きたい。私、やっぱ我慢して電話しとけばよかったのかな。でももう後には戻れないのだ。予備校がある日はだいぶん気が紛れるんだけれど。
 んで、昨日は盆最後ということで、亡くなった祖父のお参りをして きた 。元気 だった祖父を思い出して、少し切なくなった。祖母は会うごとに弱って行っているのがわかる。おじいちゃん、おばあちゃんを連れていったりしないでね。空から私たちを見守っていてね。
 そして今日、文化祭以来にK子に会った! K子痩せて服も大人っぽくなってて、きれいになってた!! すごーい♡3時30分の「もののけ姫」を見るつもりだったけど、満席で結局6時15分。それまでブラブラウィンドーショッピング。K子はいろいろ知ってて、見て回る。私はあんまり分からんと思いながら眺めた。そうそう、口紅買ったの。今度はベージュ系のあんまり濃くないやつ。似合うといいな。で、夕食を食べて、映画を見た。
 すごく絵がきれい!! 風景も人も! 影とかもうまいし、動物 や人間の歩き方とか動作とか。曲も久石さんのすごく良かった。声も合ってたし。内容も濃かった。現代と通じるものがあって、考えさせられるようなものだった。今は人間は好き勝手やってるけれど、やっぱり自分たちのためにも自然と共存していかなきゃだめなんだと思った。
 そして帰り。私は初めてナンパなるものをされた。8時半過ぎてたので、K子も私も家に電話をしてて、私の方が先に終わったからK子を外で待ってると、「ねえ」
 私ははじめ違う人だろうと思って無視をしてた。でもしつこい。私? 振り向くと「一緒に飲みに行こうよ」まだ若い社員さんって感じの二人がいた。お前ら私に声かけるほど女に不自由してんのか……(苦笑 「いえ、いいです」「なんでー? いいじ ゃん。これからどこかいくの?」「帰るんです」「なんでー、勿体ないよ。いーじゃん、飲みに行こうよ」私はこうなったらと思い、「私、浪人生なんです」すると、少しびっくりして、「じゃー、勉強しなきゃいけないのー?」「はい」きっぱり。「いーじゃん、ちょっとぐらい息抜きしようよー」まだ言うか!!K子まだなの?!そこでK子が出てきた。「何してるん? 行くよ」やった! と私は思い、「ごめんなさい」といってK子に続いた。でも私のバス停はさっきの二人組の方。私は一人で行くのが怖くなった。K子も「天音は箱入り娘やから心配」って言ってくれて、K子のお父さんに車で送ってもらった。
怖かった。もうやだ、あんなの。


一九九七年 八月二十二日


 ドラマや漫画や小説は、いろいろあっても最後にはうまくいくからいいよなあ。今日のテストは最悪だったし、なんかいいことないかなあ。O君の他にかっこいい人いないかな。一緒に受験頑張れるような、さ。友達がいるから十分って? そうだけど、やっぱりドキドキって大切じゃん? ハリがでるよね。なーんてね。



一九九七年 八月二十三日




 「 未来」は背中からやってくる。「時間」は自分を通り過ぎて前方へ消えていく。だから「過去」は見えるけれど「未来」は見えない。「うてな」に上ると全体が見渡せるのだが、「過去」は一本道なのに「未来」は無数に広がっている。その無数の道 を背中で受けて、一本にして紡いでいくのが人間。だから「未来」はその紡ぎ方による。―漫画『未来のうてな』より―
 こ の考えって凄いと思った。なんだか納得と言う感じ。
 話は変わって、数日前に甲子園が終わった。去年なんか、ビデオにとって見たもの。今年は予備校ばっかりで少ししか見られなかったけれど、応援していた「平安」が決勝まで残って、「智弁和歌山」と決勝で争った。質問待ちのときに、少しだけ講師室で見られた。その夜は熱闘甲子園で決勝全体を見た。やっぱり甲子園はいいね。なんか、私とかが一生かけてもできないような顔を彼らはしていると思う。ボールだけを追う必死な瞳。夢中になれることがあるっていいな。

      甲子園球児に送る


   目がいいね
   投手のミットを見る目が
   打者のボールを見る目が
   高く上がったボールを追う目が
   すごくいいね
   私が一生かかってもできない表情を
   彼らは この夏の数日間だけ浮かべる
   あどけなさの残る顔に宿った
   強い意志が
   彼らを一回りも二回りも大きく見せる
   試合後に自然と溢れ出す
   喜びの あるいは 悔しさの涙は
   本当に一生懸命やったという
   「勲章」だね

   頑張ったね
   君たちが 今年も一番輝いてたよ




 次は私が野球部の男子の幼馴染だったらという仮定で。



   幼馴染の真ちゃん は
   小さいころから野球が大好きで
   中学生のときにはすでに 
   甲子園を夢見ていました
   去年の夏
   最後の最後で負けて   
   甲子園に行けなかった真ちゃんは
   高校最後の夏
   憧れだった甲子園のマウンドに立っています
   野球のことになると
   目を輝かせて
   まるで子供のようだった真ちゃん
   今は私の知らない顔で
   ボールを投げています
   この夏
   真ちゃんは
   私の憧れの人になりました



一九九七年 八月二十六日



 幸せすぎる夢を見た。

 塾の帰り、同じバイクの人を見かけてドキリとすると、手を振ってきた。あの人だった。
 もう暗かったので別れた。「夜電話してほしい」と言われた。
 しかし、父がいたので電話ができなかった。父を不機嫌にさせたくないからだ。私はまた切れたなと思った。でも笑ってくれてたからいい。そう思ってあきらめることにした。が、数日後店であの人を見かけた。少し怖そうな人と一緒だ。どうしようか迷った。でも……やっぱり話したい。私は後をつけて、あの人が一人になったところを見計らって声をかけた。電話できなかったわけを話すと、仕方ないねということになった。私は再び電話をかけるようになった。一緒に勉強したりするのも多くなった。理想の関係。気軽 に話せて一緒にいるのが楽しい。背の差の大きい私の頭はちょうどいい位置にあるようで、あの人はよくくしゃくしゃするように撫でた。私はそうされるのが好きだった。あの人が思いやってくれてるのがわかって、温かい気持ちになるから。とても幸せ。毎日幸せ。

