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天音花香の小説をUPするブログです。個人サイトの小説はこちらに移しました。現在二時創作と短編を中心に書いています。
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HN:
天音花香
HP:
性別:
女性
職業:
主婦
趣味:
いろいろ・・・
自己紹介:
小学生のときに、テレビの影響で、小説を書き始めました。高校の時に文芸部、新聞部で文芸活動をしました(主に、詩ですが)。一応文学部でです。ですが、大学時代、働いていた時期は小説を書く暇がなく、主婦になってから活動を再開。

好きな小説家は、小野 不由美先生、恩田陸先生、加納朋子先生、乙一先生、浅田次郎先生、雪乃 紗衣先生、冴木忍先生、深沢美潮先生、前田珠子先生、市川拓司先生他。
もう一つのブログでは香水についてレビューをしております。
http://yaplog.jp/inka_rose/
こんな私ですが、宜しくお願いします。





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こんにちは、天音です。


イーリスの夢の続きです。
この後続けて最後までアップします。

ココから小説


最初から読む
         
        イーリスの夢




 第五章




――「時は来た!我々が耐え忍んできた恨みを十分に返してやれ!」
 そうセーフォウスは声高らかに言った。
 天界への行き方などイーリスは知らなかったが、セーフォウスたちはそれを長く研究していたようだ。そして、天界の長が亡くなり、その娘に世代交代がなされた時を見計らって、その混乱に乗じて父は天界を攻めた。
 天界。父の言っていた天界。溢れんばかりの光。それは上空から大量の花火がふり注いでいるようだった。色とりどりの花。楽しげに囀る鳥の声と、幸せに満ちた笑い声。下界とは全く違う世界にイーリスは目を奪われ、呆然とした。ここが天界。なんと美しい楽園なのか。
誰もが幸せに……。父上の言葉が蘇る。きっとそうなのだろう。それが見てとれた。
 しかし。次の瞬間、そこに響き渡った悲鳴。その後は目を覆わんばかりの地獄図が展開された。武器を使って戦うなんていう上品なものなどではなかった。神族の真っ白な翼はもぎ取られ、手足は引きちぎられ、心臓は抉り出され……。魔道により、殺される者もいた。魔族が下界に落とされてから、執拗に魔道を研究していたのはこのためだったのだ。
「た、すけて」
「痛い、よ」
 辺りに充ちるのはむせ返るような血の匂いと、痛みに耐えかねて吐き出される苦しげな声。これはどうしたことだろう。
「ち、父上……! こ、これは……!」
 そんな中で見上げた父は笑っていた。
「ははは! はははははは! なんと無様なものよ。これが我々を下界に落とした神族か。我々も弱い輩に負けたものよの! はははははは!」
 目にはやはり暗い炎を宿したまま、さらに狂気の光まで宿して、父は狂ったように笑っていた。
「イーリス、そなたも殺すがいい! 今のそなたの力なら造作ないことよ」
 父は言った。
イーリスは悟った。自分が必死で学んできた魔道はこのため……。こんな酷いことのためだったのか。イーリスの胸は悲しみにつぶれそうだった。殺すなんてとてもできない。与えられた命を奪える権利なんて誰にもないはずだ。
「どうした? あの人間を殺したように殺せばいいのだよ?」
 父の言葉に全身が悲鳴をあげた。
亮也……!そうだ、僕はもう殺している! 吐き気がこみ上げてくる。あの日から毎日は無益で地獄だった。最も大切な人を自分の手で殺したのだ。だからこそ思う。もう、あんな思いは二度と嫌だ。あんな行為は絶対しない!
「イーリス?」
 怪訝そうな父の声。
「嫌、です! 父上! 僕は殺すなどもう嫌です! こんな酷いことはやめてください父上!」
 イーリスの必死な言葉に、父は片眉をつりあげた。
「何を言うのだ、イーリス? 我々が下界に落とされたのはこやつらのせいなのだぞ? 復讐をするのだ! さあ、イーリス!」
「嫌だと申しているのが解らないのですか!
父上、父上には見えないのですか? この死体の山が! むせるような血の匂い、恨みにみちた悲鳴!! 