 目が覚めた時は、なんとなく「やっぱりね」という感じがした。でもそれ以上に悲しかった。いつになったら諦められるのだろう。どうしてこんなに好きになったのかなあ。



一九九七年 九月六日


 互助会に入っているので、タダで衣装を着て写真を撮れたの。一つは黒の下がレースの段々になってるドレス。とってもかわいいの。もう一つは長ーいウエデ ィングドレス。イヤリングとか首飾りもして、ちょっと濃い目の化粧して、気分はまるでお姫様! もう少しかわいい顔だったらよかったのにな。
 着物もきてみた。すっごく楽しかった。早く写真できないかなあ。




一九九七年 九月六日




 ダイアナ妃の葬儀が今日ありました。本当にたくさんの人から慕われていたのがわかりま す。多くの人の愛を得ながら、夫のチャールズに愛されなかった悲しい人。それでも、常に弱者を思い、分け隔てなく様々な人に接してきた優しい人。本当に悲しいことだ。残された王子たちがまた気の毒でならない。でも、今は、生きていたときに騒がれすぎて心を痛めていた分、安らかに眠ってください。また、今日、マザーテレサさんも亡くなりました。素晴らしい人が続けて二人も・・・。悪いことが続いています。
 彼女たちの思いを絶やさないよう、できるだけ社会に貢献していかなくては。



一九九七年 九月九日


 とても久しぶりにあの人の夢を見た。
 なんか電話があって、家にくる夢。しつこく電話をやめた理由をきかれた。んで、いろいろ話 して打ち解けて、「映画の前いたくね」ってことで別れた。
 変な夢。でも私の願望そのものだね。夢から覚めても、そこまで何も感じなかったことからするとだんだん気持ちも落ち着いてきているのだろうけど。



一九九七年 九月十三日



 マザーテレサさんの葬儀があった。その日の夜、彼女が生きていたときのドキュメントが放送されたので、見た。神の意思のままに人々に尽くしてきた 彼女。貧しい人、一人一人を主と思って接し、貧しさを理解するために貧しい生活ををし、公的な援助を受けず、自分で足を運んで、人々の力になった。本当に一生を、神のため、人々のためにささげた人だった。私にはとてもできそうにない。私にできることは、今、私の置かれている状況を有り難く受け止め、それを最大限に活用することだ。テレサさん安らかに・・・。




一九九七年 九月十五日



 従兄が大学院に受かった! 他の大学から通るって難しいだろうに……すごいー! 頑張ったんだろうなあ。私もそろそろ頑張らなきゃね。現役に追いつかれないように。



一九九七年 九月十九日


 今日はとってもいい夢から始まった。設定に無理があるけど、大好きな河村隆一様と一緒のクラスで、夢の中で私はりゅーちゃんに片思いしてて、一緒に黒板消しをする機会があってね、初めてお話するのよ。夢の中でもりゅーちゃんはもてもてでさ、やっぱ余裕があるのね。私の気持ちに気づいてわざと優しく接してくれるから、その後は大勢の一人だと分かってても嬉しくて、夢の中でぽーっとして、ほほが熱くてドキドキして幸せだった。なんかああいう幸せな片思いの気持ちって久々で、夢から覚めてもなんかふわふわしていた。
 それと、今日は髪を切ってきた。すごくイメチェンしたって感じ。でもね、私、顔丸いし、ちょっと合ってないかも。なんとなく老けて見えるし。切る前の横で高く二つ結びしていた時の方が似合っていたような……。幼いけど……。
 今日、ピアノを弾いているときに、煩いバイクの音がして家の前でスピード落として少し過ぎたところで引き返して止まってたから、O君だったりして……とか馬鹿なこと思ってドキドキしちゃった。O君が家に来るわけないのに。でも未だに「電話があったらいいな」とか思っている私でした。


 一九九七年 九月二十八日



 風邪をひいているせいか、頭がぼーっとし、夢の中でも花が咲いてます。O君病ってやつですか?
 私の予備校にバイクで現れるO君。ここですでに無理があるけど。私がそのバイクをくいいるように見つめて思わずハンドルを握ってるのを見られてしまう。それで謝るとすんなり許してくれて、「最近天音さんのことが気になる」とか言われちゃうの♡夢ならでは。でも夢でも嬉しい♡そんなこと言われたいよなあ。
 今日は日曜日。数学の先生にたくさん質問してきたよ。
 もうすぐ九月も終わるなあ。



一九九七年 十月十三日



 N子が手紙にいろいろなことを書いてくるのはよ くある ことだ。彼女の弟がH校を受けるのも偶然で。N子がH校の合格体験記を読んだのも偶然だろう。そして、F君がそれに書いていたのも偶然。でも。
 N子の葉書にその名前を見たとき懐かしかった。中一から中二まで好 きだった人だ。中学の三年間年賀状を出した。三年のときは志望校も明記して。「S校受けます」と。塾で一緒だったF君の友人に、ゴタゴタがあって、F君が志望校を下げたことを聞いたとき、年賀状を送ったことを後悔した。嫌味になってしまったと。でも、それは、自分がF君より高い志望校を受けることからくる優越感からの同情ではなかったのか。そして。
 N子の葉書に書かれてあった。F君は本当に頑張ったのだろう。高校受験で公立を落ち、でも、その悔しさをばねに大学受験を頑張ったんだろう。S校に受かった私が落ちたK大に、F君はストレートで受かったのだから。私は自分が驕っていたことに凄く恥ずかしくなった。凄いなと思う反面悔しくも思った。そして、情けなくなった。私って 馬鹿じゃない?高校生のとき何やってたんだろう。私、頑張らなきゃ。取り残されたくない。O君だってきっと頑張っているはずだし、T先生だって今度は私が受かると信じてる。私、まだまだ足りない。このままでは受からないだろう。気合入れて、これ以上ってのがないぐらい頑張らなきゃ。



一九九七年 十月十四日



 昨日、久々にK子に電話した。F君のことを話した。K子ははっきり、「それは努力の伴わないプライドやろう」と言った。その通りだと思った。「でも、それは誰もが持っているもの」とも言った。そうかもしれない。勉強の愚痴もよく聞いてくれて、勉強の仕方の相談にも丁寧にのってくれた。K子は大学で今、人体解剖をしているそうで、凄く 気分が滅入っているときなのに。私は私のことしか見えていなくて、恥ずかしく思った。本当にありがとう。私頑張るからね!
 すると、今日、K子から電話があった。というのも、私が昨日三時ごろに、夜電話するって留守電を入れてて、十時半ごろ電話をしたらまだいなかったから「遅いのでまた折りをみて」って留守電入れてたんだけれど、二回目のをK子は今日入れたと思ったみたい。「どーしたん?」って心配して電話して来てくれた。誤解を解いて、「わざわざありがとう」と言うと「だって、気になるやん」と言ってくれたので「K子ってそういうところ、まめでやさしいと思う」と言うと、照れていた。本当にK子が友人で有り難い。よく理解してくれるし、この私にずっと付き合ってくれるなん て・・・。なんていい人なんだろう!これからもずっと友人でいて欲しいな。



一九九七年 十一月二日


 わーい!全統模試642点! 得意科目は国語140、地学66とサイテーだけど、苦手科目は数学177、英語172地理87と今までのなかで一番よかった!よーしこれからもがんばっちゃる~!!
 最近寒いから空がきれい。特に太陽の沈んだ直後。すべてが青に染まるとき。光がすごくきれい。はっきりしているのに、どこか淡い。そして影が暗い。心がドキドキして胸が苦しくなる。地球はきれいだなって最近よく思う。風とか緑とか空とか見てると、残さなきゃって。

               青の時間

 
              こんな に暗いときがあるでしょうか
              こんなに信号の光
                   科学の光がきれいなときがあるでしょうか
              すべては夢のようで
              それでいていつもよりも鮮やかな時間
              深い藍色の空は暗いからこそ淡く輝き
              星は不思議な光で自分を主張する
              黒い雲は重く浮かび上がり
              白い雲は紅く光る
              太陽は沈んだというのに
              地平線に這う炎
               私を包む空間は
              無限に広がり
              美しい陰影で私を誘う
              光と影
              自然と人工
              生と死が
              程よく調和する
              危うい青の時間






    こんなにまぶしい地球を
    もっとも汚している我々が
    主権を握っているなんて
    世界は間違っている。



一九九七年 十二月六日


 今日はK子から電話があった。
 声ですぐわかったらびっくりしてた。今、家に帰ってきてて、どうしてるかなあと思って電話してくれたらしい。すっごく嬉しいなっ♡K子はちょっと疲れてた。原因は分からないけど、なんとなく、だそうだ。うーん、心配。頑張れよ~! って、私もだ。というより私こそ頑張らなきゃだ。来年はK子のとこに遊びに行きたいしね! とにかく電話ありがとう!!



一九九七年 十二月十三日



 センター、F女大になった。めちゃ遠いやんけ。近くのK大だとばかり思ってたのに、なんやそれって感じ。ふうー。
 N子に久々に電話した。頑張っている様子。まあ、私もここ数日は(それだけか)頑張ってる。5、6 時間勉強してるもん。でもそれは予備校がないから。やっぱ予備校がない日は10時間ぐらいしなきゃいけないんだろうなあ。頑張らなきゃ。そうそう、すごくつい最近にO君を見たらしい。雨の日にバスに乗ってきたって。居眠りして寝ぼけた様子だったらしい。しかーし、相変わらず髪長いみたいだし、指輪とかはめてたらしいし、なんか遊んで勉強してなさそうだったって。予備校にも来てないらしい。なんか……。どうしちゃったんだろう。人間ってこうも簡単に変われるもんなんだろうか。それとももともとい~加減な人だったの? 予備校に行ってなくても家で勉強してるならいい。そう信じたい。だって、3月の時点では「余裕で京大うかるぐらいになりたい」って言ってたのに。もう諦めたの? 悔し くないの? ちゃんと将来考えてるの? 満足しちゃっていいの、それで。気合が入っていれば風邪もすぐ治るし、眠くもならないって言ってたのは誰? はっきりいって、O君、今全然気合入ってないんと違う? 電話して活いれてやりたいけど、それもできないし、私はO君にとってどうでもいい人だし、こんなこという資格はないから言えないけど、しっかりしてほしい! こんな日記でしか書けないけど、伝わってほしい。O君には頑張ってほしい。後悔なんてしてほしくない。私もまだまだ足りなくて人に世話焼いている場合じゃないけど、私は頑張ってきっと受かって見せるんだから! ほんっとに、気合入れろよ! 馬鹿野郎! うーん、あんますっきりしないな……。勉強しよ。




一九九七年 十二月十五日


 やっぱり気になってしまう。勉強中は勉強に集中してるんだけど、その合間にふっとO君のこと考えちゃう。なんか何でもいいから力になりたいと思っているのに、何もできない歯がゆさというか、悔しさというか……。すごくむしゃくしゃして13日にK子に電話した。やっぱ、K子はよく考えてくれて……。最近K子にも好きな人がいるからよくわかる様子。うん。仕方ないよね。気になっても。好きなんだから。でもK子はそれで私の気持ちが乱れてセンターが悪くなるのを気にしていた。あんまり深入りするなって。もしかして勉強してるかもしれないし、そーだったら天音の心配は無駄になっちゃうって。うん。そうだよね。でも二人で考えて、年 賀状にそれとなく「勉強しましょう」ということを匂わせたのを書くことにした。私は名前と住所は書きたくないけど、「名前がないと不気味だよ」と言われたので、苗字だけ書くことにした。やっぱりK子と話すと落ち着くし、素直になれる。K子もいろいろあるだろうに、私の愚痴につきあってくれてありがとう!
 そして今日、私は最低限書いとかなきゃって人に年賀状を書いて、そのときにO君にも書いた。


        あけましておめでとうございます。

        元気ですか?
        センターが近いね。
        お勉強してますか?
        お互い悔いの残らないよう
         頑張りましょう。



とだけ。小さく「天音」とだけ書いて。
うーん。たぶんおばさんは「あら~天音さんじゃない」って感じで見るかも。本人はどうだろう。「あいつまだ俺のことを? うっとーしい」って思っちゃうかな? 「そーだなー勉強しなきゃな」って思ってくれたら嬉しいな。「懐かしいな。元気にしてるみたいだな」なんて思ってくれたらなお嬉しい!ま、それはともかく、あと少しだから一緒に頑張ろうよ!という気持ち、伝わってくれるといい。あれこれ考えてももう出しちゃったことだから仕方ないしね。さー私も頑張らなきゃ。明日は高校に行かなきゃいけないしね。