ここのどこが楽園だというのです。先ほどまで鳴いていた鳥は怯えて飛び立ち、咲き乱れていた花は血でどす黒く汚され、楽しげに響いていた笑い声は悲鳴と泣き声に変わっています! ここのどこが楽園だというのです! 
こんな、こんな楽園なら僕は要りません!」
「イーリス!」
 父が怒りにみちた目でイーリスを睨んだときだった。
「お待ちなさい。そなたの狙いは私でしょう、セーフォウス」
 白い白い羽がイーリスの目前を落ちていった。
神族! イーリスはその者を見ようと視線を上げた。そこには輝く金の長い髪をなびかせ、海のような深い青い瞳に冷たい光を宿した絶世の美女がいた。
 父はイーリスから目を離して、その女性を見た。そして、嬉しげに、残酷に笑った。
「イーデリア、そちのほうから出向いてくれるとはな。嬉しいぞ。手間が省けた。死ににきたのであろう?」
「……。
私はそなたの恨みの対象となっても仕方がないでしょう。でも、子供にまであたるのはおよしなさい。みっともなくてよ」
 嫌悪感を隠しもせず、その女性は言った。その言葉に父は鼻で笑う。
「そちから、そのようなことを言われるとはな。笑わせてくれる。
その美貌。容姿。変わらぬな。てっきりそなたのことだ、どこぞらの子をはらんでおるかと思うたが」
 女性に対するあまりの言葉にイーリスが父を振り返る。すると、どこまでも暗い瞳に落ちそうになった。
(父上……?)
「イーリス、見るがよい。この女こそ我をたぶらかし、そなたを産んだくせに、我を裏切り、魔族を下界に落とした張本人よ」
(父上……)
 イーリスの心は千切れそうになった。母は父を裏切ったのではない。母はイムハムが父をも殺そうとするのを止め、下界に生かすことを選んだのだ。自分が神族側に戻るのを引き換えに。
(あんなに母上を愛していたのに……。父上は変わられた。歪んでしまわれたのだ)
 下界に下ってから何度か感じたこと。だが、ここまでとは思っていなかった。 
「……そなたの言うことはある意味真実故、弁解はせぬ。しかし、私はセーフォウスを確かに愛していたよ。だから反対したのだ。だが、結局は父上に逆らえなかった……。そなたの生命だけは救うため、仕方なく裏切る形になってしまったのだ。その日から後悔ばかりだった」
「は! 後悔? ではそちは我のために何をした? 結局、今の神族が殺されているのと同様に、当時は魔族が殺されたではないか。そして、あの、暗くて、寒くて、惨めで、住む所とはお世辞にも言えない下界に我々は追いやられた。あのときの我の気持ちは、そちには分かるまい!」
 セーフォウスは当時を思い出したのか、少し苦しげに、しかし、たっぷりと皮肉を込めてイーデリアに言葉を吐いた。
「……」
イーデリアは、しばらく言葉を出せずに、苦渋に満ちた顔でセーフォウスを見つめていた。しかし、否、とでもいうように頭を振った。
「しかし、しかし……このやりよう、何たることか! そなたは下界に下って心まで闇に染まってしまったのか? あのときの戦いはこのように、酷いものではなかった……! こんな、獣じみた、凶悪さはなかった!」
「何とでも言うがよい、イーデリア。そちが、我よりも神族を選んだのは事実。そして、同族よりもそちに現を抜かしておった我は、同族の命を多く犠牲にし、下界に落ちたのだ。我が馬鹿であった。愛を信じるなど!
そちが女王となった今、そちにも我のあのときの屈辱と怒りと悲しみが解るであろう。どうだ、同族のあげる悲鳴は、嘆きは!」
 イーデリアは表情を変えぬまま一筋の涙を流した。
「もう何も言うまいよ。私のしたことに対する報いがこれなら受けるしかあるまい。天界は渡すゆえ、殺めるのをやめてたもれ」
 それは哀願に近かった。
(母上……)
 その母の姿は、あのときの父を思い起こさせた。母は全身を悲しみで染めていた。イーリスの心はざわついた。何かが違う気がした。
「は、無様よの。命乞いか」
 そんな母に父は冷たく笑った。
「私の命ではない。同族の者どもの命よ」
「ほう、ではそちは死んでもよいと?」
 セーフォウスは嬉しげに目を細めた。やはり、この状況は違う。おかしい。
「父上! 母上を殺すというのですか?!」
 イーリスは混乱していた。こんなことがあっていいのか。父と母が殺し合いをするなど!
「イーリスよ。先ほどから申しているであろう。この女こそが我々を下界に落とした張本人であると。許せるわけがあろうか」
(父上……! 父上はそこまで母上を恨んでいるのですか……!)
「しかし、父上、母上は天界を渡すと申しているではありませぬか。父上は天界を手に入れれば満足でしょう? もう無駄な殺生は……」
 一刻も早くこの残酷な一方的な殺し合いを終わらせて欲しかった。しかし、父は陰湿な笑いを浮かべただけだった。
「イーリス。神族は、皆、生かしてはおけぬ。殺しておかねば、我々のように復讐をするであろう。だから、一人とて見逃しはせぬ。イーリス、そなたは、魔族と神族の間に生まれた貴重な子よ。魔族側についていて本当によかった。そなたの力は計り知れぬ。さあ、今こそ見せるがよい。皆殺しにするのだ」
 イーリスは絶望した。父が本気であることがわかった。魔族は積年の恨みを込めて、神族を皆殺しにするであろう。
「さあ、まずはそちからだ。覚悟はできておろうな」
 セーフォウスの目がイーデリアを捕らえた。右手には大きな闇が現れていた。
「そなたがそこまで落ちたとは! では、戦うしかあるまいよ」
 母の両の手のひらには光が集まりだした。それが合図で、二人は闇と光をぶつけ合いだした。
(父上と母上が戦っている……)
 母の手から放たれる光はどこまでも神々しく、父の手から放たれる闇はどこまでも暗かった。しかし、父の闇のほうが勝っているようで、母は次第に勢いをなくし、深い傷を負いだした。光を放つほど白かった翼は血にまみれ、美しかった金髪は無残にも切られ、白い透けるような肌からは大量の血が流れていた。見ているだけで痛々しい。
 こうしている間にも、白かった羽が赤く染まったものが次から次に落ちてくる。
 あのときは。あのとき散らばっていたのは黒い羽だった。血でぬれた黒い羽。それが、今回は白い羽。白と朱。白と朱……。
(違う。こんなのは違う。父上は間違っている!)
「やめてください、父上! 僕があなたについていったのは、あなたがあまりにも悲しげで苦しげで見ていられなかったからです! このようなことになることを望んでではありませぬ!」
 父は一瞬イーリスを見た。その目はこの上なく冷たかった。
「何を申す。世界最高の兵器が。その役目を果たさぬか」
「へ、兵器?!」
 イーリスは動揺した。
「そうだ、そなたを何のためにこれまで育ててきたと思っておる。憎い憎いイーデリアの子ぞ。そなたが成長してこの女に似てくるのを、どんな思いで見てきたと思っておるのか! そなたは他の神族を殺してまいれ! それが育てた我に対するせめてもの恩返しというものよ」
「ち、父上!」
 今までかまってくれなかったのは、そういうわけだったのか。父は自分を愛していたのではなく、兵器としてしか見ていなかったのだ。
兵器。世界最高の兵器。人を殺すためだけの存在。なんと悲しい存在なのだろう。
 イーリスの双眸からは、いつしか涙が溢れていた。
「なんと酷いことを我が子に申すのか!! そなたは救いようがないほど闇に染まっておる!」
 母が叫び、一際大きな光を放つ。が、それは父の手の闇によって消された。
「なんとでも言うがよい。そろそろ興ざめじゃ。死ぬがよい」
 父の手に闇とも無ともつかぬような巨大な玉が宿った。イーリスは判った。あれを受けては、母は生きてはおられまいと。とめなければいけない。もうこんなことはお終いにしなくてはならない。
「ち・ち・う・えー!」
 腹の底からのイーリスの叫びに、父はイーリスを見ようともしなかった。その目は母だけを捕らえていて、そこには憎悪だけがあった。
 イーリスは悟った。戦いは憎悪を生む。そして、それは繰り返される。ただそれだけなのだ。
(父上……! 僕に力があるというのなら)
「父上はいつかおっしゃった。勝ったものが正義、負けたものが悪と。それは間違っております! 戦うことこそが悪だ! 戦いは、殺すということは、憎しみしか生まない、最低な行為だ!! 僕が兵器だというのなら、その力を振るいましょう。戦いたいというのなら、夢の中で戦うがいい!
……おやすみなさい、父上」
 イーリスは悲しみのままに、自分の中に眠る全ての力を解放した。それは光となって天界を包んだ。全ては白く白く染まり、その後には静寂が訪れた。
 ドサリと父の体が地に落ちた。母の体も。そして、戦っていた全ての者が「死」ではなく、「眠り」についた。血を含み、黒くなった天界の大地で、神族も魔族も眠りにつき、一人残ったイーリスはただ涙を流しながら、どこまでも眩しい空を見つめていた。 