  自分で前髪を切ったらすごく変になった(涙< /div>



一九九七年 十二月二十三日


 今日は久々にO君の夢から始まった。でもまず設定に無理あり。うちにいろんな人が下宿してて、その中の一人だという……。なんじゃそりゃあって感じ。しかもいまだに私の夢の中では髪がスポーツ刈り。どーしても長髪を拒否してるらしい。しかし、まだまだ好きなんだろうな。目が合ったときは電流が走ったみたいにどきってして……。
目が覚めるともう、残念すぎて、もう少し見たいと思って二度寝したもん。しかーし、次は数学を解いている夢だった。ガッデム!
 そうそう、16日に高校に行ってきました! C先生に地学二時間も質問した。やっぱりわかりやすーい! 先生も嬉しそう だった。今の生徒は半寝状態で授業していてもつまらないんだって。可愛そう。んで、三年の時の担任にも話してきた。S先生には国語はなかなか調子がいいってことを言ってきて、U先生には地理が上がったって自慢してきて(ほかの人は下がってるらしい)おーし、頑張るぞーっ。嫌われてたと思ってたE先生もS先生と話しているときに加わってきて、励ましてくれたし、質問もした。S先生はあがらない方法を教えてくれた。右の鼻から息を吸って、左から出す。「そんなのできません」って言ったら、できないからいいらしい。それに集中して雑念が消えるんだって。面白い人だな。
 昨日は従兄から激励の電話があった。彼も卒論で大変なのに、ありがとう! 頑張るぞ!!
 昨日と今日は弟と 進研ゼミの模試をしたの。英数を時間計って。なかなか難しい!とくに数学ぼろぼろ。頑張んなきゃ! 年末年始もするつもり。だらけないようにね。
 でも今日は本当、頑張った! よし、明日も予備校だし頑張るぞ~!

  そうそう、センターはN子と一緒に行くんだ。
  明日はイブなのに、Y先生の顔見なきゃいけないの嫌だ。しかも四日連続授業。最悪。


 一九九七年 十二月三十日


 なんとも寂しい正月を迎えようとしている。両親は忙しい祖父の家へ手伝いに行った。弟とは喧嘩中だし。明日の紅白も見られそうにないし、おせちもないし、わびしいのう。
 最近は段々と不安になってきまして、困ってます。現役の時はあまりに悪すぎたので、かえって「どーにでもなれっ」って今頃は思ってたけど。うーむ不安になるのは当たり前と考えて、悩むより勉強だね。

 今年は年賀状来るんかいな?



一九九八年 一月二十八日


 今日は三者面談がありました。随分書いていなかったけれど、(忙しくて)もうセンターも終わりまして。中学の塾の友達に会えたし、高校の友達にも会えたし、一番最初の英語は長文読むまで緊張してたけど、あとは結構リラックスしてた。数学が難しくてめちゃめちゃ悪かったけれど、ほかは頑張りました。現役のときより数段いいです。全体平均は40点くらい下がるという難しい問題だったんだけどね。

ちなみに、国171 もう少し欲しかった
      英 173 まあまあ
      数 126 ケアレスあり。すごく不満。
      地理 94 平均が78だったの で、うーむという感じ。
      地学 91 満足!

地理と日本史が20点以上開いちゃって得点調整があった。うーむ。
 判定は前期B 後期 ベネッセC他B
 でもどちらもK大受けます。絶対前期で通ってやるーっ! じいちゃん先生も君は数学センスあるっていってくれたし、英語の先生もこれだけ書けるなら十分っ言ってくれたし(今はほめることしかしない先生たち……)頑張るぞーっ!
 そうそう、今日K子と高校担任から激励の手紙きてた! 超嬉しい!
 先生、浪人生たちに一枚一枚手書きなんて……。うー、泣かせるぜ! 本当にありがとう! 頑張るからね!!



一九九七年 二月七日


 昨日はS大児教があった。こんなはずでは……。国語は漢字のくだらないミスするし、数学40点ぐらいしか取れんかったし、英語も難しくて、かなりやられてます。うー、かなりヤバい。みんなとれてなくて、平均点が下がってることを祈るしかない。ほんっと、ヤバい。今日もあんまりはかどってないし、明日超勉強して、明後日の国際文化は必ずいい点とらなきゃ。そういえば私の隣の人、テストの始まる数分前に来てた。度胸あるやつだなと思った。全然動じてないし。結構いい感じの人だったんだよね(おいおい)。背が高くて色白で短髪。うわー、私の好みにピッタリって感じ?それがまたいい子でさ、テストの問題とか渡すとき、声は出さんけど、「はいっ」っていう感じが伝 わってくるんだよね~。丁寧で。私真ん中だったから、トイレ行くときとかどいてもらうんだけど、「すいません」って言ったら、「あ、はい。どーぞっ」って。うーん、何とも礼儀正しい。戻ってきた時も言う前に気が付いて、笑ってどいてくれるんだなあ。なんかあまりにも丁寧すぎて「まさか、オネエじゃないよな」なんて思ったりした。でもいい人だな。また会えたらいいな、なーんて。
 そんな場合じゃないってーの!!!!
 二年連続S大落ちはさすがに嫌だし恥なので、I will do the best in any way!!

 最近またO君の夢見る。受験後一度電話してもいいかなあ。

      


一九九八年 二月十四日


 冬季オリンピック前半が終わった 。小さな清水選手。自分に勝って、堂々の金メダル。おめでとうございます。岡崎選手も銅メダル。凄いよ!ジャンプで、船木選手、銀なのに悔しそう。それって凄い。悔しい思いをした選手、いっぱいいた。でもみんな頑張っていたから、それが何よりの財産だと思う。荻原選手。伸び悩んでいた。ジャンプでは双子の弟くんが三位だったのに、九位。風が味方してくれなかったから。でも、今日のクロスカントリー。四位。メダルじゃないけれど、素晴らしかったです。弟くんと並んだときもあった。弟くんとしても、 「いつも兄ばかりもてはやされて・・・。今回は勝ちたい」と思っていたはずだ。でも兄は兄としてのプライドがあったに違いない。何年もキングオブスキーの名を欲しいままにしてきたプライドがあったに違いない。四位、ほんとに凄かったです。私も頑張ろうという気になりました。フィギア。十六歳、十八歳の日本人男子。失敗もした。でもとても成長していると思う。私より年下なのにオリンピックで競技すること自体凄い。一位のクーリック選手。美しいの一言に限る。指の先まで!ジャンプも柔らかく、美しい。顔も美しい。全てパーフェクト!文句なし。二位のストイコ選手。力強さと、スピードと正確なジャンプ。終わるまで足の痛さを感じさせなかった精神力。感動しました。三位のキャンデロロ 。一番楽しませてくれました。ダルタニャンになりきってた!剣の舞、格闘、本当にしているみたいだった。みんな凄かった。四位だったアメリカ人も、失敗が響いて四位だったけれど、滑らかさは一番だったよ!若い十七歳のヤグディンもあの年で五位なんて凄いよ!私も頑張らなきゃー!(オリンピック見てる余裕あるの?)




今日はココまで。

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 なんだか迷走している浪人生の天音ですが、天音なりに頑張っていたのですよ。
 なんだかいろんなことの起きる一年だった気がします。
 いまとなってはいい思い出???

 
 ここまで読んでくださりありがとうございました。
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 それではまた!               天音花香

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こんにちは。天音です。

未来の誰かに贈る日記を今日はお送りいたします。


今日がラストです。
高校生半ばから、浪人時代までを書きたい時だけ書く日記でしたが、御覧の通り、恋愛と受験の悩みが多い日記でした。
でも、今考えれば、勉強をしてればいい学生という立場はとても恵まれていて、だからこそのびのびできる青春時代だったんだろうなと思います。卒業をすれば二度と戻れないないので、今学生の方は青春を謳歌していただきたいと思います。



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ココから日記

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一九九八年 三月十一日


S大落ちちゃったよ。二つとも。うー、二年連続。K大入試の五日前に分かるんだもん。大ショック。でも私はそれから五日間予備校で4、5時間勉強して頑張った。オリンピック見てだらけてたのが、一気にひきしまったというか。本番。時間も10分弱余って、ほとんど書いたし、私としては頑張ったつもり。英語はち んぷんかんぷんだったけど……。F大の人文には受かり、K大も大丈夫かもなんて考えていた。今日は発表の二日前。弟の合格発表の日でもあり、弟はめでたく受かり、よかったよかった、と思ったが、今度は私かと思うと怖くてたまらない。弟は受かったのに自分は受からなかったらって。現役がすごく点取れてたらって……。怖い。一応後期の小論文の勉強してるけど。後期ははっきり言って前期よりも確率からいえば、受かる確率が低いのだ。前期で受かんなきゃ。怖い。怖い。一年間勉強してきたんだもん。大丈夫って思いたい。お願いです。受かってますように。




一九九八年 三月十一日



 私立本命を落とし、F大(私立)だけ何とか受かっていた私。国立本命、前期不合格。セン ターは十分だった。原因は言うまでもない。二次の英語である。英語が苦手で、後半は英語ばかり勉強していたが、やっぱり駄目だった。こたえた。泣いた。悔しかった。いろんな人たちに慰められると、それに応えられなかった自分が情け なかった。その後、三日間、後期に向けて、小論文にうちこんだ。まだ、分からない。後期がある。後期は難しいと聞くけれど、現役はやる気ないとか、合格した人が受けないので、人が少ないとか聞く。諦めちゃ駄目だ。何のために浪人したの?今週の運勢は「新しい環境に戸惑うかもしれないが、万事塞翁が馬」だそうだ。今の私にぴったり。大丈夫。人間結果的には最もいい道を選ぶというのが私の考え。一生懸命やって駄目だったなら、それは結局F大に行くのが最善なのだろう。後期まで長引いたのは、私に文章を学ぶ必要があったのだと思おう。さあ、明日で最後。頑張るしかないぞ!


一九九八年 三月二十日


 
 13日は浪人仲 間でカラオケ。17にちは、その一人、Yちゃんの家。すごく本の量!!そして、18,19、20と祖父の家に行った。弟とバスで。喜んでくれた。たくさん手伝った。去年も思ったっけ。必要とされてるって嬉しい。忙しさに気も紛れたし、弟と散歩しながら語り合いもした。19日の夜は風が強くて、20日の夜1時半に目が覚めて、1時間以上眠れなかった。その後夢を見た。怖くて自分で見に行けない合格発表の日。チューターから電話があった。合格の電話だ。嬉しくて皆に電話をする夢。妙にリアルな夢だった。20日の朝、祖父に「合格する夢は見たか」と言われびっくりした。はい、と答えると「じゃあ合格だな」と言われた。本当にそうなるといいな。
 おじいちゃん、おばあちゃん、三 日間お世話になりました。長生きしてね。




  一九九八年 四月十七日



 長いこと書いていなかったけど、書かずにいられるほど充実した毎日だったということだろう。なんと祖父の夢で見た通りにそのままそれが現実となった。受話器をとり、うれし涙を流したことまで。デジャブなんてもんじゃなかった。そっくりそのまま再現されたのだ。 
 とにかく嬉しくて嬉しくてたまらなかった。努力が報われたのだ。
 O君の家にも電話をした。おばさんがでた。O君もK大だそうだ。前期から工学部の機械化を受けたとおばさんが言っていた。なんか、うーん、複雑な心境だった。
 友達もできたし、授業は難しいけれど面白い。頑張ろう。
 そういえば、予備校のチューターが中国に留学。帰国後は中国語習おうっと。(同じ大学に大学2年の時に留学することになる)O君を数回ちらりとだけ見た。変わったよなあ……。向こうは気が付いてない。まあ、その方がいいけど。とりあえず頑張ろうっと。



一九九八年 六月七日

 昨日はK子とA子と母校の文 化祭に行ってきた。久々に二人に会えて嬉しかった。文芸部の後輩たちも随分増えていて、よかったような、なんだか違う部になったようで寂しいような。新設に向けて、講堂がなくなっていたことに衝撃を受けた。こうしてどんどん校舎がなくなっていくんだろうな。母校がなくなってしまうようで寂しい。K子には相変わらずではあるが、また愚痴を聞いてもらった。母のこと(最近うるさいのだ。私のことを邪魔者と思っているようだし、弟が北九州に行ってからは家が居心地悪くて仕方ないこと)大学の友人たちのこと(私は依存性が強いから、負担に思われているような 気がして)K子は「私はきついと思っていない」と言ってくれた。それから、私が、高校を卒業してから、自分を抑えているように見えると言われた。自分でも感じていたことだ。自分に自信がもてなくて、本当の自分を見せるのが恐い・・・。
 そして今日、後輩にテキストを届けた後、T先生に会ってきた。いろんな話をした。高校、大学、今後、そして人間のこと。K子から言われたことを話すと、「それは一つ大人になったということですよ。外見のエネルギーがなくても内にエネルギーがあることだってあるんです。でもきっとK子さんはあなたが悩んでいることを感じ取ってそう思ったんだろうね」と言われた。それも一理ある気がした。いろんな言葉をいただいた。先生は私が幸せだとおっしゃった 。本音を話せる友人がいるのだからと。私はああ、そうだなと思った。みんなに好かれようとしている自分がいた。でもそれは望みすぎなのだ。私は愛されたいとだけずっと思っていた。でも、私が大切な人が何人もいるように、相手にもいるのだ。それを「私なんてどうでもいいと思っている」なんて、馬鹿げた思いつき。それから、こうも言われた。「自分を特別だと思ってはいけません」誰もが同じように悩んでいる。「私だって自信なんて持てませんよ」ああ、それも。私は自分一人が悩んで、あたかも悲劇のヒロインのような気分に自分で陥れているのだ。「考えることはいいことです。でも、それはプラス思考にしなくては駄目ですよ」人間は自虐的に考えやすいのだろうと先生はおっしゃった。でも、 そう、「考える」のは私の理論からすると「何々したい」という目的にどうにかしてたどり着こうとするからだと思ってる。なのに、暗くなって落ち込むようであれば、それは無意味だ。帰りにA子とS子に会った。彼女ら曰く「性格が合わなかったら、時間が経てば離れていくよ。嫌いだったら一緒にいないよ」うん。そうか。なんだか今日は勉強になったな。もっと前向きに考えなきゃ。私の居場所はちゃんとある。一緒に考えてくれる人がいる。私はとても幸せだ。