「父、上……!
また、夢・・・・・・」
 イーリスは額にうっすらと汗をかいていた。まだ、胸が痛む。じくじくと。
 自分の選んだ道だ。後悔はない。あれが最善だったと思う。
「そうだよね、亮也。
ねえ、亮也。人間はなぜ同族なのに殺し合いをするのかな。僕らの世界にはなかった、残酷で圧倒的な力を持つ武器で。そんなに相手が憎いのかな。悲しくないのかな。僕は人間はみんな亮也みたいにいい人ばかりだと思っていたよ。
・・・・・・僕がしていることは間違っているのかな。僕は時々解らなくなるんだよ、亮也」
 空の月は何も言わない。ただ、イーリスを照らしていた。




「聖也、聖也!」
 遠くで呼ぶ声が聞こえる。聖也? 誰? そうか、自分だ。
「ごめん、何? 頼」
 振り向くと、心配そうな頼の顔があった。
「いや、用ってほどじゃないんだけど。最近、聖也ぼーっとしてないか?顔色も悪いし・・・・・・」
 頼は優しい。自然と聖也は笑顔になった。
「いや、体調が悪いわけじゃなくて、夢見が最近悪いんだ」
「夢、か。それじゃあ、どうしようもねーな」
「ああ。
夢ってさ、罪悪感とか、自分の心が反映されるんだよね」
 聖也は地面に視線を落として、ぽつりと言った。
「何、聖也、何か悪いことしたの?」
「そんな問いはないんじゃないか。悪いことをしていない人間なんていないだろう。程度の問題であって」
 神司が聖也の代わりに答えた。
「そうだね」
 聖也は頷く。頼も納得顔になった。しかし。
「アリサも罪悪感とか感じるの?」
 頼がアリサに尋ねた。聖也が一瞬、アリサを気遣う目で見、神司は天を仰いだ。
「……。感じるな」
 当のアリサは気分を害した様子はなく、ただ遠い目をして答えた。
「天界に残してきた仲間を思うと、役目とは言え、助かった自分に罪悪感を感じる」
 その言葉に三人は言葉を失う。アリサがどんな思いで地上にいるかを思うと、胸が痛んだ。
「まあ、私は仲間のためにも使命を果たすだけだ。神司、早く何とかしよう」
 アリサはわざと明るく言った。言葉をふられた神司は、
「……そう、だな。何とかしないとな」
 自分に言い聞かせるように言った。
「まあ、あまり無理はしなくていいけどな」
 頼がうなだれた神司の肩を叩く。
「そうそう、神司が鍵を握ってるんだから、神司がまいっちゃしょうがないさ。ぼちぼちな」
 聖也もあのくったくない笑顔で神司を励ます。
「ああ」
 仲間の存在をありがたいと思うのは事実だが、自分に課せられた使命が重いことには変わりない。神司は少し運命を呪った。でも。
 いくら面倒でも、責任が重くても、人間を救えるのは自分だけなのだ。頑張るしかない。いまさらもがいても変わらぬ運命なら受け入れるしかないじゃないか。やってやるさ。
 やってやるのだが。現実はなかなかどうしてうまくいかないものだ。歩いているとまた気分が沈んできてしまう。
「次の川原に行って何も感じなかったら、どうすりゃいいんだってーの」
 三日月という形は判明しても、その他は全く手がかりがないのが事実だ。ただ、小学生になってから渡されたもの、ということで、幼稚園に行く手間は省けた。
しかし。神司はそろそろ焦りだしていた。
いつ現れてもおかしくない魔族。こうしている間にも殺されているかもしれない人間。
神司の川原への足取りは重くなる。
川原の次は? ない。そう思うと恐くなる。自分は次はどうすればいいのか。
「神司?」
 聖也が優しい声で声をかけてくる。
「おいおい、今度は神司かよ。大丈夫かあ?」
 本当に心配をしているかわからない声で頼もそう言う。
「頼の能天気さが時々羨ましいな」
 神司と聖也が言おうとした言葉をアリサが言った。
 三人は顔を見合わせる。
「アリサ、それ冗談? 本気?」
 アリサはちょっと瞳を泳がせて、
「ほ、本気だが……。な、何かおかしいか?」
 三人は再び顔を見合わせ、
「いいや」
 と言って笑った。
(あのアリサが……)
 神司は少し肩の荷が下りた気がした。焦っても状況は変わらないのだ。そうなら、やれることからやっていくしかない。