 
二OO五年 六月十五日




 久しぶりに、高校のときの自分を覗き、不思議な感じがしている。そのときはそう思う自分がいたんだなと思う。私は多分、高校の自分が望んだ道を大体通ってきて、今があると思う。ただ、私は現在、うつ病と闘う身だ。自分では、なんにでも精一杯取り組んできたつもりだし、後悔はない。ただ、私は就職しても、まだ子供で、理想と現実の差を縮めようと躍起になりすぎたのだと思う。この日記をご覧になれば分かると思われるが、悩みやすい性格であることもその原因であろう。ただ、私は思う。この中にも書いたように、人間、最善の道を歩いていると。だから、私がこの病気になり、何もできないからこそ、文を書くことを思い立ったことは運命なのかもしれな いと。病気について言えば、回復をしたり、また悪化したりと、一日一日が大変である。だから、この文も、書ける日があれば(写すという表現が正しいが)、書けない日があったりと大変ではあった。だが、高校、浪人時代の自分を振り返ることで、得るものは大きかったと思う。それをヒントに回復していければいいと思うのだ。これを読まれる方はどんな状況であろうか。それぞれ様々なことを抱えていらっしゃることであろう。そのような方々がこの文をお読みになって、少しでも、何か感じてくださったら幸いである。


 
 二〇十三年 三月三日



 以前は一部の公開だったが、当時の悩みすべてを公開しようと思い、今回は恋愛受験などもすべて含めた公開となっている。なんというか、自分は恵まれていて、夢見がちな学生だったんだなと思うと同時に、目標に向かって頑張ることができている当時をやや羨ましくも思う。現在まだ鬱の治療中だが、二千五年のときよりははるかに回復に向かっている。しかし全治までまだ道が見えず、学生の時のように近くて明確な目標を持てずに悩み過ごしている中、この日記をもう一度読むことで自分に今足りないものが少し見えた気がした。若いころには戻れないが、諦めない心というのはいつになっても持っていたいと思う。
 ありがとう、高校生の私。あなたがいたから今の私がある。あなたに負けないように頑張るよ。
 

 



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こんにちは、天音です。

連休ですが、主人が仕事のため、暇をしている私です。
この後、主人の誕生日のため、主人とその両親とご飯を食べに行く予定です。

さてさて、かなり更新していませんでしたが、「緋い髪の女戦士」8をお送りいたします。

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)

えっと、お手数ですが、タイトルにある数字の順番に読んでください。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


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ココから小説

「マーニ、早く早く!」
 嬉しげにマーニの手を引くミレトスに、マーニは笑みをもらす。
 今日はアリク王の許しが出て、ミレトスと城下町を散策することになったのだ。ミレトスが城下町に出るのは、まだ今日で四度目だという。活気のある店が並ぶ道を物珍しげに歩くミレトスはソリスと違って可愛らしい。
「マーニ?」
「いえ、なんでもありませんよ」 
 笑いをかみ 殺しながら答えるマーニに、ミレトスは瞳を輝かせて、
「なら、いいけど。
ねえ、ロゴスは? ロゴスを見たいんだよ!」
 とマーニの手をぐいぐいと引いた。
「はいはい。ロゴスですね。こちらです。そんなに慌てなくてもロゴスは逃げませんよ」
「そうだけど~」
 ミレトスの今日の目的は、リュカーン製の最新のロゴスを見ることだった。
 ミレトスはソリス同様、いや、それ以上にロゴスに興味があるようで、ロゴスについての勉強はマーニが驚くほど熱心に取り組んだ。そして、城内にあるロゴス操縦の練習でもその才能をいかんなく発揮した。ロゴスの操縦に関してはソリス以上に筋がいいかもしれないと思うほどだった。
「こちらです」
「わあ! マーニ早く!」
 輸入されたロゴスを保管する場所にたどり着いて、ミレトスは歓喜の声を上げた。
 今はなきイスファタル製の心気(パトス)を使うタイプのロゴスから、最新のリュカーン製のロゴスまで、数多くのロゴスが揃っていた。どのロゴスも綺麗に磨かれ、光っている。エル・カルーのロゴスがその中では貧相に見えた。
「マーニ、乗せてもらってもいい? 少しだけ、ねえ、いいでしょう?」
「そうですね、少しだけならいいのではないでしょうか? 衛兵」
 マーニは入口にいた衛兵に声をかける。
「ミレトス王子様がロゴスに乗ってみたいと言っているのだが構わないか?」
「はい、案内します」
 ミレトスは顔に満面の笑顔をたたえて衛兵についていった。その後ろ姿にマーニが声をかける。
「少しだけですよ?

その荷物はなんですか? 置いて行かれては?」
「ん~、内緒。大事なものだから持っていくんだ」
 そういえば城を出た時から持っていた気がする。何が入っているのだろう。
「ミレトス様?」
「もう、マーニ、お小言は今日はなしだよ! 僕、乗ってくる!」
 心ここにあらずなミレトスの返事にマーニは仕方ないと中身を知るのをあきらめた。
「マーニ殿もせっかくですから、ロゴスを見られてはどうですか?」
 もう一人の衛兵に言われ、マーニは自分もロゴスを見て回ることにした。
 イスファタル製のロゴスを見ると、どうしてもいろいろなことを思い出してしまう。
(ローエングリン公爵……)
 最後の最後まで戦った愛しい人。最期を思い出すと今でも胸が疼く。
 そういえば、こんなこともあった。ソリスがイスファタル製のロゴスに乗って闘技賭博場で戦って惨敗。ソリスにしては敗北という珍しい経験。
(そう、負けることで得ることもある。ソリス様は生きているのだから、まだ学ぶべきことがある)
 いろいろと思い巡らしていると、なんだかあたりが騒がしいのに気が付いた。
「おい、そこの衛兵。何かあったのか?」
「そ、それが……!」
 青い顔をしたその若い衛兵が向けた視線の先には一体のリュカーン製のロゴスがあった。
「!?」
 そのロゴスは衛兵たちが口々に止めるのを聞かずにどんどんと進んでいる。
 嫌な予感がした。
「もしや、ミレトス様ではあるまいな?」
 マーニの言葉に若い衛兵はますます血の気をなくした顔で、
「そのもしやです」
 と答えた。
(しまった!)
「ミレトス様! 何を考えていらっしゃるのです? お遊びはそこまでにしてください!
早くロゴスから降りてください!」
「マーニ? 嫌だよ。せっかく最新のリュカーン製のロゴスに乗らせてもらったんだもん。これならきっと早く着くよ。乗り心地もすごくいいし!」
「な、何を?」
 マーニの胃がきりきりと痛み出す。
「マーニも早く同じものに乗ってよ! でないと追いつかないよ? 僕、先に行ってるね!」
「ど、どこに!?」
「内緒~!」
「ミレトス様! 止まりなさい! こんなこと許されませんよ! ミレトス様!」
 止める衛兵たちを振り切り、マーニの前を横切り、ミレトスの操縦するロゴスは入口を出て行った。
(このままではまずい……。今度こそ本当に首が飛んでしまう)
「私にも同じロゴスを」
「は、はい!」
「それから、ミレトス様は必ず私が連れ戻し、ロゴスも返すので、今はまだ口外しないように」
「は、はい?」
 戸惑う衛兵にもう一度言い聞かせる。
「口外しないように、いいですね?」
 そういってマーニはロゴスに乗り込んだ。



「大変です! ソリス様!」
 木の上で昼寝をしていたソリスはただならぬアルベルトの声に目を覚ました。
「アルベルト、お前にはミレトスの監視を頼んだはずだったが?」
「そのミレトス様がっ!」
 アルベルトはそこまで言って、せき込んだ。ソリスは嫌な予感を覚えた。
「ミレトスがどうしたんだ? 今日は城下町に行ってたはずだよな?」
「はい! そのミレトス様がリュカーン製のロゴスに乗って城下町を出られたのです!」
「!?」
 ソリスは木の上から飛び降りた。
「マーニはどうしているんだ!?」
「ミレトス様を追っています!」
 ソリスは珍しく動揺した。ミレトスはなんとかなる。だが、このことが公になればマーニの首はない。
「どこまで知れ渡ってる?」
「今のところはマーニ殿が口止めしたようで、ミレトス様が逃亡したことにはなっていません」
「そうか。悪いが急ぎ、姉貴を呼んできてくれ」
「レイミア様ですか?」
「そうだ」
「ソリス様は?」
「俺はすることがある」
「わかりました」
 ソリスはアルベルトの返事を背に走り出した。


 ソリスがまず向かったのはミレトスがロゴスを奪ったロゴス保管場だった。
「いいか、お前ら、マーニから口止めされているようだが、俺からもいっとく。今回のことを口外した奴は俺が切る」
 衛兵たちの間に緊張が走る。
「わかったな。責任は俺がとるから、誰にも話すな。わかったら、いつも通り振る舞うんだ。いいな」
「は、はい!」
 そして次に城下町の門番のところにソリスは向かった。
 門番の衛兵たちは同じようにマーニに口止めされて、ミレトスが逃亡したことを隠していた。だが、さすがにロゴスが町から出たことはいかんともしがたく、集まってきた人々の対応に追われていた。
「おい」
「!? ソリス様!」
「いい、俺は知っている。とにかく、この人だかりをどうにかしろ」
「は、はい!」
「それから」
 ソリスの目が座る。
「ミレトスとマーニのことは一切口外するな。したら、俺が切る。冗談じゃない、本気だ。わかったな」
「は、は!」
 マーニの命がかかっていると思うといつものように飄々としてられないソリスであった。


「姉貴」
「ソリス。聞いたよ~、この色男から。ミレトスが城下町から出たんだって? さすが私の弟だね~」
 アルベルトに連れてこられたレイミアは声をやや小さくしてソリスに言った。顔は笑っていなかった。
「姉貴、親父にこのことがばれるとマーニの命はないだろう。どうにかしてごまかせないか?」
「うーん。難しいだろうね。溺愛しているミレトスが帰ってこない、そしてお付きのマーニも顔をみせないんじゃ、いくらなんでも怪しいだろう?」
「恐れながら……」
 アルベルトが恐縮しながら口をはさんだ。
「何だ、言ってみろ」
「さらわれたことにしてはどうでしょうか?」
「なるほど」
 姉弟は頷く。
「姉貴、俺はマーニたちを追う。姉貴の口から、親父に説明しといてくれないか?」
「さらわれたミレトスをソリスは追ったって?」
「ああ」
「まあ、いいけど、早く連れ戻さないと軍を出すかもしれないよ? あの溺愛ぶりだから」
「そうだな……」
「そうですね……」
 ソリスもアルベルトも深刻な顔をして頷く。
「行き先が分れば対応もできますが……」
 アルベルトの言葉に、ソリスとレイミアが目を合わせる。その様子を見て、アルベルトは少し考え、
「まさか……」
「イスファタルだろうねえ」
「イスファタルだろうな」
 ソリスの冒険談を羨ましそうに聞いていたミレトスを思い出して、アルベルトもそうに違いないと思った。
「イスファタルか……私も行きたいねえ」
「姉貴は今回は時間を稼ぐのに力を貸してくれ。頼む」
 いつになく真剣なソリスに、レイミアは大きな肩をすくめた。
「わかったよ。早く連れ戻してきなよ?」
「ああ。
おい、お前はどうするんだ?」
 ソリスにふられて、アルベルトはすでに決まっていた心を告げる。
「もちろん行きます。ソリス様の従者ですから」
「そうか、じゃあ、早いうちに出発しよう」
 残れと言われるかと思ったアルベルトは、ソリスにそう言われて顔を輝かせた。
「はい!」


                 続く……



 ここまで読んでくださりありがとうございました。次はこの続きになるかわかりませんが(短編になるかもです)、この小説はまだまだ続くと思われます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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 それではまた!               天音花香