 川原には案の定手がかりがなかった。
「よくさ、こうやって石を投げて飛ばしてたんだけどな」
 神司は平べったい石を選ぶと体勢を低くして、その石を川に向かってスライドさせるように投げた。石が、水面を二度ほど蹴って、ちゃぽんと水底に着地した音が聞こえた。
「一人で?」
「ああ。一人が好きだから」
「亮也君は?」
 聖也が真剣な目で神司を見て聞いた。
「ああ。亮也は、特別だったからな」
「お前ホモなんじゃねーの? 神司がもてるの知ってるぜ? でも断ってるって話もな」
 頼が茶化す。すると意外にも神司は笑って、
「その域かもしれない。女だったら付き合ってただろうし、だが、男だったからこんなに印象に残っているのかもしれない。理由は本当にわかんねえんだよ。ただ、水のように透明で、綺麗で、危なっかしくて、それでいて隣にいるのは居心地がよかったんだ」
「は~、ぜんっぜんわかんねえ」
 頼は空を仰ぎ、アリサは考え込み、聖也は静かに川を見ていた。
「亮也はともかく、だ。ここには何もない。俺はもう一度、自分の家行きたいんだが。何か思い出すかもしれないからな」
 神司の言葉に三人とも異論はなかった。
 
 神司は、もう一度、六畳の部屋から母を見ていた所に腰を下ろした。ここで見ていた光景。
 そして。渡されたときの光景。今でははっきりと思い出せる。
 神司は、本当に大事にそれを身に着けていたのを思い出した。なぜ今まで思い出さなかったのだろう、と思うほどに、大事にしていたのだ。
(なぜ今ないんだ?)
 結局はその問いになる。自分から捨てるはずは絶対にない。物に執着しない神司が、唯一執着したものだ。
(捨てたんじゃないから、失くした?)
 どこかで落とした可能性も考えてみる。
「うー」
 神司が唸って、百面相をしているのを三人は黙って見ているしかない。
頼は意外にそれを楽しんでいた。写真にでも撮りたい気持ちさえしていた。学校での草瀬神司のイメージが壊れていく。頼はようやく神司が自分と同じ高校生である実感ができて、嬉しかったのだ。だが、神司は真剣に考えているのだ。こんな不謹慎な事を考えてはいけない、と頼は慌てて頭を振る。
その頼の隣で、聖也は頼の百面相を見ていた。そして、神司と見比べ、首をかしげる。
アリサもわけが解らない、といった感じで黙っていた。
「うー」
 また、神司が唸った。
失くしたなら、罪悪感や、喪失感を覚えるものではないだろうか。大事にしていたものなのである。
(それを感じた記憶はないな。喪失感なら、亮也が死んだときが一番だ。
……また亮也、か。なんで俺はこうも。今は生きてる人間優先だ)
 自分の意思でどこかにやったとしたら? それがもっともな気がした。
(大事なものを手放すって、どんなときだ?)
 神司は自問自答を繰り返すが、謎は深まるばかりだ。幼いときの自分が考えていたことは、本当に解らないと神司は思った。いや、単純なんだろう。だが、単純すぎて、今の神司には理解できないのかもしれない。
「無理、だな。すまんが今日はここまで。帰ろう」
 深みにはまっていっている自分の頭をリセットするように神司は言った。もちろん三人は従った。



                        続く


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