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こんにちは、天音です。


今回も「緋い髪の女戦士」9をお送りいたします。
なかなか思うように登場人物が動いてくれず苦戦しています。
たぶん10は大分後の更新かと思います。すみません(汗

この小説は、六道 慧さんの「神の盾レギオン 獅子の伝説」の二次創作です。
(古い作品なので、知らない方が多いとは思いますが……)

えっと、お手数ですが、タイトルにある数字の順番に読んでください。

それから、一気に書いていないせいか、内容がだぶっているところがあるかもです。
我ながらしつこい文章だな……と思いますがすみません。


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それでは、お楽しみいただければ幸いです。

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ココから小説

 太陽が沈み、月が光を放ち始めていた。
「ミレトス様、いい加減にしてください。どこまでいかれるつもりですか!?」
 マーニが追いつかない程度に距離を離して前を行くミレトスに、マーニの堪忍袋の緒は切れそうになっていた。
「ん~、教えてもいいけれど、反対しないって約束してくれる、マーニ?」
「そういうわけにはいきません」
「じゃあ、教えない」
 ふうとマーニはため息をつく。ミレトスにつけばソリスの時のような思いはしないと思っていたのに。結局また、自分の首が飛んでもおかしくない状況にある。いや、今度は確実に飛ぶだろう。
「ねえ、マーニ、お腹すかない?」
「私はすきません」
 胃が痛くて空腹を覚えなかった。
「そっかあ、どうしようかなあ。僕お腹減っちゃった。少し休もうか」
 気まぐれなところはソリス、レイミアにそっくりである。ミレトスは急にロゴスを止めると、袋をもってロゴスから降りてきた。追いついたマーニも仕方なくロゴスを降りる。
 ミレトスは抱えていた袋から乾燥させた肉を取り出し、口に入れた。
「ねえ、マーニ。僕はね、ずっと思っていたことがあるんだ」
 もぐもぐと口を動かしながらミレトスは言った。
「なんですか?」
 マーニが先を促す。
「兄上たちが行ったことのあるイスファタルに行ってみたいってことだよ」
 マーニは目の前が暗くなるのを感じた。いや、実際に日が落ちて暗かったのだが。
「もしや、ミレトス様はイスファタルに行くつもりなのですか?」
「そう。だめ?」
 だめも何も。
「何日かかると思っているのですか?」
「だから、たくさん干し肉や水を持ってきたんだよ。マーニの分もと思って」
 最初からマーニがついてくるのが前提だったらしい。
「いいですか、早く帰らなければアリク王が心配されます」
 そして私の首は間違いなく飛ぶでしょう。
「もう町を出てしまったんだもん。マーニも覚悟を決めてよ」
「死ぬ覚悟をということですか?」
「大丈夫、僕が父上を説得するから、マーニが死ぬことはないよ」
 ミレトスは事の重大さがわかっていないようだった。
「僕が無理やりマーニをつれてイスファタルに行ったってことにすればいいじゃない?」
 いえ、まったくその通り以外のなにものでもないのですが。
「ミレトス様。イスファタルは今はないのです。リュカーンに占領されているので、昔のような面影が残っているかわからないですよ? 行ってもがっかりされるだけかと思います」
「そんなことないよ? 城下を抜け出しただけでこんなに楽しいのだから、きっともっと楽しいよ」
 要するにだ。ミレトスは冒険ごっこがしたいのだろう。
「でしたら、アリク王に許可をもらって、近くの町へ散策にでかければいいでしょう」
「だめだよ。父上はきっと許してくれないし、近くの町なんて退屈だよ。僕はイスファタルにいきたいんだよ!」
 どうやらイスファタルに対する思い入れは本物らしい。だが。
「だめです。イスファタルは遠すぎます。今日は城に戻りましょう。これから帰れば、日付が変わる前に城に戻ることができるでしょう。ミレトス様、冒険ごっこは終わりです」
 ミレトスの顔色が変わった。
「マーニ、兄上は遠出を許されるのに、どうして僕だけ許されないの? 冒険ごっこ? 酷いよ。ごっこじゃなくて、本当に冒険をしたいんだ」
 ふう、と今日何度目かのため息をマーニはついた。
「いいですか、ミレトス様は旅というものがどんなに危険かわかっていません。王子というだけで、何者かに狙われることもあるのですよ?」
 ソリスがどんなに危険な目にあってきたか、ミレトスにはわからないのだ。
「危険なのはわかってるよ。でも、それは兄上だって一緒でしょ? 僕だからだめなの?」
 ミレトスの目には涙が浮かんでいた。
「……」
 鳥かごの鳥のように城に囚われていたミレトスが外に憧れるのはわかる。だがそれ以上に囚われていた鳥は外では生きていけないということがマーニにはわかっていた。ミレトスはソリスのように剣技に優れているわけでもないし、度胸も経験もないのだ。もし、旅をするとなると、マーニが守るしかない。
「マーニ……」
 だが、経験がないからといっていつまでも経験をさせなければ結局は年をとるだけになってしまう。
「マーニ……!
……マーニは、もとイスファタルの友人たちがどうなったか気にならないの?」
 心が揺らいでいた時にこのミレトスの言葉はマーニをさらに揺さぶった。確かに、イスファタル人の生き残りはどうなったのだろう。レオベルク王子、そして、黒髪の気の強い少女、アルヴィースはどうしているだろうか。
「……」
 今帰れば命は助かるかもしれない。イスファタルに行って帰ってくることになれば命はないだろう。
「……」
 ああ、もう!
 マーニは覚悟を決めた。いや、この兄弟たちの従者になったときから、自分の命など顧みる余裕がないのはわかっていたことだ。
 しかし、イスファタルにいくのであれば、できればソリスとがまだよかったと思わずにはいられない。ミレトスとでは危険が高すぎる。
(でも、それもこれも運命か……)
 マーニは大きくため息をついた。
「イスファタルに行って、旧王都を見たら帰るのですよ?」
 マーニの言葉にミレトスは破顔した。
「わあーい! マーニ大好き!」
「そうと決ま れば野営よりは町の宿で休む方がいいでしょう。もう少し進みますよ」
「わかった!」
 二人はそれぞれのロゴスに乗り込むと、近くのオアシス都市を目指して進みだした。
 

                         続く……



 ここまで読んでくださりありがとうございました。次はこの続きになるかわかりませんが(短編になるかもです)、この小説はまだまだ続くと思われます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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